08/04/17 01:51:27 mfoc4vpq0
ひと気の無い夜の国道。フリーカメラマンの一文字隼人は取材を終え、立花オートコーナーに向かって
一路バイクを走らせていた。彼の良き理解者である立花藤兵衛、そしてそこに集う仲間たちとの語らいが、
天涯孤独の身の一文字にとっては貴重な憩いのひとときであった。
突然! 一文字の目の前に、青い服を着た人影がフラフラと飛び出してきた。
「危ない!」急ブレーキをかけ、ハンドルを大きく切って間一髪で人影をかわす一文字。
「何してるんだ! あやうく轢いてしまうところだったじゃないか!」バイクを停め、大声で怒鳴る一文字。
だが人影は、何も聞こえなかったかのようにそのままフラフラと歩み続ける。まるで夢遊病だ。
バイクの前照灯に浮かび上がったその人影は、セットしていない髪を振り乱した、細身の若い女性である。
しかも身にまとってるのはどうやら薄青色のネグリジェ。どう見ても尋常ではない。
「おい、きみ! 一体どうしたんだ!?」
女の様子がただごとではないことに気付いた一文字が、バイクから停めて駆け出し、女の腕を掴んだ。
振り向いたその顔は、清楚な雰囲気の絶世の美女。さすがの一文字も一瞬ドキンと胸が高鳴った。
女は何かに憑かれたようなトロンとした眼で、うわごとのように言った。
「・・・彼女が、・・・彼女がわたしを呼んでいるの・・・」
「・・・彼女?」
「・・・くりや・・・はちお・・・な・・・」
女は、二の腕を掴む一文字の手を振りほどくと、彼を勢いよく突き飛ばした。「うわッ!」
突然のことに、路肩に尻餅をつく一文字。女はそのままフラフラと、夜の闇の中に消えていった。
《・・・驚いたな。改造人間の俺を突き飛ばすなんて、女の人にあんな力が出るものだろうか?》
もはや女の姿は見当たらない。立ち上がり土を払った一文字は、仕方なくバイクに戻り、再びエンジンをふかす。
だが少しも走らないうちに、一文字は今度は、クスンクスンと泣きながら国道を歩いている少女に出会った。
ピンク色の可愛いナイティを着た、小学3年生くらいの愛らしい少女だ。
「きみ。どうしたんだい? こんな時間に?」
「・・・グスン。おねえちゃんが・・・沙夜おねえちゃんが・・・きゅうにいなくなっちゃったの」