07/10/18 16:19:10 e9xQ9tQ70
>>547
GJ
>>548
別に煽ってるわけじゃないから気悪くしたらごめんな。
人称混ぜるとか台詞独立させるのがメリハリになるとか
俺の常識からしたら信じられないんだが
これがケータイ小説やラノベを読む世代の感覚なのかねぇ…
551:名無しより愛をこめて
07/10/18 19:59:18 h1w6vo7p0
>>550
いやあ、表現が極端過ぎたかな?
maledict氏の文章はモノローグで構成されてるといっても、その中に
「地の文(主人公の意識を追っている文章)」
「主人公の発話されていないセリフ」←「ーー」で区切られてるものとそうでないものがある
「客観的な状況描写(主人公の立場ならば認識するのが困難だろう状況の描写)」
など異質な要素が混在していて、しかもそれらが改行によって区切られることなく
つむぎ出されている印象だったから、それらを分けた方が読みやすくなるかも?
と思ったのさ。別に文章作法の議論をしたいわけじゃないので、捨て置いてくれや。
552:maledict
07/10/18 20:28:22 huFaMQj70
>>548様、>>549様、励みになります
>>548様。なるほどと思います。どうもモノローグ以外では書きにくいのですが
修行してみます。
>>549様。書き込んだことはありませんがずっとロムっています。
昔のこのスレのリンクで「サソリ女」の改造シーンを見たのが
衝撃の出会いで、それ以来ずっと見ています。
実は上の話の最後の課長への悪ふざけは、名作
「エイミーさんのクリスマス」からヒントをもらったネタです。
ヒントやインスピレーションの元を挙げるときりがないのですが
(他にも舞方氏やBEEF氏など…)
>>503=>>505様
いなくなるつもりだったのですが、>>507で自分で考えたネタに自分で興奮して
ちょっと形にしてみました。どうでしょう?さっと書いたせいもあり、
またモノローグ形式になってしまいましたが。
追記>>550-551
>>551様、あ、そうなんです。「モノローグ」と言っても「語り手」と「作中人物の独白」という
二層があって、しかもたしかに「―」の使い分けがあいまいです。
意識的に「―」を「省略した」場合もありますが、たしかにわかりにくいかも。
553:血吸蝙蝠女・1/8
07/10/18 20:31:23 huFaMQj70
わたしは高校の帰り道、友達のヒトミと共に気味の悪い黒ずくめの男たちに誘拐されてしまった。
目隠しされたままの長い移動の果て、わたしはヒトミと引き離され、研究所のような建物の中、
黒ずくめの男たちに全身の衣服を切り刻まれた。さらに脇の下や大事な部分の毛、さらには
髪の毛や眉毛まで剃られ、そしてそのまま無理矢理この手術室のような部屋に連れてこられた。
男たちはわたしを丸いベッドの上に大の字に寝かせた。ベッドは柔らかく、灰色で粘着性の
素材で覆われていた。、沈み込んだわたしの身体はベッドに接着され、わたしがどんなに
もがいても動くことができなくなった。そして天井から不気味な声が響いてきた。
「きみはこれから融合生物チスイコウモリ女として改造される。そして我々の
世界征服のための忠実な僕として働いてもらうことになる。君の身体を固定している灰色の
シートは、チスイコウモリの皮膜を培養し、強化細胞と改造用ナノマシンを配合したものだ。
活性化が始まるとそのシートはまず君の皮膚と融合し、それから体内組織と神経系の
改造を開始する。一時間後には君はもう人間ではなく、すばらしい能力を備えた融合生物に
生まれ変わっていることだろう」
「いや!そんなのいやです!やめて!やめて!」
泣きわめき続けるわたしの言葉には耳も貸さず、黒い男たちはわたしの身体が入るくらいの
楕円形の枠を運んできた。枠には気味の悪い灰色のシートが張ってあり、上部には丸い
小さな穴が三つ空いていた。男たちは枠ごとそのシートをわたしの身体の上にかぶせた。
シートは鼻と口の穴以外のわたしの全身をすべて覆った。次に天井からライトのようなものが
降りてきた。
554:血吸蝙蝠女・2/8
07/10/18 20:32:24 huFaMQj70
「活性化光線、照射!」
天井の声を合図に、天井からのライトと手術台から不気味なピンク色の光線が照射された。
全身のシートは柔らかくなり、そして生き物のように動いてわたしの全身に密着した。
上下のシートも相互に密着し、わたしの全身はちょうど真空パックのお肉のような状態で
二枚のシートの間にすき間なく挟まれた。シートは微妙な圧迫と独自の刺激をわたしの皮膚に
加え、わたしの中にとても変な感覚を産み出した。その感覚と共に、女の子の大事な部分から
変な粘液が大量に出てきた。このとても変な拷問が約一時間ずっと続き、わたしの頭は
ぼおっとしてきた。
「融合完了!」
黒づくめの男の声と共にライトが消えた。恐ろしい瞬間だった。
「見るがいい!これが生まれ変わったお前の姿だ」
天井の声と共に、ライトが移動し、その背後の大きな鏡が現れた。
「いやああああああああああああああああああああああああ!」
わたしは絶叫した。
全身の皮膚はあの気味の悪い灰色の皮膚で置き換えられていた。乳首やおへそが少し
ひしゃげており、見た目は半透明のビニールを被せられているように見える。しかしそれが
今のわたしの皮膚そのものであることは、肌に触れる空気の感触ではっきり分かった。
555:血吸蝙蝠女・3/8
07/10/18 20:34:05 huFaMQj70
手の先とつま先を繋ぐライン、それに、両足の間、さらに手と足の指と
指の間すべてに、あの気味の悪い灰色の皮膜が広がっていた。指の間、脇の下、
左右の太ももの間に薄い皮膚が広がっている形だ。コウモリの羽根そっくりだった。
黒目は真っ赤に変わり、耳は鋭くとがり、口からは鋭い牙が生えていた。髪と眉は
ねずみ色のとても細い毛に置き換わっていた。きっとチスイコウモリの体毛なのだ。
「この後しばらくの時間をかけ、神経組織の再編成が進行する。お前の中に徐々に
チスイコウモリの本能と我々への忠誠心が芽生えてくるだろう。抵抗しても無駄だ。
だが、我々としてはむしろ君がその本能に全力で抵抗してくれることを期待している。
抵抗心が強ければ強いほど、完成態は強靱な意志を持つ勇敢な融合生物へと
成熟するからだ」
「…おねがい。元の身体に戻して…」
「それは技術的にも不可能だ。だが、元の身体に近い状態になる方法はある。
君の精神融合が完成し、チスイコウモリの本能が完全に覚醒すると、君は自分の
肉体を自分の意志で変形できるようになる。皮膜の伸縮も自在だ。手と指を伸ばし
て本物のコウモリのように空を飛ぶこともできる。そして人間に擬態することもできる」
男の言葉は残酷だった。わたしが人間の姿に戻るためには、わたしが人間の心を
完全に失うことが必要だということだ。いやだ、そんなのいやだ…。
「精神融合が完了するまでの時間、待機室で身体を休めるがよい。中には
『順番待ち』の友達が待っているはずだ。友達にその新しい姿を見せてあげるがいい」
さらに残酷な言葉と共に天井の声は止んだ。わたしはまだ麻痺している身体を
黒ずくめの男たちに引きずられ、「待機室」へ運ばれていった。
556:血吸蝙蝠女・4/8
07/10/18 20:35:37 huFaMQj70
「いや!来ないで化け物!あっちにいって!」
親友の残酷な出迎えにわたしは傷つき、涙を流した。
待機室の中にはやはり全裸にされたヒトミがいた。ヒトミの場合、わたしとは
異なり、髪の毛と眉毛は無事だった。何かわたしとは違う「改造」をされる予定なのかも
しれないと思った。ヒトミの改造は明日行われる、という告知が来ていたのだった。
ヒトミは根本的に優しい子だった。わたしの心がまだ以前のわたしであることが
分かってくるにつれ、わたしの奇怪な外見を極力気にしないように気丈にふるまって
くれた。そしてわたしにひどい対応をしてしまったことを心から詫び、泣いてくれた。
わたしはこの子だけは改造させてはならない、と強く誓った。わたしがわたしでいるうちに、
この子をこの建物から逃がす。
あいつの話ではわたしの心はやがて完全にチスイコウモリの本能に支配されてしまうという。
それは逃れられない運命なのかもしれない。たしかに心の奥に不気味などす黒い衝動が
うごめき始めているのをわたしは感じている。あまり時間はないような気がする。でも、
なんとかその残った時間で、この子を連れて脱走できたら、わたしはもう無理でも、
この子だけは助けることができるはずだ。
実はわたしはこういう、通常の科学力を超えた力をもつ存在と密かに戦っている人物に
心当たりがあった。その人物に彼女を委ねられれば、何とかなりそうな気がするのだ。
557:血吸蝙蝠女・5/8
07/10/18 20:37:39 huFaMQj70
「未完成の融合生物と改造素体一体が脱走!至急発見し捕獲せよ!」
待機室の壁を破り、黒ずくめの男を蹴散らし、わたしはヒトミを連れて逃げた。やつらが
わたしに与えた人間離れした力が今は役に立った。心の中の闇は少しずつ大きくなっている。
だが、まだまだ大丈夫だ。わたしたちは例の人物の電話番号を覚えている。一度聞くと
絶対に忘れない変な番号。そのチラシを学校の周りでばらまいているときはただの変態だと
思った。だが、その人物が不思議な姿に「変身」し奇怪な化け物と戦っている姿を
わたしたち二人は確かに見た。この建物を脱出し、どうにかしてあの電話番号につなげれば、
なんとかなりそう、そんな気がした。…目撃なんかしたせいで誘拐されてしまったのかも
しれない、という可能性は、いまは考えないことにした。
「ヒトミ、お願い。絶対に怪我だけはしないで。お願いよ。怪我しないでね!」
「任せて。本当にユミコはユミコのまんまだね。やさしいね!」
わたしの目のすぐ上にはヒトミのおしりがあった。すべすべして、とてもきれいなおしり。
この10メートル程度の崖を降り、下に流れる沢をたどれば、多分脱出のめどがたつ。最後の難関だ。
人間では無理だが、今のわたしの超人的な握力ならばなんとかなる。ただし、反対側の断崖が
迫っており、おぶって降りることはできない。わたしはヒトミを両肩にの上に立たせ、少しずつ降りる、
という作戦を思いついた。それほどの危険はない。しかし両側の崖から飛び出る鋭い岩が、
ヒトミの柔らかな肌を傷つける危険は少なからずあった。そして、今のわたしたちにとって、
それはとても深刻な危険なのだ…
558:血吸蝙蝠女・6/8
07/10/18 20:39:11 huFaMQj70
それがいかに危険なことなのか、ヒトミに正直に話すべきだろうか。…話すべきなのだろう。
わたしの心が少しずつ恐ろしい衝動に蝕まれている、という事実をきちんと告げるべきなのだ。
だがわたしは怖かった。ヒトミがまたあの恐怖の視線をわたしに向けるのが耐えられなかった。
自分勝手だとは思う。だが、わたしが何とかすればいいんだ。―そう。終わりよければすべてよしよ…
実際、もうほとんど地上に降りてきていた。あとは沢を下り、警察か人家を探す。やつらの
息のかかったやつらならわたしがやっつける。そしてあのヒーローに電話をかける。それで多分大丈夫。
ヒーローというのはそういうものなのだ。
そうしてわたしはヒトミに永遠の別れを告げ、ヒトミの見えないところで自分の命を絶つ。予定通りだ。
しかし、ヒトミはやはりことの重大さを認識していなかった。あたりまえだ。私が何も言わなかったのだ。
そしてヒトミはわたしに全幅の信頼を置いているのだ。
ヒトミは最後の最後で強引な飛び降り方をし、ひざ小僧をすりむいたのである。 ほんの少しの
赤い血がにじんできた。赤い赤い赤い赤い血。わたしは急速に自分の意識が麻痺するのを感じた…
559:血吸蝙蝠女・7/8
07/10/18 20:40:45 huFaMQj70
わたしはユミコにひどいことをしてしまった。
ユミコはわたしと共に謎の男に誘拐され、恐ろしい「手術」を受けて人間ではない生き物に改造されて
しまった。先にわたしが手術されなかったのは単なる偶然だ。わたしが先にああなっていたかもしれない。
なのにわたしはユミコを見て「化け物」と叫んでしまった。こっちに来るなと追い払ってしまった。
ユミコは泣いた。ユミコはこんな姿になってもまだ人間の心をそっくり残していたのだ。そんなことを
してしまったのに、ユミコはわたしをここから逃がそうとしてくれている。その人間離れした力を駆使して。
「あなただけは改造させない」
ユミコは何度もそう言って、やつらの手下をはねのけ、 壁を壊し、建物を脱出し、裏山にまで
たどり着いた。高い崖をわたしをかついでやすやすと降りてくれた。ドジなわたしは降りるときに
へまをして足をすりむいてしまった。ユミコは、大した傷ではないのに、
「このへんはやつらの影響圏。変な菌でもいるといけないわ」
そう言って丹念に血を吸い出してくれた。本当に優しい子。そして勇敢な子。
ほとんど絶望だと思えたのはそのすぐ後だ。もうあとは山を下るだけ、と思ったそのとき、
そばに近づくまで全然見えないような、不思議な仕掛けのしてある、とても高い壁に突き当たったのだ。
高さは50メートル以上。左右に果てしなく伸びている。つるつるした金属製で、ユミコの力でも
登ることなんて不可能だ。遠くからは追っ手の声が聞こえている。見つかるのも時間の問題。
そのとき、わたしの頼もしいナイト、ユミコが意を決してこう言ったのだ。
「この姿だけは見せたくなかった。でも、やむをえないわ。あなたを改造させるわけにはいかない。
ヒトミ、捕まって!」
そう言うとユミコは両手を大きく広げた。ユミコの腕はみるみるうちに太く、長くなり、その指は
細く、しなやかに伸びていった。やがてユミコの両腕は巨大なコウモリの羽根に変わっていた。
560:血吸蝙蝠女・8/8
07/10/18 20:43:45 huFaMQj70
「ユミコ、すごい!きれいよ!」
正直な気持ちだった。ユミコはにっこり笑ってくれた。そしてわたしはユミコに捕まり、
二人は大空へ飛び立った。
ユミコが向かったのは人家のある方ではなく、人気のない山奥だった。
「ユミコ、どこへ行くの?」
「いいから。わたしを信じて。わたしに任せて。あなただけは改造させない」
何か考えがあるんだ。わたしはユミコに全てを委ねた。
「さあ、着いたわ」
二人が着いたのは本当に人気のない林の中。
「ここまで追ってくるのはさすがに時間がかかる。今のうちよ」
「…今のうちって…どういうこと」?
わたしはほんの少し不安になった。
「あなたを改造されては困るの。あなたにはわたしの最初の僕になってもらわないといけないわ」
「何?何を言っているの?ユミコ?」
「ユミコ?わたしはそんな名前ではない。わたしの名は、融合生物チスイコウモリ女。
人間に強化細胞とナノマシンを注入し、わたしに似た存在に作り替える力があるわ。
しかもその精神をわたしの僕として簡単にコントロールできるの。これからもわたしを信じ、
私の言うことを聞いていればよくなるのよ。あっはっはっはっは」
ユミコだったモノはそう言うとわたしに抱きつき、わたしの首筋に牙を突き立てた。
<了>
561:maledict
07/10/18 20:53:44 huFaMQj70
お目汚し失礼しました。>>503様、どうでしょうか?
なんか自分の趣味に走ってしまった気もします。
「好きなパターン」というのが自分で分かってくるのも恥ずかしいものですね
最初片仮名で「チスイコウモリ女」と書こうとしたのですが、
以前同じタイトルがあったような気がして漢字にしました。気のせいかもしれません。
それと、「吸血鬼改造」ネタはKiss in the dark別館の「ハマダラカ女」が
ずばりそのものだった気がします。未読でしたらぜひどうぞ
そういえば>>550様もありがとうございます
地の文と独白の移行は読み直すと今回も一箇所あったことにあとで気づきました。
自分で色々試してみます。
それでは。
562:名無しより愛をこめて
07/10/18 21:56:35 hDIQY25F0
>>561
GJです。
こちらの作品も楽しませていただきました。
ただ、個人的にはユミコの意識が変わって行く所を読みたかったです。
これだけのものを書けるのであれば、
海マツリのチャットにでも顔を出してみたらいいんじゃない?
g-than氏や舞方氏と話ができるかも。
563:名無しより愛をこめて
07/10/18 22:56:03 aOfQhl1D0
>>561
GJ! やっぱあんた才能あるわ
何よりBeeF氏並みの速筆に驚いた。昨日の今日でもう書いちゃってんだもんな
564:名無しより愛をこめて
07/10/19 07:14:55 wpeG+VuH0
>>561さんありがとうございます!!まさかこんなに早く書いてくれるなんて
思ってませんでした!
蝙蝠女も良かったです!またなにか別な改造SSが見たくなったらお願いします!
565:maledict
07/10/19 21:01:10 8PQX1AYO0
>>562様
ありがとうございます。
オチの「かわいそうさ」を況を優先させてしまったんですが、
言われてみれば、ユミコの意識、血をなめたときにはまだ
完全には乗っ取られてなかったはずですよね、設定ミスでなければ(爆。
自分でも気になるところなのでちょっと続きを書くかもしれません。
チャットは家人もいるしなかなか難しいのですが、ちょっと惹かれます
>>563様
恐縮です。BEEFさんは精力的でしたよねえ。
ただ、あの憑かれたような熱意が今はちょっとわからないでもないです。
>>564様
気に入って頂けたようで本望です。
それでは…
566:maledict
07/10/19 22:03:55 8PQX1AYO0
そうだ。>>564様、せっかくのチスイコウモリ女さんとその僕さんなんですが、
お二人がちょっとひどい目に遭う続編が来てもいいでしょうか?
続編というより、「話はつながっているが作品の色が全然違う話」というか、
作者がやる二次創作みたいなものというか、パラレルワールド
みたいなものだと思って頂ければいいのですが…
567:名無しより愛をこめて
07/10/19 22:05:16 wpeG+VuH0
maledictさん
おkです!待ちどうしい!!!
568:maledict
07/10/20 09:11:46 L0L5ntWo0
>>567様は>>503様ですよね?(名前欄で名乗ってもらえるとわかりやすいです)
で、すみません。ちょっと後味悪いです。では。
569:血吸蝙蝠女Rx・1/5
07/10/20 09:13:02 L0L5ntWo0
わたしの意識は急激に麻痺していった。血血血血、
血への渇望が心を支配し、他の思考を追い出して行く。
そしてわたしの中にいるどす黒いもののが急速に
成長を始めた。破滅へのカウントダウンが始まった。
二つのわたしが混然とわたしの体を支配する。
わたしはヒトミの血をこれ以上見たくないという思いで、
わたしはヒトミの血を一口でも味わいたいという思いで、
ヒトミの血を口に含んだ。そして、
決して飲んではいけない、飲んだら終わりだ、
飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい、
という必死の思いで血を吐き出した。…いつまでもつだろう。
この甘い誘惑にいつまで耐えられるだろう。わたしはあと何分
わたしでいられるのだろう…。
あの声は「意志の力」と言っていた。抵抗は無駄。いつかは
必ず衝動に支配される。しかし同時に声は、意志の力で抵抗して
みせろとも言った。その方がやつらにとっての優秀な怪人が
作り出せるという残酷な理由で。―だがそれは、意志の力で
精神融合を覆すことは絶対にできなくとも、それを遅らせることは
できる、ということだ。そういう風にできている、ということだ。
570:血吸蝙蝠女Rx・2/5
07/10/20 09:14:17 L0L5ntWo0
わたしはこの、なんべんも確認した結論をもう一度思い浮かべ、
自分を励ました。あと何分持ちこたえられる?…いや違う!
あと何分持ちこたえればいい?
そうだ。もう崖は降りたのだ。計画を早めて、今わたしが
姿を消す方が、結局はヒトミの安全のためだ。わたしが
完全に恐ろしいチスイコウモリ女となり、ヒトミがその
最初の犠牲者となってしまう前に、わたしは自分の命を絶つ。
ヒトミが一人で里に逃げ、あのヒーローを呼ぶ。危険はとても多い。
でも、恐ろしい怪人と行動を共にするよりもはるかに安全だ…
わたしは、ヒトミに全てを話し、別れを告げる決意を固めた。
しかしその決意は次の瞬間無に帰した。わたしたちの前に
絶望が立ち塞がったからだ。
光学迷彩。多分わたしに装備されている装置の大規模なもの。
その光学迷彩を施した巨大な壁がわたしたちの道を塞いでいた。
わたしの思いつきは不可能になった。里に降りることは
できない。そしてもう追っ手はそこまで来ている。最後の手段。
それを試してみなければならない。うまくいくだろうか?それが
はたしてヒトミにとって幸福な選択だろうか。わからない。
だがいまはそれしかない。
わたしは決意を固め、増大する黒い衝動に自らを委ねた…
571:血吸蝙蝠女Rx・3/5
07/10/20 09:15:27 L0L5ntWo0
ユミコはいつのまにか本物の怪物になってしまっていた。
いつからなのだろう。最初からわたしをだましていた?
そうじゃない。少しずつ怪物の心に脅かされながらも、
わたしを怯えさせないようにそれを隠して戦ってくれたのだ。
たぶんわたしのせいだ。ユミコはわたしが血を流すのを
異常に恐れていた。きっと、血を見ることでチスイコウモリの
本能が目覚めることを恐れていたのだ。なのにわたしは…
ユミコの牙が首筋に触れる。…いいかもしれない。こういうのも
いいのかもしれない。
あの部屋からの脱出の間、ユミコはずっとわたしの頼もしい
守護者だった。ユミコはわたしの拠り所であり、あこがれであり、
ほのかな恋愛感情の対象にすらなっていた。ユミコの恐ろしい姿は
いつしかとても頼もしい、美しい姿に見えてきていた。
…だから、こういうのもいいのかもしれない。あこがれの人と
似た姿に生まれ変わる。そしてその忠実な人形として生きていく。
それは世間一般の幸せではないけれど、今のわたしには
とても幸せな生き方かもしれない。
ユミコの牙が突き刺さった。わたしの体は熱く火照り、感じた
こともない強烈な快感が全身を貫いた。そして心にぼんやりとした
心地のよいもやがかかり始めた。ああ、マスター、いえ、ユミコ、
わたしに命令をちょうだい。人形のわたしを動かしてください。
偉大なマスター。偉大なユミコ。
572:血吸蝙蝠女Rx・4/5
07/10/20 09:16:55 L0L5ntWo0
ユミコ、いえ、チスイコウモリ女様は早速口を開いた。
「聞いてヒトミ。最初で最後の命令を伝えるわ。その能力で
わたしを殺しなさい。そして、正義の心を失わず、
自分の意志と判断を使い、幸せに生きなさい。命令よ」
「マスター…ユミコ…何を?従えない…従えません!」
「最後の賭けだったの。あの壁を越えるには、翼を使うには、
一度本能に主導権を譲らないといけなかった。そして、
本能に屈服したふりをして身を潜めた。チャンスは一度。
血を吸う瞬間、吸う側も吸われる側も変な快感に包まれる。
その瞬間を待ったの。さあ早く!時間がないの。本能に支配されて、
今の命令を撤回されたら終わりよ。命令!命令よ!!」
ユミコも涙を流していた。わたしも涙を流した。だが
マスターの命令は絶対だった。なかば自動的にわたしの
爪は鋭くとがり、ユミコの右の乳房の下に押し当てられた。
そしてもう人間のものではなくなりかけている強力な
腕で、その爪を斜め上に突き上げた。そこはナノマシンが
教えてくれたわたし達の急所。ユミコはごぼごぼという音を
たててあっというまに泡になった。お別れを言うひまもなかった。
「第一の命令完了。続いて第二の命令に移行。正義の心を
失わず、自分の意志と判断で、幸せに…幸せに生きます」
言いながら嗚咽がとまらなかった。言い終えるとわたしは
大声で泣いた。いつまでも泣き続けた。
573:血吸蝙蝠女Rx・5/5
07/10/20 09:19:14 L0L5ntWo0
ユミコの遺したナノマシンがわたしの体を変えていた。
皮膚の色は薄黒いネズミ色に変わっていった。ユミコの
ようなきれいな半透明じゃない、のっぺりした色。
腕と足に伸びた皮膜もユミコのよりちょっと頼りない。
目と耳と歯が変化するのも感じられた。そして、凶暴な
闘争本能と、どす黒い吸血衝動が育っていくのを感じた。
わたしはもう二度と人間には戻れないことをはっきり感じた。
だけど、ユミコはわたしに「正義の心」も遺して
くれた。わたしの意志と判断力も返してくれた。これさえ
あれば、闇の力に負けることはない。そう思えた。
ユミコ、あなたはわたしに擬態して人間社会でひっそり
生きることを願ったんだと思う。でもごめん。わたし戦うわ。
あんなやつらがいる限りこの世界に本当の「幸せ」なんて
来はしない。あなたの人工筋肉には及ばないけど、強い
力を手にいれた。そしてこの邪悪な吸血鬼の力もある。
戦い方はいくらでもあるわ。例えばあの黒ずくめの男たちを
襲って片っ端からわたしの僕にする。組織は大混乱。
その隙に建物を破壊する。きっとできる。やってみせる。
「キキィィィィィィッ!」
わたしはコウモリのおたけびを上げた。宣戦布告だった。
「でたな怪人!変身!とうっ」
いつの間にかにわたしの後ろにはあのヒーローが立っていた。
ヒーローは問答無用で強力なキックを放った。まっすぐ
右胸に近づいてくるつま先を見ながらわたしは思った。
―もうじき会えるね、ユミコ…。
<了>
574:maledict
07/10/20 09:23:58 L0L5ntWo0
以上。お粗末様でした。
「改造させない」という気持ちが徐々に黒く歪んでいくパターンと
どちらがいいかと思ったのですが、色々考えてこっちにしました。
別パターンも何らかの形で書いてみたい気はしています。
タイトルは「話はつながっているが作品の色が全然違う」という
ことでこうしました。別に批判の意味はないのでファンの方怒らないでください。
ぼくはどちらも大好きです。
実はさらに、「話はつながっているが作品の色が全然違う話」も思いついたので
勢いで書いてしまいました。あの洗脳システムだとこんなことも
起きてしまうのではないかな、というのが着想の元です。
575:血吸蝙蝠女《蛇の足編》・1/4
07/10/20 09:25:26 L0L5ntWo0
チスイコウモリ女第二号アイコは強欲で高慢な、悪の使者に
ふさわしい女性だった。彼女はかつての親友だった僕、すなわち
吸血人形のイクエとともに人間社会に潜伏し、世界征服のための
工作に日夜暗躍していた。今日も二人は会社のトイレでタバコを
ふかしながら恐ろしい悪の計画を練っているところだった。
「ねー、あたし『電車男』に出て来たエルメスのティーカップが
欲しいの。手に入れてくれない?」
吸血人形イクエは悩んでいた。彼女はアイコの忠実な僕だったが
経済的には追い詰められていた。―そうね、一番元手のかからない
方法というと…―。彼女は同僚のウメコを非常階段の下に呼び出し、
その正体をむきだしにして言った、
「わたしはチスイコウモリ女第二号アイコ様の忠実な僕。おまえは
わたしの忠実な僕に生まれ変わり世界征服のために働いてもらう」
「ひっ…!」
悲鳴を上げる間もなくウメコの血液ににナノマシンと強化細胞が、
そしてその脳には強烈なエクスタシーが注入された。苦痛と恍惚の
入り混じった表情のまま、薄目の奥の目は赤く変じ、耳はとがり、
口からは鋭い牙が生え、その皮膚の色は生気のない灰色となり、
ウメコは恐ろしい吸血人形に変貌してしまった。
「吸血人形ウメコよ。最初の命令を伝える。エルメスのカップを
入手し、偉大なる第一マスター、アイコ様のもとへ届けるのだ」
576:血吸蝙蝠女《蛇の足編》・2/4
07/10/20 09:27:50 L0L5ntWo0
吸血人形ウメコは親がかりの裕福な暮らしをしていたが、
たいそうものぐさな女だった。彼女は帰宅後まっすぐ家に帰ると、
妹エリコのいる風呂場に向かった。エリコはちょうど風呂上がりで
これから体を拭くところだった。ウメコは正体をむき出しにした、
「どうしたのおねえちゃ…ひっ」
「わたしはチスイコウモリ女第二号アイコ様の忠実な僕である
イクエ様の忠実な僕。おまえはわたしの忠実な僕に生まれ変わり
世界征服のために働いてもらう」
悲鳴を上げる間もなくエリコにナノマシンと強化細胞と強烈な
エクスタシーが注入された。
「あ、あ、あふ…」
苦痛と恍惚の入り混じった表情のまま、薄目の奥の目は赤く変じ、
耳はとがり、口からは鋭い牙が生え、イクエに抱きかかえられた
その身体は見る間に生気のない灰色に変色した。太ももには、
流れ出た一筋の愛液と共に、コウモリのような皮膜が成長し始めた。
皮膜は脇の下と手足の指の間にも伸び、エリコは身も心も
コウモリと人間を合成したような怪物に変わってしまった。
「吸血人形エリコよ。最初の命令を伝える。エルメスの食器を
入手し、偉大なる第一マスター、アイコ様のもとへ届けるのだ」
577:血吸蝙蝠女《蛇の足編》・3/4
07/10/20 09:31:28 L0L5ntWo0
吸血人形エリコは僕となる前から姉思いの優しい子で、ぜひとも
マスターの望みを叶えたいと思ったのだが、残念なことに「エルメスの
食器」のことをよく知らなかった。―仕方ない。たしかオトエの家は
瀬戸物やさんだったはずだ。明日高校で…。そう思ってとりあえず
エリコは寝ることにした。
翌朝、エリコはオトエを屋上に呼び出すと正体をむき出しにして言った、
「わたしはチスイコウモリ女第二号アイコ様の忠実な僕である
イクエ様の忠実な僕であるウメコ様の忠実な僕。おまえはわたしの
忠実な僕に生まれ変わり世界征服のために働いてもらう」
いいかげん悲鳴を上げる暇くらいありそうなのだが、ともかく
悲鳴を上げる前にエリコはオトエの喉笛に鋭い牙を突き立てた。
エリコとオトエは強烈なエクスタシーに包まれ、オトエの体内の
ナノマシンはオトエを見る間にエリコと同じ姿に変えていった。
さらに青い性に火のついた二体の吸血人形はそのままいけない遊びに…
(以下自主規制。…というのはウソで作者の能力不足です)
「…あふ。えー、吸血人形エリコよ。最初の命令を伝える。エルメスの、
えーと…お皿を入手し、偉大なる第一マスター、アイコ様のもとへ
届けるのだ。…ごめんね、わたしこういうのに疎くって」
人を怪物に変えておいて[「ごめんね」もないものだと思うが、今のエリコは
そんな人間の倫理が通用しない、恐ろしい吸血人形なのだった。
578:血吸蝙蝠女《蛇の足編》・4/4
07/10/20 10:06:17 L0L5ntWo0
吸血人形オトエは悩んでいた。マスターであり親友であるエリコの
命令、今すぐにでもかなえに行きたかったのだが、極度に生真面目で、
無断欠席や早退などがどうしてもできない性格だったのだ。―そうだ、
たしかカナコが午後は授業ばっくれて買い物に行くとか言っていたわ。
オトエはカナコを校舎の陰に呼び出し、正体をむき出しにした…
―アイコの元に、ブラジル在住の主婦にして69代目の吸血人形ポリーンが、
1/250スケールのザクレロのプラモを献上しにきたのはその翌々日だったという。
…世界征服の日は近いのか、遠いのか…
<了>
579:maledict
07/10/20 10:07:51 L0L5ntWo0
…失礼しました(汗
そういえば初めての三人称作品でした。
三人称はどうも苦手だと思っていたのですが、
この話だとごく自然に書けました。不思議ですね。
それでは。
580:maledict
07/10/20 10:10:43 L0L5ntWo0
しまった。>>577の16行目の「エリコ」は「オトエ」の間違いでした。
似たようなミスがもし他にあったら脳内変換してください。すみません。
581:名無しより愛をこめて
07/10/20 10:25:03 58uP5Lb40
>>580
GJ。maledict氏はすっかりこのスレの顔になってしまったな
でも個々のSSについて感想が欲しいと思われるのなら、連続投稿は控えた方がいいと思うぞ
582:maledict
07/10/20 10:52:50 L0L5ntWo0
>>581
たしかに。ちょっと速すぎでした。すみません。
妄想力もちょっと衰えてきたのでほんとにお休みせねばという気がします。
583:maledict
07/10/20 11:45:03 L0L5ntWo0
>>581様
言い忘れましたがレス下さってありがとうございます。
リンクに「様」を付けるのも忘れてました。失礼しました。
584:>>503=>>567
07/10/20 19:42:12 6jzmJCgE0
読みました!私が頼んだものをここまで広げてくれてありがたいです!!
また見たいものがあったら頼みますね!!!
585:名無しより愛をこめて
07/10/21 00:45:49 2ZQdAegu0
>>489
ゴーグルファイブと言えば終盤マズルカが手術台みたいなものに寝かされて手術を受けるシーンがあったと記憶しているんだが。
誰か知っている人いません?
586:maledict
07/10/21 09:20:12 nGpiXqqt0
>>584(503)様
二番目の話、なんかいやな話ですみません。書いてて鬱になりました
続きの予定はありませんが、ヒトミが死ぬシーンはないので
ひょっとしたらヒーローが間違いに気づき
以後ドジっこの助手としてレギュラー化する可能性もゼロではないかと。
多分体力はタックルくらい。で、多分必殺技は「カタルシスバイト」。
人間の悪人を改心させるすごいワザなんですが
改心した人の肌のつやが悪くなったりむやみに血が吸いたくなったり
する副作用が出るのでそうなので封印中なんです。多分
それでは少しお休みします。いつかまた…
587:名無しより愛をこめて
07/10/23 23:57:28 iKT2JukY0
さとう珠緒を改造したいな。
うるうる光線やおっぱいミサイル、プンプンビームで世の男たちを骨抜きにして欲しい。
588:maledict
07/10/24 01:38:53 a4STUdqs0
…勢いで海マツリに投稿してしまいました。本格的に妄想絞り尽くしました。
当分書けません(すでに、けっこう既出ネタとかぶっているし)
もともと、あのページのトップの言葉を読んで自分でも書いてみたくなった
という経緯があるので、やっと送れてうれしいのですが
589:名無しより愛をこめて
07/10/24 01:43:42 /NNUYh/E0
テレ東でやってる実写版キューティーハニーで改造シーンとかないの?
590:名無しより愛をこめて
07/10/24 01:46:01 0MfHJMWa0
>>587
さとう珠緒といえば昔「志村けんのバカ殿様」で蝶の妖精で出たことがあった。
あれみて珠緒ちゃんを蝶の改造人間にしたいなと思ったよ。アゲハチョウかモンシロチョウの。
591:名無しより愛をこめて
07/10/24 02:10:08 aPEgS6uI0
>>590
見た!!よかったねアレ!!
592:名無しより愛をこめて
07/10/24 10:59:27 a4STUdqs0
>>589
こないだの回、悪の病院で知らぬ間に改造されてしまうというイイ話なのに患者が男ばっかり…
593:名無しより愛をこめて
07/10/24 11:52:27 tR0HH2r50
>>588
投稿オメ。
見てきました。
面白かったです。
他の方々に勝るとも劣らない作品だったと思います。
またこちらにもなんか書いて下さいませ。
594:名無しより愛をこめて
07/10/24 23:40:17 XCpzEzDb0
元ZONEのメンバーを改造してジャッカー電撃隊みたいな女の子だけのサイボーグ戦隊にして悪と戦わせたい。
595:名無しより愛をこめて
07/10/25 22:14:27 j1YTfm+g0
岩盤浴の機械って改造手術マシンみたいなのが多い
町のポスターで見かけたズバリというのが見つからないけど、例えばこれとか。
URLリンク(www.ganbanyoku-navi.net)
一件くらい本物の悪の組織の出店が混じってるのではないかと妄想
596:名無しより愛をこめて
07/10/27 12:52:06 hAT2M9YI0
今回のUltrasevenX、エスが寄生生物の細胞(?)を飲むシーンがよかった。
「人質から解放されたふりをして仲間に襲いかかる」シーンに続けばもっとよかったのに…
597:maledict
07/10/28 13:45:55 BEYKCrFh0
多分一種の病気なのでしょうが、ちょっと違う方向に妄想が進みました。
三部作ですが次回は間が空くと思います。
石ノ森御大の出身地で、自分も昔住んでいた仙台を舞台にしました。
タイトルは「アンチショッカー同盟仙台基地壊滅!!(前編)」です
本編の展開や地理関係(方向音痴なので)に誤認矛盾等あったらすみません。
10レスで終わりますので、またちょっとだけお目汚し失礼します。
598:AS同盟仙台基地壊滅(前編)
07/10/28 13:47:47 BEYKCrFh0
時は1972年の仙台市。朝の広瀬通り沿い、繁華街の少し手前の
喫茶店。広瀬葉子はそこで、マスターが丁寧に入れるコーヒーを
待っていた。今日は久々の非番の日なのだった。
彼女の表向きの身分は国立東城北大学の事務職員。だがその
真の姿はアンチショッカー同盟日本支部東北分室の人事部長。
かつて彼女はCIAにつながる機関に属する有能な女スパイであった。
謀略渦巻く世界に嫌気がさしていた折、アンチショッカー同盟の
さる幹部から「引き抜き」を受け、今の仕事に就いたのだった。
秘密組織の人事管理は極めて重要な職務だ。情報漏洩は即組織の
壊滅を意味するからである。現在、仙台基地常駐職員43名と東北地区
外部構成員95名の個人データを、ほぼ彼女一人が管理している。
ばたんと音がしてウェイトレスが入って来た。遅刻らしい。
「営業中」の札がからんからんと鳴っていた。遠くの救急車の
音が一瞬聞こえた。「交通戦争」か。ゲルショッカー以外
にも物騒なことの多い世の中だわ、と彼女は思った。
ウェイトレスはエプロンをつける間もなく会計をしている。
これでお客は彼女一人。今日はいやにお客が少ないな、と感じた。
599:AS同盟仙台基地壊滅(前編)・2/10
07/10/28 13:49:09 BEYKCrFh0
基地の安全管理の脆弱さが今の彼女の懸念だった。来週からでも
早速、情報管理体制の抜本的刷新に着手する予定でいた。幸い
現段階では、東北にこれほど大規模な基地が存在するという情報が
漏れている気配はない。今のうちに立て直せば多分大丈夫だ。
この地の構成員の多くは家族を悪の組織に殺された一般人である。
彼らは悪を憎む心こそ人一倍強いが、戦いや組織運営については
素人が多い。込み入った人材管理などはどうしても彼女のような
プロに丸投げになってしまう。しかしそれは非常に危険なことなのだ。
万一彼女自身が敵の手に落ちれば、基地は一挙に壊滅するのだから。
通常の拷問や自白剤の類ならば、なんとか持ちこたえる自信はある。
しかし、ゲルショッカーという組織に常識的な抵抗手段は通用しない。
なぜなら、やつらは…
ようやくコーヒーが入った。葉子は丁寧にその匂いをかぎ、一口
なめて味を確かめ、水を飲むふりをして舌を洗う。スパイ時代からの
機械的な習慣。明らかに上質なコーヒーに申し訳がない気がして、
今度はきちんと味わうためにゆっくり飲んだ。…おいしい。
いつもよりほんの少しおいしい。葉子は何気なくマスターに尋ねた。
「ねえマスター、気のせいかな。豆変わった?香りが上品になった
気がするの…うっ…」
葉子の全身に突然しびれが拡がり、彼女はテーブルにつっぷした。
「…へえ。さすがは元腕利きスパイですねえ。無味無臭、
絶対に気づかれない麻痺剤って話だったのに…」
600:AS同盟仙台基地壊滅(前編)・3/10
07/10/28 13:50:54 BEYKCrFh0
ドアの前に立っていたウェイトレスが後ろ手にカギを閉めた。
表の札は、先ほど彼女の手で「準備中」に替えられていた。
「一週間前、あるとても偉いお方が、まったくの気まぐれで
このお店に入ったの。そのお方は各国情報部の主要構成員の
顔と名を二十年分に渡り記憶している。そしてあなたに気づいた」
「興味を感じたそのお方は、あんたの引退をめぐる経緯を調査し、
背後に『同盟』の臭いを嗅ぎ付けたんだ」
葉子は身動きできないまま二人の話を聞くしかなかった。
「そしてわたしたちを戦闘員に改造して、こうして網を張ったの。
あなたのお陰で偉大な組織の一員になれた。感謝しているわ」
「そういえば薬の時間だよ」
「そうね」
男と女は胸から何か薬を取り出して飲んだ。二人は見る間に
黄青赤の原色に彩られた禍々しいコスチュームに包まれた。
表では救急車が停止する音。ウェイトレスだった女戦闘員が
ドアを開け「救急隊員」を導き入れた。「救急隊員」は
戦闘員たちと、右手を上げ奇声を発する特有の儀式を行い、
それから葉子のぐったりした肉体を救急車に運び入れた。
601:AS同盟仙台基地壊滅(前編)・4/10
07/10/28 13:53:10 BEYKCrFh0
葉子は身動きひとつできない状態で車内に寝かされた。
自らの不覚を恥じ、内心で仲間たちに詫びたが、後の祭りだった。
「救急隊員」は注射の準備をしながら葉子に話しかけた。
「深刻な病状だ。早急に『手術』の必要がある」
葉子は痺れた舌をどうにか動かして何か言おうとしている。
「病名かね?まずはその弱い肉体を徹底的に作りかえねばならない。
それから、そのやっかいな病巣を切除する必要がある。
『正義の心』という病巣をだ。今夜までには全て完了するだろう」
麻酔が打たれ、葉子の意識は失われた。「救急車」は山奥に隠された
VTOLの元へ向かい、別の戦闘員が運び込んだ発泡スチロールの箱と
共に、葉子は東京のゲルショッカー基地へと運ばれていった。
葉子が目覚めたのは大きな手術台の上だった。真っ先に
浮かんだのは言うまでもなく「手術」のことであった。
「手術」はこれからなのか?もう終わってしまったのか?
葉子はこの上ない恐怖と不安の中、目を開け、自らの肉体が
以前のままかどうかを確認しようと、天井の手術灯に映る
自分の姿を見た。円形の手術台に、全裸に剥かれ大の字の姿勢で
寝かされている女性の肉体が目に入った。少なくとも見た限り、
改造手術によるいかなる変形も受けていない。葉子はとりあえず
安堵した。眠らされてからそれほど時間は経っていないようだ。
…だが、このままではいずれ「手術」は始まってしまう。葉子は
頭脳をフル回転させ、今ここで何ができるかを懸命に思案した。
602:AS同盟仙台基地壊滅(前編)・5/10
07/10/28 13:56:29 BEYKCrFh0
―お決まりの拘束具はなぜか取り付けられていない。しかし
手も足も鉛のようにびくともしない。多分、先ほどの麻痺剤がまだ
効いているのだ。だが、時間を稼げば麻痺剤の効果は消えていく
のではないか?チャンスはその時…―そこまで考えたときだ、
「お目覚めかね、広瀬葉子君」
天井から低音の男性の声が響いた。恐らくゲルショッカー首領
であると思われた。葉子はこの恐るべき人物との会話をできるだけ
長く引き延ばし、時間を稼ごうと決意した。
「あなたが首領かしら。ここがどこかは知らないけど、
早くわたしを元の場所に戻した方がいいわ。わたしの体には
発信器が埋め込まれているのよ。わたしが変な場所に移動すれば
ただちに仲間に所在が知れるわ」
「発信器ならば『救急車』の中で摘出し、君に化けた元ウェイトレス
の戦闘員に持たせている。正午近くまで喫茶店で過ごし、中央通りで
昼食とウィンドショッピング、その後勾当台公園で読書をし、夕食の
おかずを買い東城北大の宿舎へ帰宅…誰も怪しむ者などいないだろう」
「…ねえ。実を言うとわたし、ゲルショッカーの引き抜きを
待ってたの。あんな素人くさい組織、せっかくの能力が腐っちゃう。
情報は喜んで提供するわ。ただし、わたしの改造手術なんてしてる
暇はないのよ。今日の夜までには情報管理体制の大幅な刷新作業が
終わり、古い書類は焼却される。明日になったらもうわたしが一人で
引き出せる情報はなくなってしまう。今すぐわたしを基地に戻して。
古いデータを集めて帰ってくるわ。時間がないのよ」
葉子は嘘八百を並べ、脱出の機会を作ろうと懸命になっていた。
603:AS同盟仙台基地壊滅(前編)・6/10
07/10/28 13:58:08 BEYKCrFh0
「なるほど。さすが、元KGBの二重スパイらしい発想だ。だが、
その程度の背信的な職務に良心の呵責を感じて逃げ出した君が
果たして、一切の倫理を超越したわがゲルショッカーの作戦に
協力できるかね?
そして、それ以前に君はどうやら勘違いをしているようだ。
君が眠っている間に、君の改造手術は脳改造も含め全て完了して
いるのだよ。起動電源への充電が始まれば、今は鉛のように
動かない体内のサイボーグ部分が起動し、改造細胞は活性化し、
そして脳内に埋め込まれた電子機器が君の神経システムに
不可逆的な変性を加え、君はわがゲルショッカーの忠実な
改造人間として活動を開始する。刷新された情報の収集は
その後でゆっくりと進めてもらうことにしよう。…まあ、
情報管理体制の刷新云々自体、君のハッタリだろうがね」
葉子の心を深い絶望と恐怖が覆った。まもなく、白い隊員服に
身を包んだ戦闘員が、ピンク色に点滅する「充電端子」を運んできた。
半透明のディルドーに豆電球を仕込んだような外見だ。そして白戦闘員は
葉子の膣の入り口に通電性ジェルをたっぷりと塗り、端子をあてがった。
「いや!やめて!変態!…いやだ!充電なんていや!脳改造はいや!!」
白戦闘員はゆっくりと端子の挿入を開始した。葉子は残された
生身の筋肉をどうにか動かそうとするが、棒のような人工骨格
はびくともせず、葉子の足や肩の筋肉が空しく盛り上がるだけだった。
「挿入完了。通電開始!」
ジジジという音と共に充電が始まり、葉子の股間はまばゆく輝き、
その全身には強烈なエクスタシーが走った。
604:AS同盟仙台基地壊滅(前編)・7/10
07/10/28 14:00:26 BEYKCrFh0
葉子の肉体の変容が始まった。胸と腹部の皮膚は明るいオレンジ色に
変わり、左腕と背中の皮膚は赤黒いごつごつとした形状に変化し始めた。
赤黒い皮膚は硬質ゴムのような素材で、一面にとげが拡がっている。
ホヤ、特にマボヤと呼ばれる固着性生物の体表によく似ている。
左肩は盛り上がり、まるで大きなホヤが貼り付いたようになり、
ホヤの吸水口と出水口に似た突起も形成された。右腕と両足は
オレンジ色と黒の、昆虫の脚のような装甲に覆われた。右ひじからは
太い針が伸びた。両乳首と膣の外部もホヤの出水口状に変形した。
そして最後に乳房に黒とオレンジの同心円状の文様が形成された。
―通電後十数秒で、葉子の首から下は異形の怪物に変わっていた。
脳内の電子機器も作動を開始していた。
脳改造によって埋め込まれる装置は、改造人間の言語中枢、知覚中枢、
運動中枢とフィードバックを繰り返し、改造人間の精神構造に一定の
改変を行い、それを定着させる。
第一の改変は改造人間の倫理感覚、道徳的自制心の鈍化・解体と、
破壊的で反社会的な諸々の欲望の昂進である。ニューロンに発信される
強力なパルスの洪水を浴びる内、どんなに穏和で倫理意識の高い人間も、
快楽犯罪者のような危険な心理構造の持ち主に変わってしまう。
―俗に言う「悪の心」の植え付けである。
605:AS同盟仙台基地壊滅(前編)・8/10
07/10/28 14:03:36 BEYKCrFh0
第二の改変は自らの帰属意識ないしアイデンティティに関する
体系的な錯覚の誘発である。自らが属する家族、仲間、団体、国家などへ
向けられた愛情、連帯感、義務感などの感情が全て、巧妙なイメージ操作
によってゲルショッカーに対して向け直され、同時にゲルショッカーの
外部に対する激しい敵意と恐怖が、やはり錯覚として刷り込まれる。やがて
感情レベルの「錯覚」は「確信」に、そして当人にとっての「真実」へと
成長し、世界の中心にゲルショッカーが位置すると感じられるようになる。
それまでの人生の意味や価値観等すべてがその感情に基づき半自発的に
書き換えられる。やがて唯一の拠り所となったゲルショッカーを客観視し
批判的に反省する意欲や意志も失われる。「忠誠心」の植え付けである。
葉子は調査によりこのような脳改造のメカニズムについてかなりの
知識を有していた。そしてその知識と強い意志の力で、脳内に休みなく
暴力的な変容を加えてくる機械に対し、はかない抵抗を試みていた。
葉子の目は薄く開かれ、眉間には深いしわが刻まれ、口は半開、その
首はゆっくりと力無く左右に振られている。
半ば閉じかけた目は葉子の意識レベルが低下し、朦朧とした状態に
近づいたことを示していた。眉間のしわは、葉子の心の中に拡がり
根付こうとする「悪の心」に対する葉子の必死の、そして空しい抵抗を
表していた。半開の口は通電に伴うエクスタシーと、徐々に力を増す
邪な欲望たちが差し出す、甘美な快楽の効果だった。そして振られた首は、
変わりゆく自分自身への恐怖からの唯一安らかな逃げ場たる、「ゲルショッカー
への忠誠」という選択肢が差し出す甘い誘惑への、力無い拒絶であった。
606:AS同盟仙台基地壊滅(前編)・9/10
07/10/28 14:05:03 BEYKCrFh0
「ほう、予想以上の意志の力だ。これはかなりの逸材だ」
「変性がこれだけ緩慢に進めば、知的能力の損傷は最小限に抑えられる」
「これほど有機的に精神変容が進めば、イソギンジャガーのような
脳改造の解除も起きようがない。完成後に装置を外しても大丈夫なほどだ」
「これは幹部クラスの優秀な怪人として完成するのではないか?」
科学陣は驚嘆の声をあげていた。
長い抵抗の果て、首の振りは緩慢になり停止した。眉間のしわが
ひときわ深く刻まれやがて静かに消えた。一筋の涙が流れた後、葉子の
表情は全てを納得したような、あるいは母親に抱かれた赤子のような、
安らかな面立ちに変わった。同時にその顔の皮膚もオレンジ色になり
紫の隈取りが浮かんだ。目は複眼に、頭髪は紫になり、触角が伸び、
頭頂部には蜂の腹部のようなオレンジと黒の外骨格が形成された。左肩の
ホヤの皮膚は首の左側から上に拡がり、左の頬から後頭部全体を覆った。
しばらくすると安らかな笑みは徐々に邪悪で狂気に満ちたものに変わり、
複眼が輝いた。
自分の心を支配する黒い欲望を受け入れ、それをゲルショッカーに
委ねる決意が、安らかな表情の意味である。そして母なるゲルショッカーの
導きの下でその欲望を満たす光景の想像が、凶悪な笑みを引き出したのだ。
607:AS同盟仙台基地壊滅(前編)・10/10
07/10/28 14:06:22 BEYKCrFh0
広瀬葉子は今や完全なゲルショッカー怪人だった。
肉体は、ショッカー怪人の蜂女の青色をオレンジ色に変えて、強固な
外骨格とホヤの外皮をまとわせたような姿になった。その内面は、
自らの高度の知性と強い意志を、明晰な確信をもってゲルショッカーの
栄光のためだけに捧げる、狂気の戦士に生まれ変わっていた。
「広瀬葉子よ。お前はただ今より凶暴なスズメバチと、三陸沖直送の
新鮮なホヤとの合体怪人、ホヤスズメバチに生まれ変わった。
立ち上がり、ゲルショッカーに忠誠を誓うのだ」
「ピュピュピューッ!ゲルショッカー首領閣下!このホヤスズメバチ、
ゲルショッカーに永遠の忠誠を誓い、まずはアンチショッカー同盟の
東北分室を、そしてゆくゆくは同盟全てを、仮面ライダーともども
葬り去ってみせることをお約束します」
ホヤスズメバチは舌なめずりをして、自らの古巣を壊滅させる
悪魔の計画を早くも練りはじめていた。
<つづく>
608:maledict
07/10/28 14:11:52 BEYKCrFh0
失礼しました。本編があるものは緊張します。
ホヤは日本酒にもよく合いますがビールと飲むと甘い味になって美味です。
あの発泡スチロールの中にはホヤの他にもウニやらカキやらホタテやらが
入っていて、上層部は改造用のホヤ一つだけを科学班に回し、残りで宴会を
したのではないかと想像しています。
あまり強くなさそうな生物ですが次回はホヤを用いた悪魔の作戦が展開されます。
間が空くと思いますし、ほどほどにご期待下さい。それでは。
609:maledict
07/10/28 14:45:41 BEYKCrFh0
本郷のシーンが頭にあったのですが、この時期ブラック将軍を介さず
直接首領と会話、というのはよく考えると変だったかもしれません。
日本の中でもちょっと別系統の作戦が進んでいたというような感じで。
610:名無しより愛をこめて
07/10/28 14:59:10 6qV7nH6Q0
>>597-609
(*^ー゜)b グッジョブ!!
ホヤスズメバチはゲルショッカーにいても良さそうな怪人ですね。
生まれ変わった葉子の活躍が楽しみです。
乙でした。
611:maledict
07/10/28 19:41:09 BEYKCrFh0
>>610様、早速のレスありがとうございました
あと、>>593様もアレを楽しんで頂いたようで、ありがとうございます
中編ちょっと十八禁に近くなりそうなのですが、この板に
ふさわしい展開を心がけます。話の流れ上そういう展開が
あるだけで、もともと普通のエロシーンにはあんまり萌えませんし。
(チャンピオンの『バキ』でかつてバキの初体験シーンだけヤンチャンに掲載、
という変な展開がありましたが、そこまでは行かないようにします)
612:名無しより愛をこめて
07/10/28 21:41:27 eqzJCx030
maledictさんは東北の人なの?
ショッカーがカニバブラーを造った後の宴会を想像してちょっとワラタ
613:名無しより愛をこめて
07/10/28 22:34:51 eYmuYBmL0
>凶暴なスズメバチと、三陸沖直送の新鮮なホヤとの合体怪人
激しくワロタw
文章力ある人がいきなりこういうギャグ仕込んでくると効くわ
614:名無しより愛をこめて
07/10/29 15:58:18 peewSVFy0
ちょっとすまん。
ナノマシンの定義がわからん。
このスレのどこかに説明がないかね。
615:maledict
07/10/29 17:22:44 sk46Ks1A0
>>612様、今は東京在住です
>>613様、どうかなあと思いつつ書いたのですが、ウケてもらえてうれしいです
>>614様、「ナノ」は「センチ」や「ミリ」みたいな単位(につける接頭辞)の名前で、
「ナノメートルサイズの機械」というほどの意味だと自分は理解してました。
ウィキペディアの解説だと下記のようになっています。
「ナノマシン(Nanomachine)は、0.1~100nmサイズの機械装置。ナノとは10-9〔マイナス9乗〕
を意味する接頭辞であるため、細菌や細胞よりもひとまわり小さいウイルス (10nm~100nm)
サイズの機械といえる。」
そういえばTHE NEXT見たんですがネタバレ話は公開終了後まで待った方がいいでしょうか。
616:名無しより愛をこめて
07/10/29 22:35:42 jzihiFIG0
>>615
>そういえばTHE NEXT見たんですがネタバレ話は公開終了後まで待った方がいいでしょうか。
改造シーンがあるなら書いた方が良くない?
みんな見に行くだろうしw
617:名無しより愛をこめて
07/10/30 09:50:14 /XyTccQ+0
615です。
>>616様
このスレ的には微妙なんです。
「改造シーン」そのものはちょっとアレなんだけど、全裸のシーンが必見。
やっぱり改造人間には全裸が似合います。
「単なる全裸」であんなに萌えたのは中学生以来かもしれない。
後から「その間」を脳内補完して一人で興奮してました。
618:617
07/10/30 10:03:46 /XyTccQ+0
追記。脳内補完の中身、もうちょっとして皆さんが見た頃に
SSにできればいいなと思っています。
619:名無しより愛をこめて
07/10/30 10:24:17 nGZ/0FpM0
>>618
ガンガレー
620:maledict
07/10/30 17:40:55 /XyTccQ+0
ちょっと過去レス見ていたら、
>>451の書き込み(シャイダーの22話)へのレスの
>>466様(と>>471様)へのレスを送りそびれていたことに
今頃気づきました。清書したつもりで古いのを送ったらしいです。
亀レスですが、情報ありがとうございました。
なんて言うか、思っていた以上に切ない話だったんですね。
あと、男が改造されるシーンが云々という話を振ったあと、
ZOの話が出たときもレスしそびれてました。(>>467様、>>468様、>>470様)
ZOよく思い出せないなあということで単に話に入れなかっただけなのですが
そういえばあれも全裸でしたか。むやみに面白かった記憶だけはあるので、
見直す楽しみが増えました。BeeF氏がSS書いてますが
たしかにそのシーンがあれば蜘蛛女の改造シーンは妄想が膨らみますね。
>>618様(>>617私です)
先になると思いますが…
621:maledict
07/10/31 15:32:39 qkDP7rkz0
なんか一人で書いているみたいで申し訳ないのですが中編投下します。
622:AS同盟仙台基地壊滅(中編)・1/10
07/10/31 15:35:47 qkDP7rkz0
アンチショッカー同盟仙台基地の入口は複数あるが、もっとも主要で
多くの職員が利用する通路は、東城北大の広い敷地の外れに位置する、
「南米文化研究所」という名のみすぼらしい建物の中に集中している。
広瀬葉子はその建物の女子更衣室内のロッカーを開け、中の細い階段を
下り、いつも通りの「出勤」の途上にあった。しかし実は、今の彼女は
広瀬葉子であって広瀬葉子ではない。彼女は前日のたった一日の休暇の間に、
決してこの基地にいてははならない存在、すなわち、ゲルショッカーの
改造人間、ホヤスズメバチに生まれ変わっていたのだ。
彼女の人間としての生を終わらせた「電源投入」があったのは昨晩九時。
その後彼女はゲルショッカー本部で必要な装備をととのえ、深夜十二時には
仙台行きのVTOLに搭乗していた。そして深夜二時には戦闘員たちを従え、
基地の真上の山林に潜入し、基地壊滅の恐ろしい工作を開始していたのだった。
彼女は戦闘員に命じ、腐葉土層に隠されたマンホールのふたを開けさせた。
中には仙台基地の汚水処理を一手に担う巨大な浄化槽が収納されていた。
戦闘員たちは浄化槽のふたを外し、次いで大きな発泡スチロールの箱を開いた。
中にはユウレイボヤと呼ばれる軟体性のホヤと似た生物が大量に蠢いていた。
「わたしの可愛い子たち。行っておいで」
そう言ってユウレイボヤ型の改造生物を手ですくい、それに軽く口づけを
しながら、改造人間ホヤスズメバチは生物を次々に浄化槽に投入していった。
623:AS同盟仙台基地壊滅(中編)・2/10
07/10/31 15:37:56 qkDP7rkz0
白松皆子、愛称「白松がモナ子」は出勤一番でトイレに駆け込んだ。
家を出て三十分、相当に切羽つまっていたのだ。下着を濡らすこともなく
用を済ませ、解放感の余韻を味わいつつ水を流そうとしたとき、それは起きた。
排水口の中から半透明のぬるぬるした固まりが飛び出し、彼女の膣の中に
つるりと入り込んだのである。
「ひっ…」
侵入と同時に全身がしびれ、モナ子は悲鳴をあげることすらできなくなった。
しゃがんでいた腰はぺたりと床に着き、体は後ろの壁にぐったりもたれかかった。
侵入した改造生物はモナ子の性器に強烈な快感を送り込み始めていた。
「…ふぅ…ふぅ…ん…」
体がしびれたまま、息だけが荒く切なく変わっていく。強烈な快感に
支配されたモナ子の精神は麻痺し、その自我と自由意志は快楽の海の中に
溶解していった。そして頭の中に耳慣れた声が響いた。
<<白松モナ子よ。あなたは今やゲルショッカーの忠実な僕、ホヤ女に
生まれ変わりました。このわたし、改造人間ホヤスズメバチの命令に
従い、仙台基地壊滅作戦に参加しなさい。>>
―人事部長…名前…間違ってます…―
それが消えゆく彼女の自我の最後の叫びだったという。一分後、目の下に
ごく薄いくまができている以外は何一つ以前と変わらない外見のモナ子が、
何事もなかったかのようにトイレを出て、勤務に戻った。
624:AS同盟仙台基地壊滅(中編)・3/10
07/10/31 15:40:05 qkDP7rkz0
個室トイレに入った職員はほぼ例外なくモナ子と同じ運命をたどり、
ホヤ人間は密かにその数を増やしていった。犠牲者は主に女性だったが
男性も数名含まれていた。和式での「大」の後の寄生と麻痺はなかなか危険で、
色々と厭なトラブルも生じたのだが、下品になるので詳しくは触れない。
改造生物は男女の生殖器に寄生し、強力な快楽でその意志を奪い、
ホヤスズメバチの奴隷に変える。この段階では犠牲者は単なる操り人形
である。やがて生殖器と同化した改造生物が、身体の他の部分に改造細胞を
広げ、脳改造も進む。半日後には、犠牲者は心身共に、ショッカー怪人
ホヤ女、ホヤ男と言ってもいいほどの完全な異形に変貌する。
「大変大変!トイレに変な虫が!ほら!」
羽木月子が突拍子もない声を上げてトイレから飛び出してきた。
「何だ何だ?…うん?何もいないじゃないか」
月子の手は大量の水でびしょ濡れになっていたが、虫らしきものは
どこにもいなかった。
「あれ?おっかしいなあ」
「変な薬でもやってたんじゃないのか。あはは」
のどかで鈍感なやり取りを、すでにホヤ人間化した職員たちと、彼らの目を
通じて状況を監視するホヤスズメバチは見逃していなかった。
その日の勤務終了までに、基地勤務の女子職員16名の内、羽木月子、
出張中の1名、基地の責任者である八木山梁子室長、の3名を除く全員、
および男性職員の5名が生身の人間ではなくなっていた。梁子の部屋の
トイレからは、意図的に改造生物を取り除いてあった。
625:AS同盟仙台基地壊滅(中編)・4/10
07/10/31 15:42:18 qkDP7rkz0
恐るべき事態の進行も知らず、羽木月子は勤務を終え、シャワー室へ
入っていった。彼女のアパートには風呂がないため、ここで浴びてから
帰宅するのが日課だった。シャワー室は入ってすぐ銭湯のような
脱衣所があり、その奥の部屋にブースが四つ並んでいる構造だ。
月子が鼻歌まじりにシャワーを楽しんでいると、突然カーテンを開け、
全裸のモナ子が姿を見せた。
「羽木さん、わたしたちの仲間になってもらうわ」
「いやああああ!わ、わたしそういう趣味ありませんから!」
持ち前の反射神経でモナ子をすりぬけ、逃げ出す月子。
―ああびっくりした。白松先輩にあんな趣味があったなんて。…それに
しても、先輩のおっぱい大きかったなあ…―
脱衣所へ逃げる月子の前に、さらに三人の全裸の女子職員が立ちはだかった。
「観念なさい」
月子は三人に組み伏せられ、床に寝かされた。モナ子が近づいてくる。
「いやあ!背徳の世界に誘わないで!わたし、正常なんですぅ!」
「…どうも何か勘違いしているみたいね。まあ、面白いから変身しないで
このまま改造しちゃいましょう」
そう言うとモナ子は月子の股を開くとその上に覆いかぶさり、股間の
一部となった改造ユウレイボヤを長く伸ばして月子に挿入した。
「え?え?どうなってるんですか?何これ?ああ、すごい!レズの人って
こんな凄いことしてるの?あ…あ…いいかも!……ゲルショッカー万歳!」
月子の精神操作はあっという間に完了した。
626:AS同盟仙台基地壊滅(中編)・5/10
07/10/31 15:44:41 qkDP7rkz0
翌朝までに、女子職員と同数以上の男子職員がホヤ男へと改造された。
ホヤ女たちが、比較的さえない男たちを「夕食」に誘いまくったのである。
下宿で、連れ込みで、寂しい男たちは次々にホヤ女たちの犠牲になっていった。
ツワモノのモナ子は、連続三人に夜這いを敢行し、大きな成果を上げていた。
「もう未改造の人間の方が少ないくらいね。あとは一気に行きましょう」
その日の昼近く、基地内にいた生身の人間は男性職員6名、外部構成員
男女9名、それに「葉子」の部屋に案内された、関西分室、北海道分室、
北陸分室からの視察団の女性3名のみだった。残り30名以上はすでに
ホヤ人間化していた。
「…だから、基地の安全管理は最重要課題なの。あなたたちの本名を
ここで聞くのもやめておくわ。関西、北海道、北陸の順に、A子さん、
B子さん、C子さんと呼ばせていただくわね」
「なるほど。勉強になります。さすがですね」
三人が「葉子」の話に聞き入っているとき、羽木月子が入ってきた。
「『人事部長』、準備完了です。通信装置は遮断し、全ての出口は
ゲルパー接着剤で封鎖済みです。南米文化研究所以外の入り口には
誘導の貼り紙を貼り、研究所内に5名を配置しました。これで外部構成員
の訪問への対応も万全です。それから、室長の捕縛も完了とのことです」
「ごくろう。念波で放送班に指令を出すわ。ただその前に、こちらの
お客様用の人員がもう少し必要ね。念波で呼ぶけど、あなたも手伝って」
627:AS同盟仙台基地壊滅(中編)・6/10
07/10/31 15:48:03 qkDP7rkz0
視察団の三人は優秀な構成員だった。「わけのわからない会話に唖然と
している」ふりを装いつつ、自分たちが敵のまっただ中にいることを
素早く悟り、目配せしてこの部屋からの脱出の機会をうかがっていた。
「助っ人が到着したわ。ぼんやりしてるお客さんは任せるわね。
わたしは室長室の梁子のところに行ってきます」
「葉子」が立ち上がり、部屋を出ようとしたとき、視察団の三人は
一斉に立ち上がり、灰皿やら花瓶やらを「葉子」と月子に全力で投げ付けると
部屋を飛び出した。部屋の外には半透明の皮膚をもつ異形の全裸女性が
三人立っており、「葉子」と月子も追ってきた。C子はヘアピンに仕込んだ
閃光弾を炸裂させ、A子B子の手を取って逃げ出そうとした。だがA子は
怪人たちに組みつかれ、動けなかった。
「やむを得ないわね」
C子はA子の手を放すと、B子だけを連れて駆け出した。
「待って!置いてかないで!いやあ!…ん……あん…あはん…」
ズボンと下着を引きずり下ろされ、怪人に襲われたC子の叫びは、
悲鳴から嬌声に変わっていった。
走りながらB子が尋ねた。
「ねえ、あれでよかったの?可哀相じゃない?」
「仕方ないことよ。一番恐ろしいのは共倒れ。一人でも脱出して、
異変を本部に伝えることが最優先。お互いそのつもりで動きましょう」
やはり走りながらC子が返した。
全館に放送が流れたのはそのときだった。
「基地内の諸君。当基地はただ今よりゲルショッカーの制圧下に入った。
無駄な抵抗はやめ、おとなしく我が組織に服従を誓うのだ」
628:AS同盟仙台基地壊滅(中編)・7/10
07/10/31 15:51:45 qkDP7rkz0
放送と共に、基地内のホヤ人間すべてがその本性を現わし、狂乱の
宴が始まった。女を襲うホヤ男、女を襲うホヤ女、男を襲うホヤ女…
「ふふふ、田中君、わたしにしつこくアタックしてたよね。いいわよ、
今ここであなたと寝てあげる」
「やめてくれミヨちゃん!正気に戻ってくれ!こんなのはいやだ!」
「いやだいやだと言いながらこの硬さは何かしら。うふふふ」
「あああぁー…」
―まさに悪魔の乱交場と言ってよかった。
「高橋ィ、おれは以前からおまえのことを…」
「やめろ!おれにそんな趣味はない。あああ…どうせならおれも
ミヨちゃんの方がよかったよぅ…ああああぁぁぁ」
直前の犠牲者はすぐに新たな狩人となり、次の犠牲者を求めていった。
室長室には、四人のホヤ女に組み伏せられ、全裸で縛られた東北分室
室長、八木山梁子がいた。梁子は入ってきた「葉子」を見て叫んだ、
「葉子!助けて!怪人が…」
「『葉子』はもうどこにもいないわ。ここにいるのは…」
「葉子」はその本来の姿に戻り、縛られた梁子に歩み寄った。
「…ゲルショッカーの改造人間ホヤスズメバチよ。昨日生まれ変わったの。
そしてもうじきあなたも。あなたのような優秀な人材は即席のホヤ人間
なんかじゃなくて、ちゃんとした改造手術を受けた方がいいの。だから
わたしがここであなたの脳改造だけを先に済ませる。夕方までには本部から
お迎えが来て手術を受けられるわ。明日からはまた『同僚』よ。ピュピュー」
言いながら改造人間は梁子の足を開き、両足の中央部分に舌を這わせた。
そして股間の噴火口に似た出水口から、男性器のようなオレンジ色の
触手を伸ばし、梁子にのしかかり、梁子の中に触手を挿入した。
「こうしてあなたの神経に直接接続して、あなたの脳にわたしの脳の機械と
同じ刺激を与える。あなたもすぐにゲルショッカーの素晴らしさに目覚めるわ」
梁子は抵抗する術もなく、悪の快楽と服従の安らぎに飲み込まれていった。
629:AS同盟仙台基地壊滅(中編)・8/10
07/10/31 15:54:11 qkDP7rkz0
地方分室の二人は巧みに敵の目を逃れながら出口を目指していた。
秘密基地らしく、身を隠しながら移動するための隠れ場には事欠かなかった。
二人には考えがあった。「ゲルパー接着剤」がどれほどのものであれ、
ドアそのものを壊せば脱出は可能であろう。そしてこの基地唯一の木製の
出口の所在をB子が知っていた。
「麻酔銃を出したいわね。トイレかどこかに入りましょう」
「了解。それにしてもあの厳重なボディチェックが、まさかこんなことの
ためだったとはね。すっかりはめられたわ」
そう言うと二人は手近のトイレの個室に別々に駆け込み、下着を下げ、
ゴムに包まれた状態で性器の中に隠されていた小型麻酔銃を取り出した。
麻酔銃を使えるようになった二人はホヤ人間を撃退しながら一気に
目的地に迫った。
出口の前で二人が出会ったのはA子だった。
「あれから必死の思いで逃げ出したの。よかった。やっぱりみんなも…うぐ」
C子が麻酔銃を発射し、A子は崩れ落ちた。
「ふん。あんな声出して喜んでたあんたなんて、誰が信じるもんか」
そう言うとC子はA子のズボンと下着をずり下ろし、麻酔銃の台座から
飛び出させた小型ナイフを、局部に突き刺した。
「な、何するの?痛い!やめて!」
「切除すれば元に戻るかもしれないわ」
「いやあ!それはやめて。お願い!」
寄生体を切除されたA子は見る間に干からび、死んでしまった。
「まあ、多分こんなことだろうと思ったけどね」
630:AS同盟仙台基地壊滅(中編)・9/10
07/10/31 15:57:29 qkDP7rkz0
「ピュピュピュー!お見事!とっても優秀な構成員ね。ホヤ人間にするには
もったいないわ。正規の怪人候補として、わたしが脳改造してあげる」
いつの間にか姿を現わしていたホヤスズメバチがC子に拍手と賛辞を送った。
「B子さんお待たせ。初仕事よ。昔のお仲間を取り押さえてちょうだい」
無表情な人形となったB子が、人間離れした腕力でC子を羽交い締めにする。
「あなた…どうして…いつの間に?」
「トイレで寄生されたみたいよ。さあ、脳改造を始めるわ。ピュピュー」
ホヤスズメバチは、恐怖でひきつり、もがきながら悲鳴を上げるC子の
ズボンと下着をずり下ろし、押し倒して上にのしかかった。
「怪人なんて厭ぁ!…あああぁぁ…あ!いく!いく!……ゲルショッカー万歳!」
「…やだ、見かけ倒し?性根は単なるサディストの小悪党だったってこと?
趣味じゃない!…B子さん、あとは任せるわ。こいつをホヤ女に改造してやって」
ホヤスズメバチはそう言って、まだよがっているC子をハイヒール状の足で
小突くと、つまらなそうに去っていった。
その日中に、基地内のすべての人間、および制圧後の基地を訪問した
外部構成員12名が改造生物の寄生、あるいはホヤスズメバチによる脳改造
を受けた。未改造の常駐構成員は東京に出張中の男女二名のみとなった。
翌朝。出張明けの花京院明子は遅刻ぎりぎりで出勤し、事務室に直接
繋がる扉を開いた。信じられない光景が彼女の前に広がっていた。共に
出張していた山田が下半身を裸にされ、半透明の皮膚をもつ怪人たちに
襲われている。しかも怪人たちは皆、見覚えのある同僚と同じ顔だった。
「あ、明子ちゃん!ゲルショッカーに基地を乗っ取られた。みんな怪人に
改造されてしまった。…君は逃げろ!僕はもうだめだ…あああぁぁぁぁ…」
こちらに気づいた怪人たちが近づいてくる。明子はドアの外に出て、
イヤリングに仕込んだ催涙煙幕を部屋に投げ入れ、全力で階段を駆け上がった。
631:AS同盟仙台基地壊滅(中編)・10/10
07/10/31 16:00:40 qkDP7rkz0
―電話、電話だ!公衆電話を探し、基地の悲劇を本部に…―
林の中を駆けていく明子を、人間には不可能な脚力で追ってくる影があった。
つい今しがた襲われていた山田である。そのむき出しの局部はすでに
改造ホヤと同化しかけていた。
山田はあっという間に明子に追いつき、彼女を押し倒してスカートをまくり
下着に手をかけた。…明子役の女優が、とうとうこらえ切れずに声を上げた。
「何なの?子供番組じゃなかったの?だいたいこんなのもう『改造シーン』
ですらないじゃない!何よこれ?アソコにイボイボのゴムかぶせてるだけで、
単なるレイプシーンじゃないの!!」
「ふっふっふ。今頃気づいても遅いわ。お察しの通りこれは『仮面ライダー』
ではない。黒い欲望を抑えきれなくなった石●先生と平●Pは、とうとう
このようなアングラフィルムの制作に着手したのだ!秘密を知ってしまった
以上、おまえももう表の世界には戻れないと覚悟しろ」
「いやだあ!そんなのいやぁぁ!」
しかし、ホヤ人間の強化された肉体に生身の人間が抵抗できるはずもなく、
彼女の下着は引き下ろされた。そして大映しの女性器に深々と改造ホヤ生物が
挿入され、一人の清純派女優の女優生命が…もとい、一人の女性の、自由意志を
もつ人間としての生が、終わりを告げた。
「あとは外部構成員。基地に網を張るだけじゃ不足ね。積極的に打って出て、
一人残らずわたしのものにしてあげるわ」
新たに加わった山田と花京院からの忠誠の誓いを受けたホヤスズメバチは、
そう言って悪魔の笑みを浮かべた。<つづく>
〔この作品は完全なフィクションであり実在の人物等には無関係です(汗汗 〕
632:maledict
07/10/31 16:06:09 qkDP7rkz0
…スレ汚し失礼しました。最後、偉大な作家&プロデューサー(に似た人物)に
ひどい役をやらせてしまいました。ちょっと悪のりが過ぎたかも。
(全然「改造シーン」らしくない改造シーンへの反省の意味もありましたが)
…しかし、本物のレイプはイヤですが、それを除けば、上のアングラフィルム
みたいなものが本当にあったら見たいですね。(『アインベーダー』というエロい
企画を練っていた晩年のうしおそうじ氏に資金があれば作ったかなあ、などとも
妄想。ライダーは無理でも、ゴリが美女を拉致改造しまくるエログロ作品とか)
なお、「石●先生」はこのスレ>>225-231あたり、「平●P」は
初代スレで見た下記の書き込みをもとに妄想を膨らませました。
(貴重な証言だと思うので全文引用しておきます。こんなルーツのものを
我々は見させられて育ったんですね…)
-------引用開始---------------
135 名前:名無しより愛をこめて 投稿日:03/06/08 (日) 22:22 ID:avHP4XEA
ちなみに某「動画王」って雑誌で、
平山Pがはっきり明言してたけどね。
「仮面ライダーでショッカーが人間をさらって改造人間のバケモノに
しちゃうのは、当時はやったナチもののエロネタで思い付いた」って!
つまり怪人のルーツは「ナチス第三収容所」やら「女拷問人グレタ」みたいな
イタリア製の「ネーチャン拷問実験エログロ猟奇映画」だったとハッキリしたわけだ。
当時の東映も石井輝男や牧口雄二監督で「徳川女刑罰絵巻・牛裂きの刑」とか、
「恐怖奇形人間」「徳川いれずみ師・責め地獄」とかのエログロ路線まっさかり
の時期だしね。
だからいーんです。このスレは正しい。まったくもって正しい趣味嗜好です!
ダークに産まれしモノがダークに帰って何が悪いっ!!
633:名無しより愛をこめて
07/10/31 17:19:17 3tykKX1i0
故九条蘭子女子が好きそうな内容だ。
ホヤが寄生する場面は、もう少し生々しく書いて欲しかったな。
それを越えたらアダルトに行けと叩かれるくらい。
もしくはアダルトで詳細に画いて欲しい。
少し簡略しすぎて粗筋みたいな所があった。
でもGJ!
634:maledict
07/10/31 20:14:51 qkDP7rkz0
>>633様
チャレンジ精神をかき立てられ、初挑戦してみましたが…難しいですね。
スレリンク(eroparo板:336番)-337
基地内にいた外部構成員は女性が多いそうですし(今知りましたが)
未登場の女性職員も十人以上いるはずなので、いつか再チャレンジします
635:名無しより愛をこめて
07/10/31 20:21:51 XbF5YFhV0
GJ!
だがホヤを見たことがないんで想像が追っつかない・・・orz
636:maledict
07/10/31 21:44:23 qkDP7rkz0
なんか今日は午後から貼り付いていてすみません。
>>635様
グーグルで画像検索しました。参考までに
マボヤ(改造された葉子のモチーフ)
URLリンク(images.google.com)
URLリンク(www.k5.dion.ne.jp)
URLリンク(www.iwaki.co.jp)
ユウレイボヤ(改造生物のベース)
URLリンク(images.google.com)
URLリンク(www.dinop.com)
URLリンク(www3.ocn.ne.jp)
ユウレイボヤ、実は本物を見たことがないのですが、
「マボヤはごつごつして痛そうだな」と思い、図鑑で近縁種を探しました
…ところで、THE NEXTの脳内補完話(ネタバレあり)って、いつ頃投下が目安でしょう?
637:名無しより愛をこめて
07/11/01 11:48:07 znaj4yJx0
>>634
チャレンジ乙!
でも正統派エロも見たい。
638:maledict
07/11/01 15:42:20 yZrRrKSe0
また微妙な時間にお邪魔します。
とりあえず仙台基地の話完結させます。
話の収拾を考えたせいか普通のSSに近くなった気がします。
>>637様。自分でも読んでみたいので、いつの日か…。
639:AS同盟仙台基地壊滅(後編)・1/8
07/11/01 15:43:41 yZrRrKSe0
「ホヤスズメバチよ。東北分室の壊滅作戦は順調か?」
「私以外の仙台基地常駐職員42名、他の地区の構成員2名、
外部構成員21名はすでにホヤ人間化、または脳改造が済んでいます」
「大量の人材を確保できたのは何よりだが、『同盟』の精鋭の割には
優秀な改造素体が少ないようだな。正規の改造人間としての適合者は
今のところ4名しかいないと聞いている」
「これまでは常駐職員が主だったからです。彼らは事務職や研究職が
専門で、それほどの身体能力を備えた者は含みません。真に有能な
人材はこれから本格的に狩り出す外部構成員の中に多いのです。
成果が出ましたらまたご報告いたします」
「なるほど。期待しているぞ!」
毛里美弥子はアンチショッカー同盟外部構成員である。同盟本部から
給与を得る正規の構成員ではなく、一般市民として同盟に対し善意の
協力を提供する立場だ。彼女は広瀬葉子同様、かつては有能な諜報部員で
あったが、葉子とほぼ同時期に同盟の存在を知り、同盟の活動に強く共感し、
スパイを引退した。だが彼女は葉子のように拘束の多い常駐構成員として
働くことを嫌った。そして「本業」としてスーパーのアルバイトを
するかたわら、単独で調査や人命救助を行う道を選んだのだった。
多くの外部構成員が同盟からある程度の金銭的援助を受けている中、
情報以外の援助を一切拒む彼女のような外部構成員は珍しかった。
ゲルショッカー結成後、この仙台でも不穏な勢力は活発化していた。
特にこの数日ほどはゲルショッカー絡みと思われる事件が飛躍的に
増え、ただならぬ事態の進行を予感させていた。外部構成員の中では、
仙台基地がゲルショッカーに乗っ取られたという噂すら飛び交っていた。
美弥子はそれらの噂を、恐怖による過剰反応の産物として相手にして
いなかったが、とはいえゲルショッカーが何か企んでいることは
明らかであり、「本業」そっちのけで独自の調査活動に専念していた。
640:AS同盟仙台基地壊滅(後編)・2/8
07/11/01 15:44:51 yZrRrKSe0
「毛里美弥子さん、あなたに住居不法侵入と窃盗の嫌疑がかかって
います。申し訳ないのですが、ご同行頂けますか?」
「あ、すみません!そういうことなら、またお邪魔します」
美弥子はヘビースモーカーらしいハスキーな声で快活な返事を返し、
何度か「世話」になったことがある警官に従った。「裏家業」の絡みで
このようなことはたまに生じる。おとなしく出頭しておけば「さる筋
からの圧力」というやつですぐに放免される。美弥子は素直にいつもの
交番に向かった。このような愚直な国家権力との関わりは、超国家的
暗黒組織との戦いの中の「心休まるささやかな休息」ですらあった。
交番の奥の部屋で調書にサインしていた美弥子は、ふと足下の床に
違和感を感じ椅子から飛び退いた。床には大きな落とし穴が開き、
椅子が吸い込まれていった。息をつく間もなく、天井から捕獲ネットが
落ちてきた。美弥子は前に飛び出し机を踏み台にジャンプしてドアに向かい、
ノブに手をかけた。ノブから強力な電流が流れ、美弥子は気を失った。
かつて実直な警官であった戦闘員二人は、驚きと共に美弥子を見つめた。
「まさかドアノブまでたどり着く人間がいるとはな」
「Aクラス適合者以上の存在―Sクラス適合者か。将軍に報告せねば」
麻酔を打たれ本格的に眠りについた美弥子を「パトカー」が運んでいった。
行き先はゲルショッカー秘密基地と化した旧「同盟」仙台基地だった。
美弥子は真っ暗な部屋の中で目覚めた。全身が何かで固定されている。
しかも、どうも自分は全裸の状態らしい。「改造手術」という言葉が頭をよぎる。
―あの善良だった警官たちは明らかにゲルショッカーの手先にされていた。
そしてわたしを罠にかけここに運んだ。それは多分、わたしを改造人間に
するため。幸い手術はまだのよう。ここがどこであれ、早く逃げねば…―。
641:AS同盟仙台基地壊滅(後編)・3/8
07/11/01 15:45:59 yZrRrKSe0
館内で放送が鳴っていた。
「『同盟』外部構成員による襲撃発生。通電設備に異常。予備電源も使用不能。
復旧までの見通しは約三十分。総員赤外線スコープを装着し敵に備えよ」
―ここは敵の基地。そして異常事態が発生している。多分あいつと
あいつが行動を起こしたんだろう。…この拘束からどうにか逃れることさえ
できれば、脱出のチャンスは十分にある、ということになるわね…―。
美弥子は普段から鍛えている筋力をふりしぼり、見えない鎖を引きちぎろうと
手足の力をふりしぼった。
何度か試みる内に、どこかでキュインというかすかな音が聞こえ、手足が
自由になった。気のせいか手足がなんとなく重い。しかし通常の動作ができる
程度には動く。美弥子はまず手探りで室内を探索し、運良くライターを
見つけ出すと、室内を照らして様子を調べた。
―この部屋…この間取り…まさか…―
美弥子はこの部屋を、いやこの建物をよく知っていた。そしてゲルショッカー
が自分をこの建物に運んだ、という事実が意味することを素早く理解した。
―…噂は本当だったわけか。葉子や梁子は無事かしら?それとも、もう…―。
葉子たちの運命を気にかけつつも、美弥子は次の行動に移った。脱出経路を
勘案した上、手術台の上に椅子を積み上げ、天井裏に侵入したのである。
―素手での脱出は危険すぎる。武器と、後は服を手に入れなきゃ―
天井裏ごしに美弥子が向かったのは、対ゲルショッカー兵器研究室だった。
基地が以前のままならば、そこには役に立つ武器の試作品が保存されている。
そして、保存が難しく、かつそのまま人類征服用の兵器に転用しうる装備を
敵が簡単に移動することはないだろう、という見込みがあった。
美弥子は研究室に到着し、中を警護している、変わり果てたかつての職員
二人を不意打ちで気絶させた。そしてライターで室内をさぐり、ケースに入った
「対怪人用レイピア」というフェンシングの剣のようなものを探り当てると、
散乱している書類その他に火を放ち、武器を手に屋根裏に戻り、出口を目指した。
642:AS同盟仙台基地壊滅(後編)・4/8
07/11/01 15:47:15 yZrRrKSe0
―けっきょく、服は見つからずじまいか―
そんなことを思いながらも無事、山奥の廃屋の秘密出口から外に出た
美弥子を待ちかまえていたのは、ホヤスズメバチであった。
「腕は全然なまってないわね、美弥子。でももう終わり、ピュピュー!」
「あなた…まさか葉子?…そうか。脳改造を、受けてしまったのね…」
美弥子はかすかに涙ぐんだ。葉子ほどの強靱な精神力の持ち主が脳改造を
施された場合、かえってその影響は深く徹底的になる。元の人格が復帰する
可能性は皆無に等しい。美弥子はそれを知っていたのだ。
「…いいわ。わたしが、あなたの魂を救ってあげる!」
話しながら二人は戦闘状態に入っていた。生身の人間と改造人間。普通に
考えて美弥子に勝ち目はない。しかし、並外れた反射神経をもち、最新鋭の
対ゲルショッカー兵器を手にした美弥子は、相手と互角以上の戦いを行った。
攻撃から素早く身をかわしつつ、怪人に立て続けに剣を浴びせたのである。
対怪人用レイピア。それは実験中偶然生まれた特殊な薬品を練り込んだ、
超合金製の剣である。改造細胞を壊死させ、怪人の身体組織に深刻な
ダメージを与える力をもつ。薬品の正確な成分すら解析できておらず、
全世界で今ここだけにしかない、貴重な武器である。
「ふふ!あなたは、明らかにある一箇所をかばっている!」
ひらりと舞い、ホヤスズメバチの前に立った美弥子は、そう言いながら、
全身傷だらけになっているホヤスズメバチの右胸に、深々と剣を突き刺した。
美弥子の裸身もまた傷だらけであったが、勝負はついたようだった。
「多分、ここには自爆用の爆弾か、自己溶解液が詰まっている。爆弾ならば
一緒におさらばだけど、悔いはないわ。溶解液なら、完全にわたしの勝ち!」
「ピュピュー…。美弥子、腕を…上げたわね」
「あなたの腕が落ちたのよ。事務仕事のし過ぎと、改造された肉体への過信ね」
自壊用溶解液に浸食され、ホヤスズメバチの肉体は溶け始めた。
胸に刺さったレイピアも飴のように溶け崩れていった。
643:AS同盟仙台基地壊滅(後編)・5/8
07/11/01 15:54:12 yZrRrKSe0
「さてと。わたしは行くわ。早く本部に仙台基地の惨状を報告しなきゃ」
「ピュ…ピュー…。できる…ものですか」
「何よ?…どういうこと?」
肉体が溶解する苦痛をこらえながらホヤスズメバチは続けた。
「あなた…は、改造前のわたしと…同じ勘違いを…してるみたいね。
あなた…はもう生身の人間じゃない。脳改造まで…完了した完全な改造人間。
今の…ままではその体は停止し、改造細胞…が腐り始める。機械部分を
早く…完全起動しなければ、あと十数分…で…あなたは死ぬわ」
「でたらめ言わないで!脳改造なんて!わたしはわたしのままよ。体だって…」
「それ…はあなたの機械部分が完全には…起動していないから。
あなたは多分…お得意の馬鹿力で…むりやり人工骨格を…動かした。
筋肉の…生体電流が機械部品に逆流し…緊急用予備電源が…セーフモードで
動作し…一時的…に…ちょうど、人間の力程度の…動作が…できる程度に、
動けた…のね。…でも、そんなに…動いてしまっては…もうじき…停止する。
……そうね……。わたしの…命と…引き換えに…あなたを…正常起動…
…させて…あげる」
崩れかけたホヤスズメバチは、そう言いながら、乳首から少量の溶解液を
発射した。美弥子の腰の皮膚が溶け、内部にあった赤い、キノコの傘の襞を
思わせる、異形の開口部が姿を見せた。
「あなたの…充電口は…ここ。今…電流を通して…あげる」
美弥子が身をかわす間もなく、股間から長く伸びた触手が赤い開口部に
取り付き、強烈な電流が注ぎ込まれた。美弥子の体内のサイボーグ部品が
本来の動作態勢に入り、改造細胞が活性化を始めた。傷が見る間に治癒し、
脳内の装置は美弥子の脳に悪と服従のパルスを発信し始めた。美弥子は絶叫した。
644:AS同盟仙台基地壊滅(後編)・6/8
07/11/01 15:56:55 yZrRrKSe0
美弥子の皮膚は黒く、硬く、しわだらけになり、胴体には昆虫のような
体節が形成され始めた。手足は黄疸でも出ているような病的な色に
変化し、その変色はさらに進行した。
「ギギ…こ、この体は……」
「その体……お気…に召す…はずよ。だって…」
脳内の変化も進んでいった。
美弥子もまたホヤスズメバチとなった広瀬葉子同様、高い知性と
強い意志、そして堅固な正義感の持ち主だった。美弥子は自分を
侵食する悪の心、すなわち倫理感覚の衰弱と無軌道で破壊的な欲望の
膨張に恐怖を感じ、それに流されないための足場を必死に求めた。
「恐ろ…しい…で…しょう?」
溶解が進み、言葉を発するのも辛そうなホヤスズメバチは、しかし
心から愉快そうに美弥子に話しかけた。
「自らの…強大で…破壊的な…欲望が…解放されて…いくと…いうのは、
わたしたちの…ような…人間に…は、とても…恐ろしいことよ…ね」
電源を使い果たしたホヤスズメバチ、いや広瀬葉子は、今や生体部分の
筋肉と脳のみを働かせ、美弥子に語りかけていた。
「母な…るゲルショッカーだ…けが、そのおぞま…しいあなたの…心を
受け入れて…くれる。そ…の破壊の欲望を…未来を…開くための…希望
として…活用してくれる。さ…あ、ゲルショッカーに全てを…託しなさい!」
美弥子は首を振り続けた。しかしその力は少しずつ弱まってきた。
645:AS同盟仙台基地壊滅(後編)・7/8
07/11/01 15:59:10 yZrRrKSe0
「ゲルショッカーにすがりたい!でもそれは絶対してはならないの!
だってゲルショッカーは両親の仇!この悲しみと怒りは決して消せない!」
「あ…なたのご両親が…亡くなって…しまったことは確かに…不幸なこと。
あな…たはそれを精一杯…嘆き悲しんでいい。で…もその『責任』を
ゲルショッカー…に負わせるのは…愚かなことよ。ゲルショッカー…は
善悪の彼岸に立つ…存在。ご両親…の死はあなたが…家族愛という人間的
弱さ…から解放されるための…試練。そしてそれは…誰も…が克服できる…
試練では…ないわ。あな…たは選ばれ…たのよ。愚かで…愛らしい民衆が、
同じような悲しみを…蒙らない理想社会を…作るために必要…な尊い犠牲、
そ…れが…あ…なたと…ご両親…だった…のよ」
「ああ!そうなのね?わたしはゲルショッカーを信じていいのね?」
「そう…よ。天国…の…ご両親…も…人類を…導く…尊い…礎になれた…
…こと…を…今…では…喜んで…いるはずよ」
「あああ…偉大なるゲルショッカー!偉大なる首領閣下!!」
最後の心の防壁が崩れ、美弥子の心にゲルショッカーへの忠誠心が
なだれを打ってあふれかえった。美弥子の表情は赤子のように安らかに
なり、やがて抑制を解かれた邪悪な欲望が彼女の心に固く根付いた。
美弥子の目は急速に複眼化し、中央には単眼が形成され、触覚が伸びた。
頭部は緑色の角質層で覆われ、顔の下半分は昆虫の口を思わせる奇怪な
人工骨格に覆われた。最後に首の皮膚の一部が伸び、ピンク色に
変化してだらりと垂れ下がった。
646:AS同盟仙台基地壊滅(後編)・8/8
07/11/01 16:00:46 yZrRrKSe0
「『変身』…が…完了した…ようね。もう…思い残す…ことは…ないわ」
満足そうに言い終えるとホヤスズメバチは完全に液状化し、姿を消した。
残された美弥子はゲルショッカーの一員として覚醒したことの喜びに
興奮し、歓喜の叫びを上げていた。もともとハスキーだった声は
さらに低くなり、声の持ち主の性別すら判然としなくなっていた。
「ギギギーッ!!ゲルショッカー万歳!首領閣下万歳!!」
もはや毛里美弥子はどこにも存在しなかった。そこにいたのは、
クラッシャーを全開にし、溶解液を撒き散らして狂気の咆吼を続ける
完成態のバッタ女、またの名をショッカーライダー6号であった。
南米のアンチショッカー同盟本部。
「日本の東北分室がゲルショッカーに乗っ取られた模様です。抵抗
活動はありますが情勢は絶望的かと」
「やむをえん。東北地区の構成員とのコンタクトは以後一切遮断、と
各方面に至急告知せよ。仙台基地に出向した構成員も同様だ。以後
彼らすべてを敵勢力と見なし、発見次第抹殺せよ。基地も放棄する」
「何度目でしょう?我々が優秀な人材を集め最新の施設を整備すると
奴らにすべて奪われる、という事例は?これではまるで我々は
ゲルショッカーに人材と基地を提供する外郭団体ではありませんか」
「悪趣味な冗談はやめたまえ。…そう。このテープさえあれば、
我々にはまだ反撃のチャンスはあるのだから」
そう言って極秘のテープを掻き抱くようにしながら、リーダーと
おぼしき人物は、壁の世界地図の東北地区に貼られた「同盟」を
表す"A"の磁石をオセロのように裏返し、「ゲルショッカー」を
意味する"G"を表にして貼り直した。
<了>
647:maledict
07/11/01 16:12:15 yZrRrKSe0
…以上、お粗末様でした。
心理の変化に少し凝りましたが、「同盟のメンバーは肉親を殺され
正義感は強い」という設定の割に構成員があっさり洗脳された展開への、
フォローの意味もあります。
美弥子の改造体については色々と不安です。(半)公式の設定等と
矛盾していたらすみません。
テレビ版ライダーの変身、「少なくとも肉体は収納されていたスーツを着ている」
という説が多い気がするのですが(『すごかが』の長谷川氏など)、肉体の
変形にしてしまいました。
それと、やはり長谷川氏の考証で「ライダーの改造には時間がかかる」という
イイ説があるのですが、これにとは矛盾しない可能性があります。
要するに美弥子は「本郷と同じ時間眠っていた」のです。
最後の戦いは仙台基地壊滅後だいぶ経っていた可能性もないではないと。
…以上、蛇足ご容赦下さい。NEXTの脳内補完アップしたら妄想のネタ尽きます。
648:名無しより愛をこめて
07/11/01 17:03:36 vkHebnUA0
>>638-647
(*^ー゜)b グッジョブ!!
面白かったです。
ただ、個人的にはホヤスズメバチの意外なもろさや、駆け足的展開がちょっとだけ残念でした。
でも、とても楽しめました。
お疲れ様でした。
649:maledict
07/11/01 17:16:30 yZrRrKSe0
>>648
ありがとうございます。長いと読むのも大変だし、
基本はあくまで「ショートショート」なので、
あんまり長くせず、肝心の部分以外は必要最小限に、
という意識が今回特に働きました。ただ、たしかに
切りつめすぎ(逆に言うと盛り込みすぎ)だったかもです。
ホヤスズメバチのもろさについては、生身の美弥子と
その武器がむちゃくちゃ強かった、と思っていて下さい。
多分、書かれていない部分で最凶最悪ぶりを存分に発揮しているはずです
650:名無しより愛をこめて
07/11/01 17:56:30 HoL8Wau90
面白かったけど、ホヤスズメバチの弱さにはがっかりした。
もっとエロイ怪人だと思っていたから。
でも乙でした。
またの投下を期待します。
651:maledict
07/11/01 21:57:58 yZrRrKSe0
>>650様、ありがとうございます
…が、やっぱり弱く見えますか…。
…ええと、>>657の通り、やはり美弥子の改造にはかなり長い期間を
要したみたいです。その間、東北支部外部構成員残り七十数名のうちの
相当数がホヤスズメバチの巧妙な罠にはまっていったそうです。
「外伝」でその非道な手口と、まだ明かされていない淫猥な能力の数々が
明かされる…かもしれません。(…ひょっとして、釣られましたか?)
ときに、THE NEXT脳内補完話、投下は週末なら早くはないでしょうか?
この週末で行く人が多いのではないかと思っているのですが。
652:名無しより愛をこめて
07/11/01 22:36:53 vkHebnUA0
まだ早いのではないかな。
653:名無しより愛をこめて
07/11/01 23:18:29 FXKfJimH0
書く前に予告してから書き始めれば
見たくない人はスルーできるからええんでない?
654:名無しより愛をこめて
07/11/02 04:40:53 wyWxCrRt0
>>651
むしろ過疎ってる時に投下してくれると、スレが活性化するw
655:名無しより愛をこめて
07/11/02 08:03:37 nUoC5Av90
>>651
淫猥な能力がみたい。
656:maledict
07/11/02 20:29:28 CmPimTo70
本日は一瞬だけ失礼します
>>652様、>>653様、>>654様
難しい問題ですが、もう少し様子を見て、絶対いやだという人がいなければ
日曜あたり、名前欄に「ネタバレあり」を明記して投下しても大丈夫そうでしょうか
実はもうできてはいるので…
>>655様
実はまだ作者自身詳しく知らないという話も…
それと、細かいところですが>>643の5行目、
「改造前」は「起動前」でした。訂正します。
657:名無しより愛をこめて
07/11/02 23:29:43 i/i8WkXB0
あえて言う、maledict氏が神様のお一人であることは異論無いと思う。
だが、エロとギャグに照れがある。もっと制約無く書いていいんだ、そういうのを見たいんだ。
もう一言、maledict氏のはあらかじめ構築された絶対脱出不可能の鉄箱の中から脱出する奇術を書きながら、なお
さらに、こうこうこう言う理由で脱出できないんだ、という絶望を繰り返し書いている。
それはそれで面白い、そう思う、だが少々気分が悪い。
私論だが、悪堕ちの嬉しさと、ぞわぞわざわざわする堕ちへの誘いを語るのがここのスレと思うんだ。
その中で堕ちても救われない(満たされない)というのはちょっとつらいんだ。(自分にはね)
だが全部読んでるし、もっと見たい、書きたいのをここでの括りで無理なら、先日maledict氏が行った先の主催者サイトとか
色々あると思うんだ、ここで自己弁護(とは言わないが)あってる?あってない?
って悩まずにもっと自由に書いたものを見たいぜ。(長文スマソ)
658:maledict
07/11/03 18:50:06 wIAIGJdx0
>>657様
照れてるつもりはなくて、総じて、自分が読みたいものを欲望のままに書いている
つもりなのですが、舌足らずな部分が多い可能性はあります。
ただ、たしかにホヤスズメバチ中編は駆け足過ぎたのと
「全年齢板」を意識しすぎたのとで、自分でもやや不満が残りました。
「外伝」で色々試すつもりでいます。
「絶望」の件は、何というか、性癖なんだと思います。
鬼畜なのか、マゾなのか(主に改造素体に感情移入して書くので)は
ともかく、考えられる希望が一個一個つぶされ、主人公が
追いつめられていく、というシチュエーションに萌えてしまうタチなのです。
「脱出する奇術」はもちろんその後の運命の可哀相さを盛り上げる「お約束」です。
ただし、以前書いた「チスイコウモリ女」の二話目みたいな
悪趣味な悲劇は書いてて鬱になったのでやめます。
同三話目みたいな明るい洗脳話も書いていて楽しいです。
で、色々考えつつ書き進めたのをアダルトの方に試しに投下してみました。
我ながら同じパターンが好きなんだな、と思える部分がたくさんあります。
スレリンク(eroparo板:374番)-391
明確に狙ったわけではなく話の成り行き上の要因も大きいのですが
ちょっとオチが明るいかもしれません。
なお、上記スレでは容量オーバーぎりぎりで住人の方にご迷惑おかけしてしまいました。
このスレもそろそろでしょうか?
以上、長レス失礼しました。
659:maledict
07/11/03 23:58:40 1FtcwfBpO
478も行っていることに先ほど気づきました
かちゅーしゃでどこに容量が出るのか(出ない?)分からず、失礼しました
まだ帰宅中なので一時くらいに新スレ立てます
660:maledict
07/11/04 01:31:26 cvRMpq0o0
7スレ目の自分以外のSSの一覧を作って、さあ立てようと思ったらホスト規制が出ました。orz
●をもっているんですが専用ブラウザによっては立てられたりしますか?
(かちゅ~しゃはだめみたいなんですが…)
あと念のため、おにゃのこ改造ウィキは「6スレ目まで」という表記のままでいいんですよね?
661:maledict
07/11/04 01:37:48 cvRMpq0o0
…すみません。うっかり新スレに書きこんじまったよ
A-Bone使って立てられました。よかった。
おにゃのこが改造されるシーン 素体7人目
スレリンク(sfx板)
662:maledict
07/11/04 01:41:42 cvRMpq0o0
↓また新スレに書き込んでしまった。もうだめです。
---------
……なんか変だと思ったらタイトル直し忘れてました。
(テンプレは直ってますが)
すみません!すみません!
663:過去スレに投下されたSSのご紹介
07/11/04 02:04:51 cvRMpq0o0
■□■7スレ目に投下されたSS・その2 ■□■
◆maledict
スレリンク(sfx板:398-414番)
☆『情念の残り火―改造素体十万八号の記録』 宇宙人に拉致されたOLが改造されたかつての恋人「課長」と再会。
スレリンク(sfx板:428-443番)
☆『侵略者の仮面―奴隷生物九万九千八百八号』 宇宙人に拉致改造された風俗嬢の運命。
スレリンク(sfx板:452-460番)
☆『続・侵略者の仮面―奴隷生物九万八千五百六号の報告』 宇宙人に拉致された少年が改造後、童貞喪失相手の風俗嬢と再会。
スレリンク(sfx板:508-546番)
☆『追憶の改造手術室―奴隷生物九万九千八百八号の誕生』 宇宙人に拉致されたOLの改造と「課長」とのセックス。
スレリンク(sfx板:553-560番)
☆『血吸蝙蝠女』 悪の組織に拉致されチスイコウモリ女に改造された女子高生・ユミコは親友のヒトミを連れて脱走。
スレリンク(sfx板:569-573番)
☆『血吸蝙蝠女Rx』 『血吸蝙蝠女』の雰囲気が違う後日談。ユミコの心理の変化と二人のその後。
スレリンク(sfx板:575-578番)
☆『血吸蝙蝠女《蛇の足編》』 『血吸蝙蝠女』の雰囲気が違う後日談2。二代目チスイコウモリ女の僕たちの伝言ゲーム。
スレリンク(sfx板:598-607番)
☆『アンチショッカー同盟仙台基地壊滅!!(前編)』 アンチショッカー同盟仙台基地職員・広瀬葉子はホヤスズメバチに改造される。
スレリンク(sfx板:622-631番)
☆『アンチショッカー同盟仙台基地壊滅!!(中編)』 ホヤスズメバチは改造ホヤを基地内に放ち構成員をホヤ人間に改造する。
スレリンク(sfx板:639-646番)
☆『アンチショッカー同盟仙台基地壊滅!!(後編)』 ホヤスズメバチと同盟外部構成員・毛里美弥子との対決。
664:maledict
07/11/04 02:10:09 cvRMpq0o0
>>663も間違いです。もう寝ます…
665:maledict
07/11/04 10:29:29 5XrC+pM+0
立てた新スレ、誤記によりタイトルが「重複」だからという理由で
「重複スレ」扱いの削除依頼を出して改めて立て直すということは
できる(した方がいい/しない方がいい)ものでしょうか?
今日は、午後三時ころまでは時々覗けますので、立て直した方がいいと
思った方は言って下さい。すぐ立てて、不要のスレの削除依頼に行き
不要になったスレには誘導のカキコをしたいと思います。
後半一人でスレを消費してしまったので自分が立てねばと思ったのですが
色々と不首尾で本当に申し訳ありません。
666:名無しより愛をこめて
07/11/04 10:41:27 Va35BUt10
>>665
禁止じゃないが、褒められる事じゃないからそのまま行こう。
667:maledict
07/11/04 10:48:24 5XrC+pM+0
>>666様、了解しました。覆水なんとかです。皆様本当にすみません…。
668:657
07/11/04 13:46:47 5cbdBmox0
maledictさんお手数だけど、新スレ=素体8人目で立てて欲しい。
見てわかるとおりで、このスレの寿命が長いからだ。(あとの住人さんが皆そのままでというなら
それでも構わないが)
あと、そんなにわたわたしなくても、maledict氏に悪意もないのは皆わかってると思う。
過失は誰でもあるし、せっかくやってくれてるってのも理解の範疇で収まってると思う、この後も普通にしていてくれれば
自分などはそのほうが気持ちよい。
それから、滅裂なレスに丁寧な返事をどうも、また某所ででも会いましょう(w
669:maledict
07/11/04 14:44:00 5XrC+pM+0
>>657様
3時過ぎると次いつつなげるか分からないと思い慌てて立て始めましたが
こちらにレスしてからの方がよかったでしょうか
連続投稿を注意されたので今休んでいます。
脳内補完話は次にパソコンを繋いだときに投下します
670:maledict
07/11/04 15:19:12 5XrC+pM+0
こうなりました。
おにゃのこが改造されるシーン 素体8人目
スレリンク(sfx板)
てふてふちゃんぷるう様のギリーラのところ、解説をちょっと直したはいいのですが
タイトルとURLの順序が逆になっているのを直しそびれました。すみません。
「削除整理」板にも書いてきました。読み直すとなんか657様に頼るような
書き方ですみません。
スレリンク(saku板:456番)
671:maledict
07/11/04 19:15:15 dNP6e+PrO
携帯からちょっと。
657様
書き忘れましたが、
あんたいい人だね(涙
672:名無しより愛をこめて
07/11/05 23:46:45 +W3UxY860
673:名無しより愛をこめて
07/11/07 00:36:13 DTQ5Rv7r0
このスレはあと何レスくらいでいっぱいになるの?
674:名無しより愛をこめて
07/11/07 00:48:24 wRo8KZlC0
>>659で478KBで、674現在484KBだから、SS一つくらいはいけるのかな?
675:maledict ◆sOlCVh8kZw
07/11/07 15:21:38 IM66WEce0
>>673様
単純な割り算で470/500KB超というと950/1000レスくらいだからと
思って慌てて次を立てたのですが、書かないと埋まりませんよね。
埋め目的ではないのですが、投下するかどうか迷っていた
「THE NEXT脳内補完」の「脳内妄想が少ないバージョン」を
こちらに投下させて頂きます。
676:THE NEXT脳内補完短縮版(ネタバレあり)・1/5
07/11/07 15:24:04 IM66WEce0
―これからどうなってしまうのか。まったく先が見えない。
わたしは、わたしたちはどうなるのか?どうすればいいのか?―
昨日、わたしの勤める会社は秘密組織「ショッカー」の人体実験場
となった。わたしたちの知らぬ間に、社内には「ナノロボット」と
呼ばれる人工の細菌のようなものが散布され、気づいてみると
社員のほぼ全員が苦しみ悶え、肉体を醜く変形させて死んでいた。
実験を生き延びたのは社長と秘書のわたし、たった二人だけだった。
ジャガーの扮装をした「ショッカー」の男はわたしたちを「選ばれし者」
と呼び、悪趣味にも花束まで差し出した。だがわたしには自分を
そんな風に見ることはできなかった。理不尽な実験の対象に選ばれ、
無辜の命を落としていった社員たちへの哀悼。そんな残虐な行為を行う
組織への怒り。そしてその中で自分だけ生き延びてしまった、という
罪責感のような感情。それらの気持ちが先に立った。
実験後、わたしたち二人は半ば強制的に自動車に押し込まれ、今いる
施設に収容された。わたしたちは着ている衣服を下着まではぎとられ、
別々に引き離されて、うすぐらい独房のような部屋に押し込まれた。
部屋の中でじっとしているうち、わたしは、自分の体が少しずつ
自分のものではなくなっていくような、いや、それどころか人間の
体ではなくなってしまうような、不気味な感覚を味わっていた。
―否。実のところわたしの体はもはや人間のものではなくなって
いるのだ。あの実験を生き延びたわたしたちの体はすでに「改造」
されており、わたしと社長はジャガーの男と同じ「改造人間」として
生まれ変わっている、というのが男の説明だった。
生まれ変わった、と言われても、特別に力が強くなったとか、感覚が
鋭くなったとか、そのような自覚はなかった。しかし男によれば
まもなく届けられる「仮面」を着けるとき、改造組織は活性化し、
わたしの体は本来の力を発揮するという。
677:THE NEXT脳内補完短縮版(ネタバレあり)・2/
07/11/07 15:25:10 IM66WEce0
「仮面」を着けたとき、「改造された人間」は真の「改造人間」
として心身ともに覚醒する。男はそう説明した。そしてわたしはその
「仮面」を着け、「ショッカー首領」に対する「宣誓式」に
向かわなければならないと言われている。わたしは床にうずくまり
ひざを抱え、その恐ろしい儀式への招きがくるのをわななきながら
待つしかなかった。心細い裸体を覆う衣服は与えられていない。
「宣誓式」が終わるまで、服を着ることは 許されないのだ。「首領」
の前で新たな存在へ生まれ変わる、という象徴的な意味があるのだという。
「仮面」には改造された人間の心を根本的に変えてしまう力が
あるらしい。わたしは昨晩、その様子をまざまざと見せつけられた。
わたしが見たのは、見たところか弱く優しそうな少女だった。
その彼女に黒い男たちが強引に不気味な「仮面」をかぶせようとしていた。
少女は泣きわめき抵抗した。恐らく彼女もまた、「仮面」をかぶって
しまった改造人間がこうむる変貌を、見知っていたに違いない。
抵抗も空しく、「仮面」をかぶせられた彼女の肉体は硬直し、
やがてその場に崩れ落ち、泣き声もぴたりとやんだ。しばらく
うずくまっていた彼女は、やがてゆっくり立ち上がると、
誰に導かれることもなく、自ら「宣誓式」へと向かって行った。
しばらくして、「仮面」を脇に抱えて通り過ぎた彼女の顔付きは、
もはやあの繊細で傷つきやすい少女のものではなかった。その目には
狂気が宿り、口元には冷酷で傲慢な笑みが浮かんでいた。彼女はもう
この施設の他の住人同様、完全な「ショッカー」の一員になっていた。
扉が開き、異様な人物が姿を現した。私同様裸で、しかし顔だけに、
昆虫を思わせる奇怪な「仮面」をかぶっている。そしてその手には
銀色のトカゲのような醜悪な「仮面」が抱かれている。