おにゃのこが改造されるシーン素体9人目at SFX
おにゃのこが改造されるシーン素体9人目 - 暇つぶし2ch38:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
08/01/30 18:58:07 o6/GgM980
以上でした。

いやぁ・・・久しぶりに書いたものですからボロボロですね。
お目汚し失礼いたしました。

文中の描写は、極力「仮面ライダー」という特撮番組を意識しています。
昼間なのに暗くなって戦闘員が入ってきたりとか、ビーカーから煙が出ているとか
ウィルスではなくビールスと呼んだりとか・・・
当時の雰囲気を感じてくださればうれしいです。

またそのうち何か書きたいと思います。
感想とかもらえるとうれしいです。

39:名無しより愛をこめて
08/01/30 19:18:16 bClDQUgv0
>>38
GJ過ぎる!
展開が読めてるとはいえ、歯切れのいい文章が飽きさせずに読ませてくれたぜ
次回も期待。シラキュラスとかやってくれると嬉しい

40:蟻蜂フリーク ◆/sIh2XqTo2
08/01/30 20:42:41 ufuN2N/C0
>ショッカー代理人さん
お疲れ様です^^ このスレ第一発目飾るのに相応しいSSだと思いました^^

ボロボロだなんてご謙遜を(笑) 光景が目に浮かんでくるくらい読みやすかったです


41:名無しより愛をこめて
08/01/30 23:57:40 5ufF41mw0
>ショッカー代理人さん
ギラーコオロギのリクエストをしたものです。
本当に書いていただいて、ありがとうございます。素晴らしい作品でした。
誠に失礼ですが欲を言えば、この後の展開が気になりますね。
でも本当に素晴らしい作品でした。心より感謝致します。

42:名無しより愛をこめて
08/01/31 01:40:56 +qUKORy10
ショッカー代理人さん
GJです。出来れば春花ちゃんも改造しちゃってください。なんかそんな話が見たくなりました。

43:名無しより愛をこめて
08/01/31 01:46:55 +qUKORy10
上の補足
この話は続きはあるんでしょうか?春花ちゃんは最後は元に戻るというのはこのスレ的には嫌ですね。親子で改造というのもありかと思いまして。
色々わがまま言ってすみません。

44:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
08/01/31 02:04:32 BWdKFjVz0
こんな時間に失礼します。
皆様レスありがとうございました。

>39様
ありがとうございます。
シラキュラスも妄想してみようと思います。
気長にお待ちくださいませ。

>蟻蜂フリーク様
そう言っていただけるとすごくうれしいです。
ありがとうございました。

>41様
この後の展開については、もはや改造シーンの段階を越えちゃうと思いましたのと、
皆様それぞれで妄想していただこうと思いここまでにしました。
書けるかどうか約束できませんが、またリクエストありましたらよろしくお願いいたします。

>42-43様
上にも書きましたが、春花は赤い爪で友人を襲ったあと死んじゃうと思います。
怪人への改造とのことですが、それはまた別の機会でもあればと思います。
どうもありがとうございました。

45:maledict ◆sOlCVh8kZw
08/01/31 02:11:19 AiHIjtZ90
>>22-37ショッカー代理人様
堪能しました!GJです!来るぞ来るぞ、という感じがぞくぞくキました
冒頭の「ショッカー」の名を極力出さない描写も斬新でよかったです。
ドライアイスごぽごぽのシーンがとか、最高でした。
極力『仮面ライダー』らしさにこだわった上での女科学者改造に
幼女のビールス感染の展開、本当にそういうエピソードを
見たような錯覚を覚えて興奮しました。こういうのって…いいですね

46:ダイレン
08/01/31 11:08:17 QBRFTa7/O
大学の試験終わってすっかり暇に……バイトありますが、一応新作構想段階です

ショッカー代理人さん、乙です。春花ちゃんは死んじゃうんですか!?
仮面ライダーな感じなら、1号や2号が解毒剤持ってきて子供をみんな助けそうなもんですけど
口を出してすいません。基本的にハッピー好みなもので……(元に戻る→改造→元に戻る→………)


バイオ液に漬けられて改造ってのとかありですかね?エロパロ行きでしょうか?

47:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
08/01/31 15:13:29 BWdKFjVz0
休憩時間にちょっとちょっと顔出し。
>maledict様
お褒めいただきありがとうございました。
光景が脳裏に浮かぶと感じていただけるのは、SS書きにとっては最高の褒め言葉です。
すごくうれしいです。

>ダイレン様
新作楽しみにしております。
バイトともどもがんばってください。
春花については一応私はそう感じているというだけでして、
確かに仮面ライダーですと救出されるんでしょうね。
そのあたりは皆様が自由に妄想してもらえればと思う次第です。

バイオ液に漬けられてというのは問題ないのではないでしょうか。
拙作のキノコモルグも液体漬けでの改造でしたから。

48:maledict ◆sOlCVh8kZw
08/01/31 16:41:30 +6l18MZF0
…ええと、「私説・蜂女伝」(ショッカー蜂女)書き上がったのですが、
調子に乗って書いていたら24000字超、レス数40超というバカ長いものになって
しまいました。(それでも、一応余分なところは極力簡潔にまとめようとしたのですが…)
一挙投下がルールながら、これを一挙にというのはなんか支障が生じそうなので、
間をちょっと置いて、前編と後編、二つに分けます。前半が24レス、後半が17レス
という予定ですが、容量超過があればもう少し増えるかもしれません。
こちらの用事の関で、夜の八時くらいから第一弾行きます。
混む時間帯なのでちょっと気が引けますが、ゆっくり投下しますので。

ショッカー代理人様、ダイレン様、お仕事頑張って下さい。
(自分もキノコモルグ方式の改造は全然問題ないと思います)
この板は平均年齢が高い(新マンを中学時代リアルタイムで見てたりする
ひとが普通にいる)ので、自分もまだまだ若いなどと思っていたのですが、
ダイレン様といい羽生様といい、お若いですね。いやあ…

49:maledict ◆sOlCVh8kZw
08/01/31 20:07:29 +6l18MZF0
…ということで、ショッカー怪人蜂女の話、投下します。
一応前スレ607様のリクエストということです
ショッカー代理人様、申し訳ありませんがお先に失礼します。
自分はナチの看守じゃなくてもいいので、ショッカー代理人様版の
蜂女もいつか読んでみたいと思っています。

50:私説・蜂女伝(前編)1/23
08/01/31 20:09:33 +6l18MZF0
 自分に降りかかった恐ろしい運命。そしていつ終わるともしれぬ、
苦難に満ちた戦い。でも、わたしは一人じゃない。だからくじけずに
頑張ってこれたし、これからもやっていけるはずだ。きっと。

 女子オートレーサーになるのが子供の頃からの夢だった。まだ
小学校にも入らない頃、父親に連れられて見た男女混合レース。
男性レーサーを軽々と抜いて疾走する女子レーサーの勇姿。わたしは
それに憧れた。その後父が母から、賭博場まがいの場所に娘を連れて
行った、とさんざん叱られたため、レースを見たのはそれっきり
だった。それでもわたしはそのとき、誰にも内緒で一生の夢を
掴んだつもりでいた。
 女子オートレースという競技自体があのレースの直後に廃止に
なっていた、と知ったのはだいぶ後になってからのことだ。わたしの
夢は、この競技が再開されない限り、かなえようのないものになって
しまった。それでもいつかその日が来ると信じたわたしは、バイクの
腕を磨き続けた。東京の大学、しかも城南大という一流大に進学した
後は、授業もそこそこに、誰に気兼ねすることもなくバイクに
打ち込んだ。
 女子レースがいよいよ復活するらしい、という噂が流れてきたのは
大学一年も終わり近くのことだ。何でも、正規の募集の前に、非公式の
調査を行い、それで十分な実力の女子レーサーが一定数以上見込める
ならば本格的な募集に移る、そういう話だった。漠然とした噂をたどり、
あちこちにあたって、噂がただの噂に過ぎないのではないかと諦め
かけていたとき、夢へのチケットが届いた。テストレーサー募集の
日時が記載された通知が、どういうルートによってか、わたしの下宿に
配達されたのである。

51:私説・蜂女伝(前編)2/23
08/01/31 20:11:37 +6l18MZF0
 テスト会場は人里離れた山奥。トンネルの入り口のようなところに、
コンクリート製の小さな建物があった。頑丈そうな鉄の扉があり、
押しても引いても開く気配がない。仕方なくドアの横にある呼び鈴を
押すと、呼び鈴の横のスピーカーから声が聞こえてきた。
「いらっしゃいませ。お名前をどうぞ」
インターフォンというやつだろう。わたしは名前を言う。
「蒼井蜜子といいます。女子オートレース選手の予備テストがこちらで
行われると聞き、伺いました」
「蒼井さんですね。お待ちしていました。お入り下さい」
声と共にドアが自動で開き、声の主らしい上品そうな女性がわたしを
出迎える。中は待合室のようになっていて、すでに来ていた別の
テスト生と思われる女性が二人座っていた。一人は線の細い、
おとなしそうな女の子、もう一人はいわゆる男勝りという感じの
がっしりした女性だった。
「テストは到着順に順次行っています。こちらの扉から一人ずつ
お進み下さい」
 部屋の奥にもう一つ鉄の扉があり、その向こうにコースがある
らしい。最初に華奢な少女の方が扉をくぐって入っていく。次が
頑丈そうな女性、わたしは三番目だった。
 わたしの順番は、あまり長く待たないうちに回ってきた。鉄の扉が
自動で開き、地下にあるらしいコースへ続く薄暗い道を歩き始める。
背後で重い鉄扉が閉められたとき、一瞬、自分が何か取り返しの
つかないことをしつつあるのではないか、という本能的な不安が
よぎった―実際、その不安は十二分に正しかったのだ。

52:私説・蜂女伝(前編)3/23
08/01/31 20:13:39 +6l18MZF0
 長い階段を降りきると、まばゆいライトに照らされたフロアに出た。
いつの間にかわたしが乗ってきたバイクが運ばれていた。壁には
コースの説明。なぜかオートレース用のコースではなく、難しい
カーブの多いロードコースである。コースそのものはさらに奥の
トンネルの向こうにあるらしい。山奥の地下にこんなコースを
造ってしまえるほど、オートレース振興会は潤っていただろうか、
と世知辛い疑問が湧く。
「コースが頭に入ったらこのヘルメットをかぶり、早速コースに出て
もらいます。十周してもらって出たタイムであなたの適性を審査
します。トライアルは一度きりです。二度目はありませんので
集中して臨んで下さい」
 天井から声が響く。わたしは二三回深呼吸をしてから、早速支給された
ヘルメットをかぶり、愛車にまたがり、走り出す。トンネルを抜け、コースへ
続くなだらかな坂を進み始めたそのとき、ヘルメットから声が響いた。
「警告します。以後、トライアルが終了するまで、絶対に過度の減速は
しないで下さい。速度が一定以下になると仕掛けられた爆弾が爆発し、
あなたは命を落とします」
 わが耳を疑うわたしに、ヘルメットからの警告は何度か繰り返された。
そしてコースに到着したとき、わたしは今度は自分の目を疑った。コースの
両側に深い闇が広がっていたからだ。コースアウトしたら十メートルは
ありそうな崖下に転落する仕掛けになっているのだ。すでに前方のどこかで
煙が上がっていて、先の二人のどちらかが転落したことを暗示していた。

53:私説・蜂女伝(前編)4/23
08/01/31 20:18:10 +6l18MZF0
 動転しそうになる気持ちを何とかこらえて、アクセルとハンドルに
意識を集中させる。気を抜いて速度が低下するとヘルメットから不吉な
アラームが鳴り響く。速度の下限は位置によって変動するようで、
一瞬でも気を抜くことは許されないようだった。わたしは自分でも
信じられない集中力を発揮して、恐ろしい死のトライアルを持ちこたえた。
「間もなく終了です。そのまま反対側のゲートへお進み下さい。爆弾が
解除されます」
 不条理な仕打ちに対する憤りとか、レース場の素性に対する疑いとか、
そんな普通の感覚は完全に麻痺していた。わたしはただもう爆弾の
恐怖から解放されたい、という思いのみで指定されたゲートをくぐった。
だが、解放感を味わう暇はなかった。ゲートの中には顔に気味の悪い
文様を刻みつけた男女が大勢待ち受けており、ゲートをくぐってすぐ、
強制的に停止したオートバイ上のわたしを取り囲み、拘束したのだ。
必死で抵抗するわたしの耳元に、奇怪な隈取りの女性が話しかける。
「おめでとう!あなたは改造人間の素体に選ばれたのよ。わたしは
戦闘員どまり。うらやましいわ」
 この子、たしか最初にコースに入った女の子だ、とわたしは気づいた。
彼らはそうしてわたしを拘束したまま部屋の奥へ連行して、大きな円形の
台の前へ引きずっていった。天井のライトが、それが手術台らしいことを
暗示している。台の横には白衣を着た女性が立っていた。マスクをつけ、
やはり気味の悪い文様を顔に刻んでいるが、あの待合室にいた女性
らしいと直感的に分かった。

54:私説・蜂女伝(前編)5/23
08/01/31 20:20:11 +6l18MZF0
「テストはあなたで最後。結局、改造手術を受けられるのはあなた一人。
命をとりとめて戦闘員になれたのも、そこのお嬢さんを入れてたった四人
しかいなかった。あなたは選ばれた存在なのよ。さあ、早速始めましょう」
 その言葉を合図に、わたしを拘束していた異形の群れはわたしの
ライダースーツを脱がせようとし始めた。大勢の手が背中のチャックを
降ろし、強引に手足を抜きとる。そして下着になったわたしの背後から
あの女の子が近づき、女性らしい手慣れた手つきでブラジャーを外す。
「やめて!いやだ!いやだ!」
異形の者たちによる集団暴行。そしてよくわからないが、何か恐ろしい
「手術」。わたしは半ば錯乱しながら必死に力をふりしぼり抵抗しよう
とした。しかし異形の者たちの力は信じられないほど強く、手を
ふりほどくことはおろか、動かすことすらほとんどできない。
「おとなしくしててね」
あの女の子はそう言いながら楽しそうにわたしのパンティを下げ始めた。
「こうして裸にするとわかるわ。均整のとれた、無駄のないきれいな
身体。本当にうらやましいわ」
 そう言いながら彼女たちはわたしをあの不吉な手術台に運んでいった。
そうしてわたしの身体を大の字の形に固定すると、手足に冷たい鉄の
枷をはめた。
「いやだ!わたしどこも悪くない!手術なんていや!何なの?
あなたたちは何なの?振興会じゃないわね!何者!?」
 わたしはこの場の責任者らしい白衣の女性に問いかけた。
「そう。オートレースというのはあなたのような女性を集めるための
ちょっとした口実。わたしたちはショッカー。世界を征服し改造人間に
よる理想社会をつくるために集った、秘密結社」

55:私説・蜂女伝(前編)6/23
08/01/31 20:22:13 +6l18MZF0
「ショッカー?改造人間?」
「そうよ。あなたはこれから手術を受けて改造人間に生まれ変わるの。
全身の臓器と骨格を強力な人工部品に置き換え、あなたの場合は、蜂の
細胞をもとに創り出した人工筋肉と人工皮膚を移植する。あなたは
女性改造人間第一号『蜂女』となる栄誉に恵まれたのよ」
 よくわからない!聞いたこともない組織に、強引に拘束されて得体の
知れない手術を受けさせられてしまう。そんなことがあっていいのか。
何か悪い夢でも見ているのだろうか。
「いや!何でわたしなの?ショッカーなんか知らない!帰して!家に帰して!」
「改造人間の適性には様々な要素がある。今回特に重要だったのは、高速で
走るオートバイを自在に操作できる動体視力や反射神経。人間の能力を
はるかに超える機械と一体になることができる素質よ。現に、わたしの
殉職した先輩は、この素質に秀でた素体から、素晴らしい改造人間を
作り出すのに成功した…残念な事故のせいで、おぞましい失敗作が
できあがってしまったけれどね」
 長口舌をぶちながらも、白衣の女は片時も手を休めず、何やら機械や
薬品の準備をてきぱきと進めていた。
「さあ、準備ができたわ。あなたは心身共に人間を超えた優れた存在へ
生まれ変わるのよ」
 そう言って女は、自分でもわけのわからない声を上げて泣きじゃくる
わたしの首筋に注射を打った。全身の感覚が麻痺していったが、意識は
まだはっきりしていた。

56:私説・蜂女伝(前編)7/23
08/01/31 20:24:14 +6l18MZF0
「ふふふ。しばらくの間、自分が生まれ変わっていく様子をよく見て
いるといいわ」
 そう言って女はわたしの胸にメスを当てた。声すら出せないわたしの
目から大量の涙が流れてきた。痛かったわけではない。本当に「手術」が
始まってしまったからだ。傷一つなかったわたしの胸が得体の知れない
目的で切り開かれてしまうのだ。わたしは麻酔によってではなく、
ショックのために気を失ったようだ。その後ぼんやりと目覚めるたびに
手術は進んでいて、わたしの身体がずたずたにされていく様子を
見せつけられては、やがて気を失う、という繰り返しだった。メスは
お腹にも、腕や足にも及んだ。内臓の各所に生命維持装置と称された
無骨なチューブが接続され、一部の臓器は無造作に摘出された。
うつぶせにされ、あるいは横臥の姿勢にされながら、全身にむごたらしく
メスが入れられていった。麻酔が切れてきたのか、身体の奥からかすかに
厭な痛みが湧き上がりかけてきた頃、口に笑気ガスが当てられて本格的な
全身麻酔をかけられた。この後、今以上に肉体をずたずたにされるの
だろうか、と思いながら、わたしは意識を失った。

 目が覚めたとき、わたしの身体にはシーツが掛けられていた。筋肉の
麻痺はまだ続いているようだったが、感覚は回復していた。痛みはなく、
お尻に当たる手術台の滑らかな表面や、乳房やお腹に当たるシーツの
目の細かい織り目などが、自分でも気味の悪いほどありありと感じ取れた。
「お目覚めかね、蒼井蜜子くん」
 壁に掲げられた大きな鷲のエンブレムの目が不気味に光り、野太い
男性の声が響いてきた。声を耳にした白衣の女とその助手たちは
さっと敬礼のポーズをとった。

57:私説・蜂女伝(前編)8/23
08/01/31 20:26:15 +6l18MZF0
「君の改造手術は順調に進んでいる。見たまえ」
 声を合図にシーツが外された。わたしは「改造手術」と「改造人間」
という言葉の意味をこれ以上ないほど生々しく思い知らされ、絶叫した。
 天井のライトの鏡面に映ったわたしの首から下は、全身青色の皮膚に
覆われていた。乳房には蜂のお尻を思わせる黄色と黒の同心円模様。
すねから下はブーツを履いたように滑らかな、角質化の進んだ皮膚。
足の指はなくなり、かかとは長く伸びてハイヒールのようだ。手首から
先も同じ状態になり、爪はなくなっている。これらがすべて今やわたしの
皮膚そのものである、ということはシーツや手術台の感触ではっきりと
わかった。皮膚の表面は人間の、いや哺乳類の皮膚とはかけ離れたものに
なっている。一番似ているのは、昆虫の幼虫、青虫の類の体表だ。あれの
青いものが厚みを増し、全身を覆っている。開いた足の間には体毛一つ
なく、見たところわれ目もなくなってつるんとしている。背中には昆虫の
ような羽根が生え、肩から斜め下に向けて広がっている。
 白衣の女が嬉しそうにわたしの身体をのぞき込み、肩口から乳首、
お腹から太ももを経てつま先まで指を滑らせながら、うっとりした顔で
話しかけてくる。
「美しい。我ながら最高傑作と言っていいわ」
 指の感触が、この異様な青い皮膚こそ今のわたしの素肌なのだ、
という事実を改めていやというほど思い知らせる。
「いや…もとの身体に戻して…こんなのいや…いや…」

58:私説・蜂女伝(前編)9/23
08/01/31 20:28:17 +6l18MZF0
 わたしの言葉をまるで意に介さずに、威圧的な声が響く。
「君には早速一つの任務を用意してある。新型の毒ガスの開発と、
それによる劣等な人間の処分だ。理想社会に不用な劣悪な人間をガスで
抹殺する計画の指揮を君にとってもらおう」
「毒ガス?抹殺?いや!そんな恐ろしいこと!やらない!したくない!」
わたしはその有無を言わさぬ口調に、何か不吉な予感を感じつつ、抗弁した。
「最初はみんなそう言うわ」
 白衣の女が嬉しそうに応じる。
「あなたの改造はまだ途上なの。もうじき脳にメスが入り、脳内に、
機械と融合した効率的で合理的な情報処理システムが構築されるわ。
そうして脳改造を受けたあなたは、わがショッカーの崇高な理想のために
喜んで働く戦士に生まれ変わるのよ!」
 ―肉体を切り刻み作りかえたあのメスが、脳に、心に、当てられて
しまう、という鮮烈なイメージがわたしの心を揺すぶった。不吉な予感の
正体はこれだったのだ。とてつもない恐怖と、どうしようもない無力感が
わたしを打ちのめした。
「…脳改造…」
わたしはこうして身動きのとれないまま、外見だけでなく、心まで
わたしではないモノに変えられてしまう。この狂気を宿した女科学者の
ように、恐ろしい計画に嬉々として従う本物の怪物になってしまうのだ。
わたしの目から何度目になるかわからない涙がぽろぽろとこぼれ始めた。

59:私説・蜂女伝(前編)10/23
08/01/31 20:42:27 EtfhD3m5O
「その脆弱な精神もすぐに作りかえてあげる。大丈夫、すぐに終わるわ。
あなたの全身を覆う強化細胞は、術後の処理を驚異的に簡素化するの。
頭蓋骨の一部を除去して、代わりにこの電子機器を組み込んだ人工頭蓋を
装着すれば、組織がすぐに癒合して手術は終わり。
縫合も何も必要ないわ」
 そう言って白衣の女は、培養液のようなものに浸された、黄色と黒の
毒々しい色に彩られた「人工頭蓋」をわたしに見せた。
「助手1号、強化細胞の定着率は?」
「99パーセントを越しています」
「問題ないわね。始めましょう」
科学者は小型ノコギリを手にし、スイッチを入れてわたしの額に近づけてきた。
「いや!心まで化け物になるのはいや!」
 
 ―そのときだった。建物内を赤い非常灯らしい光が包み、サイレンが
鳴り響いた。切迫した声で放送が流れる。
「侵入者!…仮面ライ…ぐわぁっ」
 女性科学者の表情がこわばり、周囲にいた異形の隈取りの男女が部屋の
出口へ向けて身構えた。程なく、恐らく「バッタ男」と呼ばれるのが
ふさわしそうな怪人が部屋に侵入してきた。怪人は薄暗い部屋に
ピンク色の眼光を光らせながら、防戦する異形の男女をなぎ払い、その
拳で見る間に

60:私説・蜂女伝(前編)10.5/23
08/01/31 20:45:44 EtfhD3m5O
ごぼごぼと泡になって消滅した。
「おのれこの失敗作!」
覚悟を決めたらしい女科学者が、わたしの頭蓋骨に当てようとしていた
小型ノコギリを手に怪人に向かっていった。だが怪人の一撃でノコギリと
手がぐしゃぐしゃに砕かれ、そのまま地に伏し、泡になって消えた。
最後まで残ったのはあの華奢な女の子だった。


61:私説・蜂女伝(前編)11/23
08/01/31 20:49:27 +6l18MZF0
「イーッ!」
奇声を発して勇敢に立ち向かっていった少女が、怪人に連続して
回し蹴りを当てた。怪人はふらふらとよろけた。
「なかなかやるな!とう!」
そう言って怪人は体勢を立て直し、横の壁に向けてジャンプすると、
壁を蹴って反動をつけ、少女に向けてキックを放った。背後のコンクリートの
壁がぼこりとへこみ、弾丸のような速さの蹴りが少女を反対の壁にさらって
行った。次の瞬間にはもう、めり込んだ壁に人型のしみが残っているだけだった。
「残りはこれだけか。…まだ若い娘さんじゃないか。さっきの少女といい、
むごいことをする…せめて一瞬で終わらせてやらねば」
わたしを見てそうつぶやいた怪人はピンク色の目を不気味に光らせると、
両手を組み、組んだ拳をわたしの脳天に狙いを定めて、振りかざした。
 身動きのとれないまま、一部始終を呆然と眺めていたわたしは、
怪人の狙いが今や自分に向かっていることを知り、ようやく我に返った。
「いやぁぁぁぁぁ!殺さないで!!化け物!」
 今にも打ち下ろされんとしていた拳がぴたりと止まり、ゆっくりと
下ろされた。
「まさか…俺と同じ…脳は無傷なのか?」
 そう言うと怪人はその無機質な顔をわたしの額に近づけた。顔の中心に
ある、昆虫の単眼に当たる部分からピピピピというかすかな音が聞こえる。
「…済まない。あやうく取り返しのつかないことをするところだった…」
怪人はそう言うとわたしの手足を拘束している枷をいとも簡単に引きちぎった。
「どうだ?立てるか?」
「…だめ。手足が動かない。麻酔がまだ効いているみたい」

62:私説・蜂女伝(前編)12/23
08/01/31 20:52:29 +6l18MZF0
「麻酔?人間用の麻酔が改造人間に効くはずが…そうか。オレのときと
同じ、起動の操作が必要なのか…」
そう言いながら怪人は操作パネルを調べ、あるレバーを握った。
「多分これで…」
 怪人がレバーを引くと同時に、手術台の、わたしの大きく開かれた
足の間にシャッターが開き、何かがせり上がってきた。丸く湾曲した、
黒くて太い棒状のプラグだった。せり上がったプラグは、開かれたまま
ぴくりともしないわたしの大事な部分にその先端を強く押し当ててきた。
「いや!何これ!痛い!痛い!」
つるんとして何もないように見えていたのは表面上だけだったらしい。
他の表皮に比べるとはるかに薄い皮膚が性器を覆っていたのだった。
プラグは何か刃物のようなものでその薄い表皮を切り裂き、わたしの
中に入り始めた。
「やだ!こんなのやだ!こんなのやだ!」
…こんなものにわたしの処女は奪われてしまう…。そんな、悲劇を
通り越した喜劇的な状況にわたしはあまりに情けなくなり、もはや涙も
出なかった。
 怪人は顔を背け、うつむきながら言った。
「…すまない。まさかこんなことになるとは。ショッカーめ、悪趣味な
ことを…。…しかし我慢してくれ。改造後こうして機械部品を起動させ、
充電を行わないと、遠からず生命維持装置が停止し、君は死んでしまう
ことになる」

63:私説・蜂女伝(前編)13/23
08/01/31 20:55:31 +6l18MZF0
 いやらしいプラグが、改造されていなかったらしいわたしの処女膜を
破り、奥にまで達した。そうして痛さと違和感の混じった最悪の不快感に
包まれていたわたしに、さらなる拷問が襲いかかった。体内の機械部品を
起動するという、高圧電流が流され始めたのだ。
「あああああああああああ!助けて!死ぬ!死んじゃう!」
改造された肉体は電流の痛みを和らげてくれることがないらしい。
わたしは全身が引き裂かれそうな電気刺激に正気を失いそうに
なりながら死ぬ死ぬとわめきちらした。
「すまない。脳が未改造だと苦痛が緩和されないんだ。もうちょっとだけ
我慢だ」
 ふと天井の手術灯を見上げると、さらに絶望的なものが目に入った。
ここだけは無傷だと思っていた顔にとうとう変化が生じ始めたのだ。
顔の皮膚が青と紫のまだらに変化し始め、額からは触角が伸び、目には
横にいる怪人と同じような複眼が形成された。髪の毛は紫のゴワゴワした
昆虫の体毛のような毛に変わっていった。
 頭部の変化が完成したと同時に電流が止まった。
「…辛かったろう。だがもう動けるはずだ」
 言うとおり、わたしの身体は軽々と動いた。これまで感じたことの
ない力の充実感が、もう人間の身体ではなくなってしまったという事実を
皮膚感覚で知らせてきた。
「この基地は自爆装置が作動して壊滅するはずだ。やつらのいつもの
証拠隠滅の手口だ。さあ、脱出するぞ!」
 怪人はわたしの手を取り、出口に向かった。

64:私説・蜂女伝(前編)14/23
08/01/31 20:58:39 +6l18MZF0
「待って!この子を!」
わたしは自分のマシンに駆け寄り、爆弾、および強制停止装置と思われる
異物を引きちぎって投げ捨て、上にまたがった。
「この子も連れて逃げたいの!乗って!」
「…そうか。わかった」
改造人間二体を乗せたわたしのマシンは、それでもけなげに、いつもに
近い実力を発揮してくれた。あちこちで起こる爆風と落下してくる瓦礫を
避けながら、わたしは怪人を乗せ、来た道を戻っていった。
「すごいテクニックだな。オレでも無理かもしれない」
 それなりに腕に自信のある私は、こいつ、何様のつもりかしら、
と思いそれを聞き流した。
 地下への入り口には侵入した怪人が開けたらしい大きな穴が空いていた。
だが外部への出口には、重そうな鉄のシャッターが下りていた。怪人は
バイクから飛び降りるとわたしに声をかけた。
「手伝ってくれ。一緒にぶち破ろう」
怪人はそう言うと鉄板に拳を見舞い始めた。ぐにゃり、ぐにゃりと鉄板が
変形してゆく。バイクを降りたわたしは、怪人の真似をして恐る恐る
鉄板にパンチを当ててみた。横の怪人ほどではないが、たしかに鉄板は
変形した。二人で叩き、貫通した穴を押し広げて、ようやくバイクが
通れるほどの大きさの穴が開いた。わたしたちはバイクに戻った。
「急げ!そろそろ時間がない」

65:私説・蜂女伝(前編)15/23
08/01/31 21:01:42 +6l18MZF0
 奥の方からひときわ大きな爆音が聞こえ、振動が伝わってきた。直後に
押し寄せてきた爆風に押し出されながら、わたしは何とかバランスを
保ち、先ほど空けたバイク一台分の穴をくぐり抜けた。少しでもずれて
いれば壁に叩きつけられていただろう。そうしてわたしたちは、まるで
銃から発射される弾丸のように爆風に乗って外に飛び出し、そのまま着地した。
 わたしはバイクを停め、下に降りた。バッタの改造人間もバイクを
降りた。こちらを向いているものの、うつむき加減の怪人が何を考えて
いるのか、もう一つ読み取れない。やがて、脱出の興奮が薄れてきた
わたしに、絶望と怒りの感情がこみ上げてきた。先ほどの自分のパンチ力を
思い出し、力をセーブせねばとは思いつつ、それでも激情に抗えず、
かなり激しい平手打ちを怪人に食らわせた。
「ばかっ!」
 やはりわたしの力はもう普通の人間のものではなくなっていた。
不意を衝かれたらしい怪人は数メートル横にはじき飛ばされた。
「何をする!普通の人間ならば首が飛んでいたぞ!」
 声を荒げて言い立てる怪人を、わたしはもっととげとげしい声で
責め立てた。
「なんで!なんであのまま死なせてくれなかったの!こんなものになる
くらいなら、起動なんてして欲しくなかった!あんな器具に大事なものを
奪われて…こんな顔になって…いっそあのまま…まだちょっとだけ
きれいな身体のままで…そして女の子の顔のままで、死なせて欲しかった!」
 怪人は何も言わなかった。だが激情が冷めてくるにつれて、わたしは
いやでも気付かざるをえなかった。この人はわたしと同じだ。わたしと
同じ運命を背負って、それでも逃げないで今日まで生きてきたのだ。
そして一人であの「ショッカー」と戦っているのだ。わたしや、そして
この人自身のような犠牲者をこれ以上増やさないために。

66:私説・蜂女伝(前編)16/23
08/01/31 21:04:43 +6l18MZF0
 長い沈黙が二人を包んだ。やがて怪人がぽつりと話しかけた。
「君やオレの身体を元に戻す方法はまだ見つけられていない。ひょっと
するとオレたちは一生このままかもしれない。ただ、君がオレと同じ
技術で改造されているなら、変身装置は付いているはずだ。それを
使えば『人間のフリ』をして生きていくことはできるはずだ。戦闘用の
機器の出力をある程度セーブし、生身の人間の外形に擬態する能力だ。
ほら、こんな風に」
 怪人はそう言うと人間の姿に「変身」した。わたしは自分の目が
信じられなかった。わたしにとって雲の上の存在に等しい人、オート
レース界のヒーロー、本郷猛が目の前に立っていたからだ。
「…本郷…選手?あなたが…改造人間に?」
「そうだ。数ヶ月前、ショッカーに誘拐されて改造された。だがある人の
手引きで、脳改造前にショッカーを脱出したんだ。それから、やつらの
世界征服計画を少しでも阻止しようと、ショッカーの改造人間たちを
倒してきた…オレや君の、哀れな同族たちをね」
 本郷さんは悲しい目をしてそう言った。わたしの脳裏に、わたしを
殺そうとしていたあのときの本郷さんが浮かんだ。あのとき、この人は
「仮面」の裏側で涙を流していたに違いない。その目を見ながら、
わたしはそう確信した。
「だが君を同じ運命に巻き込むつもりはない。人間に擬態して、
ショッカーの手の伸びていない地方でひっそりと暮らせば…」
「いや!一緒に戦います!戦わせて!」

67:私説・蜂女伝(前編)17/23
08/01/31 21:07:48 +6l18MZF0
 わたしは本郷さんの言葉をさえぎり思わずそう叫んだ。憧れのヒーローを
前したミーハーな気持ち、死の危険をくぐり抜けた連帯感、そんな心理の
いたずらも手伝っていたのかもしれない。だとしても、わたしがこの人の
悲しそうな目を見た瞬間、深い恋に落ちてしまった事実に変わりはない。
一生、死ぬまで、この人と一緒に悪と戦っていこう。そんな決意が瞬時に
固まってしまったのだ。わたしは軽薄なのだろうか。違う。この人から
あふれ出る途方もない強さと優しさが、わたしを虜にしてしまったのだ。
「どこに逃げたって、きっとやつらはわたしを追ってくる。ならば
こちらから迎え撃つの。いいでしょ?」
「…うーむ…攻撃は最大の防御というが…」
 本郷さんはわたしの申し出を断り切れない様子だった。ことさら
しかめ面をしていても、わたしには分かる。この何ヶ月かこの人を
苦しめていた孤独、それを分かり合える仲間に巡り会えたことが、
やはり嬉しいに違いないのだ。
「決まりね!わたし頑張ります!足手まといにならないように。
…それで、わたしも『変身』できるんでしょ?どうやるの?」
「オレの場合、このベルトのダイナモが動力源で、変身スイッチでも
あるんだが…同じ理屈で言うと、君の場合…その…多分、それの中に…」
 本郷さんは顔を赤らめ、うつむいてもごもごと言葉を濁した。動力源、
という言葉と顔の赤らみ方から、要するに「あそこ」の中にスイッチが
あるらしいということをわたしはすぐに察した。手術台の上の体験で
妙に肝の据わったわたしは、覚悟を決めることにした。

68:私説・蜂女伝(前編)18/23
08/01/31 21:10:51 +6l18MZF0
「…わかったわ。ちょっとあっち向いてて」
そう言いながらわたしは、すでに再生していた表皮を指で引き破り、
あそこの中に指を差し入れて、それらしいものをさぐった。やがて
カチリ、という手応えを感じ、体内の機器の出力がセーブされ始める
のがわかった。同時に、皮膚の青みが見る間に薄れ始めてきた。
「やった!やったわ本郷さん!やっぱり『変身』できるみたいよ!」
「おおそうか!よかった!」
 ―うれしそうに振り向いた本郷さんとわたしは同時に顔を赤くした。
本郷さんの目に飛び込んできたのは、全裸のまま股間に指を突っ込んで
いる若い女性の姿だったからである。
「…と、とりあえず君の服をどうにかしないといけないな」
焦りながら紺のブレザーを脱いで掛けてくれたシャイな本郷さんに、
わたし改めて胸をときめかせていた。

69:私説・蜂女伝(前編)19/23
08/01/31 21:13:55 +6l18MZF0
 ―数週間後。
「お前の作戦はすべて阻止した!」
「観念なさいショッカー!お前にもう勝ち目はない」
「おのれダブルライダー!!せめてお前だけでも道連れにしてやる、
ライダー2号!」
 作戦の失敗を知らされた怪人が溶解液をまき散らしながらわたしに
向かってきた。
「なめないで!」
わたしはひらりと身をかわし、猛と怪人の距離を計算しつつ間合いを取った。
「ミツコ、今だ!」
「まかせて、タケシ!」
 怪人を各々の射程内に収めたわたしたちは、同時にジャンプして叫んだ。
「「ダブル・ライダーキック!!」」
 怪人は爆発し、わたしたちはまた、ショッカーの陰謀をかろうじて
食い止めることができた。

 あの日からわたしは「仮面ライダー2号」を名乗ってショッカーと
戦い始めた。そして猛と二人でショッカーの改造人間を倒し、ショッカー
の陰謀をいくつも未然に阻止した。体力で劣る半面、機敏さと小技が
わたしの持ち味で、「力の1号、技の2号」という役割分担ができつつ
あった。自分で言うのも何だが、わたしたちはベスト・パートナーだと
思っている。

70:私説・蜂女伝(前編)20/23
08/01/31 21:17:05 +6l18MZF0
 正直、たった二人で場当たり的にショッカーの作戦を阻止するだけで、
本当にあの巨大な秘密結社を潰せるのだろうか、という疑問が湧かないでも
ない。未来は混沌としている。それでも、一人でもわたしたちのような
犠牲者を増やしてはならない、という思いがわたしを戦いに駆り立てる。
自分に降りかかった恐ろしい運命。そしていつ終わるともしれぬ、苦難に
満ちた戦い。でも、わたしは一人じゃない。だからくじけずに頑張って
これたし、これからもやっていけるはずだ。きっと。

 ライダーキックを放ち、相当量のエネルギーを消費したわたしは、
変身を解くと―あるいは人間体への変身を施すと―その場に
へたり込んだ。そして、同じく変身を解きサイクロンに乗ろうと
している猛のジャンパーの裾をつかんで、甘い声を出した。
「ねえ、タケシ、くたくたなの。もうエネルギーゼロなの。ここで
しようよ!ねえ!ほら、そこの屋上で!」
 わたしはつい今しがたまで戦場だった、建設途上で破棄された
マンションの屋上を指さした。
「あの上なら誰も来ないし、誰にも見られないよ。ねえ!今すぐ欲しいの!
もらわなきゃあたし死んじゃうんだよ!」
 渋々という感じでバイクを降りた猛に、わたしはさらにおねだりした。
「もう一歩も歩けない!お姫様だっこで、屋上までジャンプしてよ!」
「…さすがにジャンプは無理だ。歩いて上るよ」
そう言いながらも猛はわたしを横抱きにして、スクラップを器用に
足場にしながらするすると屋上に上がった。

71:私説・蜂女伝(前編)21/23
08/01/31 21:20:22 +6l18MZF0
 屋上に上がるとわたしは早速服を脱ぎ始めた。猛も何となく気後れした
ような顔をしながらも、素早い動作でズボンとパンツを脱いだ。上半身は
そのままだった。
「こちらもだいぶ消費したし、追加のチャージもないから、満タンと
いうわけにはいかないよ」
「いいよ。とりあえずお家に帰れれば。動けないくらい減っちゃった
っていうの、嘘じゃないんだよ」
 そんなことを言いながら、わたしたちは廃ビルの屋上でセックスを
始めた。いや、セックスにしか見えないし、実のところセックスである
ことにも違いないのだが、しかしこれはわたしのエネルギー補給なのだ。

 あの脱出劇の後まもなく、わたしは自分と猛の身体の仕組みの違いに
気づいた。ベルトのダイナモからサイボーグ部品への充電が常に可能
である猛と違い、わたしの身体は定期的にショッカー基地で充電しなければ
ならない仕組みになっているらしかった。しかし、この深刻な問題に
衝き当たったわたしたちが答えを見つけるのに、それほど時間はかからなかった。
「…ううむ、そうか。何のためにある機能なのか正直分からなかったんだが、
このためだったんだな。…ゆくゆくは男女の改造人間のカップルを作り、
奴らの言う理想社会で子孫を作らせるというような意味もあったのかも
しれないな…」

72:私説・蜂女伝(前編)22/23
08/01/31 21:23:25 +6l18MZF0
 そうして、わたしの命を救うためという理由から、わたしたちは定期的に
セックスする関係になった。大抵は戦いを終えた後、猛がサイクロンを
飛ばしてエネルギーをチャージし、その状態でバイパス沿いの連れ込み
旅館の類に入って、わたしにチャージしてくれるというパターンだ。
今や猛にベタ惚れ状態のわたしとしては、これは戦いの後の、何にも
勝るご褒美だった。セックスを覚えたての女の子がしばしばそうである
ように、わたしは猛とのセックスにのめり込み、戦いの後に限らず、
折を見ては求めるようになっていった。
 最初わたしは、猛の方も、何せ年頃の男性なのだから、こういうことは
嫌であろう筈がないと信じていた。自慢ではないがわたしは見た目も
スタイルも人並み以上で、昔から言い寄ってくる男が絶えない方
だった。こちらにその気がなかったから今まで処女だったとはいえ、
男性ならば普通にわたしの身体を求めるものだと自然に考えていたのだ。
 だが、どうやら猛はわたしとのセックスにいつも何かわだかまりを
感じているようだった。そのわだかまりの正体がはっきりしたのは、
ある昼下がりの「アミーゴ」でのことだ。その日、エネルギー不足を
口実に、ほとんどわたしの性欲だけを理由に、わたしは猛の肉体を
求め、店の奥の間で「エネルギー補給」を行っていた。まさに真っ最中
というそのとき、立花の親父さんの困惑しきった声が聞こえてきた。
「…いや、ルリ子ちゃん…忘れ物はわかるんだけど、ちょっと今は
まずいんだよ。頼むよ」
「いやねえ。何だか知らないけどこっちも急いでいるのよ。入るわよ!」
 慌ててわたしたちは肉体を離し、わたしは布団の中に潜り込んだ。
がらり、と引き戸が開き、どうみても情事の最中にしか見えない猛が、
しどろもどろになりながら弁解にもならない弁解を始めた。

73:私説・蜂女伝(前編)23/23
08/01/31 21:26:31 +6l18MZF0
「あの…ルリ子さん、これは…違うんだ!なんて言うか…その、そう、
スポーツマンシップに則り、正々堂々と、というか…いや違うか…ええと
…ともかく違うんだよ!」
 無言で走り去っていく緑川ルリ子を追うに追えずに困り切っている
猛の息づかいを、わたしは布団に潜りながら聞いていた。そして心の
中で猛に話しかけていた―ねえ、「違う」って何なの?何が「違う」
の?答えて、猛!…しかしその問いかけは言葉にならず、代わりに
涙がぽろぽろとこぼれてきた。

 それでも、猛とセックスできているときのわたしはやはり最高に幸福
だった。廃ビルの上、わたしは思いきり声を上げて快楽を堪能していた。
「ねえねえ。やっぱりエネルギーが足りないわ。あれやってよあれ!」
「この状態で!?危ないよ、だめだ」
「いいじゃん!けち!」
そう言うとわたしは猛と結合したまま強引に立ち上がり、猛を抱えた
まま屋上の縁にまで進むとそこから身体を投げ出した。風圧がベルトの
ダイナモにチャージされ、わたしの身体にも強烈な電流が駆けめぐり、
二人は性的にも同時に達した。着地したときには、わたしたちは
仮面ライダー1号・2号に「変身」していた。
 満足して身体を離したわたしは、大笑いしながら周りを
ぴょんぴょんと飛び跳ねていた。
「あっははははははは!楽しかったね!気持ちよかったね!ね!タケシ!
タケシぃ!!あははははは」
 …はしゃぎ回るわたしを、「仮面」の下の猛はどんな顔をして
見つめていたのだろうか。
<つづく>

74:maledict ◆sOlCVh8kZw
08/01/31 21:35:47 +6l18MZF0
…まずは以上です。お粗末様でした。
迫害された少女とか、本郷の恋人とか、フェンシング選手とか、ナチの女看守とか、
滝の恋人とか、すでに色々とあるなかでどうしようかと思っていたのですが、
「【トカゲロンは】怪人の素体となった人間【サッカー選手】」スレの下記の方の書き込みが
大きなインスピレーションでした。
---------------
131 名前:名無しより愛をこめて 投稿日:2006/09/19(火) 07:23:29 ID:lIRHyqVw0
関係ないけど、俺は昭和ライダーの世界の女性仮面ライダーとしては、
タックルよりもショッカーの蜂女に出て欲しかった。素体はぜひ緑川ルリ子さんで。
蜂女は頭部のデザインがライダーマンに似ていて、歴代ライダーの中に混ざっても
違和感が少ないと思う。武器も細身剣で、電波投げよりもずっと強そうだし、
何より、タックルよりもずっとずっと色っぽいw
------------------
「ライダー」と呼ばせる関係上バイクに乗せねばならず、それでああいう設定になりました。
こないだ読んだ『マスクト・ドラゴン』のイメージがちょっと混入したかもしれません。

ネタバレですが、実は後編で、ライダー2号・蒼井蜜子は、ショッカーの手で脳改造を
施されて悪の蜂女になってしまいます。そして、影村めがね店を拠点にした
拉致作戦をはじめとする非道な作戦に手を染め、本郷の手で葬られて、
泡になって消えてしまうのです。…て誰でも知っている話でしたね。失礼しました

なお、女子オートレースについては下記を参考にしました。
実はバイクは詳しくないので、変なところあるかもしれません。ご容赦下さい。
URLリンク(www13.ocn.ne.jp)
URLリンク(www.geocities.co.jp)

75:maledict ◆sOlCVh8kZw
08/01/31 22:00:45 +6l18MZF0
>>59-60の間、ちょっと文が抜けていました。>>59の下2行と>>60の1行目はこうです
----------
ピンク色の眼光を光らせながら、防戦する異形の男女をなぎ払い、その
拳で見る間に彼らを圧倒していった。異形の男女たちは倒れるやいなや
ごぼごぼと泡になって消滅した。
-------------------------
バイバイさるさんが出たので携帯から書き込んだのですが、
やっぱり色々うまく行きませんね。

76:名無しより愛をこめて
08/01/31 22:08:41 BQ4wjJRu0
maledict氏乙。気を遣って半分だけの投下にしたのはわかるけど
話の半分とわかっていたら感想のレスもし辛いし、続きも気になるから
やはり一挙に投下するのがいいと思うよ
過去にはBeef氏やちゃんぷる氏みたいなとんでもない量のもあったんだしさ

それと、SSの投下が中途半端な状態で自作にいろいろ注釈を付けたり
その後の展開を明かしたりするのは、かなり興醒めになるからよした方がいいと思う

77:名無しより愛をこめて
08/01/31 22:19:54 zSwE7mKe0
maledictさん
蜂ホヤオンナに抵抗してシェルターにこもる話と双璧のGJでした。個人的には
このスレの趣旨とは違うのだけど、女性改造人間の悲しさを背負ったライダー2号で
通して欲しい、女性版ライダー2号を、原作を下敷きにしながら最後までシミュレートしきって欲しい。
予告で書いてる展開のほうがむしろありきたりと思うのです。

78:maledict ◆sOlCVh8kZw
08/01/31 22:25:14 +6l18MZF0
>>76
失礼しました。注釈は余分でしたね。
「その後の展開」というのは単なる『仮面ライダー』第8話のあらすじで、
本編に忠実にやりますという予告以上のものではないつもりでした。

続きですが、現在出先で、後三十分くらいしか使えず、
この時間から投下すると半端になる可能性があるので、
また深夜の1時くらいから再開します。自宅からでしたら
万一連投規制が来ても、規制が外れるまで待つことができますので。

79:maledict ◆sOlCVh8kZw
08/01/31 22:31:03 +6l18MZF0
>>77
ありがとうございます。シェルターに籠もる話はヘタレ男の話は
自分でも大好きな話なのでお褒め頂いてうれしく思います。

この後の展開、自分でも辛いものは感じるのですが、もう書いちゃっていることは別にしても、
「正義のヒロインが脳改造されてしまう」というシチュエーションに
激しく萌えてしまうのでこの設定にしたという事情があります。なので
脳改造シーンはどうしても外せないのです。

自由な世界ですから、これを完結させたあと、パラレルのような形で
実現させることもできるかもしれないとは思っています。

…で、すみませんが一時までお待ち下さい。

80:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
08/01/31 22:37:24 BWdKFjVz0
maledict様お疲れ様でした。
脳改造直前に脱出し、「力の一号、技の二号」となるというのは面白かったです。
力の入った長編、さぞや大変だったでしょう。
楽しませていただきました。

ただ、私も先のネタばれはよした方がいいと思いました。
これからどうなるのかなぁと思っていただけになおさらです。
ちょっとだけ残念だなぁとおもいました。

あと、このスレは「おにゃのこが改造されるシーン」ですから、
厳密に考えれば何も悪に染まる必要はないんですよね。
長編で何話にも渡る連続物というのなら問題かもしれませんが、
正義の女性仮面ライダーの誕生を描くのだって問題ないのではないでしょうか。
ただ、個人的には「ショッカー代理人」のHNの通り、
悪に染まるギャップが好きな私は書くことはないでしょう。

81:名無しより愛をこめて
08/01/31 23:27:50 Fh0XulkA0
maledictさんにしつもーん
ミツコさんは>>59で「黄色と黒の毒々しい色に彩られた人工頭蓋」をはめられようとして未遂で
>>63では頭部の変化が起こったにもかかわらず髪の毛と触角のことしか書いてないということは
仮面ライダー2号の蜂女には、ショッカー蜂女の頭のハゲみたいな部分は無いってこと?

82:名無しより愛をこめて
08/02/01 00:02:41 sk803QM60
maledictさんGJ! まさか蜂女ライダーとはね
よくありそうだけど、実際はあまり見ない展開だね
エロパロ板で大阪ドームさんも似た設定で書いてたけど、仕上がりはかなり違うのが面白いね
でも決め技がキックはいただけないな。キューティーハニーみたいな技で良かったのに
とりあえず後編に期待wktk

>>74
> 迫害された少女とか、本郷の恋人とか、フェンシング選手とか、ナチの女看守とか、
> 滝の恋人とか
このスレでは少な目だけど、ショッカー蜂女のSSって多いよね。それぞれみな味があって
面白い。目ぼしいものはすでに過去ログで取り上げられているかな?
ところで迫害された少女ってのは、平山プロデューサーの「蜂女物語」だね
本郷の恋人ってのはもちろん、BeeFさんのこれ(↓)のことだよね
URLリンク(artofspirit.hp.infoseek.co.jp)
フェンシング選手ってのはこれ(↓)のこと?
URLリンク(meltgirl.free100.tv)
ナチの女看守の話はまだ誰も書いてないはずだよね
滝の恋人、ってのはたぶんこれ(↓)だよね?
URLリンク(blog.livedoor.jp)
いずれアップされるだろう、ショッカー代理人さんの蜂女にも期待しとこっと

ところで、この(↓)蜂女の話はガイシュツ?
URLリンク(www.geocities.jp)
URLリンク(www.geocities.jp)

83:maledict ◆sOlCVh8kZw
08/02/01 00:19:34 l7NKsO2P0
予定より早く終わったのと急いで動いたのと出だいぶ早く帰れました。

>>80ショッカー代理人様
ショッカー代理人様に楽しんで頂けたというのは望外の喜びです
書き手としてのマナーについてもお言葉ありがとうございます。
今後に向けた反省とさせて頂きます(他の方々の意見もです)

>>81様その通りです。あの部分についてそういう解釈をしたということです。

>>82様全部全部正解です。滝の恋人のはスレでの紹介を見ただけで
実はまだ読んでいないのですが。で、下の二つ知りませんでした。
後ほどゆっくり読んでみます。

で、これから投下していきます。途切れたら連投規制(ばいばいさるさん)だと
思っていて下さい。

84:私説・蜂女伝(後編)1/17
08/02/01 00:22:35 l7NKsO2P0
 わたしたちの戦いの上での連係プレーには日々磨きがかかっていった
が、二人の間の個人的な感情の行き違いや衝突はむしろ増えていた。
そんなある日の戦いの後、もはや惰性に近い「エネルギー補給」を
終えた後、猛がとても言いにくそうにしながら、こう切り出した。
「なあミツコ、オレたちはたしかにダブルライダーで、ショッカーと
闘う戦友だが…その、恋人同士ってわけじゃあ…ない。そうだろ?
今のこれだって、お前の命をつなぐために必要な処置というだけだ…」
 そう言うと猛はカバンをごそごそと探り始めた
「実は少し前からこういうものを試作していたんだ…いつまでもオレ
なんかとこんなことをしないと生きていけないというのは、決して
お前のためにも幸福なことじゃないと思うんだ。これがあればお前は
自分一人で生きていけるはずだ。コンセントにつなげば、電気代は
食うし時間もかかるが、ちゃんとチャージできるようになっている」
 そう言うと猛は、カバンの中から、大人のオモチャ屋で売っている
電動コケシにコードやらプラグやらが装着されたような装置を取り出し、
わたしに渡そうとしてきた。それを見たわたしは頭に血が上り、
あのときの倍以上の勢いで猛に平手打ちを食わせた。部屋の壁に
めり込んだ猛に向かい、わたしは目に涙を浮かべ、立ち上がって言った、
「ばかぁ!この鈍感男!無神経男!ベンジョコオロギ男!」
そう言い放つとわたしは全裸のまま仮面ライダー2号に変身して部屋を
飛び出した。そして誰の目にもとまらない速さでホテルを出ると、バイクに
またがり、やはり誰の目にもとまらない速さで家に帰った。そうして
ベッドに突っ伏してわんわんと泣いた。

85:私説・蜂女伝(後編)2/17
08/02/01 00:25:36 l7NKsO2P0
 ひとしきり泣いて天井を見ながら、服をホテルに置いてきてしまった
ことに気づいた。お洒落も全然していないなあとぼんやり思うと、久々に
ショッピングにでも出かけて、手当たり次第にものを買いあさって、
憂さ晴らしをしてやろう、というアイデアが浮かんだ。最近ショッカーも
比較的おとなしいし、たまには戦士の休日というのも許してくれるよね。神様。
 思い立ったわたしは早速、高校以来の悪友で、同じく東京に出てきている
皆子に電話をかけ、明日一緒に買い物に行こうと約束をした。

 皆子とのショッピングの一日は本当に楽しかった。最近余り気味だった
仕送りを大量につぎ込んであれこれと服を買い、喫茶店でケーキを
沢山注文して、皆子相手に、無粋で無神経で鈍感な「恋人」の悪口を
さんざんぶちまけた。皆子はけらけらと笑い、うんうんと相づちを
打ってくれた。本当に変わらない、いい友達だ。 
 夕方、荷物を沢山抱えながら人気のない路地を二人で歩いていると、
ショッカーの戦闘員が現れてわたしたちを取り囲んだ。わたしは皆子を
かばって楯になり、戦闘員を自分に引きつけようと挑発した。
「ふん、いまごろご登場ってわけ?ちょうどいいわ。お昼にケーキを
食べ過ぎちゃったからね」
 そう言って振り返り、皆子に声をかけた。
「皆子!わたしは大丈夫だからあなたは逃げ…う…」
 皆子はわたしの背中に何か針を刺していた。その顔には戦闘員の証で
あるサイケデリックな隈取りが浮かび上がっている。
「新開発の改造人間用の麻酔剤だって。よく効くようね」
「皆子…あな…た…いつ…どうして…」

86:私説・蜂女伝(後編)3/17
08/02/01 00:28:37 l7NKsO2P0
「あなたの行方を見失ったショッカーは、あなたの交友関係をチェックし、
めぼしい人物をマークしていたの。わたしもその一人だったのね。
昨日あなたからの電話があってすぐ、拉致されて戦闘員に改造されたの。
人気のない場所に来るまで、こんなに時間がかかってしまったわ」
「…皆子…ごめ…ん…わたしの…せいで…」
「何言ってるの?わたしは感謝してるわ。あなたのおかげで偉大な組織の
一員になれたんですもの」
「…ああ…あなたは…もう…脳改造…されて…しまっているのね…」
「そうよ。わたしはもう不完全な脳を改造してもらった。そしてあなたが
可哀想な未完成品となって苦しんでいることを知らされた。大事な友達を
助けてあげられて、うれしいわ」
 …違う…違う…だめだ。もう皆子は人間の言葉が通じない存在に
変えられてしまった。そして、このままでは、わたしも…。絶望感に
うちひしがれながら、わたしはその場に倒れた。薄れゆく意識の中、
車の音が近づいてきたのが分かった。

 目を覚ましたとき、わたしは全裸の人間体であのときとそっくりの
手術台に拘束されていた。股間の充電口には猛のものより一回りか二回り
太いプラグが挿入されている。力がどんどん抜けていくから、「充電」
ではなく「放電」の最中のようだ。
「放電終了。これより蒼井蜜子の改造手術を再開する」
 …再開?そうか。わたしや猛は脳改造の直前に脱走した。やつらから
すれば、これは中断していた処理の「再開」なのだ。あのとき中断して
いた時間が今また流れ出すのだ。

87:私説・蜂女伝(後編)4/17
08/02/01 00:32:15 l7NKsO2P0
 あのときとまったく同じように科学者が小型ノコギリを手にして、
それにスイッチを入れる。いやだ!このままではわたしは脳改造されて
しまう。心まで怪人にされてしまう。わたしは怯え、そして後悔した。
 ―ああ神様。わたしが間違っていました。ルリ子さんへの下らない
やきもちで、猛への見当違いな八つ当たりで、世界平和のために戦う戦士
としての使命を見失っていました。
 ―猛はルリ子さんが好き。そんなこと、最初から分かっていたこと。
それに、あの充電プラグだって…そりゃ、大人のオモチャはないと
思うけど…でも、わたしを思ってしてくれたこと。猛だっていつ命を
落とすかわからない。そうなったときにわたしが一人で生きていける
ように。そう考えて作ってくれたはずだ。充電は充電。セックスは
セックス。充電にかこつけて猛の肉体を独占しようとしたわたしが
ずるかっただけだ。そして皆子。わたしが気を抜いて買い物なんかに
皆子を誘ったせいで、皆子はショッカーにさらわれて戦闘員に改造されて
しまった。わたしのせいだ。全部わたしのわがままのせいだ。
 ぎゅっと目をつぶってわたしは祈った。
 ―ああ、神様お願いします。もう一度奇跡を。神様!いえ、仮面
ライダー!わたしを助けに来て!あのときと同じように!わたしは
反省しています。助かったら、今度こそ平和のためだけに戦います!
だからお願い!猛!助けに来て!タケシ!

 祈りも空しく、無情なノコギリがわたしの頭蓋骨に当てられた。麻酔の
せいか痛みはない。強化皮膚のおかげで、さほどの出血もない。
絶望がわたしの心を固くした。淡々と、まるで人ごとのように、わたしは
天井のライトの鏡面に映った、自分の頭蓋が切り取られていく様子を見ていた。

88:私説・蜂女伝(後編)5/17
08/02/01 00:35:16 l7NKsO2P0
 頭蓋が取り外され、わたしのピンク色の脳味噌がむき出しになったとき、
遅ればせの「奇跡」は起きた。あのときよりも何テンポか遅かったけれど、
ちゃんとあの人は来てくれたのだ!わたしの目に涙がこみ上げてきた。
よかった!今ならまだ十分に間に合う。この科学者たちを倒し、
取り外された頭蓋をもう一度つけてくれればそれでいい。デタラメな
話だけど、改造人間の再生力と生命力によって、それでちゃんともとに
戻るはずだ。
「タケシ!信じてたわ!助けて!」
 わたしの声は弾んでいた。
 だがそのとき、手術台の真横に、天井から透明な壁が降りてきて、
仮面ライダーの行く手を塞いだ。
「ふはははは、仮面ライダー1号、待っていたぞ。その防弾樹脂はお前の
力をもってしても簡単に破ることはできない。この狭い部屋では
ライダーキックも放てまい。お前の仲間がわがショッカーの一員に回帰
する様をそこでとくと眺めるがよい。その女の脳改造が終わったら、
次はお前の番だ。わははははは」
 首領の声が響いた。いつの間にか科学者はあの禍々しい改造頭蓋を
培養液から取り出し、わたしに迫っていた。
「いやだ!脳改造なんていやだ!」
「ミツコ!ミツコ!ミツコぉぉ!」
仮面ライダーはあのときの扉のように、透明な壁に何発もライダー
パンチを放った。だが柔構造の樹脂でできた壁は、ぐにゃりと変形した
かと思うと、何事もなかったかのように元通りになった。

89:私説・蜂女伝(後編)6/17
08/02/01 00:38:18 l7NKsO2P0
 黄色と黒の改造頭蓋がとうとうわたしに装着された。強化細胞の
再生力が働き、改造頭蓋はわたしの頭蓋骨に癒合していった。わたしの
心を絶望が覆った。もうおしまいだ。わたしの脳にはショッカーの機械が
埋め込まれてしまった。この機械が動き出せば、わたしは完全なショッカー
怪人になってしまう。わたしは目に涙を溜めて、透明な壁にパンチを
放ち続けている猛を見た。
「タケシ…ごめん…わたし…わたし…」
 天井から無情な声が響いた。
「蜂女、再起動開始!」
 股間に挿入されたままのプラグから、再び電流の注入が始まり、あのとき
にはほとんど感じなかった性的快感がわたしの全身を貫いた。わたしの
肉体は急激に変身を始め、頭蓋骨の黒と黄色の細胞も活性化を開始した。
強化細胞は鼻の方にまで拡がり、触角が太く、長く成長した。
そして全身を駆けめぐる電流は、頭蓋内の脳改造装置を起動させた。
「ぁぁぁぁぁああああああああ、いやあぁぁぁぁぁ!!タケシ!タケシ!
助けて!たすけて!」
「ミツコ!ミツコ!やめろ!ショッカー!やめろぉぉぉぉ!」

 電流と共に、まず、わたしの心にあれほど熱くたぎっていたはずの
「正義」への思いが急速に色あせ始めた。それがとても大事な何かである
こと、自分はそれを守らなければいけないこと。そういう知識は残って
いるのに、かつて自分がどんな気持ちでそれを守っていたのか、急速に
思い出せなくなってくのだった。

90:私説・蜂女伝(後編)7/17
08/02/01 00:41:20 l7NKsO2P0
 だが本当に深刻な変化はそれに続いて生じた。頭蓋の機械から、
わたしの心の中にどす黒い衝動が注ぎ込まれ始めたのだ。…いや、
それは違う、とすぐに気づいた。わたしの心を満たし、固く根付こうと
している、肉欲、嫉妬、独占欲、破壊衝動、憎悪、殺意、そういった
暗く歪んだ思いはどれも、わたしの心の奥底から浮かび上がってきたもの
だった。ちょっとしたタガが外されただけで、わたしの心はいとも簡単に
歪んだ邪悪なものに変わりかけているのだ。それこそが本当の自分だった。
わたしは、そう認めることをつきつけられていた。
「…やだ…こんなわたしはいや!こんなわたしいやだ…助けて、タケ…」
わたしは猛にすがろうとした。たとえ身体は透明な壁に隔てられていても、
猛の勇気と優しさが、闇に蝕まれていく自分の心を支え、救ってくれる
のではないか。そんな希望にすがろうと、わたしは猛の方に顔を向けた。
 …だがそのときわたしは思い出してしまった。あの華奢な少女を、
わたしを改造した女科学者を、何のためらいもなく撲殺した仮面ライダー
1号の姿を。手術台に横たわるわたしに拳を振り下ろそうとしていた
あのピンク色の目を。…こんなどす黒い存在になってしまったわたしを、
あの人はもう救ってはくれない―そう気づいた。
 今のわたしは、怯え、ためらい、抗いながらも、すでに残忍な破壊衝動、
後ろ暗い憎悪と殺戮の甘美な誘惑に惹かれ始めている。この黒いものが
わたしの心から消えることは多分もう永久にない。この先、この闇に
もっと深く飲み込まれることはあっても、引き返すことは永久にできない
―なぜならその黒いものこそ本当のわたしだからだ。

91:私説・蜂女伝(後編)8/17
08/02/01 00:44:46 l7NKsO2P0
 わたしは樹脂にひびを入れ始めた猛から顔を背け、反対側の壁を見た。
闇に光るあの目がたまらなく恐ろしく感じられ、直視できなかった。
―あの人はもうわたしを救ってはくれない―わたしはあの人から逃げ始めた。
 ―どうしたらいい?わたしはどこへ行けばいいの?どうしたらわたしは
救われるの?―
 改造されて以来、最大と思える苦しみと不安がわたしを締め付けた。
心が異形へと変じていく、その恐怖はあの残忍なメスよりも深くわたしの
胸をえぐった。
 ―どうしよう。わたし、わたし………………………

<<ショッカーの元へ来るのだ>>

 突然、神々しい声が頭の中に響いた。わたしが顔を向けた反対側の壁に
高々と掲げられたショッカーエンブレムが、厳かな光を放っていた。

<<ショッカーはお前を救うことができる。改造人間の支配する
理想社会の中にこそお前の居場所はある。ショッカーはありのままの
お前を肯定し、お前に真の存在意義を与えることができる。さあ、
蒼井蜜子、いや蜂女よ、ショッカーの元へ来るのだ。来るのだ…>>

 その言葉は、長いトンネルの出口にある神々しい光だった。わたしには
何かが分かりそうな気がしていた。わたしはそれを捕まえようと夢中で
その光に向けて走った。改造されてからずっとずっと感じていた苦しみ。
今まさに頂点に達した異形としての苦しみ。その苦しみの克服、そして
解放がそこにはある。そんな確かな予感を胸に、わたしは光へと続く細い
道を夢中で走った。もう後ろは振り返らなかった。

92:私説・蜂女伝(後編)9/17
08/02/01 00:47:48 l7NKsO2P0
 そしてその時がやってきた。わたしは光に追いつき、光に包まれ、
すべてを悟った。胸を締め付けていた苦しみがすうっと消えていった。
 ―ようやくわかった。わたしはやはり「未完成品」だったのだ。
肉体が改造された以上、精神も改造されねばならないのは当然のこと
なのに、その大事な部分が欠けていた。だからあんなに苦しかった。
それだけのことなんだ。でもそれももう終わった。わたしは完成された。
正常な改造人間としてようやくこの世に生まれたのだ!歓喜が心を満たす。
 
 薄暗い部屋の中、わたしの複眼が輝いた。わたしはゆっくり上体を起こした。
「蒼井蜜子よ、お前は何者か。言ってみろ」
 ショッカー首領の穏やかな声がわたしに命令を下した。
「わたしは、ショッカーの改造人間、蜂女。首領、わたしはあなたに
永久の忠誠を誓います」
 わたしを改造し、そして救ってくれた偉大なお方。このお方のためなら
命など惜しくない。素直にそう思えた。
 ずっと鳴り響いていたがつんがつんという音にわたしは気づき、横を見た。
仮面ライダーのパンチがあちこちにひびを入れ、強化樹脂製の壁は
まさに砕かれる寸前だった。
 ―仮面ライダー、本郷猛。今のわたしには、その存在の不自然さ、
グロテスクさがはっきりとわかった。改造人間なのに、脳だけがまったくの
未改造。そして、改造人間でありながら、人間を守るために改造人間の
殺戮を繰り返す狂った戦士。気持ち悪い!そんな存在、あってはならない!
昨日までの自分が、この不完全な存在と一緒に、そんなおぞましい行いを
喜んで行っていたことに、わたしは心底寒気を感じた。

93:私説・蜂女伝(後編)10/17
08/02/01 01:21:03 l7NKsO2P0
 ―人間に生存価値がないとは思わない。だが、ただの人間を守る
ために、優秀な素体に高度の技術をつぎ込んで作り出された改造人間を
殺戮するというのは、明らかに何かをはき違えている。そう、愛犬家が
犬を愛するあまり人間を殺して回るような、それどころか、心まで
犬に成り下がってしまうような、そんないびつな存在が本郷猛であり、
さっきまでのわたしだったのだ。未改造の混乱した脳には、そんな
簡単なことがわからないのだ。
「ミツコ!ミツコ!目を覚ましてくれ!ショッカーなどに魂を売り
渡さないでくれ!」
 遂に壁を突き破り、涙声で訴えかけるライダーの姿は滑稽だった。
混濁した脳を抱えているのはそっちなのに。いびつな未完成品の仲間が
いなくなって寂しがっているだけなのだ。早く何とかしてやろう。この人も
脳改造を受けさせて、苦しみから救ってあげよう。そんな思いが湧いた。
「タケシ!さあ、次はあなたの番よ。だだをこねないで、ここに横になりなさい」
わたしは猛に手をさしのべた。多分わたしの脳改造を見せつけ、
絶望感を与える、という目的で、あえて待機させられていた戦闘員たちが、
今やライダーを取り囲んでいた。
「ミツコ!ライダー2号!目を覚ますんだ!頼む!」
いきなり場違いな名で呼ばれたわたしは、思わず吹き出した。
「ふ、そんな下らない名前、たった今返上するわ。わたしは改造人間・
蜂女。そしてもうすぐお前もバッタ男として完成する!」

94:私説・蜂女伝(後編)11/17
08/02/01 01:22:34 l7NKsO2P0
 今の猛ならば簡単に拘束できるだろうとわたしは踏んでいた。他の
怪人ならばいざしらず、この男はわたしを相手にためらいなく必殺技を
繰り出すことはできない。そんな冷徹な計算がわたしにはあった。
実のところ、わたしの麻酔をあのタイミングで解き、脳改造したこと自体、
すでに基地におびき寄せられていたライダーに最大の戦意喪失効果を
与えるための、巧妙な作戦だったのだ。今のわたしにはよくわかった。
 だがライダーの方にもその自覚はあったらしい。
「…脳改造がどういうものであるかオレは知っている。オレは君と
戦わねばならない。…だが、まだ、君と戦う決心がつかない。きっと
オレの拳は鈍るだろう。だから…」
 そう言って背を向け、戦闘員をなぎ払いながら基地の外に走り出した
のだった。
「追え!捕まえろ!捕まえて、本郷猛の改造を完了させるのだ!」
わたしは戦闘員に命じ、自らもライダーを追った。
「蜂女よ、表にお前専用の高性能オートバイを用意してある。サイクロンに
匹敵する馬力を誇る機体だ。存分に使うがよい」
 首領のお言葉に従い、わたしはサイクロンで逃走を始めたライダーを
追った。互いにバイクに乗ったまま、わたしたちは並の改造人間には
まず不可能な闘いを繰り広げた。だが結局わたしは破れ、わたしと大破
したバイクを残し、ライダーは去っていった。

95:私説・蜂女伝(後編)12/17
08/02/01 01:24:06 l7NKsO2P0
 それからわたしは、首領がわたしの帰還を信じ、保留しておいてくれた
毒ガス作戦の指揮に当たった。仮面ライダーに対しては近々大規模な作戦
―バッタ男第2号の製造らしい―が始動するので、対ライダー用の
積極的な行動は取らなくてよい、という通達だった。わたしはもどかしさを
心の一部で感じながらも、首領の命令を遂行する喜びに突き動かされ、
着々と作戦を進めていった。
 本郷と再会したのは、城南大で行った、科学者の拉致作戦でのことだった。
本郷の母校であるから発覚するリスクはもともと高かったのだ。
 本郷が現れたのは、わたしが目当ての科学者以外の、研究室にいた助手や
学生を皆殺しにした直後だった。殺人の後の「充電」に異様に興奮することに
気づいたわたしは、最近余計な殺人をしてしまう癖がついていたのだった。
眠らせた教授を抱え、殺人の余韻を味わっているわたしに、本郷が低い声で言った。
「…ミツコ、お前、何をした?言ってみろ!何をした!?」
 本郷の震えた声は、どうやら怒りを押し殺しているらしいと気づいた。だが、
わたしはそれが何に向けられているのかよくわからず、本郷の妙な質問に一瞬
きょとんとした。それから、たしかに今回も快楽に走り過ぎたなと思い至った。
「そうだった。ここは城南大。中には優秀な人材もいたかもしれないわ。当面
必要がないからって、見境なく殺してしまうのはもったいなかったかも…」
「そんな答えが聞きたいんじゃない!自分がしたことちゃんと直視して
いるのか?これを見て、本当に何も感じなくなってしまったのか!?」
 その言葉を聞いたとき、世界の外側から飛び込んできたような未知の
感情がわたしの心をよぎり、心を揺すぶった。そして、自分は何か大事な
ことを忘れていなかっただろうか。何か大きな思い違いをしていなかったか。
そんな不安がかすかに芽生え始めた。

96:私説・蜂女伝(後編)13/17
08/02/01 01:25:39 l7NKsO2P0
 だがそのときだ。頭蓋の中の機械部品がキインとパルスを発した。
わたしの頭は一瞬真っ白になり、半ば不随意的な哄笑がわたしの腹から
あふれ出た。
「あっはははははははははははははは」
 笑い終えたとき、わたしの心は完全に平静を取り戻していた。
「たわごとを!本郷猛。博士は頂いていく。さらばだ!」
 追いすがる本郷とわたしはもみ合い、わたしは教授を奪われてしまった。
わたしはこの場を退散することにした。密かに教授に仕掛けておいた
催眠装置が、ちゃんと教授をアジトまで運んでくれるはずだったからだ。
 本郷は追わなかった。代わりに、遠ざかるわたしの背中に向け、こう叫んだ。
「もうお前はミツコじゃない!ましてや仮面ライダー2号でもない!
オレは決意した。次に合うときがお前の最後だ!覚悟しておけ、蜂女!」
 その言葉は、かつてのパートナーへの別れの言葉だった。わたしと
別れて…そう、わたしと別れて、本郷はあの女、緑川ルリ子のもとへ
行くのだ!突然そんな連想が働いた。同時に、ルリ子を抱く本郷の姿が
頭に浮かんだ。どす黒い嫉妬がわたしの心を焦がしていった。

 あの再会の日から、わたしの心は乱れ、バランスを失っていた。
本郷の影がわたしを迷わせているのだ、と思えた。本郷と、そしてあの
憎らしい緑川ルリ子をどうにかしなければ、このもやもやは消えないだろう
と思った。わたしは毒ガス計画は着々と進めるかたわら、計画進行中の
偶然を装う形で、本郷とルリ子に対する計画を密かに進めた。ルリ子の心に
深い傷を負わせ、同時に本郷の改造手術を再開する、そんな計画だった。

97:私説・蜂女伝(後編)14/17
08/02/01 01:27:11 l7NKsO2P0
 わたしの計画はまずは順調に進んだ。わたしは、ルリ子に向けて微弱な
指向性超音波による催眠誘導を行い、遅かれ早かれ影村めがね店で
サングラスを購入したくなるように仕組んだ。やがて、狙い通りおびき
出され、囚われたルリ子を追って、愛しくて憎い男が現れた。わたしは
戦闘員にルリ子を拘束させ、ナイフを突きつけさせた。ガスの人体実験
を見た本郷はわたしを問いつめた。
「何でこんなひどいことをするんだ!」
「毒ガスがどうしても要るのだ。世界征服のために」
それは首領の至上命令。疑うことなど許されない。本郷は吐き捨てるように言った。
「そうか、それでお前が工場長ってわけか」
ライダー2号も堕ちるところまで堕ちたものだ、と言いたげだった。
わたしは耳を貸さず、本郷に新型麻酔の針を向けた。
「本郷猛、この毒針の注射を受けよ。この娘の命と引き替えにするのだ。
だがお前を殺すわけではない。麻痺させてお前を完全な改造人間に
するのが楽しみなのだ」
 完全な改造人間!もうじきわたしたちは再び同志になる。わたしたちは
ショッカーが樹立する、本当の意味での「世界平和」を目指す戦士として
また共に戦う!―そんな高揚する気持ちは、しかしわたし自身が立てた
作戦そのものによって、ぐじゃぐじゃにかき乱された。
「よし。刺せ!…その代わりにその人を!」
 降伏した本郷に、わたしはいとも簡単に麻酔針を刺すことができた。
…だが、わたしは何がしたかったんだろう。ルリ子のために脳改造すら
あえて受けようと言ってのける、こんな本郷が見たかったのだろうか?
…わからない。…もういい!さっさと殺してもらう!改造人間として完成した
この人に、あの女を真っ先に殺してもらおう。それですべて終わる。そう思った。

98:私説・蜂女伝(後編)15/17
08/02/01 01:28:50 l7NKsO2P0
 …結局、本郷猛再改造計画は失敗した。あの男の精神力と、「特訓」
と称する地道な自己改造の効果を、わたしは甘く見すぎていた。あの男の
肉体は日々進歩していたのだ。わたしと共に戦っていた頃よりも、さらに。
それでもルリ子に一矢報いてやることだけはできた。完全な覚醒状態で、
記憶もはっきり残る状態で、ルリ子を催眠誘導し、本郷に猛毒をもらせる
ことに成功したのだ。改造人間の本郷があんな毒で死ぬわけはない。
だがそれを知らないルリ子が、自分が犯してしまった罪により、心に
深い傷を負えばそれでいい。―わたしのどす黒い嫉妬心は、
いくばくかの癒しを得ることができた。
 そして決戦。一切の迷いを断ち切った本郷は、並みいる戦闘員たちを
一蹴したあと、保護色を使って接近していたわたしを難なく補足し、
わたし自身の剣でわたしの羽根を切り落とした。それからわたしたちは
剣での戦いを交えた。蜂女としての特殊能力の筈の剣技を、この特訓馬鹿は
完全に自分のものにしていた。わたしはすぐに劣勢に追いこまれた。だが、
本郷は剣でとどめをさす気はないようだった。剣を捨てた本郷は、
最後の言葉をわたしに投げた。
「蜂女、お前みたいに人間の自由を奪い、平和を乱すやつは断じて許さん」
 本郷の声は震え、舌は少しもつれていた。「仮面」の下で涙を流して
いるのだとわかった―そう。手術台の上のわたしに、拳を振り下ろそうと
したあのときのように。
 何かがわたしの中で訴えた。―この、猛の決意を無にしてはだめ!
猛の迷いを断ち切ってやらないと!―
 その声に従い、わたしはことさらに猛を挑発する文句を言い放った。
「何をこしゃくな、来るか!」

99:私説・蜂女伝(後編)16/17
08/02/01 01:30:23 l7NKsO2P0
そしてわたしは挑発のポーズのまま、ライダーキックが命中するのを
静かに待った。一瞬後、強烈な衝撃で全身の機械と組織がずたずたに
なったわたしは、大きな叫びを上げながらもんどり打って崖下へ転落して
いった。そして体内の溶解液が急速にわたしの身体を溶かし始めた。

 わたしの叫びは苦痛の叫びでも恐怖の叫びでもなかった。それは、喜びの
歓声だった。キックにより 頭蓋の機械が停止したせいか、わたしはようやく、
自分のもっとも奥底にあった願望に気がついたのだった。
 ―そうだったのか。わたしは、ずっとずっと、このときを待って
いたんだ。あの人が、こうしてわたしを殺してくれる日を!―。
 その日をわたしはずっと待ち望んでいた。脳改造されて、心の中まで
完全な怪物になってしまったわたしを、こうして無に帰してくれることを、
心の一番底にいたわたしはずっと待っていた。今やそれがはっきりと
わかった。脳改造が終わり、手術台を降りてあの人と戦おうとしたとき、
バイクの上で死闘を繰り広げたとき、そして城南大で、あの人が来る
ことを半ば予想しながら残忍な殺戮を繰り広げたとき。わたしはずっと
それを待っていた。脳改造されたわたしはとても狡猾で、そしてあのひと
はとても優しい人だったから、わたしの密かな願いは、こんなにも
叶うのが遅くなってしまった。それだけなのだ。

100:私説・蜂女伝(後編)17/17
08/02/01 01:31:56 l7NKsO2P0
 …いや、実のところわたしは、改造手術を受けてしまったときから、
早く死んでしまいたいと密かに願っていたのかもしれない。あのまま、
あの人に頭蓋をたたきつぶされてしまっていればよかったと、密かに
ずっと思い続けていたのかも。あの人はとても強くて、辛い運命を
引き受けて戦っていた。わたしは結局駄目だった。そんな運命を引き受けて
生き続ける勇気を最後まで本当には持てなかった。弱虫のわたしは、
心の奥で死にたい死にたいとずっと思っていたんだ。自分で死ぬ勇気も
ないまま。だからありがとう、猛。
 ―猛、人間をいっぱい殺したわたしも、同族をいっぱい殺した
あなたも、決して天国に行くことはないね。ルリ子はきっと天国に行く
から、地獄では邪魔者はいないね。先に行って待っているよ。わたしの
分までしっかり戦ってね。さよなら。

 そしてわたしは泡となり、液体となって、地面に吸い込まれていった。
<了>

101:maledict ◆sOlCVh8kZw
08/02/01 01:40:37 l7NKsO2P0
…以上です。改めてお粗末さまでした。書く方にしても一挙に読んで頂ける方が
うれしいので、連続投下を原則にします。
にしても、以前投下間隔を空けたら沢山書けたことがあったので、
三分ずつ空けていたのですが、十発目で普通にバイバイさるさんが出ました。
損した気分です(再開後は一分半にしました。設定の詳細をご存じの方いたら
教えて下さい)。

細かい注釈はしませんが、元ネタについて一点だけ。
>>84の本郷のセリフは無印プリキュア8話の渚のセリフがもとです(w

102:maledict ◆sOlCVh8kZw
08/02/01 02:33:20 l7NKsO2P0
>>54よく考えたらライダースーツのチャックって背中じゃなくて前にあった気がしました。

あと、最後の本郷のセリフへのくだりは、あの場面の藤岡氏の滑舌がちょっと悪い、
という部分に妄想を込めたということです。分かりにくかったかもしれないので補足。

103:名無しより愛をこめて
08/02/01 16:29:41 cJXTdXTd0
>>101
エロシーンを盛り込むんだったら、アダルトで徹底的にやって欲しかった。
中途半端で萎える。
前に大阪ドーム氏が書いていた物は、文章的には劣っていても十分エロかった。
それと自己満足のネタバレは興醒するから止めた方がいい。
でも作品の発想は面白い。GJ!
PS個人的介錯だが、蜂女を題材とするからはエロの要素は不可欠だと思う。






104:名無しより愛をこめて
08/02/01 18:02:23 AoK/OII1O
>>103氏の意見はキツいがもっともだと思う
たぶんmaledict氏はSSが長くなり過ぎてスレに迷惑を掛けることを心配したんだと思うけど
それで中途半端になるんだったら、いっそBeeF氏がしたように、自分のサイトにSSをアップして
このスレにはリンクを貼ってもらう方が、思う存分に書けていいのでは?と思う

105:名無しより愛をこめて
08/02/01 19:06:44 kmW2qDb50
>>101
maledictさん、GJでした。夜遅くまでかかって大作のUP、本当に乙でした。
ただ自分も皆さんが言われるように、後編は盛り下がってしまったかな、と思いました
前編と後編に分けてしまったのは、やはり失敗だったと思います
前編は「え? ここでライダーが助けにくるの? 何? 何? ライダー2号になっちゃうの!?」
という新鮮な驚きがあったのですが、後編は展開が見えていて、読み手の期待を良い意味で
裏切る要素が皆無だったのが盛り下がった原因ではないかと思うからです

また三角関係にしても、蜜子さんの本郷に対する感情が愛情ではなく依存関係であり
またルリ子さんの本郷に対する感情も、情事を目撃しておきながら無言で走り去るだけ
というのだから、単に気になる相手といった感じのもので熱愛にはほど遠く、三角関係が
十分に機能していたとは言えなかったように思います
せめてルリ子さんの口から、本郷を心から思い遣るようなセリフが聞けていれば良かったのですが

あとラストの展開が、BeeFさんの「真・蜂女物語」とかぶっていたのもまずかったと思います
BeeFさんの場合は、ライダーと蜂女が愛し合う仲でありながら敵どうしになり
テレビ版そのままのセリフでありながら、その裏側に両者とも正反対の感情が込められていたという
新鮮な驚きがありました。最初にやった者勝ちという面も大きかったと思います
しかしMaledictさんの場合はライダーも洗脳された蜂女も、言葉通りの感情で行動しており
あえてテレビ版の展開とダブらせる必然性は薄かったように思います
ライダーとの決裂、死闘、そして最後のライダーキックまでを超特急で描写し、死ぬ間際の
蜂女の独白(これがMaledictさんのSSの最大の売りだと思います)にもっと文章を割いた方が
盛り上がったのではないでしょうか

106:名無しより愛をこめて
08/02/01 19:06:56 kmW2qDb50
あと、これは自分の個人的な見解ですが、MaledictさんのSSにおける本郷と蜂女の関係は
男女の仲ではなく「共に戦う戦友」なので、蜂女が脳改造されてしまった段階で本郷が抱く感情は
「かつての戦友であるお前に、これ以上罪を犯させるわけにはいかない。必ずこの俺の手で
葬ってやる。それが俺の、お前に対する友情の証だ!」といった男らしいサバサバしたものに
なるはずだと思うのです。BeeFさんの作品のような「恋人同士」だと違うと思いますが
ですからMaledictさんのSS中で本郷が見せていた「今、君と戦うと俺の拳は鈍るだろう」という
女々しい態度には、ちょっと違和感を感じてしまいました。まあ、これは自分の感じ方ですが

とりあえず、次回作を期待して少し苦言を呈させていただきました。できればこのSS,大幅に
加筆訂正されてご自分のサイトで再公開などしていただければと願っております

107:maledict ◆sOlCVh8kZw
08/02/01 19:16:58 l7NKsO2P0
>>103様、>>104
ご意見ありがとうございます。
ううむ。全年齢板というのを気にかけたのと、長さの問題はもちろんなのですが、
やはり今回は「普通のエロ」にはそれほど重点を置かずに書きたかったのだということに
書き終えて気づきました。いえ、蜂女にはエロい雰囲気が漂っていた方がいいことは
たしかで、充電の設定などでそれは試みたつもりです。とはいえ今回の主眼(エロの中心)は
自分としては>>86-93の脳改造のシーンにあり、その前の部分はそれにもっていく
壮大な前フリのようなところがあります。セックスは今回、その前フリの中で
本郷とミツコの感情のすれ違いを表現するための道具みたいな位置づけなのです。

改造人間同士のアクロバチックなセックスシーンなどをアダルトの方で
番外編として書いてみてもいいのかなとは思っています。
ただ、以前も書きましたが、実は普通のエロは苦手なのです。修行中です。

あと、BeeF様って「悪魔のドールファクトリー」以外は全部あれをスレに投下していた
のではなかったでしたっけ?記憶違いならばすみません。
たしかに、せっかくサイトを立ち上げたので、そちらで発表しリンクを貼る
というのでもいいのでしょうね。こちらに貼れば人目に触れる率が高い反面、
著作権は2ちゃんに渡ってしまうみたいですし、検討します。ただ、ここへの投下には
思い入れがあるので完全にあちらに移行することはしないとは思います。

108:maledict ◆sOlCVh8kZw
08/02/01 19:30:54 l7NKsO2P0
>>105-106様
ていねいなご考察ありがとうございます。
BeeF様とのかぶり方については気になっていました。投下前にもう一度ちゃんとていねいに
読み直して徹底的に推敲するくらいやってもよかったかもしれないと反省しています。
一応、自分が描いたこの二人がテレビの展開の中で何を考えていたのかという部分は
自分は自分で描いてみたかったので、テレビ版を追う展開を入れたのですが、
おっしゃるとおり、
>ライダーとの決裂、死闘、そして最後のライダーキックまでを超特急で描写し、
>死ぬ間際の蜂女の独白〔…〕
に進むというのでもよかったかもしれません。
やはり難しい、層の厚い主題に取り組んじゃったんだな、と今さらながら思います。

ご指摘全部へのレスではないのですが、まずはこれで失礼します。

109:名無しより愛をこめて
08/02/01 20:46:28 /ESINlBB0
>>82にある「滝和也の恋人が改造された蜂女」だけど、リンクが貼ってある
URLリンク(blog.livedoor.jp)
だけじゃなく、恋人の涼子さんがが滝の目の前で拉致されて死神博士の性奴隷に改造される
URLリンク(blog.livedoor.jp)
から読んだ方がいいと思うぞ

110:名無しより愛をこめて
08/02/01 22:16:46 zF6e8mhg0
蜂女のエロさを出すんだったら
別にセックルシーンを書かなくてもたとえばBeeFさんが書いてたみたいに
乳房をぷるん、と震わせると乳首から毒針が発射される
みたいな描写だけでも十分にエロくなると思う

111:maledict ◆sOlCVh8kZw
08/02/02 03:02:49 VZBrKQdD0
>>109
強引に犯されたせいで正気に戻る(我に返って、自分がどうなっているかを自覚する)
というむごい展開がすごいと思いました。

>>110
書きながら、穴に棒を入れればそれでエロになるわけじゃないな、とは思いました。
むずかしいですね

112:蟻蜂フリーク ◆/sIh2XqTo2
08/02/02 03:46:58 /i5XGXQw0
>maledictさん
お疲れ様です。超大作でしたね・・・・

それにしても反響大きいですね。ネタがネタだけに^^;

自分的には充分楽しめたのですが、コアな方の厳しさ痛感します。

113:名無しより愛をこめて
08/02/02 11:18:33 BPKeqwIs0
アダルトおにゃのこに繋がらないけど、エロパロって移動したの?

114:名無しより愛をこめて
08/02/02 11:47:22 QrsuKcze0
スレリンク(eroparo板)

115:名無しより愛をこめて
08/02/02 21:58:32 KdOF3/P70
蜂女の話なら、舞方雅人氏も書いてるお

116:名無しより愛をこめて
08/02/02 23:25:12 l6U71i8m0
URLリンク(ip1.imgbbs.jp)
URLリンク(ip1.imgbbs.jp)

こんな格好をした幼女を手術台に固定して改造したいな。嫌がって泣き叫ぶ女の子をもてあそんでみたい。
でも問題はどんなモチーフの改造人間にするかだが。
いずれにしても俺って鬼畜だな。

117:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
08/02/03 10:34:35 /XEXfZIc0
>maledict様
長編蜂女の完結お疲れ様でした。
さまざまな意見が出るのも完成度の高さゆえのことだと思います。
また次回も素敵な作品をお待ちしております。

118:maledict ◆sOlCVh8kZw
08/02/03 17:55:27 SDT23Ai10
>>115
ショッカー版のですか?見落としてました。すみません
「変貌」や「ラバー蜂女」みたいなショッカーじゃないやつしか
読んだことありませんでした

>>117ショッカー代理人様
ありがとうございます。ショッカー代理人様のこだわりからすると
ずれる部分もあったかもと思いますが、応援して頂けて励みになります!

>>106
色々考えましたがあまり大幅な改稿はできないかもな、と思います
ご指摘の本郷の態度について自分の考えを言うと、自分はむしろ
戦友で何度も肌を合わせた女で、同じ苦悩を分かち合えた唯一の理解者に、
最終的に「お前だけは絶対にゆるさん」と言うようになる移行を自然に見せないと、
という方に苦心したつもりでした。たしかに本郷っておっしゃるような熱血野郎かも
しれませんがただ、旧一号時代の本郷はもうちょっとうじうじした部分もあった気もします
あと、「拳が鈍るだろう」というのは「今は殺す気になれない」ということではなく、
「殺すべきなのだがこの動揺した状態で戦ったら負ける」と判断して
戦略的に撤退したということです。(にしても、二度目の戦いのときに
深追いさせなかったのはちょっとおかしかったかもしれませんが)
…まあ、何と言ってもここで蜂女をぶち殺してしまうと話が盛り上がらない上に
テレビ本編と違う話になってしまう、というのも大きいのですが(爆

>>116
この子とか?
     ) )
   (ノハヽヽ
   (゜ー゜*)从
  ⊂ _⊂:)ミ
  彡(__:)ミ
  彡(__:)ミ
    U U

119:名無しより愛をこめて
08/02/03 23:59:47 bG0jTaWA0
池脇千鶴を改造してみたいな。
嫌がるちぃちゃんを手術台に固定してそれこそクレーンオルフェノクとかに改造してみたい。

120:名無しより愛をこめて
08/02/04 19:17:49 Yzo///jr0
>>119
クレーンオルフェノクは「改造」されかけていたけど、オルフェノクはもともと改造じゃないでしょう
…とやや的はずれなツッコミをしてみる

121:名無しより愛をこめて
08/02/05 00:28:21 GkZ07PZm0
梅宮万紗子さんの女怪人よかった。
あんな美人がどういう経緯で・・・って考えたらかなり興奮した。

122:名無しより愛をこめて
08/02/05 19:53:05 JXt1boTv0
>>121
ファンガイアって「人間がああなった」のか「ああいうのが人間に化けてる」のか
どっちの設定なんでしょう。前者なら萌えるんだけど…
(「かつては正義の団体の科学者だった」とかだとなお可(w )

あと、全然関係ない話。前スレ572ダイレン様と573様のやりとりで思ったんですが
---------------
572 名前:ダイレン 投稿日:2008/01/18(金) 18:46:33 ID:2S7H4LBPO
〔中略〕
改造とは関係ないんですが、女の子が怪人に襲われたりする際に体に取り込む描写って好きな方います?
〔後略〕

573 名前: 投稿日:2008/01/18(金) 21:08:03 ID:shCfH+CPO

>>572
あ~かなり分かりますわ。得体のしれないものに取り込まれてその中で怪人化とか萌えます。
マスクマンでそれで人間を戦闘員化させようとする話ありましたね。
--------------------
例えば、
「森の中をおにゃのこ二人が歩いていると、一方が巨大な植物(巨大な怪物)からガバッと
出てきた触手に絡め取られて、吸収されてしまう。もう一方が涙ながらに『○○ちゃん!?○○ちゃん!?』
と助け出そうとするがまるで歯が立たない。やがて植物(or怪物)の腹が再びがばっと開いて、
身も心も人間以外のモノに変わり果てた友人が、「うふふ…」と言いながら、
かつての友人を新たな犠牲者として自分の「主人」に捧げる」
…というシチュエーションは「改造ネタ」なのか、「人外に変身」なのか、どっちでしょう?
植物なり怪物なりが人工物(悪の組織とか宇宙人とか悪の魔術師)だったら「改造」、
自然現象だったら「人外に変身」、ということになりますか?
それとも、自然現象だろうとなんだろうとこのシチュは「改造」でしょうか?
自分は何となく後者のような気がするんですが。
…それとも、あまり細かく線を引くのは意味がない、というのが正解かなあ

123:名無しより愛をこめて
08/02/05 19:55:17 azjNpSua0
それなんて「盗まれた街」?

124:名無しより愛をこめて
08/02/05 21:14:35 JXt1boTv0
ただの入れ替わりとか乗っ取りだとドキドキしないです
同じ人物のままじわじわ改造されないと…

125:名無しより愛をこめて
08/02/05 21:20:36 JXt1boTv0
ただ、乗っ取られる場合だと「異物がだんだん成長して自分の精神が脅かされる」
パターンなら「改造」に近いかと。

126:名無しより愛をこめて
08/02/05 21:53:27 W4Ott3d10
ウルトラセブンのアンヌ隊員がワイアール星人に襲われて
徐々に身体も心もワイアール化してゆくようなSSを書いたら、このスレ的にはセーフですかね?

127:名無しより愛をこめて
08/02/05 22:42:02 XYJkT/vz0
>>126
元・大村千吉に同化されるのかw

128:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
08/02/05 23:25:13 yJMb5aeh0
>>126
厳密には異形化なのかもしれないですけど、特に問題はないんじゃないでしょうか。
というよりもぜひ読んでみたいですので、執筆お願いいたします。

129:名無しより愛をこめて
08/02/06 02:18:03 //OBGC3Z0
>>126
「ちっ!気づきやがった」と思って見ていたので、楽しみです。心の変化もあるのがなお楽しみ

130:名無しより愛をこめて
08/02/06 11:03:37 xXXjm0EC0
ワイアール星人って、もとの姿はどうだったかはともかく、あの姿は
「ワイアール星の寄生植物の犠牲者」なのではないだろうか。そう考えると、
あれを「ワイアール星人」と呼ぶのは、ゾンビとか狼男を「地球人」と
紹介しているようなものでワイアール星の人に失礼かもしれない、とふと思った
(凶悪な脱走囚を「キュラソ星人」とくくってしまうのと似たような)

131:名無しより愛をこめて
08/02/06 11:30:53 V6SUXwz70
大伴昌司が書いたウルトラの設定本(少年マガジンの付録)には
ワイアール星の生物はすべて生物X(ワイアール星人のこと)に同化されてしまっていて
それ以外の生き物は存在していないと書いてあったお

あと誰だったかが書いた別の本には、生物Xはもともと本能だけで生きてる知性が無い
生き物だったのが、たまたまワイアール星を訪れた異星人をワイアール化して知能を獲得し
その宇宙船を使って他の星を侵略する(というか繁殖する)術を覚えたみたいなことが
書いてあったような希瓦斯

132:名無しより愛をこめて
08/02/07 03:11:05 XpiUNRr00
なるほど。ほとんど「物体X」ですね、それ。大伴先生はおっかないこと考えますね

133:名無しより愛をこめて
08/02/08 19:39:19 IVP46PLa0
前スレの最後の方に質問があったので、一応レポを・・・
シャリバンのドクターポルターですが、洗脳・改造シーンはありませんでした。
最終回で、ギャバンかシャリバンとチャンバラしてる途中で、口裂け女のようなメイク
になりますが、マリアやドルドラのような大幹部による洗脳でも改造でもなく、そのメイクに
なった後もあっさり負けてしまいます。ミスアクマも片方は食べられるシーンのヒップが色っぽか
ったですが、片方は洗脳・改造もなくチャンバラで負けてしまいます。

>>121
>>122
梅宮さんのタコ怪人よかったです。怪人体⇔人間体が多かった点、フォーマルでドレッシー
な衣装、美しさに引き寄せられるように呆然と歩く男性を襲う。など近年では満足できる部類です。
1話であったような、ステンドグラスの皮膚に人間体の表情が浮かび上がる演出があったら尚よかった
です。2話にして、あんな美しい方が人間体を演じてる点、またファンガイアはモチーフが
分かり易い点などから、水島コーチのゴシキダブラーを上回る花モチーフの女怪人が登場するのではな
いか、と今から期待して待っています。

134:名無しより愛をこめて
08/02/08 22:16:01 xbyLGo+jO
宇宙刑事のベストエピソードはやはりゴシキダブラー?

135:名無しより愛をこめて
08/02/09 02:33:23 iQAMrdOf0
>>126です。アンヌ隊員がワイアール星人に同化されてしまうSSを書いたので、投下します。

本当は書くつもりはもうとうありませんでした。>>122-125の流れの中でふと思いついたことを
書いただけだったんですが、SSを書くものと皆さんに誤解されてしまい、自分でもちょっと興味が
涌いてきたので、思い切って書いてみました。

・・・あまり批判の嵐でいじめないで下さいねw

136:名無しより愛をこめて
08/02/09 02:33:51 iQAMrdOf0
けたたましくサイレンが鳴り響く中、救急車のドアが勢いよく開いて搬送ベッドが運び出された。
「一刻を争います! 早く患者を!」「伊藤先生! 急患です! 至急集中治療室へ!」
ベッドに横たわっているのは、目を大きく見開いたまま硬直している20代のOL。
全身が烈しい痙攣を続け、顔色は死体のように青白く変色している。
「永井さん、生理食塩水を用意して。浅野さん、心臓マッサージの用意を」「はい!」
東京救急病院の集中治療室。宿直の伊藤医師が看護婦たちにてきぱきと指示を出す。まだ20代半ばの若い女医だ。
女医は、患者の脈を取ろうと近づいた。その時、ベッドに横たわったOLの身体に、驚くべき変化が現われた。
「・・・え?」「・・・な、何!?」
白い指が緑色に染まり、ムクムクと伸びて植物のツルのように姿を変える!
太股の柔らかい肌をブチブチと貫き、ストッキングを引き裂いて、中から植物の芽がスルスルと伸びる!
鮮やかな緑色に染まった髪の毛が束になって次々と枝分かれし、イバラの草むらのようになる!
そして襟元からニョキニョキと伸びるツタの群れに、美しい顔が隠されて見えなくなってゆく!
数秒後。OLはスーツを着たまま、見たこともない奇怪な植物状の怪物へと変貌していた。
「キャアーッ!」
医師と看護婦たちは恐怖のあまり、ドアに向かって殺到した。だが焦っているせいでロックキーがうまく外せず、
気密室になっている集中治療室のドアがなかなか開かない。

137:名無しより愛をこめて
08/02/09 02:34:07 iQAMrdOf0
ワャワャワャ!と奇怪な鳴き声を上げながら、怪物はベッドから起き上がった。女性の美しいシルエットを
わずかに保った怪物は、イバラのような手でスーツの胸を勢いよく引きちぎった。
ブラジャーがはじけ飛び、かつてふくよかな乳房があった場所に、丸い大きな吸盤状の器官が現われた。
そして、脅える看護婦のひとりを目がけて、吸盤の中央から緑色の液体がシャワーのように吹き出した。
「イヤッ!イヤァーッ!」「あ、浅野さん! 浅野さんッ!!」
液体を浴びたのは、まだ20歳そこそこの、愛らしい顔の看護婦だった。彼女はとたんに苦痛の表情を浮かべ、
全身を痙攣させて苦しみ始めた。
ふと彼女が違和感を感じて自分の手を見ると、白魚のような指がいつの間にか、怪物と同じツタのような形状に
変わっているではないか!
「キャアアーッ!!」
恐怖と混乱で絶叫する看護婦の身体に、徐々におぞましい変化が現われた。
髪がわらわらと伸びて緑のツタに変わり、長く伸びた脚が、そして細い腕が、イバラの束へと変わってゆく。
「いやッ! やだ! 助けて! 先生! せんせーい!」
看護婦の全身は、みるみるうちに緑色のツタに包まれた。やがて助けを求めて叫ぶ愛らしい顔が、ツタの
群れにすっかり覆い尽くされて、見えなくなった。
しばらくの後、看護婦が倒れた場所から、ナース服を着た植物状の怪物が一匹、ワャワャワャ!と鳴きながら
起き上がった。
「た、助けて! 誰か!誰かァ!!」
さっきまで看護婦だった生き物は、ガタガタと震えながらドアの下にうずくまっている女医と看護婦の方へと
向き直った。泣き叫ぶ哀れな女たちの方に、二体の怪物がゆっくりと迫ってくる。
そしてナース服を着た怪物が、胸元をはだけ、かつての同僚たち目がけて緑色の同化液を浴びせかけた。

138:名無しより愛をこめて
08/02/09 02:34:35 iQAMrdOf0
・・・1時間後。ウルトラ警備隊が東京救急病院に突入した時には、既に300人近い患者・医師・看護婦たちが
怪物化し、院内のいたるところにはびこっていた。怪物に普通の銃弾は通じず、やむなくウルトラ警備隊は
火炎放射器で怪物たちを一匹残らず掃討した。
焼け残った怪物の組織を調べた結果、怪物は同化液によって被害者の細胞を遺伝子レベルで変異させ、
自らと同じ遺伝子情報に書き変える能力を持つ、驚くべき未知の新生物であることが判明した。


夜な夜な出現しては、人間を無差別に襲う植物状の怪物。「生物X」と名付けられたこの怪物に襲われた者は
たちまち生物Xと同じ姿に変貌して、また別の人間を襲い、その数をネズミ算式に増やしてゆく。
怪物化した人間を元に戻す手段は現代の科学には無く、銃弾もレーザーガンも効かないこの怪物を倒すには、
強力な火炎放射器で一気に焼き尽くすより他に方法は無かった。
幸い、怪物の出現地は今のところ、閑静な住宅街を中心とした一部地域にとどまっており、人口密度の高い
繁華街はまだ襲われてはいない。
仮に都心がこの怪物に襲われれば、大変なことになる。政府はこれ以上の被害を防ぐため、都内全域に対し
夜間外出禁止令を発令した。そしてウルトラ警備隊が怪物の出現箇所を詳しく調べた結果、この怪物の最初の
出現地らしき場所が徐々に絞られていった。その場所とは・・・。

139:名無しより愛をこめて
08/02/09 02:34:53 iQAMrdOf0
「・・・非常に危険な怪物が町をうろついています。都民の皆さまは夜間は決して外出せず、ドアに鍵を
堅くかけ、窓をすべて閉じて家から動かないで下さい。政府広報でした。」
アナウンサーが緊張した声でTVから呼びかける。東京、S区の高級住宅地。旧華族の血をひく石黒家の
邸宅では、地球防衛軍に勤務する石黒隊員の若い妻、美津子と、若い家政婦の二人が、おびえた表情で
TVを見つめていた。
「・・・怖いわ、しずさん。怪物だなんて・・・ねえ、この近くにも現われているんでしょう?」
「・・・だ、大丈夫ですわ、奥様。だんな様は地球防衛軍のエリートでいらっしゃいます。怪物もきっと恐れて
近づきませんわ!」
その時、テラスに面した大きなガラス扉の向こうに、奇怪に蠢く異形の影が現われた。
「キャアッ!」「お、奥様っ!」「あ、あなた! 助けて! 誰か来てェーッ!!」「だ、だんな様ァーッ!!」
「どうしたんだ、美津子!」バタバタと足音を立てて、2階から石黒隊員が現われた。
「あ、あなたッ。怪物が、怪物があそこにッ!」
「怪物?」石黒隊員はガラス戸を開けて、外を確かめた。「何もいないじゃないか。」
「け、警察に連絡しなくちゃ・・・」
「やめなさいッ!!」石黒は怒気を荒げるように叫んだ。
「地球防衛軍隊員の家が襲われたなど、いい物笑いになるだけだ。絶対に連絡してはいかん!」
「だんな様!」家政婦の静香が不満気に叫んだが、美津子が制した。「しずさん! 彼の言う通りにして。」
石黒はやさしく微笑み、妻を抱きかかえてソファに座らせた。
「・・・美津子。東京は物騒だ。明日の朝、箱根の別荘に行こう。」
「・・・ええ」うなずく美津子の顔にようやく笑みが戻った。
石黒は真顔になり、今度は家政婦の方に向き直って言った。
「しずさん。後で僕の部屋に来てくれ。渡したいものがある。」

140:名無しより愛をこめて
08/02/09 02:35:13 iQAMrdOf0
「だんな様。参りました。」「ああ、入りたまえ。」
静香がおずおずと石黒の私室に入ると、石黒はなぜか、部屋の鍵を掛けた。「・・・だんな様?」
「気にしないでくれ。常に部屋に鍵を駆けておくのが、宇宙ステーション勤務での癖なんだ。」
石黒は妖しい笑みを浮かべながら、静香を自分のデスクの方に手まねきした。
「・・・渡したいものって、一体何でございますか?」
「ああ、これを見たまえ。」
石黒はデスクの一番下の引き出しを開けて、銀色に輝く岩のような奇妙な物体を取り出した。
ラグビーボール大のその物体は、中から緑色の不気味な光を放ち、ウィウィウィ!と奇怪な音を出している。
「・・・だんな様、これは一体?」
「これは、石黒隊員の姿と記憶、そして知能を、僕の身体に電送するための電子頭脳だ。」
「え?・・・今、なんて?」
「この電子頭脳のおかげで、僕は石黒の姿と知能を保っていられる。そして電子頭脳からの電波が変調する度に
僕はもとの姿に戻り、知能を失い本能のまま、仲間を増やすためにこの星の人間を襲うようになる。」
静香は顔面蒼白になり、ガタガタと震えながら後ずさった。
「・・・だ、だんな様は・・・い、いったい・・・」
石黒はニヤリと笑った。その髪の毛が、トゲだらけのイバラのようなものに変わってゆく。
「キャア・・・ッ・・・む、むぐっ・・・!!」
静香は悲鳴を上げることができなかった。石黒の伸ばした腕が緑色のツタになって、静香の口めがけて
勢いよく飛び込んできたからだ。
「・・・ん・・・んぐぅ・・・・むーん!・・・むーん!・・・」
静香の身体は勢いよく床に倒れた。両手両足はツタにからめ取られ、まったく身動きが取れない。
静香は自分の置かれた状況をはっきりと理解していた。人間を襲い、際限無く仲間を増やす恐ろしい怪物、
その正体はなんと、だんな様だった。そして自分は今、怪物に襲われてその仲間にされようとしているのだ。

141:名無しより愛をこめて
08/02/09 02:35:31 iQAMrdOf0
嫌だ嫌だッ。怪物になんかなりたくないッ! 助けて! 誰か! お願いッ!!
半狂乱になりながら、静香は首を激しく振って抵抗した。だがツタは容赦なく、口の奥深くまで侵入を始めた。
ツタの先端が割れ、中からピンク色のツルツルした亀頭のような器官が姿を現わした。ピンク色の亀頭は、
先端に開いた穴から緑色の同化液をピュッ! ピュッ!と放出しながら、静香の喉の奥深く潜り込んでゆく。
甘酸っぱい味が口の中いっぱいに広がり、脳天まであふれ返ってむせかえるように気が遠くなる。
「・・・ムグ・・・ムグ・・・ムグゥ・・・・・・」
手足をバタバタと痙攣させ、涙をポロポロとこぼしながら、静香は石黒の笑うような声を聞いた。
「さあ、我らの新しい同胞よ。この『種』を受け取るがいい!」
石黒の声は、もはや静香には届いていなかった。肌の色が緑色に変わり、両手両足がイバラの束のように
変わってゆく。襟元からツルがスルスルと伸びて、涙を浮かべた静香の顔を徐々に覆い尽くしてゆく。
・・・そして1分も経たないうちに、静香は、完全な植物状の怪物へと姿を変えていた。
石黒は、かつて静香だった生き物からツタの拘束を解いた。
静香の口だった部分から、ツタが勢いよく引き抜かれる。ツタの先端には、ピンク色の亀頭は付いていなかった。
家政婦の衣裳を着た、女性っぽいシルエットの植物が、ワャワャワャ!と鳴きながら立ち上がった。
石黒は人間の姿に戻ると、デスクの上に置いた電子頭脳を再び手に取り、目の前の怪物の前にかざした。
電子頭脳は緑色の光を放った。すると、怪物の姿がみるみる元の静香の姿へと変わってゆく。
「まだしばらくの間、その姿を取っているがいい。この電子頭脳が収集したデータが、おまえをその姿に
留めてくれる。この家から決して離れてはならぬ。離れれば、おまえはたちまち元の姿に戻ってしまうだろう。
戻りたくても我慢をしろ。おまえに渡した『種』を、あいつに植えつけるまでの辛抱だ。」
静香は、いや、さっきまで静香だった生き物は、妖しく微笑み、石黒に礼をすると部屋を出ていった。

142:名無しより愛をこめて
08/02/09 02:35:49 iQAMrdOf0

               ※      ※      ※

“それ”は、宇宙のさいはての星で、突然変異によって誕生した。
生まれたのは、遺伝子を強制的に書き換える酵素を作り出せる、一個のバクテリアだった。バクテリアは
海藻の一種に取り込まれ、たちまち共生関係を築き上げて“それ”となった。
“それ”に小魚が触れた。“それ”は身体をよじらせて小魚を捕え、全身から液体を分泌して包み込んだ。
その液体は、触れたものの遺伝子を“それ”の遺伝子と同じものに書き換える、同化液だった。魚はたちまち
“それ”と同じ姿となり、逆に“それ”は、魚を同化したことで遊泳能力を得た。
海の中を泳ぐ“それ”は、魚やクラゲを次々と襲っては同化し、その能力を取り込んで進化を遂げていった。
“それ”が望むことはただ一つ。「繁殖」だった。“それ”は飽くなき繁殖欲で触れた生物をことごとく同化し、
爆発的な勢いで数を増やしていった。それはもはや動物でも植物でもない、奇怪な未知の生物だった。
やがて、海鳥を取り込んで飛行能力を獲得したことで、“それ”はその星すべてを掌握する力を得た。
“それ”が誕生してから、星が6回ほど自転した頃には、この星にはもう“それ”以外の生き物は
存在していなかった。星じゅうのあらゆる生き物が、“それ”によって同化され尽くしたのだ。
星じゅうを埋めつくすように拡がる、蠢く緑色の生き物。やがて“それ”は、烈しい繁殖欲にかられながら
大空をうらめしそうに仰ぐようになった。
この星の外に出ていって、もっと仲間を増やさねばならない。知性を持ってはいなくとも、“それ”の本能は
そのことをはっきりと自覚していた。

143:名無しより愛をこめて
08/02/09 02:36:05 iQAMrdOf0
ある日。“それ”に幸運が訪れた。遠い星からの来訪者が、この星に着陸を試みたのだ。
宇宙船から降りた飛行士たちに、“それ”は勢いよく襲いかかった。異星の客を同化したことで、
“それ”は、ついに知性を獲得した。直立二足歩行するようになった“それ”は、異星人の宇宙船を調べ、
その仕組みを理解するに至った。9.5光年離れた場所に、同じ異星人が大量に住んでいることも知った。
“それ”は自らの一部を宇宙船に乗せて、異星人の故郷目指して送り出した。その星の生き物すべてを
同化し、同胞へと変えるために。
異星人の故郷で、“それ”は無差別に異星人に襲いかかり、同化を繰り返した。星が7回自転する頃には、
その星は“それ”によってすっかり埋めつくされるはずであった。
だが母星の“それ”は、9.5光年離れた星から遅れて届くテレパシーで、異星に送り込んだ自らの一部が
星が1回も自転しないうちに焼き尽くされ、滅ぼされたことを知った。
驚いた“それ”は、失敗の原因を必死に探った。原因は、“それ”が「個」という概念を持たない、
すべての個体がたった一つの意識を共有する、「群体」のような存在であることにあった。
星を覆いつくす“それ”には、たった一つの意識しかなかった。知性を持った頭脳も、ひとつしかなかった。
自らの一部がどんなに離れていても、“それ”は同じ意識、同じ頭脳を共有することができた。
だが9.5光年離れた場所に移動した“それ”の一部にまで、テレパシーで母星の“それ”の意思が伝わるには、
とほうもない時間がかかった。“それ”のテレパシーは、光速を超えることはできなかったのだ。
異星に送り込まれた“それ”の一部は、母星の意識から切り離された、知性を持たない、本能だけの存在に
なり下がっていたのだ。


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