07/06/15 00:03:58 00ZTsux+0
下手な言い訳は逆効果だ。余計疑われる。
しかし考え込む時点でアウト。それだけで嘘を疑われるからだ。
こいつ、城戸と似ているようで似ていない。本気で馬鹿な行動を取る所は似ているが、城戸と違ってきっちり思考を働かせている。
「ああ、それは……」
だから、取り合えず声を出した。考える時間を稼ぐ。
「……い……うぶです……ぬいさ……」
「……くみで……って……つッ!?」
――何よ?
声が聞こえたのは樹海の奥。丁度、木野が向かったのと同じ方角からだ。
驚いたように、そちらへと顔を向ける。半分は演技。
渡りに船、ってのとは少し違うのかね?
――まあ、鬼が出るか蛇が出るか……
◆
「大丈夫ですか、乾さん……」
「巧でいいって……つッ!?」
その遣り取りは最早何度目か。
巧が木の根に蹴躓く度に繰り返された会話。
「……君達は?」
そこに、声が掛けられた。
あきらの視線の先には、スーツを着た男の姿。
こちらに強い警戒の視線を送っている。
101:名無しより愛をこめて
07/06/15 00:04:01 unXk/9MI0
下手な言い訳は逆効果だ。余計疑われる。
しかし考え込む時点でアウト。それだけで嘘を疑われるからだ。
こいつ、城戸と似ているようで似ていない。本気で馬鹿な行動を取る所は似ているが、城戸と違ってきっちり思考を働かせている。
「ああ、それは……」
だから、取り合えず声を出した。考える時間を稼ぐ。
「……い……うぶです……ぬいさ……」
「……くみで……って……つッ!?」
――何よ?
声が聞こえたのは樹海の奥。丁度、木野が向かったのと同じ方角からだ。
驚いたように、そちらへと顔を向ける。半分は演技。
渡りに船、ってのとは少し違うのかね?
――まあ、鬼が出るか蛇が出るか……
◆
「大丈夫ですか、乾さん……」
「巧でいいって……つッ!?」
その遣り取りは最早何度目か。
巧が木の根に蹴躓く度に繰り返された会話。
「……君達は?」
そこに、声が掛けられた。
102:名無しより愛をこめて
07/06/15 00:05:06 beCgVT+zO
103:名無しより愛をこめて
07/06/15 00:06:24 Axf4NoBh0
被って申し訳ない。支援。
104:Saver In The Dark ◇A.IptJ40P.氏の代理投下
07/06/15 00:12:18 UOzotwGF0
あきらの視線の先には、スーツを着た男の姿。
こちらに強い警戒の視線を送っている。
傍らには、巧と同年代の男が上体を持ち上げていた。
二人組みということから、あきらの思考の中に一つの情報が浮かび上がる。
――北岡、津上という人が、きっと助けてくれる――
「……北岡さん、ですか?」
「……ああ、そうだけど――」
◆
本当に何者よ。この二人。
女の子の方は俺の名前を知ってるし、男の方はボロボロでこっち睨んでるし。
「私達を助けてくれた、黒いコートを着た人が、助けてくれる人がいるって……」
……木野?
厄介なことになってきたねえ、どうも。
105:Saver In The Dark ◇A.IptJ40P.氏の代理投下
07/06/15 00:13:54 UOzotwGF0
助けてくれた――ということは、浅倉か誰かに襲われていたのだろう。
「……ああ、俺が北岡で、こいつが津上。
あいつは――木野は、どうしたの?」
大方予想はついてるけど、ね。
「私達の代わりに、あの人と闘っています……」
やっぱり、か。
「北岡さん、助けに行きましょう!」
……やっぱり、か。
誤魔化せたのは良かったけど、これはこれで拙いねえ。
「……傷はいいのかい?」
「大分、痛みも引きました。
――闘えます!」
全身のバネを使って跳ね起きる津上。
確かに、そこまで疲労しているようには見えない。
……行くしかないか。
「ああ、なら――行こう、木野を助けに」
「はい!」
全く持って―――やれやれだ。
106:名無しより愛をこめて
07/06/15 00:15:18 Axf4NoBh0
107:Saver In The Dark ◇A.IptJ40P.氏の代理投下
07/06/15 00:15:55 UOzotwGF0
◆
戦況は、一方的に木野が不利だった。
その原因は、
『Bullet』
カードを銃身上部のスリットに通す。銃に吸い込まれる蒼い紋章。
「ファイア」
『Burst mode』
浅倉もまた銃を引き抜いた。互いの射線が交差する。
射撃。
弾丸の応酬は、一発ずつで終了した。
ギャレンの弾丸。喉元に直撃したそれはデルタをよろめかせ、
デルタの弾丸。鳩尾に着弾したそれは、装甲を灼き黒い焼け焦げを作り出す。
本来、弾丸とはライダーの装甲に対してさしたるダメージを与えられるものではない。
橘のように一点に集弾させれば別だろうが、木野や浅倉の技量では着弾の衝撃で怯ませるのが精々。
だが、デルタやファイズのブラスター。それが放つ弾丸は実体弾ではない。
フォトンブラッド。あらゆる生物にとって致死の猛毒足り得る攻性のエネルギーを凝縮したものだ。
仮面ライダーギャレンとは、人間とカテゴリーエースとの融合体と言える存在である。
故に、フォトンブラッドに対しては絶望的に相性が悪い。
遠距離では埒が明かない、どころか自分が一方的に不利であると悟った木野は疾走。
浅倉も銃を腰にマウントし、傍らに突き立てていた金棒を引き抜く。
スマートブレイン社製のライダーシステムとは純粋な強化服。
108:Saver In The Dark ◇A.IptJ40P.氏の代理投下
07/06/15 00:17:24 UOzotwGF0
カタログスペック以上の出力は出せないが、裏を返せば一定の能力を常に発揮出来る。
対してボード製のライダーシステムは、カテゴリーエースとの融合を行う為の機構である。
装着者の適応値、融合係数によってはカタログスペックを遥かに凌駕する出力を叩き出すが、
「はッ……!」
渾身の直蹴り。デルタの鳩尾目掛けて放ったそれは直撃し、しかし、
「その程度かァ!?」
裏を返せば、低い融合係数で扱えるのはそれ相応の能力に過ぎないという事を意味する。
木野の一撃は、直撃したにも関わらずデルタの装甲を貫けない。衝撃が拡散し、ダメージが徹らないのだ。
橘は低い融合係数を射撃の技術と立ち回りで補っていた。だが、彼にそこまでのスキルは無い。
融合係数とて、木野薫のそれは橘に比して更に下。SB社製の中でも特に高いスペックを誇るデルタとは比べ物にならない。
振り下ろされる烈凍。左手で引き抜いた銃で受け止めるが、重い。
腕が軋む。足裏が樹海の地面に沈んだ。右の拳を握り、肘を引く。直突きの準備動作。
「ぐッ!?」
だがそれよりも早く、デルタの膝蹴りが腰に叩き込まれた。
手から力が抜け、防御を突破した金棒が左の肩を打ち据える。
消える握力。重い音を立て、ギャレンラウザーが地面に転がった。
腰から崩れ落ちる。続く打撃、大上段に振り上げられた一撃は避けられない。
ここまでか、と木野は感じる。
死んでたまるか、と木野は思う。
如何に動けば生き残れる、と木野は考える。
わからない。わからないまま―――
109:Saver In The Dark ◇A.IptJ40P.氏の代理投下
07/06/15 00:18:23 UOzotwGF0
◆
起こったのは、実に単純なことだった。
振り下ろされる一撃は、人類の動態視力を凌駕する速度へと至っていた。
木野薫では止められない打撃。
額へと迫り、迫り、迫り、迫り――
――だが、届かない。
その理由は単純だ。
発条仕掛けの動きで跳ね上がった木野の右手が、その先端を、小揺るぎもせずに受け止めていた。
「な……!?」
驚愕の声が二つ重なる。
片方は無論、必殺の一撃を受け止められた浅倉のもの。
もう片方は、苦し紛れに振り上げた手が攻撃を弾けたことに驚いた木野のそれ。
停滞は刹那。
金棒から離した手で地面を叩き、その反動で跳ね起きる木野。
飛び退き、様子を窺う浅倉は眼中に入っていない。
右手を拳に握り、そして五指をゆっくりと開いていく。
微かな違和感――疼き。
「お前か……お前が、助けてくれたのか……?」
鼓動、幻痛、共鳴、その全てを溶け合わせた様な、疼き。
110:Saver In The Dark ◇A.IptJ40P.氏の代理投下
07/06/15 00:19:56 UOzotwGF0
「お前か……お前が、助けてくれたのか……?」
鼓動、幻痛、共鳴、その全てを溶け合わせた様な、疼き。
右腕が疼く。かつてと同じように。
敵を倒せ。前に進め。ライダーとしての使命を果たせ――護り抜け、と。
「―――雅人!」
◆
左手で銃を拾い上げる。右手は拳として腰溜めに。
何故、あれほどの腕力を発揮できたのかは分からない。
「……ッチェック!!」
『Exeed Charge』
木野は耳を打つ音に思考を中断。見れば、デルタの銃口が輝きを放っている。
応じてラウザーを展開、引き抜いたのはカテゴリーシックス。
『Fire』
拳、肘、腕、足、膝、脚と全身を紅い焔が覆った。
「終わらせる……ッハァ!」
放たれた青白い光弾。二重螺旋を描くそれに対して右手を開き、
掴み取り、握り潰す。余波が掌を灼こうともがくが、拳の焔に掻き消された。
通常の炎では、フォトンブラッドに干渉など出来はしない。
だがギャレンが纏うのは、蛍の始祖たる不死生物、ファイアフライアンデットの炎。
111:Saver In The Dark ◇A.IptJ40P.氏の代理投下
07/06/15 00:20:56 UOzotwGF0
真っ当な蛍はルミノール反応によって熱無き光を放つが、オリジナルが放つそれは超高温のエネルギーそのものだ。
浅倉の驚愕という隙を突きもう一枚。
『Bullet』
銃把を握り、狙いを定め――
、、、、
投擲する。
横に回転しつつ空中を移動するギャレンラウザー。狙いは顔面右半分。
当然、当たった所でダメージなど無い。
だが、ラウズカードを格納する銃後部とのバランスをとるように、その銃身は異常に太い。
浅倉の視界が半分だけである事は木野も知っている。彼には傷の深さなど一目で分かる。
その太い銃身が、半分の視界を完全に覆い隠した。
拳を振るい上へと弾く浅倉。醒銃が高く高く舞い上がる。
刹那、強烈な打撃が入る。
一瞬にして接近したギャレンが、デルタの脇に右の拳を叩き込んだのだ。
「……ッ!?」
浅倉の口から息が漏れた。先の蹴りとは比べ物にならない衝撃。警戒が右へと向く。
それを狙った左拳のチョッピングが、顎を横から叩き脳震盪を誘発する。
瞬間だが膝が折れる。その落下を利用した三撃目が鳩尾に入った。
そして木野が右手を掲げた。落下するギャレンラウザーのトリガーガードに指を差込み半回転させホールド。
デルタの胸に突き付ける。
ライダー同士の戦いにおいて、銃弾とは弱い武器だ。
だが、橘のように一点に集弾させれば、その威力は充分に装甲を貫ける。
確かに、木野薫に射撃の技術は無い。だから、そんな裏技は不可能だ。
112:Saver In The Dark ◇A.IptJ40P.氏の代理投下
07/06/15 00:22:09 UOzotwGF0
しかし――
「この距離なら話は別だ!!」
二つの条件。零距離という条件。反動程度では震えもしない右手。
連射した。
「ぐ、がああああああ!?」
浸潤、貫徹。
素早く腰に戻し跳び退る。ふらつく浅倉を見据え抜き放ったカードをラウズ。
『Drop』
『Fire』
ゆっくりと息を吐き出し、呼吸を整える。
両手で大気を掻き混ぜるように、一種独特の構えを取り、
『Burning Smash』
跳ぶ。空中で身を捻り、
「ッハァァァァアァァァァッッ!!」
両の踵を、肩に打ち込んだ。
吹き飛ぶ浅倉。変身が強制的に解除され、生身の状態で木の一本に引っ掛かった。
呻きを上げ、。
「……ふう」
113:名無しより愛をこめて
07/06/15 00:22:48 Axf4NoBh0
114:Saver In The Dark ◇A.IptJ40P.氏の代理投下
07/06/15 00:23:44 UOzotwGF0
木野もまた、バックルのレバーを引き変身を解除する。
―――それが、運命の分岐点だとは気付かずに。
◆
「急がないと……!」
「ちょっと、速いって!」
……この女の子、本当に何者よ?
仮にも重病人の俺や、あの乾って怪我人と比べて速いのは分かる。
だけど、津上より速いってのはどういうことよ?
樹海を走るのは難しい。歩くのならともかく、走っていては木の根に蹴躓くことがある。
このあきらって子には、そんな様子が全く無い。
「……この辺りです!」
もう津上は二十メートルも先行された。俺達からは四十近い距離が離れる。
一人、開けた場所に出ている。
「来るな!」
鋭い声――木野?
直後、
◆
樹上から飛び降りた浅倉が、あきらの首筋に手刀を打ち込み羽交い絞めにした。
115:Saver In The Dark ◇A.IptJ40P.氏の代理投下
07/06/15 00:24:24 UOzotwGF0
◆
「形勢逆転、だなあ……北岡ァ!」
「……変しッ……!?」
「やめろ、津上ッ!」
「良く分かってるじゃねえか……なら、俺が何を要求するかも分かるな?」
「……何時に、何処でよ?」
「三時間後に……あの小屋でだ。おまえ一人で来い。破った場合は……」
「この小娘の命は無い、って?」
「さあなあ……それで済めば良い方かもなあ?」
「テメエ……!」
「いいよ、それで。乾君も慌てない。
……元々、おまえに負ける程弱くない」
「北岡さん!?」
「北岡!?」
「じゃあなあ北岡……また会おうぜ」
「嫌だね、と言いたんだけどねえ」
◆
そのまま、浅倉はあきらを肩に担いで走り去った。
地図も見ていないのに、方角は全くもって正確だ。どんな方向感覚してるんだか。
116:名無しより愛をこめて
07/06/15 00:24:52 Axf4NoBh0
117:代理投下
07/06/15 00:37:44 Axf4NoBh0
周囲の三人――津上、木野、乾――は、情報を交換している。
と、木野がこちらを向いた。
「北岡。お前はどうする心算だ。
まさか、本当に一人で行くのか?」
予想通りの質問。
「ああ」
「馬鹿な……奴は強い。ライダーとしての能力とは別の次元でな。
お前の方が良く知っているだろう?」
「だから、だよ。それに、勝算は充分にある」
浅倉の言葉には、一つの穴があった。
俺一人で行くことは指定してきたけど、他は何も言っていない。
木野が腰に捲いたままのベルトを指差し、
「それ、借りてもいいかな?」
「……成程な。それなら確実に勝てる」
複数の武器があれば、恐らく確実に勝てる。
、、 、、、、、、、、、、、、
無論、そんなことをする気は無い。
これなら、橘のベルトを持って逃げられる。
―――今回は感謝するよ、浅倉。
これでまた、目標に一歩近付いた。
118:名無しより愛をこめて
07/06/15 00:38:28 Axf4NoBh0
◆
浅倉は、C-6から北へと向かった。
キングは、B-6を東へと歩いていた。
城は、B-5を西へと走っていた。
当然のように、その三人は邂逅する。
人でありながらその枠から外れたものと、
元より人にあらざるものと、
人を喪ったものと、
◆
そして、それだけが、誰もに対して平等に降り注ぐ。
『あーあー、マイクテスト中。みんな聞こえてるー!?』
―――紅い怪物の、悪意に満ちた嘲笑だけが。
◆
【残り29人】
119:名無しより愛をこめて
07/06/15 00:39:29 Axf4NoBh0
【浅倉 威@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:樹海B-6】
[時間軸]:本編終盤辺り。
[状態]:左目負傷、全身に中程度の負傷(打撲、火傷など)、中程度の疲労。腹は満腹。精神的にはワックワク。
気絶したあきらを背負ってます。
[装備]:デルタフォン、デルタドライバー。音撃金棒・烈凍。
[道具]:ファイズブラスター。三人分のデイバック(風見、北崎、浅倉)。グランザイラスの破片。
[思考・状況]
1:北岡との戦いが楽しみで楽しみで仕方ない。
【天美あきら@仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:樹海B-6】
【時間軸】中盤くらい
【状態】全身のダメージ小、気絶中。
【装備】破れたインナー、鬼笛。
【道具】変身鬼弦(裁鬼)
【思考・状況】
1:気絶中
120:名無しより愛をこめて
07/06/15 00:40:14 Axf4NoBh0
【乾巧@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:樹海C-6】
【時間軸】中盤くらい
【状態】肉体的ダメージ。特に右腕。
【装備】ファイズドライバー、ファイズフォン
【道具】ミネラルウォーター×2(一本は半分消費) カレーの缶詰 乾パンの缶詰 アイロンを掛けた白いシャツ。
【思考・状況】
1:あきらを助けたい。
2:情報交換する。
3:神崎をぶっ飛ばす。
4:天道と合流する。
5:草加とも出来れば合流したい。
※次回変身時には面割れは直っています。
【北岡秀一@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:樹海C-6】
[時間軸]:本編終盤辺り。
[状態]:全身に中程度の負傷(打撲、火傷など)、小程度の疲労。
[装備]:カードデッキ(ゾルダ)、バタル弾。
[道具]:配給品一式×2(自分とキングのもの)
[思考・状況]
1:橘のあれ、持ち逃げしよう。
2:……城戸たちとでも合流してみるか。リュウガについて何か分かるかもしれない。
3:人数がある程度減るまでは優勝するかアンデッドになるか、とりあえず脱出を目指すかは保留。
※バタル弾は改造人間のみに効果あります。
121:名無しより愛をこめて
07/06/15 00:40:55 Axf4NoBh0
【木野 薫@仮面ライダーアギト】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:樹海C-6】
[時間軸]:本編38話あたり
[状態]:全身に小程度の負傷(打撲、火傷、刺し傷など)、中程度の疲労。2時間変身不可。
[道具]:救急箱。精密ドライバー。
[思考・状況]
1:自分の油断に対する後悔。
2:橘の遺志を継ぎ、闇を切り裂いて光をもたらす。
3:とりあえず情報交換。
4:丘のメンバーと合流。
5:無力な人たちを守る。
6:医師の使命を忘れない。
【城茂@仮面ライダーストロンガー】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:樹海B-6】
[時間軸]:デルザー軍団壊滅後
[状態]:胸の辺りに火傷。
[装備]:V3ホッパー、パーフェクトゼクター
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:あの少年(キング)に接触してみるか?
2:仲間を探す(丘のメンバー優先)。
3:殺し合いを阻止し、主催者を倒す。
4:明日、ジェネラルシャドウと決着をつける。
5:自分に掛けられた制限を理解する。
※首輪の制限により、24時間はチャージアップすると強制的に変身が解除されます。
※制限により、パーフェクトゼクターは自分で動くことが出来ません。
パーフェクトゼクターはザビー、ドレイク、サソードが変身中には、各ゼクターを呼び出せません。
また、ゼクターの優先順位が変身アイテム>パーフェクトゼクターになっています。
122:名無しより愛をこめて
07/06/15 00:41:37 Axf4NoBh0
【キング@仮面ライダー剣】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:樹海B6エリア】
[時間軸]:キングフォーム登場時ぐらい。
[状態]:健康。
[装備]:携帯電話
[道具]:なし
[思考・状況]
1:あの男(城)に接触する。
2:レンゲルとのゲームのため、ラウズカード探し。
3:この戦いを長引かせる。そのため、支給品を取り上げる。
4:戦いに勝ち残る。まだまだ面白いものも見たい。
5:今は戦うつもりは無い。
6:北岡に興味。しばらくしたら、また会おう。
【津上翔一@仮面ライダーアギト】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:樹海C-6】
[時間軸]:本編終盤。
[状態]:腹部のダメージ+疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:カードデッキ(オルタナティブ・ゼロ)、ドレイクグリップ
[思考・状況]
1:情報交換しよう。
2:木野さんは……仮面ライダーとして目覚めたのだろうか?
3:元の世界へ帰る。
4:氷川、小沢と合流する。
※首輪の能力制限により、一日目のみバーニング、及びシャイニングフォームへの変身は制限されています。
※ドレイクゼクターは島のどこか、もしくは支給品として誰かに配られているかもしれません。
123:名無しより愛をこめて
07/06/15 01:11:09 /B6mkT5IO
GJ!
あきらはいつも大変だなぁ。
本領発揮の浅倉と北岡が楽しみです。
124: ◆TJ9qoWuqvA
07/06/15 01:11:38 Axf4NoBh0
代理投下終了。
GJ!
木野さんいいよ! 北岡腹黒ww
たっくん今回出番無かったな~。まあ、ストロンガーに比べれば恵まれているけどorz
あと浅倉、なにするだぁー!! ゆるさん!
ただ時間軸が混乱したのと、改行が多くて見づらかったのが難点。
このまえ毒吐きで見せてくれた話くらいがちょうどよかったです。
木野薫、浅倉威、天美あきら、乾巧、北岡秀一、津上翔一、城茂、キング、霞のジョー、明日夢
予約します。
……この話書き上げたら生存キャラコンプだ。
125:名無しより愛をこめて
07/06/15 02:18:24 UOzotwGF0
投下乙。
浅倉vsあきら、浅倉vs木野のバトルの意外性は面白かったですが、気になった点があります。
全体的に時間軸が滅茶苦茶になっていると思います。
木野がアギトに変身できるということは橘との戦いの後、二時間経った上でのことと推測できますが、その間、城やキングはずっと同じ場所をウロウロしていたのでしょうか。
また、浅倉は乾、あきらと遭遇するのがそんなに遅かったのでしょうか。
前のSSを読む限りではとてもそうは思えませんでしたし、メインはギャレンvsデルタなのですから、時間を大幅に進ませる必要はなかったのではないでしょうか。
後、氏は城とキングについては一度、予約した後、指摘され追加予約をされておりますが、SSを読む限り、このふたりを無理矢理追加したとしか思えません。
この扱いならば、帳尻あわせは他の方に任せておいた方がよかったと云わざるを得ないです。あと、東と西の方角が逆です。
SSの出来は問題ないだけに無理に自分ひとりでなんとかしようとするのではなく、他の書き手さんに相談していただきたかったです。
126:名無しより愛をこめて
07/06/15 18:03:58 +QBJ02blO
投下乙。
>>125と同じ意見だな。
もう一つ疑問。巧の変身時間と木野の変身時間ってそうズレてないよね?
同じ日中。なのに巧が変身しないのがおかしいかなと思った。
理由があるなら劇中で描写してほしかった。
あとリアルで立て込んでいるなら、一旦破棄するなりした方がよかったと思う。
氏一人のおかげでスレが停滞したしね。
127:名無しより愛をこめて
07/06/16 00:35:31 Wi/33zyI0
修正点まとめ。
・時間軸がおかしい。なんで城茂二時間もブラブラしているねん。
・Aアギトに木野が変身しているのに、その付近の時間で変身をした巧が変身しないのはおかしい。
理由があるなら明確にしてくれ。
・方角が逆。
既に予約は言っているんだから、修正するなら早くしたほうがいいよ。
今までで一番迷惑かけているんだからさ。
大体今日一日返答がないってのも失礼なんだし。
きつい言い方だけど、リレーしている自覚無いんじゃない?
長引いたら自分から破棄を宣言する書き手もいるし、期限をきって、間に合わないようなら破棄をするって宣言した書き手もいるんだよ。
協調性を持ってくれ。以上。
128:名無しより愛をこめて
07/06/16 01:19:09 9WXJZQSL0
誰とは言わないが、読み専のクセに偉そうな奴が一人いる
まさかここの書き手に限って、叩くときだけ名無しになってるなんて
汚い事するわけないだろうし
129:名無しより愛をこめて
07/06/16 03:44:19 e4OpSL1U0
すみません。ちょっと疑問に思ったのですが。
ブレイド勢の変身アイテムって、融合係数やカテゴリーAの相性などで、
かなり装着者を選り好みするような印象があるのですが、
木野さんが係数が低いながらも装着できたのには、何か理由があるのでしょうか?
(アギトやオルフェノクのような変身系は、融合率が高いとか)
非適合者や敵を、あの光の壁で弾くイメージがどうしても強いもので…
130:名無しより愛をこめて
07/06/16 12:27:36 ho48EpmrO
>本来、弾丸とはライダーの装甲に対してさしたるダメージを与えられるものではない
これはさすがに暴論だろ
作品によって性能は違うが、受けたら即死こそしないが受けるダメージは高い
>橘は低い融合係数を
ピーコック戦以降はそうでもないだろ
剣崎程ではないが並位だろ
131:名無しより愛をこめて
07/06/16 13:47:07 Votzf6yO0
さっき思ったんだが、首輪のない麻生を取り込んで制限が弱まった
今のドラスはコウモリ男やクモ女を作れるのだろうか。
132:名無しより愛をこめて
07/06/16 13:56:57 ecRoMsaGO
ゼクターの様にカテゴリーAに意思を持たせても違和感あるし(下手すると睦月の二の舞い)、やっぱりアギトの力プラス橘さんの遺志を受け継いだから変身できたと自分は解釈してる。
でも何らかの描写は欲しいな。
133:名無しより愛をこめて
07/06/16 14:23:06 ixmtvzsM0
>>128
意見を封殺しようとすんなって。
書き手は尊重すべきだが、疑問点を指摘するのはどこのロワでも
行われてることでしょ?
それに確かに言い方はキツイけど、15日間も延長して一人で
停滞させてたんだから、修正点に対してどうするつもりなのか
すぐに反応すべきってのはおかしくない意見だと思うけど。
134:名無しより愛をこめて
07/06/16 15:26:21 EBrZFzkqO
>>133
それ以外の部分が蛇足
大体「今までで一番迷惑」はないだろ……いーの人と同列か?
135:名無しより愛をこめて
07/06/16 17:17:22 c5GF4ODuO
う~ん……
勿体ないと言うか何と言うか。
此所はとても書き手に優しいロワだと自分は思う。だから、遅れるにしても、催促される前に、予め自ら申告してれば良かったのに。
修正点の指摘にしても、言い方がキツく感じてどう応答すればわからないのかも知れないけど、最初から修正の要請にもちゃんと答えていれば、
そして、したらばだけで無く、本スレでも一言あれば随分違っていたのではないかと思います。
自分は投下を心待ちにしていたし、これからも新作楽しみにしてるので、修正完了後の投下を待っています。
136:名無しより愛をこめて
07/06/16 18:11:35 xl6yDSZj0
融合係数は確か恐怖とか怒りとかの感情でも上がり下がりすんだっけ?
木野は戦意満タンって感じだから変身できることに関してはいいと思う。
話自体はすげー面白かったから、このまま破棄とかはやだなー。
137: ◆tsQRBnY96M
07/06/16 18:29:03 01nl+Cms0
とにかく、本人が出てきてくれない事には何も出来ませんよね。
138: ◆TJ9qoWuqvA
07/06/16 18:37:25 G6uw8xqqO
そうですね。内容が大幅に変わらないのであれば、自分の話にもさほど影響ありませんし。
予約はもう少し待ってからがよかったかなorz
五割程度できてますので、早ければ明日、明後日に投下できそうです。
139:名無しより愛をこめて
07/06/16 18:43:50 ecRoMsaGO
木野ギャレン・あきら誘拐・北岡ギャレンバックルGETと今後のロワを盛り上げる要素が沢山作られているので今回指摘された箇所を氏に加筆・修正して頂ければ…!!
このままの状況だとロワ自体続けるのが難しくなりそう。
140: ◆A.IptJ40P.
07/06/16 19:14:56 kyExcQgD0
修正ですが、
・木野と巧の変身がほぼ同時刻なのに~
これについて、まとめサイトで変身時間軸を確認した所、最大で一時間、巧の方が遅いです。
また、『食物連鎖』における浅倉の時間経過について、
>彼の眼には背中から火花を散らせ、逃走していくトカゲの姿が見えた。
ここから先の時間経過が不明なので、浅倉の襲撃まである程度間があったとしても矛盾は無いのではないでしょうか。
・城について
キングとの膠着状態を作り出す方向で修正しています。
その他の細かい点も修正しています。
141: ◆tsQRBnY96M
07/06/16 19:26:19 01nl+Cms0
いつ頃までかかる見通しでしょうか?
142: ◆A.IptJ40P.
07/06/16 19:42:56 kyExcQgD0
城、キングの膠着について、構想はあるのですが城がどうにも苦手で……
それ抜きなら今日中に行けます。誤字と一部加筆だけなので。
>>125で、
>帳尻あわせは他の方に任せておいた方がよかった
>無理に自分ひとりでなんとかしようとするのではなく、他の書き手さんに相談していただきたかったです。
とも言われているのですが……どうでしょうか◆TJ氏。やっていただけないでしょうか?
143: ◆TJ9qoWuqvA
07/06/16 19:49:46 G6uw8xqqO
了解。城とキングはそのままでOKです。
144: ◆ozOtJW9BFA
07/06/16 19:59:15 9ZKiSnEc0
議論の途中みたいですが、遅ればせながらの経過報告をします。
7割位まで書き上がっています。
145:名無しより愛をこめて
07/06/16 20:32:09 TzG3nIRr0
◆tsQRBnY96M氏、鳥バレしてるようなんでご注意を。
146: ◆4wyf44BgsE
07/06/16 20:39:46 c5GF4ODuO
>>135で、いろいろと生意気な事を言ってしまいました。
だけど、以前こんな流れで消えて行った書き手さんもいたので、つい書いてしまいました。
読み手としても、修正版楽しみにしています。
147:名無しより愛をこめて
07/06/16 20:42:57 c5GF4ODuO
>>144
楽しみにしています!
148:名無しより愛をこめて
07/06/16 20:56:49 rBfD1qzT0
>>145
というか◆tsQRBnY96M氏ってなんでトリつけてるの?
書き手じゃ……ないよね? まとめでトリ検索しても出てこないし。
149:名無しより愛をこめて
07/06/16 21:14:24 G6uw8xqqO
>>148
まとめの人で元◆E1yyNEjdEc氏。
トリがばれたので、新トリ使っています。
それもバレてしまってますが。。
150:名無しより愛をこめて
07/06/16 21:48:30 Votzf6yO0
催促するようですまないが>>131の質問を誰か答えてはくれないだろうか?
これによって展開変わるだろうし・・・・・・。
151:名無しより愛をこめて
07/06/16 21:54:02 G6uw8xqqO
自分は後の書き手さん次第かなと思っています。
状態表にも緩み具合いは任せると書いたので。
152: ◆A.IptJ40P.
07/06/16 21:56:27 kyExcQgD0
>>143
ありがとうございます。
修正が終わったので、したらばに投下します。
153: ◆A.IptJ40P.
07/06/16 22:06:53 kyExcQgD0
投下してきました。
154:名無しより愛をこめて
07/06/16 23:03:53 bjxTKrEY0
>150
これ以上ドラスが強くなってどうするの?
拡声器イベントで死亡フラグは立ったけど。
155:名無しより愛をこめて
07/06/16 23:58:54 I6XLixlfO
仮面ライダーのお約束として強い怪人は複数のライダーにフルボッコされるから安心しようや
156: ◆TJ9qoWuqvA
07/06/17 00:31:59 xJUHo7u20
ライダーロワ用の毒吐きスレです。
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)
毒吐きと思われる話題はこちらに誘導してください。
なお、毒吐き向きの話題だと思った場合でも、こちらに誘導してください。
IDを出したい場合は、ageをするだけでIDが出ます。
それでは、失礼します。
157:名無しより愛をこめて
07/06/17 05:37:25 Z/fviEzf0
>>156
そこじゃなくてこっちじゃない?
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)
158: ◆TJ9qoWuqvA
07/06/17 19:39:08 xJUHo7u20
>>157
すいません。正しいURLありがとうございます。
ただいま推敲中です。
11時あたりに投下します。それでは。
159: ◆TJ9qoWuqvA
07/06/17 23:08:40 xJUHo7u20
投下開始します。
160:法廷の勝利者 ◆TJ9qoWuqvA
07/06/17 23:09:30 xJUHo7u20
「ねえ、怪我をしたくなかったら、その剣を渡してくれない?」
金に近い茶髪を持つ、小柄な少年が話しかけてくる。
シルバーアクセサリーをジャラジャラと鳴らし、こちらへ近付いてくる。
彼が橘の言っていた殺戮者だろうか。見た目だけでは油断はできない。
なにより、彼は自分の武器を狙っている。考えられる目的はひとつ。
この殺し合いで、人を殺す手段として使う。
「断る」
「ならいいよ。力尽くで奪い取るから」
ただならない気配が漂い、茂が身構える。
少年の薄ら笑いを見つめながら、彼が動くのを待った。
その時がどれほど続いただろうか。お互い、隙を見出せず動けずにいた。
だが、突如繁みの中から人影が躍り出た。
「ハハッ!!」
男の腕が振るわれ、巨大な金棒で少年が吹き飛ばされる。そのまま木に叩きつけられたのだろう。
なにかにぶつかる音が聞こえる。身体ごと人影に向き直る。
女を肩に担ぐ男の身体は意外と大柄ではなかった。
しかし、その痩身には女一人を担いでることにより、動きが制限される様子はない。
興奮しているだろうか。色の抜けた髪の下の目を、狂気に輝かせてこちらを見る。
「北岡を殺す前に面白そうな連中に出会ったじゃないか。やろうぜ」
こちらを見つめて言い放つ。茂は本能的にこの男が悪だと断じた。
ブラックサタンやデルザー軍団の怪人を凌駕する狂気。
ただの人の身に、それらを宿して、『敵』が立ちふさがった。
もし、こいつが橘の言う『殺戮者』だとするなら、なるほど、確かにこいつは殺さなければならない。
人を殺す。仮面ライダーなら拒否しなければならない思考だ。だが、こいつは人じゃない。
161:法廷の勝利者 ◆TJ9qoWuqvA
07/06/17 23:10:54 xJUHo7u20
『悪』。自分たちが立ち向かわねばならぬ存在だった。
茂は男の肩にいる少女を見つめる。まずは、彼女を救わなければならない。
剣を構え、目の前の男を迎え撃つ。相手がまだ変身しない為、こちらも変身はしない。
首輪で変身が制限されている以上、最初に変身すれば不利になることもある。
特に、生身で見事な動きを見せた敵の前では。
「倒す!」
「俺と戦え!!」
「どっちでもいい!!」
金の影が茂の横を駆け抜け、上段から腕を振るった。
少女を担いだ男は見えているのか、避ける。金のカブト虫の怪人、コーカサスビートルアンデッドが剣を振るったのだ。
木々を巻き込み、地面を抉る。あれでは、少女を巻き込む。
そうはさせない。茂は決意をした。
即座に黒いグローブを脱ぎ捨て、左肘を曲げて両腕を右にまっすぐ伸ばす。
ゆっくりと天に回して、逆方向に両手をそろえて構える。
「変身ッ!」
揃った両手を高速で擦り、電気を迸らせる。
雷が茂の身体を包んで視界を白に染める。
「ストロンガーッ!!」
赤いプロテクターに赤い角。緑の瞳は怪人を映し、星のようにベルトは輝いている。
ストロンガーはその手に持つ、黄金の剣を振るってコーカサスビートルアンデッドを弾き飛ばした。
「誰だよッ!!」
少年の声そのままにコーカサスビートルアンデッドが苛立ちを隠さずに告げた。
162:名無しより愛をこめて
07/06/17 23:11:06 4VrD029f0
支援
163:法廷の勝利者 ◆TJ9qoWuqvA
07/06/17 23:11:52 xJUHo7u20
楽しそうにこちらを見つめる男と、怪人を前にストロンガーは仁王立ちをする。
「天が呼ぶ! 地が呼ぶ! 人が呼ぶ! 悪を倒せと俺を呼ぶ!!
聞け! 悪党ども! 俺は正義の戦士、仮面ライダーストロンガー!!」
揺るがぬ想いを胸に、ストロンガーは少女を救うべく戦いに挑んだ。
□
「さてと、そろそろ向かっておきますか」
もちろん、そのつもりは無い。ギャレンバックルを手にした北岡は、内心の喜びを隠して移動を開始しようとした。
しかし、その彼を呼び止める声がかけられた。
「待てよ。お前、それを持って逃げるんじゃないか?」
内心の動揺を悟られないように、振り向いて声の主を見る。
津上と同じくらい長い髪を茶色に染め、不機嫌そうな表情をこちらに向けていた。
白いTシャツにジーンズの姿はボロボロで、傷が至るところについている。
厳しい視線を飄々と受け流して、乾巧という青年と目を合わせる。
「何でそう思う? 俺はちゃんと行くつもりだよ」
「どうだかな。そのベルトを見る目、一瞬だけど俺のファイズのベルトを狙っていた奴と同じ目をしていたぜ」
その言葉に、つい舌打ちしそうになる。迂闊だった。
そういう経験をしているなら、自分がこのベルトを欲しているのを察してもおかしくは無い。
だが、所詮は歳若い青年だ。丸め込むのは難しくは無い。それに、自分には武器がある。
『信頼』という名の、武器が。
「ちょっと待ってください。失礼じゃないですか」
「……北岡なら、橘の遺志を受け継いでくれる。安心して行かせてやってくれ。乾くん」
164:法廷の勝利者 ◆TJ9qoWuqvA
07/06/17 23:13:39 xJUHo7u20
(ほらね)
内心ほくそ笑み、北岡は真剣さを込めた演技の表情で巧をまっすぐ射抜く。
「俺を信用できなくても構わない。だが、奴の言う通りにしないとあのあきらって娘が危ない。
だから、俺に任せて欲しい。君たちはここで俺たちの帰りを待っているんだ」
決まったと思いながら、巧を観察する。浅倉の脅しは強力だ。なにせ脱獄犯。
本当に何をしでかすか予想がつかない。それを踏まえれば、自分を向かわせるを得ないだろう。
「いやだね。あきらは俺が助ける」
(そうそう、大人しくあきらは俺が助けるって言っていれば……え?)
巧は踵を返し、ベルトを肩に担いでその場を離れる。
向かう先は浅倉が消えた方向。
「待ってください! 話を聞いてなかったんですか!?」
「聞いてるよ。だがな、そいつは信用できないし、あきらが危ない。
だったら俺が助けに行けばいい。お前らから聞いた話からすれば、そろそろ変身もできるだろうしな」
「無謀だ。乾くん」
「うるせぇ! 放って置けよ!!」
津上と木野の制止を振り切り、巧は先を進む。
ここまで聞かん坊だとは思わなかった。ここから先は、おそらく自分が望まない提案がされる。
「しょうがない。途中まで一緒に行きましょう。北岡さん」
「そうだな。乾くんもそれでいいだろ」
問題の巧は無言で先を進む。自分は木野たちに頷き返した。
ここで断っては巧の疑惑を肯定するようなものだ。仕方が無い。
(まあいいさ。適当に戦闘して、逃げればいいし。乾くんも参戦するつもりみたいだしね)
先を進む三人に続く。ギャレンバックルは鈍く輝いていた。
□
「仮面ライダーだって?」
165:名無しより愛をこめて
07/06/17 23:13:49 4VrD029f0
支援
166:法廷の勝利者 ◆TJ9qoWuqvA
07/06/17 23:15:25 xJUHo7u20
先程の怒りを収めたのか、こちらにコーカサスビートルアンデッドが向き直る。
対峙し、ストロンガーは睨みつけた。
「そうだ。お前は倒す。そしてそこの男。その少女を離せ!!」
「ハッ、正義の戦士だ? お前もV3と同じ事を言う奴だな。殺し合う、仮面ライダーってのはそういうもんだろ?」
「ッ!! そうか、お前が風見さんを殺した奴か。……覚悟しろ!!」
「最初からそういやいいんだよッ! やるぜ!!」
「僕を無視しても困るんだけどな」
コーカサスビートルアンデッドが剣を薙ぎ払い、木々が切り倒される。
狙いは変わらず浅倉を狙っていた。それをパーフェクトゼクターで受け止める。
「人間の姿でソリッドシールドが出せないのは意外だったな。結構痛かったんだ、あれ。
そいつを殺したら相手してあげるから、今は退いてよ。ストロンガー」
「あいつごと少女も殺すつもりだろ。なら、退くわけにはいかない」
「このバトルファイト……というより僕にとってはゲームかな? 素直に従う気は無いけど、そいつを殺せるなら別にその娘も一緒に殺してもいいや」
「ハハハッ! そいつを何とかしないとこいつを殺されるぞ。ストロンガー!」
煽る浅倉を無視して、コーカサスビートルアンデッドの隙を探る。
怪人を倒す。殺戮者から少女を取り返す。どちらも同時に行わなければならない。難しいことだ。
だが、ストロンガーはそこから逃げるつもりは無い。この程度のことができないで、何の仮面ライダーであろうか。
風見志郎にしろ、橘朔也にしろ同じ決断をしたはずである。
ストロンガーは剣を振り上げ、コーカサスビートルアンデッドに斬り込む。返す刀で少女を助けに向かう。
だが、その剣は見えない障壁で防がれた。いや、盾の形をした何かに遮られたのだ。
「残念。君から死にたいようだね、ストロンガー」
(しまった、少女が……)
迫るコーカサスビートルアンデッドの剣。背後からは金棒を振り上げ、こちらに迫る男の気配を感じる。
絶体絶命。だが、ストロンガーの目は死んでいない。コーカサスビートルアンデッドの剣を受け止めた。
甲高い金属の衝突音が樹海に響く。
167:名無しより愛をこめて
07/06/17 23:16:29 4VrD029f0
支援
168:法廷の勝利者 ◆TJ9qoWuqvA
07/06/17 23:18:01 xJUHo7u20
(身体で金棒を受け止めて、その隙に少女を救う。多少痛いが、しょうがない)
だが、その決意は叶わなかった。幸運な方向で。
「てりゃっ!!」
木々より現れた鉢巻をした男が、横跳びに浅倉に蹴りを放った。
さすがの浅倉も奇襲に対抗できず、少女を落として吹き飛ぶ。だが、嬉しそうな顔で乱入者を見つめていた。
その男は背中合わせに、浅倉へサイを構えて声をかけてきた。
「無事か!? ストロンガー!!」
「誰だか分からないが、助かったぜ。その娘を連れて逃げてくれ。後は俺が引き受ける!」
「おいおい、霞のジョーの名前を忘れちまったのかい? 明日夢、その娘を頼む!」
「…………はい。天見か」
明日夢と呼ばれた少年が、沈んだ様子で少女を運んでいく。
これで心配の種は無くなった。戦いの時だ。
「あいつは風見さんの仇だ。油断するな。行くぞッ! 霞のジョー!!」
「おうよッ!」
霞のジョーの答えを合図に、それぞれの敵に向かって散開する。
戦場に、青年の叫びが轟いた。
「あきら!!」
戦っている全員が声の主を見る。巧は駆け寄ってあきらの無事を確認し、ため息をついていた。
その様子を見て、北岡は会いたくない人間に三度再会した事実に、信じていない神様を呪いたくなった。
「北岡!」
「何でまだこんなところにいるのよ」
答えは返らず、浅倉は北岡に向かって金棒を投げた。
生身なのに、信じられない怪力だ。
169:法廷の勝利者 ◆TJ9qoWuqvA
07/06/17 23:19:17 xJUHo7u20
「危ない!」
津上が叫んで北岡を突き飛ばす。金棒が二人のいた地点の、後方の木を砕いていた。
浅倉が地面を蹴って近寄り、こちらのデイバックを奪う。
「キサマッ!」
「今変身できないお前に用はないッ!」
浅倉は木野を蹴り飛ばす。それを木野がブロックした為、反動でお互い離れた。
浅倉はデイバックを漁り、やがてニヤリと笑顔を浮かべて投げ捨てた。デイバックからなにかのグリップが零れ落ちる。
「北岡、これな~んだ」
「ゲッ、津上の支給品はそれかよ!」
北岡は津上の支給品を今までチェックしていない事実に愕然とした。知っていれば、あれを浅倉に渡さないように手を尽くしたのに。
浅倉がデイバックから取り出したペットボトルにカードデッキをかざす。
ゾルダや王蛇と違った、爪が中央に向かっているベルトが浅倉の腹に巻かれる。
右脚を前に出し、身体を横に向け、右手をゆっくりと前に突き出していく。左手は腰に据えている。
「変身!」
右手を振って、身体を正面に向かせてベルトにカードデッキをセットする。
鏡像が幾重にも重なり、黒いライダースーツのような強化スーツを精製した。
黒いバイザーの下にあるだろう狂気に満ちた瞳は、きっと自分に変身を促している。
疑似ライダーオルタナティブ・ゼロ。確か、香川という男が作ったライダーだったはずだ。
オルタナティブ・ゼロは落ちている金棒を回収し、こちらに向けた。
「さあ、やろうぜ。北岡」
「しょうがない。津上、付き合ってくれ。乾はキングの相手でもしていてちょうだい」
「北岡、僕の相手をしてくれないの?」
「先約が入っているって」
変身したキングの姿を確認した北岡は言いながら、構えている津上の傍に立つ。
浅倉と同じように、取り出したペットボトルにゾルダのカードデッキを掲げる。
170:名無しより愛をこめて
07/06/17 23:19:39 4VrD029f0
支援
171:法廷の勝利者 ◆TJ9qoWuqvA
07/06/17 23:22:09 xJUHo7u20
銀のベルトが北岡の腹に巻かれた。
津上の方は、腹にベルトを顕在させて、右脚を前に出し、身体を横に向けていた。
徐々に、右腕を手前へと引いていく。
「「変身!!」」
叫んで、二人は同時に姿を変えた。
全身を緑のスーツに包み、その上に銀の鎧を着込んでいる。三本線の細いバイザーは赤い瞳を走らせ、Vの字のアンテナが煌く。
右手には大型の拳銃が握られていた。
右隣に立つのは、身体を黒の皮膚に変え、金の鎧を精製した戦士。
金の角を携え、赤い瞳は、自分と同じ敵を睨みつけている。
二人はオルタナティブ・ゼロと対峙し、地面を蹴って近付いた。
「あきらは無事か……」
「ええ」
「あいつはあきらを攻撃したのか?」
「していましたよ。それが?」
あきらと明日夢を木野に任せ、巧は立ち上がる。
腰にベルトを巻いて、携帯を開く。その様子を見て、あきらを介抱する手を一旦止めた木野が声をかけてきた。
「戦うのか?」
「ああ。どうやら、俺は闇を切り裂いて、光をもたらす仮面ライダーファイズらしいからな」
その言葉に、ストロンガー、コーカサスビートルアンデッド、ジョーがこちらに向いた。
172:名無しより愛をこめて
07/06/17 23:22:26 4VrD029f0
支援
173:法廷の勝利者 ◆TJ9qoWuqvA
07/06/17 23:23:15 xJUHo7u20
視線が集まるなか、ボタンを打ち込む音が響く。
― 5・5・5 ―
(きついな、真理。お前の期待に応えるの。だが、やってやるよ!)
― Standing By ―
「あきらを虐めたツケ、今払ってもらうぜ! 変身!!」
待機音を響かせる携帯を天にまっすぐ向け、太陽の光を反射させる。
握る右手に力が入る。仮面ライダー、なんとも重い言葉だ。
なにせ真理が夢を託した名だ。だが巧は重さを受け入れ、ベルトに向かって携帯を振り下ろす。
― Complete ―
電子音とともに、赤いラインがベルトから、脚と腕を沿って身体を包んでいく。
光が瞬いて、黒い強化スーツを一瞬で精製する。
銀のアーマーが胸を覆い、ギリシャ文字のφを模した頭部は、金の瞳をコーカサスビートルアンデッドに向けていた。
右腕を振って、ファイズは装着の違和感を緩和させる。幾千と繰り返したその仕草は、もう戦いの合図となっていた。
「うおぉぉぉぉ!!」
雄たけび、コーカサスビートルアンデッドに向かって拳を振るう。
障壁に阻まれ、弾かれるが、諦めず再度攻撃をする。
ファイズは何度も、何度も障壁を殴りつける。その様子を見てコーカサスビートルアンデッドは呆れたように呟いた。
「無駄だよ。分かんない?」
「うるせぇ!! 真理はな、俺が救世主だって言ったんだよ! 夢を守ってくれたって言ったんだよ!!
正直重てぇよ! 逃げたいよ! けどな、いろんな職業から、人から逃げてきた俺だけど……」
174:名無しより愛をこめて
07/06/17 23:24:42 4VrD029f0
支援
175:法廷の勝利者 ◇TJ9qoWuqvA 代理
07/06/17 23:32:58 4VrD029f0
美容師になる夢を嬉しそうに語る真理。アイロンがけに四苦八苦していた自分に、アイロンのかけ方を教えた真理。
自分に当り散らし、その事を謝った真理。美容院での実施試験の結果がよかったのか、嬉しそうに帰り道を歩く真理。
もう、その真理に逢えない。だが、彼女が託した言葉。
闇を切り裂き、光をもたらす。仮面ライダー。
「あいつの言葉からだけは、ファイズからだけは、逃げるわけにはいかないんだよぉー!!」
二度と、真理のような犠牲は出したくない。ファイズである巧の願いはまだ叶わないだろう。
放送で聞こえた死者の数。それは殺し合いに乗った人間が多い事を示していた。
目の前のコーカサスビートルアンデッドも、その一人かもしれない。
だから、自分の願いを叶える為ファイズは拳を振るう。
奇しくもそれは、未来の乾巧が抱いた『夢』の為に戦う姿だった。
「電パンチ!!」
ファイズの左隣にストロンガーが並び、拳を振るった。電気が迸り、ファイズの視界を白く染め上げる。
「なかなかいい叫びっぷりじゃないか。後輩」
「勝手に先輩面すんな!」
「するさ。お前みたいな、気持ちのいい仮面ライダーの前ではな!!」
「てりゃっ!」
今度はファイズの右隣で霞のジョーがサイを障壁に突き刺していた。
嬉しそうに、視線を仮面ライダーたちに向ける。
「俺を忘れてもらっちゃ困るぜ。闇を切り裂くのは仮面ライダーだけじゃねえ。
俺だって、人間だって闇を切り裂いてやる! 行くぜ、ストロンガー、ファイズ!!」
その声に応えて、三人は障壁に拳を押し込んだ。
余裕を見せるコーカサスビートルアンデッド。それもそうだろう、障壁は一向に崩れない。
「提案だけど、君たちの支給品を置いていくなら、命だけは助けてあげるよ。どう?」
176:法廷の勝利者 ◇TJ9qoWuqvA 代理
07/06/17 23:34:07 4VrD029f0
「断る!」
「ふざけんな!」
「黙っていやがれ!」
ファイズの目の前で、コーカサスビートルアンデッドがやれやれと言いたげに首を振るう。
その様子に苛つきながらも、拳は一向に前に進まない。
コーカサスビートルアンデッドが剣を大きく振りかぶり、死刑執行人のように力を溜める。
それでも、ファイズは拳に力を込めるのをやめない。
周りの二人も一緒だ。逃げない。
それが仮面ライダーかと、ファイズは少し嬉しく思う。真理が願いを託した相手は、間違っていない。
いっそう力を込めた。無慈悲にも、剣が高速で迫ってくる。
あきらが目を覚ましたとき、自分たちを助けてくれた黒いロングコートの男、木野が目の前にいた。
そして、後ろには見慣れた少年が佇んでいた。
「安達くん!!」
「…………なんだよ。天見」
彼の頑なな態度に疑問を浮かべながらも、知り合いが無事な姿を見て喜ぶ。
続けて、巧たちを探して首を振る。
「乾くんなら、あそこで戦っている」
「乾さ……巧さん!」
金のカブト虫の魔化魍が剣を振り上げている。巧の危機に、あきらはつい名前のほうを呼んだ。あのままでは三人が危ない。
木野に助けを求めようと視線を向けるが、彼は悔しそうに首を振った。
「すまない。首輪の所為で、俺は後一時間強は変身ができない」
「そんな……」
そういえば、巧も浅倉に襲われたときは変身できなかった。
177:法廷の勝利者 ◇TJ9qoWuqvA 代理
07/06/17 23:36:03 4VrD029f0
笛を吹いて、音波を額にかざすが、身体が変化する予兆がするだけで、一向に身体が変わらない。
歯噛みする彼女の目の前で、コーカサスビートルアンデッドが剣を振るった。
木野が飛び出し、助けようとする。自分も動くが、間に合わない。
「やめてぇー!!」
力いっぱい叫ぶ。巧は、この殺し合いの場で自分を助け、慰めてくれた恩人だ。
そして、自分を守ってくれた人。その巧が、殺されようとしている。
身が引き裂かれるような想いに動かされ、腹に力を込めて叫んだ。
想いを込めたあきらの悲鳴に、青い影が剣を弾いて飛び込んできた。
「なに!」
コーカサスビートルアンデッドの疑問を無視するように、青い影はあきらに纏わりついてくる。
「トンボ……?」
そのトンボ型のメカは、彼女をある場所へと誘導している。すぐ傍にある、なにかのグリップ。
あきらはそのグリップを取り、構えた。なにが起きるかは分からない。だが、これが一番いい行動のような気がした。
トンボがそのグリップに向かって飛び、装着される。
― HENSHIN ―
グリップより、装甲が精製され、彼女の身体を包む。
その様子を、木野と明日夢が驚いた表情で見つめていた。
風を纏うことで鬼へ変身する少女に、ヤゴを模した重装甲の青い射手が姿を見せた。
彼女は戸惑うように両手を見つめている。
「天見さん、そのまま乾くんたちを援護するんだ!」
「は、はい!」
178:法廷の勝利者 ◇TJ9qoWuqvA 代理
07/06/17 23:37:20 4VrD029f0
彼女は銃を構えて、引き金を引く。発射された銃弾が敵の装甲に弾かれる。
狙いはいい。何しろ、彼女は銃に似た音撃武器、音撃管の使い手だからだ。
だが、ドレイクの銃はコーカサスビートルアンデッドを怯ませることもできない。
自分は巧の力になれないのかと、悔しそうに歯噛みした。
「僕を傷つける者はいないって事さ。さあ、続きを……」
コーカサスビートルアンデッドの声が途中で止まる。それもそうだろう。
ピシッと言う音をたて、障壁にひびが入ったからだ。
「なッ!」
「「「りゃぁぁぁぁぁぁ!!」」」
三人の叫びが重なり、木に障壁ごとコーカサスビートルアンデッドの身体を吹き飛ばす。
続けて、ファイズはファイズポインターにミッションメモリーを装着した。
― Ready ―
そのまま脚に装着し、ファイズが跳ぶ。
「ジョー、俺とファイズのキックが当たる瞬間、こいつの赤いボタンを押してから斬り込め!」
「っと、とと。おい!」
ストロンガーがジョーにパーフェクトゼクターを預け、ファイズと並ぶように跳ぶ。
― KABUTO POWER ―
― EXCEED CHARGE ―
ファイズの脚から光が放たれ、まだ倒れているコーカサスビートルアンデッドに赤い三角錐のエネルギーを展開させる。
そのまま右足を敵に向けるファイズとストロンガー。それに合わせて、ジョーが走る。
179:名無しより愛をこめて
07/06/17 23:42:33 rX1n8OIm0
支援
180:代理貼り
07/06/17 23:49:17 I+QyRbup0
「ヤアアアァァァァァッ!!」
「電! キィィィ―ック!!」
「うおりゃぁ!」
ファイズはエネルギーを纏い、障壁を貫かんと迫った。
ストロンガーは脚を放電させ、障壁に蹴りを放つ。
ジョーが剣の引き金を引き、赤い光を剣に纏わせた。
― Hyper Blade ―
衝撃が、三人の身体を駆け巡る。先程ひびが入った障壁を侵略し、ビキビキと音をたてさせる。
「馬鹿な……」
コーカサスビートルアンデッドは驚き、まだ障壁が崩れぬうちに三人を切り裂こうと構え始めている。
急いで割らないと。ファイズがそう思ったとき、コーカサスビートルアンデッドの剣を持つ右手が爆ぜた。
振り返ると、障壁の横から銃を構えている、あきらが変身したドレイクがいた。
(サンキュー、あきら)
ファイズが内心呟き、最後の一押しをする。
「「「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉーー!!」」」
鏡が砕けるような音が反響し、盾を貫いた三人の戦士がその攻撃を王へと届かせた。
二つの蹴りはコーカサスビートルアンデッドの胸板を砕く。ジョーが振るった剣は腹を横一文字に切り裂いて、緑色の血を吹き出させた。
コーカサスビートルアンデッドは木々をなぎ倒しながら吹き飛んでいく。
五、六本倒したころ、轟音が響き、粉塵が立ち込めた。
ドレイクが近寄るが、ファイズは手で制する。まだ、倒していない。
やがて、粉塵から折れた大樹が飛び出されてきた。狙われているのは、変身できない木野と明日夢。
181:代理貼り
07/06/17 23:50:00 I+QyRbup0
「危ない!!」
ストロンガーの声に反応して、ファイズは彼と共に二人を庇う。
衝撃が両腕を駆け巡り、痛みを感じる。しかし、骨が折れた様子は無い。
木野と明日夢が無事なのを確認して、ホッとする。
飛ばされてきた先を見るが、コーカサスビートルアンデッドの姿はもう無い。
「さすがだね。仮面ライダーは追い詰めると本領を発揮するって、すっかり忘れていたよ。
僕はゲームに乗っていないから、また会う機会があるかもね。北岡によろしく言っといて。じゃあね」
声のみを残して、敵は消え去った。
ストロンガーがカブトキャッチャーを使うが、完全にこの場から離れたらしい。
悔しさを浮かばせながら、これで戦いは終わりでないことにファイズは気づく。
「あいつらを助けに行く。胡散臭い奴だけど、死んでいい奴じゃない」
「私も一緒に……」
「いや、あきらはここでその男と一緒にみんなを守っていてくれ。まだあいつが戻らない保証は無いからな」
「おい、ファイズ。へばっているなら休んでていいぞ。俺が行くからな」
「誰がッ!」
ストロンガーに応えて、ファイズは率先して走る。
自分に並走する仮面ライダーと共に、仲間の元へと走った。
ゾルダのマグナバイザーが銃弾を吐き出し、木の葉を一枚吹き飛ばした。
木々の合間を縫いながらオルタナティブ・ゼロが金棒を振るう。
「危ない!!」
アギトが庇い、手の持つ槍で受け止めている。
今のアギトの装甲はいつもの金色ではなく青に染め、風を操るストームフォームへと姿を変えていた。
彼はオルタナティブ・ゼロに力で押されていく。
182:代理貼り
07/06/17 23:51:17 I+QyRbup0
このままでは危ないと判断したゾルダは、敵の頭に銃口を向けて、引き金を引いた。
オルタナティブ・ゼロは頭を動かして、飛び退く。そして、木を盾にしながら走り続けた。
最悪だ。丘のように障害物が少ないならともかく、こうも木々が多いと、邪魔で狙いがつけにくい。
ファイナルベント、エンドオブワールドも同様に、木々に遮られて威力を大幅に削られてしまうだろう。
しかも、今の浅倉はオルタナティブ・ゼロ。おそらくは素早さに特化したライダー。
これでは相手の思うままだ。なにか打開策は無いか、アギトを見つめる。
すると、彼は納得するように頷いていた。
「考えでもあるの?」
「ええ、取って置きの作戦があります! 耳を貸してください!」
耳を貸し、彼の提案を聞く。全てを聞き終えたゾルダは、少し肩を落とす。
「本当にできるの? そんなこと」
「やれます! 俺を信じてください」
「信じないとは言っていないけどね」
呟いて、ゾルダは一枚のカードをマグナバイザーにセットする。
― SHOOTVENT ―
肩に装着されるギガキャノン。二門の砲身から砲弾が発射された。
オルタナティブ・ゼロは左に軽く移動して、砲弾が通り過ぎるのを待っている。
だが、突然風が吹く。その風を受けて、砲弾が流れ、軌道を変えた。
「なにッ!」
流れを変えた砲弾の直撃を受け、オルタナティブ・ゼロが吹き飛ぶ。
驚いたゾルダは、仮面の下を半信半疑の表情にして、アギトを見つめた。
アギトはどうだ、と言いたいのか、先程まで槍を振り回していた手を止めて、胸を張って誇っている。
183:代理貼り
07/06/18 00:00:22 lXLoIaG50
このままアギトと組んでいればオルタナティブ・ゼロに勝てる。ゾルダがそう思い、敵を見つめたときだった。
「ク……ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ――――!!!」
オルタナティブ・ゼロが身体を屈伸させ、跳ね上がって飛び起きる。そのままゆらりと、幽鬼のようにこちらを見つめた。
ゾルダの背筋にゾクッと、悪寒が走る。アギトを見つめると、自分と同じ状態のようだ。
浅倉と対峙したとき、時々感じるこの悪寒。この時の奴はヤバイ。
「本当、お前は楽しませてくれる。北岡、おかげですっかりイライラが消えた。
続きをやろうぜ!! ハハハハハハハハハハハハハハハ―!!」
テンションを高めに、オルタナティブ・ゼロが地面を蹴ってこちらに駆ける。
ギガキャノンを放つが、速すぎて敵の遥か後方で土煙を上げただけだ。
これでは風で弾道を変える意味が無い。ゾルダは戦慄した。
奴はもっとも安全な方向を本能的に察知したのだ。
オルタナティブ・ゼロが金棒を薙ぎ払い、再びアギトが自分を庇って受け止めている。
しかし、重い攻撃を受けたストームハルバードは軋んで悲鳴を上げる。
ゾルダはアギトが近すぎて、銃を使えない。
表面的な心の内では巻き込んでも構わないと思っているが、それでは勝率が下がるだけだ。
歯噛みして、成す術がないことに気づく。
アギトの身体が掴まれ、こちらに投げ飛ばされる。それを受け止めながら、振り回された金棒の衝撃が身体を貫いた。
十メートルほど吹き飛び、二人は血を吐く。特にアギトは元から負っていた傷が開いたらしい。
せっかく癒えてきただろうにと、哀れに思う。
「さあ、早く来いよ、北岡。でないと死ぬぜ」
その挑発を無視して、今度はアギトにゾルダが耳打ちする。承諾するように、アギトが頷いた。
二人は震える身体を立ち上がらせる。突如、アギトが場を離れていった。
「おいおい、逃げるつもりか?」
184:代理貼り
07/06/18 00:00:57 lXLoIaG50
呟くオルタナティブ・ゼロに銃を向け、引き金を引く。
金棒で防御する敵を前に、ゾルダは自信満々に言い放つ。
「なに、作戦さ。どんな作戦かは、お楽しみにな」
「……しばらくお前が一人で相手になるのか?」
「不満かい?」
「いいや、最高だ」
再びオルタナティブ・ゼロが笑いながら迫る。銃弾で牽制しながら、少しずつ場所を誘導していく。
アギトなら、自分の言う通り行動してくれるだろう。その後が勝負所だ。
へまをするわけにはいかない。一つのミスで自分は命を落とす。
だが、上手く事を運ばせる自信はある。話術と精神誘導は、時の弁護士としてマスコミに祭られた自分なら得意分野だ。
それらを駆使して、敵をはめる。
(俺は不老不死になってやる。ここで死ぬわけにはいかないんだよ)
ポケットにあるギャレンバックルの感触を肌で確かめ、ゾルダは、時間を稼ぎ始めた。
ゾルダの指示を終えたアギトは、息を潜めてチャンスを待つ。
風で合図は送った。後はここにゾルダが来るのを待つだけだ。
正直、彼を一人にしたのは不安だった。だが、彼はこう言った。
(俺は口も腕前も達者なの。だから安心してやってきて頂戴)
そのときの視線は、一瞬自分の腹を見ていた。特に酷い怪我を見て、身体を癒す時間を稼ぐつもりでもあるんだろう。
北岡の人なりを知る人間なら、お人好し過ぎると指摘するだろう思考をアギトはする。
短くも、長くも感じる時間のなか、アギトの待ち望んだ人物は現れない。
合図からは結構時間が経っている。どうしたのだろう。
不安のまま、アギトはゾルダを待ち続けた。
合図の風が、ゾルダの右に小さく渦巻く。アギトと決めた、準備終了の印。
185:法廷の勝利者 ◆TJ9qoWuqvA
07/06/18 00:07:02 7k03gjQ60
(意外と早かったじゃない)
時間稼ぎは終わった。後は、誘導だ。オルタナティブ・ゼロと並走して、銃弾を放つ。
今まで移動しながら銃を放っていたのは、この時の為。場所を誘導しているのを悟られない為だ。
もっとも、こちらの目的を知ってもオルタナティブ・ゼロは誘いに乗っただろう。
それほど戦闘狂なのだ。目の前の敵は。
もちろん、悟られないように慎重に事は運ぶ。作戦を知られていると知られていないでは、結果が違う。
今は敢えてアギトの消えた方向へと向かっている。それで敵が興奮してきているのが見て取れた。
アギトと自分が何か作戦を持っているのに期待しているのだろう。
やがて、目的の地に着く。そこで、ゾルダは銃弾を一発放ち、感嘆の声を上げる。
「……津上の奴、上手くやったな」
「? 何もないじゃないか」
「馬鹿には見えない仕掛けさ。攻めて来いよ。今に分かるから」
「そうかッ!」
嬉しそうにオルタナティブ・ゼロが金棒を突き出し、ゾルダが吹き飛んだ。
空気を吐き出し、地面に叩きつけられ悶える。さすがに強力だ。
「おい、どうした? 策って奴を出してみろ」
「だから、これが策だって」
叫びならオルタナティブ・ゼロが金棒を振り上げる。
火薬の爆ぜる音が響くが、敵は身を庇うこともしない。
またも、金棒に吹き飛ばされる。
「……なにつまらないことしているんだ! 立て!!」
「言われなくても……立ちますって……」
だらりと脱力したまま、右腕を向ける。銃弾がオルタナティブ・ゼロの兜を跳ねる。
しかし、敵は身体を震わせるのみ。
「ただのはったりか!? 北岡ぁぁぁ!!」
186:法廷の勝利者 ◆TJ9qoWuqvA
07/06/18 00:08:08 m9DIpuA70
「まさか。はったりは使うけど、それは全部自分の為だって」
「だったら今すぐ自分の命を救ってみせろ!!」
敵に身体を蹴り上げられ、妙な浮遊感に包まれた。
ドサッと音がして、衝撃が身体を駆け巡る。立つのも困難だ。
「……お前さ、俺が命乞いの真似をしたとき、怒りまくっただろ」
「それがどうした」
「あの時お前、周り見てなかったよ。今回と一緒でな」
「ハァァァァァ、ハァッ!!」
アギトが飛び出し、蹴りをオルタナティブ・ゼロの背中に放った。
数十メートルほどの距離を敵が吹き飛ぶ。飛ばされた先で、四つん這いで周りを不思議そうに見回している。
それもそうだろう。樹海の中、木々が倒されて、障害物が無くなって広くなった場所にいるのだから。
気づかないのも無理はない。それくらい微妙な距離だった。もう少し近付かれたら、気づかれただろう。
自分は銃弾を放ち、反響する音でちゃんと取り除かれているか確かめた。
「だから言っただろ。馬鹿には見えない仕掛けだってな」
ゾルダはアギトの肩を借り、立ち続ける。マグナバイザーにカードをセットした。
閉じると同時に、男の低い声が、電子音として発せられた。
― FINALVENT ―
現れた巨人とも言うべきシルエットは、あらゆる砲身を敵に向けた。
その背中に自分の銃身を接続して、視線をまっすぐ向ける。
弁護した時からの浅倉との因縁も、これで終わりだ。
こちらの必殺の砲撃を邪魔する障害物はアギトが取り除いてくれた。
187:法廷の勝利者 ◆TJ9qoWuqvA
07/06/18 00:09:19 m9DIpuA70
わざわざ、攻撃を受けながらも冷静さを失わせ、こちらに身体を張って誘導した甲斐があった。
これで、必殺の一撃が放てる。
「お前との腐れ縁も、これでお終いさ!」
言い終わると同時に引き金を引いて、動く火薬庫ともいえるマグナギガの火器を吐き出させる。
火柱が上がり、稲妻の轟くような轟音が上がる。
爆発が起こって、土が舞い上がり、ゾルダとアギトの身体に積もっていった。
「やったか?」
「見たいですね」
二人は顔を見合わせ、とりあえず拳を突き合せた。
まだ油断はできないが、とりあえず無事ではすまないだろう。
時間が経つごとに、浅倉との鬱陶しい因縁も終わりかもしれないと思うと、心が躍った。
邪魔としかいいようが無い奴だ。食い物を奪う、秘書を誘拐する、家を荒らす。
自分的にも、世間的にもいらない存在でしかない。やっと肩の荷が下りた。
ゾルダが、迂闊にもそう思った瞬間だった。
「うわっ!」
アギトが、黒い影に締め上げられたのは。これはミラーモンスター。
なら、浅倉は死んでいない。粉塵の向こうに影が見えている。三連射を影へ放った。
ドスッという音が、下より聞こえてきた。血が自分の口から吐き出される。腹が熱い。
視線を下に向けると、自分の腹から剣先が生えていた。
「北岡さんッ!!」
アギトの叫び声が聞こえる。変身している体力も失っていく。
変身が解けたと同時に、煙が晴れた。そこには、柄を突き立てられた金棒が、三発の銃弾を受けて立っていた。
188:法廷の勝利者 ◆TJ9qoWuqvA
07/06/18 00:10:44 7k03gjQ60
「便利だよな。このカードデッキは。動きを速くするカードが混じってやがる」
爆音に電子音を隠して、剣とモンスターを召還し、動きを速くして攻撃をかわしたのだろう。
敵は剣を捻って、腸を絡ませている。ぶちぶちと千切れていく音を耳に、北岡は崩れ落ちる。
ズルズルと腸の絡まった剣を片手にオルタナティブ・ゼロが佇んでいた。
(俺は死ぬのか? 冗談じゃない! 俺は……)
「楽しかったぜ、北岡。おかげですっかりイライラが収まった」
続けて、敵が押さえつけられているアギトに視線を向ける姿が眼に入った。
「お前とも、また遊ぼうな。ストロンガーにも同じ言葉を伝えてくれ」
オルタナティブ・ゼロがスラッシュバイザーにカードを通す。
― WHEELVENT ―
ゾルダとは違った、女の声をした電子音が樹海に響く。
その声を受けて、モンスターがバイクに変形しながらオルタナティブ・ゼロの傍に立った。
彼はゾルダのデッキを拾う。
「こいつは記念にもらっておく。じゃあな」
排気音を響かせ、その場を去っていった。アギトが制止するが、虚しく響くしかない。
モンスターが一分間しか存在しないのを、北岡は確認している。しかし、たとえ一分間でもそうとうの距離を稼ぐだろう。
そして、まだ変身時間は三分ほど残っている。絶望的なほど、追いかけるのは無理だ。
アギトは自分の傍らに立ち、必死に名前を呼んでいる。
(不老……不死に……な……)
誰かが駆けつける足音が聞こえる。
遅いよ、と内心愚痴り、彼は意識を手放して、永遠に戻ることは無かった。
北岡秀一、その男、ゾルダ。
189:法廷の勝利者 ◆TJ9qoWuqvA
07/06/18 00:12:17 7k03gjQ60
彼は法廷では望み通りの展開をし、勝ち続け、時にはわざと負けて利益を得続けた。
ライダーバトルも同様に、不老不死を得るために参加した。
だが、ここは法廷ではない。
殺し合いが行われる、殺人遊戯場。
ここにおいて、法廷の勝利者は脱落をしてしまった。
□
盛り上がった土に、木の板が立てられていた。十分ほどで作った簡易的な墓の前で男女が悲しみに沈んでいた。
特に巧などは、自分への怒りで身体を震わせている。迂闊な事を言ったのではないか、後悔しているのだろう。
茂は、振り返り、両拳を合わせた。
「どこに行くつもりだ」
「……津上、そいつは東に行ったんだよな?」
「はい」
「分かった」
茂が簡潔に告げて、その場を去ろうとする。
「待て」
「止める気か? あいつは、風見さんに続いてそいつを殺した。許しては置けねえ」
「違う。俺も一緒に向かおう」
その言葉に、明日夢を除く全員が次々と木野と同じ言葉を出そうとしたときだった。
『あーあー、マイクテスト中。みんな聞こえてるー!?』
□
幼い声から出された真実に、巧は膝をついて、身体を震わせていた。
190:法廷の勝利者 ◆TJ9qoWuqvA
07/06/18 00:13:07 7k03gjQ60
無理もない。仲間を喪った直後に、大切な者の死体を弄ばれた事を知ったのだ。
特に彼は北岡を疑ってしまった為、彼の死に人一倍後悔していた。
その上、夢を託した少女を、埋葬することすら叶わない事実が明らかになった。
口から漏れるのは、警戒した犬のような唸り声。
やがて、巧は天を仰いだ。
「ウオオオォォォォォォォォォォォッ!!」
後悔と怒りを混ぜて、吠えている。それを痛ましげに見つめている少女。
巧は想う。
美容師になる夢を嬉しそうに語る真理。アイロンがけに四苦八苦していた自分に、アイロンのかけ方を教えた真理。
自分に当り散らし、その事を謝った真理。美容院での実施試験の結果がよかったのか、嬉しそうに帰り道を歩く真理。
もう、その真理に逢えない。そして、彼女の死は汚された。
真理を埋葬することも、叶わない。
やがて、巧は立ち上がり、ふらつきながら声のした方向へ歩いていった。
それを茂が止める。
「離せッ!」
「待てよ。俺も参加させろ」
巧が顔を上げ、茂を見つめる。その顔に鬼の表情を浮かばせた男に、彼の怒りの深さを垣間見た。
「ふざけているよな。浅倉にしろ、この声の主にしろ。こいつらが命を軽く扱ったなら、俺はお返しにこいつらの命を軽く扱う。
お前らも気合を入れろ! こいつらを……倒す!!」
その怒声に、皆の気が引き締まる。やがて、茂はどかっと、座り込んだ。
「まずは休憩だ。変身できるようになるまで、休むぞ。いいな」
皆が無言で頷く。その様子を確認し、茂は寝息を立てた。
191:法廷の勝利者 ◆TJ9qoWuqvA
07/06/18 00:30:11 7k03gjQ60
浅い眠りの中、静かに怒りながら。
ジョーは懐中時計を見つめる。
(水のエル、まだアギトは見つかっていない。それに、探すのが少し遅くなっちまう。
すまねえ。けど、このふざけた奴と浅倉を倒したら、必ずアギトを探す。だから安心して眠っていてくれ)
そのまま握り締め、決心する。明日夢を見ると、知り合いに会えたっていうのにまだ沈んでいた。
彼を立ち直らせたい。だから、彼が行った事はまだ自分一人の胸に収めておく。
ジョーは拡声器を使った声がした方向を睨みつけた。
霞のジョーは、傍にいる二人が『アギト』である事を、まだ知らなかった。
(ふざけてる……)
明日夢はあきらが持っているドレイクグリップを見つめて、不満を心の中で吐き捨てた。
その瞳は嫉妬で満ちている。なぜなら、彼があきらからドレイクグリップを借りたところ、ドレイクゼクターは影も形も見せなかった。
しかし、あきらに返した瞬間、呼んでもいないのに姿を見せた。
彼女はその変身道具に選ばれたのだ。仮面ライダーとして。
(鬼に変身できるらしいし、何でそんな天見を選ぶんだ。力の無い僕を選べよ。不公平だ)
デイバックの中にある冷たく輝くスマートバックルを握る。
その固い感触だけが、明日夢に安心を与えていた。
(仮面ライダーなんて、嫌いだ)
「津上、頼みがある」
192:法廷の勝利者 ◆TJ9qoWuqvA
07/06/18 00:30:59 7k03gjQ60
木野の真剣な表情を見つめ、津上は気を引き締める。
北岡の死は悲しいが、沈んでいるだけではいられない。
「なんですか?」
「もし、この戦いが終わって、皆が無事に帰れたとしたなら、お前が俺を殺してくれ。仮面ライダーとして」
「なッ! そんなことできるわけ無いじゃないですか!!」
「……俺はこのギャレンのバックルの持ち主、橘を殺した。そして、北岡を救えなかった。
俺に仮面ライダーである資格は無い。だが、橘の遺志を無駄にするつもりも無い。北岡の仇も討つつもりだ。
だが、この殺し合いの後は……」
「……ずっと、闇を切り裂き続ければいいじゃないですか」
驚いた表情で、木野がこちらを見つめる。
なんで彼はこんな簡単なことに気づけないのだろう。
「木野さんは、橘さんが死んだとき、傍にいたんです。彼が生きていたら、きっとしていた事を一番しないといけないのはあなたです。
だから、橘さんの代わりに戦ってください。俺も、北岡さんの代わりに、浅倉を倒しますから」
「津上……」
続けて、拡声器を通した声がした方を向く。
話に聞いた勇気のある少女を弄んだ悪魔。倒さなければならない。
津上は、仮面ライダーとしての決意をいっそう固めた。
木野は、津上の言葉を胸の内で繰り返していた。
橘と北岡の死を無駄にしない。その為には、この殺し合いを終わらせねばならない。
ギャレンバックルを握り締める。これを託す相手はもう決めた。
仮面ライダーレンゲル、上条睦月。
橘は、彼を闇から救って欲しいといっていた。なら、これの渡すべき相手は彼以外いない。
193:法廷の勝利者 ◆TJ9qoWuqvA
07/06/18 00:31:47 7k03gjQ60
木野は、ギャレンバックルを強く握り締めた。
激闘の三十分を潜り抜けた戦士たちは、ひとまず羽を休めた。
だがそれは、新たなる戦いの前触れに過ぎない。
彼らの戦いは、光をもたらすのだろうか。そのメンバーには分からなかった。
それでも、彼らはそれぞれの希望の為、歩みをやめなかった。
【北岡秀一 死亡】
残り28人
194:法廷の勝利者 ◇TJ9qoWuqvAの代理
07/06/18 00:53:06 1ufhAbgF0
【浅倉 威@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:樹海C-8】
[時間軸]:本編終盤辺り。
[状態]:左目負傷、全身に大程度の負傷(打撲、火傷など)、大程度の疲労。腹は満腹。
清々しい気分。二時間変身不可(デルタ、オルタナティブ・ゼロ)
[装備]:デルタフォン、デルタドライバー。音撃金棒・烈凍。
カードデッキ(オルタナティブ・ゼロ)。
[道具]:ファイズブラスター。三人分のデイバック(風見、北崎、浅倉)。
グランザイラスの破片。カードデッキ(ゾルダ)。
[思考・状況]
1:寝る。
2:その後、津上とかいう奴や、ストロンガー、あきらを殺しに行くのもいい。
【キング@仮面ライダー剣】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:樹海A-6】
[時間軸]:キングフォーム登場時ぐらい。
[状態]:全身に負傷大。疲労大。二時間変身不可。
[装備]:携帯電話
[道具]:なし
[思考・状況]
1:今回は失敗。休もうかな。
2:レンゲルとのゲームのため、ラウズカード探し。
3:この戦いを長引かせる。そのため、支給品を取り上げる。
4:戦いに勝ち残る。まだまだ面白いものも見たい。
5:今は戦うつもりは無い。
6:北岡に興味。しばらくしたら、また会おう。
195:法廷の勝利者 ◇TJ9qoWuqvAの代理
07/06/18 00:53:48 1ufhAbgF0
【天美あきら@仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:樹海B-6】
[時間軸]:中盤くらい
[状態]:全身のダメージ小。応急処置済み。二時間変身不可(ドレイク)。一時間三十分変身不可(鬼)
[装備]:破れたインナー、鬼笛。ドレイクグリップ&ドレイクゼクター。
[道具]:変身鬼弦(裁鬼)
[思考・状況]
1:巧が心配。
2:明日夢と合流ができてよかった。
3:放送の主(ドラス)と浅倉を倒す。
4:天道さんを助ける。
【安達明日夢@仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:樹海B-6】
[時間軸]:番組前期終了辺り。
[状態]:右手の中指先端欠損、全身の打撲。応急処置済み。
[装備]: デイパックニ人分(加賀美、影月)。影月は支給品不明です。 スマートバックル。
[道具]:果物ナイフ数本。
[思考・状況]
1:暫くはジョーと行動する。
2:なんで天見なんかを選んだんだ。不公平だ。
※アクセルレイガンは樹海エリアC-4に放置されたままです。
196:法廷の勝利者 ◇TJ9qoWuqvAの代理
07/06/18 00:54:43 1ufhAbgF0
【乾巧@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:樹海B-6】
[時間軸]:中盤くらい
[状態]:全身に負傷中。疲労中。応急処置済み。二時間変身不可(ファイズ)。
[装備]:ファイズドライバー、ファイズフォン
[道具]:ミネラルウォーター×2(一本は半分消費) カレーの缶詰 乾パンの缶詰 アイロンを掛けた白いシャツ。
[思考・状況]
1:放送の内容に絶望。
2:放送の主(ドラス)と浅倉を倒す。
3:神崎をぶっ飛ばす。
4:天道を助ける。
5:草加とも出来れば合流したい。
【木野 薫@仮面ライダーアギト】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:樹海B-6】
[時間軸]:本編38話あたり
[状態]:全身に小程度の負傷(打撲、火傷、刺し傷など)、中程度の疲労。
応急処置済み。一時間三十分変身不可(ギャレン、アギト)。
[道具]:救急箱。精密ドライバー。バタル弾。配給品一式×3(北岡、木野、キング)
ギャレンバックル。ラウズカード(ダイヤのA、2、5、6)
[思考・状況]
1:放送の主(ドラス)と浅倉を倒す。
2:橘の遺志を継ぎ、闇を切り裂いて光をもたらす。
3:北岡の仇をとる。
4:無力な人たちを守る。
5:医師の使命を忘れない。
6:ギャレンバックルを睦月に渡したい。
※バタル弾は改造人間のみに効果あります。
197:法廷の勝利者 ◇TJ9qoWuqvAの代理
07/06/18 00:55:39 1ufhAbgF0
【津上翔一@仮面ライダーアギト】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:樹海B-6】
[時間軸]:本編終盤。
[状態]:負傷中。疲労中。応急処置済み。二時間変身不可。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1:放送の主(ドラス)と浅倉を倒す。
2:木野さん、死んじゃ駄目ですよ。
3:元の世界へ帰る。
4:氷川、小沢と合流する。
※首輪の能力制限により、一日目のみバーニング、及びシャイニングフォームへの変身は制限されています。
※ドレイクゼクターは島のどこか、もしくは支給品として誰かに配られているかもしれません。
【霞のジョー@仮面ライダーBLACKRX】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:樹海B-6】
[時間軸]:クライシス壊滅後。
[状態]:全身に打撲。負傷大。疲労大。応急処置済み。
[装備]:サイ
[道具]:オルゴール付懐中時計
[思考・状況]
1:放送の主(ドラス)と浅倉を倒す。
2:水のエルの使命を全うする(アギトを倒す)
3:兄貴と合流。
4:明日夢が心配。
198:法廷の勝利者 ◇TJ9qoWuqvAの代理
07/06/18 00:56:20 1ufhAbgF0
【城茂@仮面ライダーストロンガー】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:樹海B-6】
[時間軸]:デルザー軍団壊滅後
[状態]:全身に負傷中。疲労中。応急処置済み。二時間変身不可。
[装備]:V3ホッパー、パーフェクトゼクター
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:放送の主(ドラス)と浅倉を倒す。
2:変身準備ができるまでとりあえず休む。
3:殺し合いを阻止し、主催者を倒す。
4:明日、ジェネラルシャドウと決着をつける。
5:自分に掛けられた制限を理解する。
※首輪の制限により、24時間はチャージアップすると強制的に変身が解除されます。
※制限により、パーフェクトゼクターは自分で動くことが出来ません。
パーフェクトゼクターはザビー、ドレイク、サソードが変身中には、各ゼクターを呼び出せません。
また、ゼクターの優先順位が変身アイテム>パーフェクトゼクターになっています。
199: ◆vHOqGgdf1U
07/06/18 03:35:26 1ufhAbgF0
GJ!
ゼロは浅倉に、ドレイクはあきらに渡ったのは上手いなと感じました。
しかし、浅倉、これで事実上変身するための道具は3つ。坊ちゃまとタメを張る極悪マーダーになってきているのは非常に楽しみな展開です。
北岡が死んだのは残念でしたが、結局ステルスのままで死んだのは少し趣き深かったり。
まとめサイト更新しましたが、更新している内に矛盾点がいくつかみつかりましたので、状態表は未更新です。
矛盾点としては木野の装備・支給品がなんの明言もなく、なくなっており、音撃弦・閻魔も放置されている場所が未記入な点です。
これがはっきり次第、状態表は更新したいと思います。
あと、天美を天見と誤表記されていますが、これはアップ時には修正いたしました。
ちなみにトリを新しくしました。前回のトリは単純だったため、>>137と>>141という偽者を生んでしまったのは反省いたします。
200: ◆AppnCvvfGU
07/06/18 09:03:23 O47V28/X0
投下乙!!そしていつもながらGJ!!
明日夢が嫉妬メラメラでこええええええええ!!
あきらをさん付けしなくなってるのは仕様なんですよね?
木野が死にそうだったんで心配だったんだがとりあえず無事でよかった…
彼には雅人(笑)と対面して欲しいww
まとめ更新も乙です!!
いつも俺はタイミングが悪いな…キャラ紹介、ひより矢車剣崎佐野の4つ
したらばに投下しましたので
ツッコミ、追加修正ありましたら皆さんよろしくお願いします。
201:名無しより愛をこめて
07/06/18 12:21:16 OCexzA8/O
>>200
うぉおおおおおおお
良ぉお~~~~~~~しよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし
202:名無しより愛をこめて
07/06/18 17:16:56 dwP5d94XO
投下乙です!そしてGJ!
あきらとドレイクの相性も良さそうですね。浅倉は、オルタナティブ(ゾルダのデッキも手に入れたんですよね?状態表にありませんでしたが)までも、手にしたか……
まとめサイト更新、いつもながら乙です!
そして一挙4人分投下◆Ap氏GJ!
ひよりの妄想電波にふいた。
203:名無しより愛をこめて
07/06/18 17:39:35 dwP5d94XO
良く見たらデルタありましたorz
ごめんなさい。
204: ◆TJ9qoWuqvA
07/06/18 19:37:54 7k03gjQ60
>>199
更新乙!
状態表、自分のミス文は修正しました。一時投下に修正版があります。
お手数ですが、こちらに差し替えてください。音撃弦・閻魔は◆AI氏に合わせてください。
誤字の修正ありがとうございます。
天見だとずっと思っていたorz
>>200
毎度ながら乙!
ついでに真理をリクエストしようかな。自分が殺した娘だしorz 自分で言って落ち込んできた。
もっと活躍させたかったな……。
明日夢の呼び方は仕様ですw
でも描写するの忘れてたorz
>>201
三個か!? 甘いの三個ほしいのか?
このイヤしんぼめ!!
205:名無しより愛をこめて
07/06/18 20:49:01 wej0pUv30
本郷がもし次回参戦したらどうだろう。
能力は旧式でもIQ600の頭脳で意外と活躍するかも。
206: ◆ozOtJW9BFA
07/06/18 20:50:25 9JVhHDt60
投下乙!そしてGJ!
北岡が遂に死んでしまいましたか。あの独特の軽いノリがもう見れないと思うと少し残念です。
それにしても浅倉は悪役が似合うw
>>200
いつもながら乙です!
資料として使うだけでなく、毎回楽しませてもらってます。
投下します。
207:月蝕 ◆ozOtJW9BFA
07/06/18 20:54:06 9JVhHDt60
まるで夢の中の様に、意識がはっきりしない。
俺は誰だ?
此処は何処だ?
俺は此処で何をやっている?
そうだ、俺はシャドームーン。
来るべきRXとの決着に備え、この身を休ませていた。
RXとの決着?
何故、奴と決着を付けなければならない?
――我が息子、シャドームーンよ。
誰だ!?
声が聞こえる。
誰かが話しかけている様にも
自身が内から話しかけている様にも
過去の記憶の声にも聞こえる。
――よいか。自らの運命に従いブラックサンと戦うのだ。
余計な口出しはするな!
――戦え! 戦うのだ。
言われるまでも無い。RXとは決着を付ける。
208:名無しより愛をこめて
07/06/18 20:54:12 7k03gjQ60
支援
209:月蝕 ◆ozOtJW9BFA
07/06/18 20:55:02 9JVhHDt60
――そうだ。それでいい。
――紀王、シャドームーンよ。
今、俺を何と呼んだ!?
「――!!!?」
朦朧としていた意識が、突如急激な覚醒に見舞われる。
、 、 、 、 、 、 、 、、 、
突如それの存在を感じ取った。
、 、、 、 、 、 、 、 、 、、
それが解き放たれたと感じ取った。
俺の剣――サタンサーベルの存在を。
何も覚えが無い筈だが、
俺はその剣を知っている。
俺はその剣が俺の物だと知っている。
俺はその剣の名がサタンサーベルと知っている。
右手を天にかざす、サタンサーベルを呼び寄せる為に。
こうすれば俺の手にサタンサーベルが来る筈だ。
………しかしサタンサーベルが来る気配は無い。
何故だ? 俺はかつてこうしてサタンサーベルを呼び寄せた筈だ。
ならば俺の方から取りに行くとしよう。
俺はサタンサーベルを求め、当ても無く歩き始めた。
210:月蝕 ◆ozOtJW9BFA
07/06/18 20:56:01 9JVhHDt60
◇ ◆ ◇
何処をどれだけ歩いたか、覚えちゃいない。
迫り来る死の影と悪夢に追い立てられ、辿り着いたのが公園。
その中には斧と盾を添えられた、簡易な墓があった。
添えられた斧と盾には、見覚えがあった。ドクトルGの墓か。
死者を弔うという習慣は、当然アンデッドには無い。
俺もかつては、それを行う人間の気持ちが全く分からなかった。
だが今の俺には、なんとなくだがそれが分かる。
そして強く戦士としての誇りに満ちていた、ドクトルGには敬意すら覚える。
だが何れにしろ、俺にはこいつを弔う資格は無い。
こいつを殺したのは、俺なのだから。
こいつとの戦いの際に、俺が与えたダメージは即死には至らなくとも致命傷だった事を覚えている。
自らの信念に殉じたドクトルGと違い、俺は唯の殺戮者だ。
死しても墓標も、弔う者も居はしまい。
例え生き残れたとしても、もう以前の様に天音ちゃんと共には生きられない。
理由はどうあれ、自分の意思で殺戮者の道を歩み出したのだから。
だが戦う事に躊躇いは無い。必ず天音ちゃん――そして剣崎、お前を…………。
途切れがちな意識を何とか保つ。
相変わらず負傷箇所からは出血があるが、どうやら僅かずつでも回復に向かっているらしい。
元々は人間の姿をしていても、人間より高い回復力を持つ。
制限下でも、それはある程度発揮されているのだろう。
211:月蝕 ◆ozOtJW9BFA
07/06/18 20:56:54 9JVhHDt60
それでもやはり負傷、体力共に全快するにはまだ時間が掛かりそうだ。
今までの様に考え無しに、戦いを仕掛ける訳にはいかない。
――使えるものは何でも利用し、講じれる策は全て講じる。
目前の墓の下に眠る男の台詞が、頭をよぎる。
敵である男の言葉だが、今の俺には何よりの助言だ。
カシャッ カシャ カシャ
後方から定期的な機械音……いや、足音が聞こえてきた。
首輪探知機を持ちながら背後からの接近を許した自分の迂闊さに歯噛みしつつ、右手にハートのA・チェンジマンティスを持つ。
カシャ カシャ
俺の背後から約10m程の所で、足音の主が止まった。
銀色の金属的な光沢を放つ体躯に、エメラルドに光る双眸を持つ者。
始めてみるそいつに関して俺は何も知らないが、直感が俺に確信を促す。
あいつは何者とも相容れない、孤独をしか生きられない者だ。そう、俺の様に。
殺し合いの中なら、なおさら味方となる者などいないであろう。
そして強い。ジョーカーの力を以ってしても、勝利を確信出来ない。
まして今の俺は満身創痍、勝算は薄い。
『あーあー、マイクテスト中。みんな聞こえてるー!?』
臨戦態勢を取る中で、天から拡声器による放送が降り注ぐ。
背後に居た相手は、視線を俺から天へと移す。
そして放送を聴き終えると、踵を返し俺から離れていく。
仕掛けてこない? 予想外の動きだ、こいつは殺し合いに乗ってないのか?
ならば好機だ、策を講じ利用する為の。
212:名無しより愛をこめて
07/06/18 20:57:10 7k03gjQ60
213:月蝕 ◆ozOtJW9BFA
07/06/18 20:57:48 9JVhHDt60
「待て!」
呼び止めるが、相手の足は止まらない。
ハートのAのラウズカードを、ベルトのバックルへ通す。
赤い単眼に黒い装甲の戦士にこの身が変身し、手中に出現した弓、カリスアローにラウズカードを通す。
―Tornado―
弓から放たれた小型の竜巻が、相手の脇を通り抜け進路上のアスファルトを盛大に破砕した。
唯の一撃だが反動が身体に堪える、やはり戦闘を行える状態では無い。
相手はこちらに向き直る。
「今のは威嚇だ。お前と戦うつもりは無い」
当然相手もそれが分かっているだろう、慌てた様子が見て取れない。
「お前は殺し合いに乗っているのか?」
「ああ」
「何故さっきは俺に仕掛けてこなかった?」
「俺の殺し合う相手はお前ではない」
成る程な、こいつは神崎士郎の定めたルールなど眼中には無い。
自分の望む相手と戦う事しか、興味が無いと言った所か。
「ならば俺と一時組まないか?」
「何?」
「見たところお前は負傷している、俺も傷を癒しているところだ。
互いの傷が癒えるまで同じ場所で休めば、安全性も高まる。ただ共に居るだけだ。お互い相手を守る必要は無い」
「お前の力など借りずとも、自分は守れる」
「制限を受けているのにか?」
「不要だ」
「だが目的の相手と戦うまで、無駄な戦いを遠ざけられる。違うか?」
214:名無しより愛をこめて
07/06/18 20:58:40 7k03gjQ60
215:月蝕 ◆ozOtJW9BFA
07/06/18 21:00:08 9JVhHDt60
僅かな沈黙の後、質問が返された。
「お前の傷はどれ位で癒える」
「回復にも制限が掛かっている様だから、後数時間は掛かるだろう」
「次の放送までだ、それまでは一緒に居てやる。だが俺を陥れようとしているなら、必ず殺す」
そう言って相手は、公園の隣に在るビルに向かっていった。
どうやら交渉は成立したらしい。
ビルの一階のロビーで俺は柱に背を預け座り込み、休みを取る。
隣の柱では同じ様に、シャドームーンが休みを取っている。
互いに交換した情報は名前だけ、無愛想な奴だがそれはお互い様だ。
下手に情報を引き出そうとして、せっかくの交渉がふいになるのは避けたい。
元々俺は交渉事が得意でないのだから。
先刻の拡声器による放送で起こるであろう戦闘は、おそらく多数を巻き込む集団戦になるだろう。
ならば俺一人でそこに割って入るのは、リスクが高すぎる。
ちょうど次の放送まで休みを取るのだから、それから拡声器を使った場所へ向かい漁夫の利を狙う。
とにかくこれからは今まで以上に慎重に、そして効率的に戦わなくてならない。
ドクトルG。お前の死に報いるなどとおこがましい事を言うつもりは無いが、お前の戦士としての姿勢に学ばせてもらう。
天音ちゃん。君と共に生きる資格を失っても、俺は君を決して見捨てたりはしない。必ず助けてあげるよ。
剣崎。例えお前がそれを望まなくとも、俺がお前を優勝させてやる。
◇ ◆ ◇
216:月蝕 ◆ozOtJW9BFA
07/06/18 21:01:17 9JVhHDt60
シャドームーンは負傷の具合を確かめる様に、腹に有る傷を触る。
(次の放送までには、完全に癒えているだろう)
サタンサーベルや先刻の拡声器による放送は、シャドームーンも気に掛けてはいたが
始との会話で多少落ち着きを取り戻した為、休息を優先させる事とした。
(焦る必要は無い、サタンサーベルは俺の剣なのだ。何処にあろうと最後には必ず俺の物となる。
そしてRXも簡単に死ぬような奴ではない。何故なら奴は俺と同じ、もう一人の…………)
未だ過去を取り戻さぬシャドームーンだが、その目的を見失ってはいなかった。
ゴルゴムの創世王は未だ滅んではいない。
その身が滅びても、運命の名の下にキングストーンを授けた二人の世紀王がいる限り。
【相川 始@仮面ライダー剣】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:市街地F-5】
[時間軸]:本編後。
[状態]:胸部に抉れ。腹部に切傷。
[装備]:ラウズカード(ハートのA、2、5、6)
[道具]:未確認。首輪探知機(レーダー)
[思考・状況]
1:次の放送までシャドームーンと共に休む。
2:天音ちゃんを救う。
3:剣崎を優勝させる。
4:ジェネラルシャドウを含め、このバトルファイトに参加している全員を殺す。
[備考]
※相川始は制限に拠り、ハートのA、2以外のラウズカードでは変身出来ません。
217:月蝕 ◆ozOtJW9BFA
07/06/18 21:02:17 9JVhHDt60
【シャドームーン@仮面ライダーBLACK RX】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:市街地F-5】
[時間軸]:RX27話以降。
[状態]:腹にドリルによる刺し傷。
[装備]:シャドーセイバー
[道具]:なし
[思考・状況]
1:次の放送まで相川始と共に休む。
2:RXを探し出し、決着をつける。
3:サタンサーベルを探し出し、手に入れる。
4:風見志郎(結城丈二)に借りを返す。
[備考]
※第二回放送を聞き逃しています。
218: ◆ozOtJW9BFA
07/06/18 21:04:00 9JVhHDt60
投下終了しました。
支援していただいてありがとうございます。
指摘点があればよろしくお願いします。
219:名無しより愛をこめて
07/06/18 21:22:45 7k03gjQ60
GJ!!
創生王フラグか? 面白い展開になってきました。
漁夫の利ということは……研究所に残るだろう連中のピンチ……
始さんは賢い。
220:名無しより愛をこめて
07/06/18 21:34:06 7k03gjQ60
×創生王
○創世王
まちがえちったorz
221:名無しより愛をこめて
07/06/18 21:57:40 dwP5d94XO
GJ!
まさか二人が組むとは思ってなかった。
しかし、始の背負う物は大きいなぁ。
222: ◆A.IptJ40P.
07/06/18 22:22:37 C1kErdGH0
>>159
GJ
補完ありがとうございました。
ついに北岡が逝ったか……周りの認識的には正義のライダーのままでw
つーか浅倉、オルタ零似合いすぎだwベースカラーが黒だと合うんでしょうかね?
>>199
更新乙です。
閻魔、もといあきらのデイパックは、C-6(浅倉と戦った辺り)に落ちてます。
中身は基本支給品と閻魔、変身鬼弦だけです。
>>218
GJ
この二人が組んだか……始、ジョーカーの本領発揮なるか!?
223:名無しより愛をこめて
07/06/18 22:53:48 Cz02LtBlO
オルタネイティブってサバイブ並に強いかわりに変身時間短かったはず。
このロワではどうなんかな?
224:名無しより愛をこめて
07/06/18 23:08:43 7k03gjQ60
龍騎ライダーは基本的に、ミラーワールド以外時間制限ないので、他と同じ十分でいいと思います。
ミラーワールドで戦っているわけではないですので。
225: ◆vHOqGgdf1U
07/06/19 00:15:34 1xxBKr/f0
GJ!
戦いを繰り返すのみだったカリスがドクトルGに学ぶという展開が、カリスの成長を表していて、これからの展開に期待が持てました。
シャドームーンも化けそうな伏線がありますし、色々とキャラの厚みが増してきて楽しみです。
まとめサイト更新しました。
『月蝕』、キャラ紹介のアップ、および、木野、あきらの状態表も勝手ながらこちらの方で修正、記載追加いたしました。
紛らわしいですが、木野の持っているのは元は睦月の配給品ですね。
また、ディスカリバーとGA04アンタレスは捨てた描写がまったくありませんでしたので、持っていると判断させていただきました。
何か間違いがあればご指摘をお願いします。
226: ◆TJ9qoWuqvA
07/06/19 00:42:42 Fb25vMqH0
>>225
更新乙!
後、状態表本当にすいませんorz
二度目じゃないか。俺
227:法廷の勝利者 ◇TJ9qoWuqvAの代理
07/06/19 11:28:21 p3Ci2wxy0
”仮面ライダーシリーズのサントラ”と思われる
MP3がありました。
URLリンク(1000yenkigan.fc2web.com)
228:名無しより愛をこめて
07/06/19 16:21:29 2B5tAvqiO
>>227
それはまずいんじゃ…
書き手さん達のやる気を刺激したいかもしれないけど、UPスレでやったほういがいい。
229:名無しより愛をこめて
07/06/19 17:27:43 xpvNT1ALO
したらばのライダー墓場に北岡先生が早く来て欲しいなぁ……
なんて楽しみにしてる。
230:名無しより愛をこめて
07/06/19 22:20:00 YRaOJwZFO
鬼嫁でぼっちゃまと秋山がw
231: ◆ooH1rChbak
07/06/19 22:43:25 2bWOXooY0
ドラス、キング、冴子、天道予約します。
232:名無しより愛をこめて
07/06/19 22:59:08 Fb25vMqH0
>>231
楽しみにしています。
それにしても意外な予約……
233:名無しより愛をこめて
07/06/20 02:26:39 R4MuT2Rp0
>>231
浅倉とキングはドラス戦は蚊帳の外かと思っていましたが、まさかキングも関わってくるとは、どう関わってくるのか、今からwktkです。
234: ◆AppnCvvfGU
07/06/20 11:41:21 1AFj04TM0
労いのお言葉ありがとうございます。
だんだん説明の文章が長くなっていってるので簡潔を心がけたい今日この頃。
書き手諸氏の記憶と妄想を揺さぶる引き金となれるよう努めたい。
>TJ9qoWuqvA氏
園田真理、了解です!!
ついでに草加雅人修正版、北崎も一緒に書いてる所。
近いうちにまとめて投下いたします。
氏の細かい描写と迫力ある戦闘シーンの大ファンだ!!
がんばってください。
235:名無しより愛をこめて
07/06/20 20:44:18 7jpVlkyR0
ふと支援のためにライダーのMAD(かっこいい音楽+映像の奴)をようつべで探してみたが
龍騎や555が多いのはいい、全ライダー集合もそれらについで多いのも分かる、
RXのぶっちぎりに多いMADの数も人気の高さの証明なんだと納得できる
しかしZO単品のMADが3つもあるってどういうこった?隠れた名作なのか?
Jも真も単品MADは一つも見つからないのにw
236:名無しより愛をこめて
07/06/20 20:55:02 7jpVlkyR0
あ、間違えた4つだw
URLリンク(www.youtube.com)
URLリンク(www.youtube.com)
URLリンク(www.youtube.com)
URLリンク(www.youtube.com)
やっぱりありすぎだろZOw
237:名無しより愛をこめて
07/06/20 21:01:31 b7ccfztY0
最後はやっぱ全員死んで本家みたいに終わるのかな。
やっぱ特撮板でやるからには、仮面ライダー達が力を合わせて強大な敵を
倒して終わって欲しいな。
238:名無しより愛をこめて
07/06/20 21:21:19 TGqhY/rKO
ZOが初ライダーな俺。
その後カブトまで離れてたけど
239:名無しより愛をこめて
07/06/20 21:37:09 rvuA5aMU0
いつ睦月がフロート(笑)を使ってくれるか楽しみな俺
皆殺しエンドは俺もいやだなぁ…
240:名無しより愛をこめて
07/06/20 22:30:06 aFypkUL+O
仮面ライダーに鬱展開は似合わないな…
今所
熱い戦いばかりで(*´д`)ハァハァする
241:名無しより愛をこめて
07/06/20 22:32:57 FLeXBDlN0
面白ければなんでもいい
欝展開でもそれまでをちゃんと足固めしてあるなら
唐突に欝展開に逃げるのは止めてほしいかも
242:名無しより愛をこめて
07/06/20 22:51:10 EhD12H/xO
仮面ライダーって作品を扱う以上、経過はどうであれテ-マはきちんと書き手さんも抑えてくれるはずだよ>熱い展開
ヒ-ローが何も救えない展開なんて見たくはないけど、俺は書き手さんを信じてるよ。
実際、今までの話は最高に熱いしさ。
243:名無しより愛をこめて
07/06/21 23:59:37 hSUl0tyd0
>>238
子どもの頃リアルタイムでやってたのはBlackだったけど
同時にそのころビデオで全ライダー見まくってたはずだからどれが初ライダーか俺わかんねえ
244:名無しより愛をこめて
07/06/22 00:43:30 F5drvDWjO
俺の初ライダーはクウガだったなぁ……
アギト 龍騎を終わった後はしばらく見ずに
カブトの後半から再び見始めた
245:名無しより愛をこめて
07/06/22 00:56:05 TqnDVv860
俺は初代ライダーかな。世代的にはRXだけどあんまり見てない。
本郷がバトロワに参戦したらどうなるんだろう。
頭脳プレーでかなり奮戦しそうだけど。
246:名無しより愛をこめて
07/06/22 01:04:43 shTdU67P0
BLACK世代。
後はレンタルビデオでいろんな仮面ライダーを見まくっていたな。
平成はアギトで復活したけど。
アギトが無かったら仮面ライダー熱は復活しなかったな。
247:名無しより愛をこめて
07/06/22 12:29:39 vppwwvyD0
俺はBLACK世代
はまったのはクウガから。
あれで日曜朝の早起きが習慣になって今に至る。
248:名無しより愛をこめて
07/06/22 18:26:34 8sSNrMr40
俺もBLACK世代だなぁ、やはり年代的にそうなのか
249:名無しより愛をこめて
07/06/22 20:02:55 tTGzB3y90
>>247
完全におまおれ
250:名無しより愛をこめて
07/06/23 00:05:42 7cT+0yB30
俺もBLACK世代。てつをの音撃は強烈だった。
>245
本郷はIQ600くらい?ある設定だから頭はいいんだろうね。
強さだけで左右されないロワにおいては優秀な能力かも。
身体能力もショッカーに選ばれたくらいだし高いんだろう。
251:名無しより愛をこめて
07/06/23 01:27:54 +jsHyxRmO
何よりも変身ベルトは本来の使用者本人じゃなくとも使える
252:名無しより愛をこめて
07/06/23 01:56:34 ChG4xWebO
小沢さん以上の頭脳に強靭な肉体か。
さすがに隊長は凄まじいな。
253:代理貼り
07/06/23 02:30:46 BkIXpTYa0
THE FIRSTが出てたら
一文字を龍騎ライダーに会わせたら楽しかっただろうなぁとは思うw
…そういえば新V3はドレイクらしいね
254:名無しより愛をこめて
07/06/23 02:45:36 BkIXpTYa0
うわ名前がそのままorz
255:名無しより愛をこめて
07/06/23 15:26:24 P7ZYBNbN0
にくちゃんねるの過去ログが復活してたからこの隙に保存できないかな?
256:名無しより愛をこめて
07/06/25 21:39:15 FvPuBGEp0
◆ooH1rChbak氏の報告はまだなのかな?
257: ◆AppnCvvfGU
07/06/26 11:48:50 UQD9KQ0G0
キャラ紹介、園田真理、草加修正版、北崎の3つしたらばに投下しました。
草加長い…orz過去ログで書き込まれてる情報も追加したらこんなコトになった。
秘密があるキャラや矢車みたいに途中で激変するキャラは説明長くなるよね…許して…
追加訂正ツッコミあったら皆様よろしくお願い致します。
あ、あと影山冴子、剣崎一真の追加修正版準備中です。
こっちは数日中に投下予定。まとめ管理人様、その時は書き換えをお願いできますか?
258:名無しより愛をこめて
07/06/26 19:36:10 xwJzpa/E0
乙!
草加が本当に凄い長さにw
今夜の投下に向けてwktkですよ。
259: ◆ooH1rChbak
07/06/26 21:35:20 zt7VvS5O0
すみませんが、まだ七割程度しか仕上がっていません。
期限を少し伸ばさせていただけないでしょうか?
260:名無しより愛をこめて
07/06/26 22:20:00 LfzVqGbQO
期待してます!!
261: ◆vHOqGgdf1U
07/06/27 08:37:35 tLNAG44x0
>>257
GJ!
キャラ紹介、追加させていただきました。
影山冴子、剣崎一真の追加も楽しみにしております。
>>259
期待します。
262: ◆AppnCvvfGU
07/06/27 18:23:36 GAc7JTkK0
>◆ooH1rChbak氏
がんばれー!!
今後の全体の大きな流れにも関係してくる話になるのかなあ・・・
どういう展開になるかwktkして待っています。
>◆vHOqGgdf1U氏
早速の更新ありがとうございました。
すばやい作業、本当に乙です。
263:名無しより愛をこめて
07/06/29 18:44:37 ZhtZIo3g0
◆ooH1rChbak氏、今日が延長期限。
投下を心から待っているぜ!
264:名無しより愛をこめて
07/06/29 20:19:07 g1tICnMsO
自分も期待してます!待っているぜ!
265:名無しより愛をこめて
07/06/29 23:24:07 IVMDkcQzO
そろそろ期限が…
266:名無しより愛をこめて
07/06/29 23:27:02 SWdPNioQ0
とりあえず今日まで待ってみましょう。
もし無理なら無理で、今日中に連絡いただければ相談ということで。
267: ◆ooH1rChbak
07/06/29 23:55:30 tKpPiw7h0
長らくお待たせしました。今から投下しますよー。
268:ドラスのなく頃に ◆ooH1rChbak
07/06/29 23:56:52 tKpPiw7h0
「・・・・・あいてて、ちょっとばかし、やりすぎたかな・・・・・・?」
体の所々を抑えながら、樹海を進む少年が一人。
――その名は、キング。
キングは先程の戦いの傷を癒すため、ある場所を探していた。
つい数時間前まで、自分達がいた小さなログハウス。
其処で体の傷を癒す算段だった。
「・・・・・・・ここ、だね。」
目的の物が眼前に見えてきた時、天から声が聞こえてきた。
『あーあー、マイクテスト中。みんな聞こえてるー!?』
まるで子供のようなその声が、森の木々の間に木霊する。
内容は、正直あまり興味が沸かなかった。
この放送に対し、キングが思ったことはただ一つ。
「・・・・・・おもしろそうじゃん・・・・・・」
未知なる存在への、期待。
たったそれだけと言われればそれまでだが、彼を動かすには十分過ぎるほどだった。
「予定変更、あっち行こっと」
キングは踵を返すと森へ向かって歩き始めた。
269:ドラスのなく頃に ◆ooH1rChbak
07/06/29 23:58:21 tKpPiw7h0
これが三十分前。
「あれー?多分こっちだと思ったんだけど・・・・・・」
独り言を呟きながら木々を掻き分けていくと突然視界が拓ける。
どうやらやっと森を抜けたようだ。
「・・・・・・おぉう?・・・・・・あそこか。」
キングの先には、一つの建物。
外から見る限り中は広く、まるで何かの施設のようにも見えた。
「さてさて、鬼が出るか蛇が出るか・・・・・・?」
まるで誰かに言っているように呟き、キングはその建物へ足を進めていった。
◆
「・・・・・・誰も来ないなぁ。」
研究所の内部で、ドラスが呟く。
「もしかして、科学者を出すのが惜しくて、天道君を見捨てた・・・・・・とか?」
振り向き様に、冴子が壁に包まれている天道を挑発した。
「・・・・・・かも、な。だがこれだけは覚えておけ。お婆ちゃんが言っていた。心無い力を持つ者は、心の篭った力を持つ物に必ず滅ぼされる・・・・・・ってな。」
天道は天道で身動ぎ一つせずに祖母の言葉を紡ぐ。
「面白い子ねぇ・・・・・・あなた、オルフェノクになってみない?あなたなら私みたいにいいオルフェノクになれると思うわ。」
冴子は天道の頬に手を添えながら詰め寄る。
右手には愛用のサーベルを構えながら。
「お断りだ。お前のような悪意の塊になるなどな・・・・・・それに・・・・・・」
一瞬、天道の脳裏に巧の姿がよぎった。
「それに・・・・・・オルフェノクになっても、人間の心を失わなかった奴を俺は知っている。」
静かに、はっきりと。天道は強い目と口調で言い返した。
270:名無しより愛をこめて
07/06/29 23:59:05 SWdPNioQ0
271:ドラスのなく頃に ◆ooH1rChbak
07/06/30 00:00:09 bLPkbqnK0
「ハッハッハッ、強気だね。まぁ、見捨てたって事はないと思うよ。」
ドラスが表情のない顔で嘲笑う。
「あら、何でそう思うの?」
疑問に思った冴子が聞き返す。
「だってあの人たち、お兄ちゃんに似てたからね。きっと助けに来る。」
お兄ちゃん。それはドラスの内側にいる麻生勝のこと。
似ていると言うことはつまり、内に秘めた正義感が天道を見捨てることはできないと言うこと。
合点がいくと、自然と口元が綻ぶ。
「どうしたの?冴子お姉ちゃん。」
ドラスの無邪気な声が聞こえてくる。
「いえ、何でもないわ。」
すぐに顔を元に戻し、ドラスへと顔を向ける。
直後、何かの気配を感じた。
耳を済ませると、遠くに何かが聞こえる。