07/10/14 01:20:02 JVBWvyYh0
>男性が改造されるシーン
ZOの改造シーンとか好き
468:名無しより愛をこめて
07/10/14 01:30:15 9HD+6l5z0
>>467
>ZOの改造シーンとか好き
どんなの?
469:名無しより愛をこめて
07/10/14 01:55:04 gtYjnX310
シャイダーと言えばギャル1も改造されてなかったっけ?
470:名無しより愛をこめて
07/10/14 01:58:01 Vjvmgwj5O
>>468
うぉぉぉ、やめろぉぉぉ、望月教授ぅぅぅ
ぶっとばすぞーぉ
全裸で
471:376
07/10/14 02:32:55 /KgjEYdT0
>>466
シャイダー22話は、切ない雰囲気の話でしたよね。
不思議獣にさらわれる青い水着の女性には、神官ポーも
満足してました。
あと、妹の恵美さんもけっこう美人でしたね。
>>469
最終回の近くで、自分から志願して改造されていたように
記憶してます。
472:名無しより愛をこめて
07/10/14 12:33:16 ue03epo90
な。もっと少女強制改造ものが見たいよな。
だが脳改造までされてしまって悲しみ苦しむ姿が見たい(*´д`)ハァハァ
473:maledict
07/10/14 14:06:29 yht0byT/0
>>462様
小道具の件、参考になります。
あと、もちろん「無意識」ではなくてバリバリ自覚的です。
別に正義のヒーローになりたいということではなく、
もう肉体も精神もぐっちゃぐちゃに・・・ヘンタイですみません
あと、ビジュアル的に美少女の類の改造シーンにちゃんと萌える点では
ノーマル(?)なつもりです。おっさんだと美しくはないですよね
>>463様
萎えませんか?(w
474:名無しより愛をこめて
07/10/14 15:46:03 Kf4wsKuS0
473を改造したくはないなw
475:474
07/10/14 15:46:40 Kf4wsKuS0
やべえ!おれのID糞だ orz
476:名無しより愛をこめて
07/10/14 18:34:04 2uCV8lWTO
>>465
菅野美穂は『催眠』とかに出てた頃はジャンル女優まっしぐらな感じだったが
最近はめっきり出なくなったな。
そのころは悪の女神官役が似合いそうなイメージだったのに
今は正義側の方が合うのか・・・
477:名無しより愛をこめて
07/10/14 19:31:55 pB5Tb/1f0
>>474
473が実は♀だったら?
478:名無しより愛をこめて
07/10/14 19:49:10 lK/qXiPF0
>>473
モモは萌えるww
479:376
07/10/14 20:20:53 O3vBqlfrO
450さんを見習って、シャリバン44話に登場する女子大生、
山崎さよこの表情の変化を。
①テニスの練習中にコーチの指導を受ける真剣な表情
②自室でラケットの素振りをする懸命な表情
③アンコウビーストの噴射した麻酔ガスを吸って悶える表情
④続けて幻覚光線を浴びせられ、お姫さまになった夢を見て
うっとりする、高揚した陶酔の表情
⑤マドーのアジトに運ばれ手術台に乗せられて、口にパイプを
くわえさせられビーストビールスを吸入させられるときの、
小さく首を振って抵抗しようとするけなげな表情
⑥テニスの試合で、何事もなかったかのようにコートに立つ
平然とした表情
⑦異変に気づいた伊賀電を睨みつける、眼光鋭い表情
なかなかの美人がこんな表情の変化を見せてくれる。
480:maledict
07/10/14 21:59:17 yht0byT/0
>>477様
申し訳ありませんが正真正銘の♂でございます
♀ですということにしようかと一瞬思ったのですが
自分で気持ち悪いのでやめました。
>>449様
申し訳ないのですが、次の話でちょっと世界観に踏み込む
可能性がありそうなので、念のため次回投下の後までもう少しだけ
お待ちいただけるでしょうか。勝手言ってすみません。
これまでの設定を壊したり覆したりするわけではないので
滅多なことはないとは思うのですが。本当にすみません。
481:449
07/10/14 22:27:26 HjXtZeU40
>maledict氏
了解です!こちらも煮詰まっていますのでw
どんどん「地球救済計画」をすすめてくださいw
482:381
07/10/14 23:02:39 T7bq5uaS0
>>479
>山崎佐世子さんの変貌ぶりの件
詳細な報告をありがとうございます、DVDレンタルリリース次第チェックしたいですね。
漏れ自身はシャリバンにおいてこのスレ的には30話「捨てられる子供たち 変身するママ」か
この44話が一番なのかなぁ、と思ってましたが、
実験対象が女子大生の分こちらに分がありそうですねw
しかしどちらも男子禁制区域が舞台(美容センターと女子寮)なのと
手術台にて実施される洗脳(改造)作業場面、
そして術後の女性の冷酷な変貌ぶりとかなり的を射ております。
最後に>>387でも書きましたが個人的にアンコウビーストの回には存在して
他の物語にはそうそう存在しないもの、それは
「アンコウビーストに幻覚光線を浴びせられ、
お姫さまになった夢を見てうっとりする、高揚した陶酔の表情」
ですね、王子様との舞踏会の幻想だったと思いますが・・・。
>>373
>12月から宇宙刑事シリーズのDVDレンタル開始こそスレ的にハァハァする作品が見る事が出来るな。
これは気付かずに失礼しました。
それにしても宇宙刑事のDVDレンタル遅過ぎですよね。
483:376
07/10/14 23:52:13 +8Aqsv0T0
>>482
レスありがとうございます。
このスレではシャリバン44話はあまり人気がないのかな、と
思っていたので、うれしいですよ。
DVDレンタルはじまったら、チェックしてみてください。
ご期待をうらぎらない内容であればよいのですが。
>他の物語にはそうそう存在しないもの、それは
>「アンコウビーストに幻覚光線を浴びせられ、
>お姫さまになった夢を見てうっとりする、高揚した陶酔の表情」
>ですね、王子様との舞踏会の幻想だったと思いますが・・・。
そうです、王子様との舞踏の夢です。
山崎さよこのお姫さま姿が、とても似合っていてかわいい。
でもその夢は、続いて行われるビーストビールスによる獣性化の効果を
高めるために、あくまで下準備として見させられている、というのが、
オレにとってはたまらなく良いです。
あと、山崎さよこのルームメイトの女子大生(名前わからん)も、
同様にアンコウビーストの幻覚光線を浴びて夢を見てウットリしますが、
こちらは黒い皮ツナギでビシッと決めた、ロックミュージシャン姿です。
この娘は、背が高く気の強そうな美人で、黒い皮ツナギがよく似合って
います。
本エピソードには、ほかにも数人の女子大生が登場しますが、中でも
この2名がいちばん美人です。
そんな2人が幻覚を見させられてウットリしている姿と、その後に
ビーストビールスによるマドーの獣性化手術を受ける姿(といっても、
手術台に乗せられて、あやしい液体を吸入させられるだけですが)を
見ることができたのは、とても良かった。
484:450
07/10/15 03:07:59 to7vRc7N0
>>479
>>482
>>483
女子寮・テニスウェア・洗脳・手術台と萌えるキーワードが揃ってて気になってただけに、
これだけ詳しくレポして頂きありがたいです。(自分の形式まで模して頂いて・・・)
レンタルされたら即チェックします。
洗脳被害者が美人の作品はいつの時代でもいいです!!!
インヴェード美女瞳・クモダブラーの最初の犠牲者・オーレンジャーのバラプリンターで
コピー機を愛するように洗脳される女子高生なんかが好きです。
逆に、ビシュヌはせっかくの花を使っての洗脳なのに、主婦にも、女子高生にも目立った美人がいなかった
ように思えます・・・。残念です。
485:376
07/10/15 21:32:08 aFh/0XyH0
>>450
レスありがとうございます。
「表情の変化」ネタを勝手にマネさせてもらいました。
>これだけ詳しくレポして頂きありがたいです。(自分の形式まで模して頂いて・・・)
>レンタルされたら即チェックします。
チェックしてみてくさだい。
450さんにとってハズレでないといいですが。
ご期待にそえることを願います。
>洗脳被害者が美人の作品はいつの時代でもいいです!!!
>インヴェード美女瞳・クモダブラーの最初の犠牲者・オーレンジャーのバラプリンターで
>コピー機を愛するように洗脳される女子高生なんかが好きです。
オレもギャバン23話(クモダブラー)の話大好きです!!
最初にさらわれる女性、まさに「美人OL」って感じで、
すごくいいですよね。
改造は未遂でしたが、あのOLのおかげで、オレとしてはとても
ポイントの高い話です。
>逆に、ビシュヌはせっかくの花を使っての洗脳なのに、主婦にも、女子高生にも目立った美人がいなかった
>ように思えます・・・。残念です。
せっかくシナリオが良くても、演出や出演者がイマイチのときって、
ありますよね。
また情報ありましたら教えてください。
486:名無しより愛をこめて
07/10/15 22:09:47 HKLSkb6P0
>>476
うんと若いとき、最初のエコエコアザラクのラストあたり、
MCや改造ではないものの、豹変ぶりと無惨な最期がなかなかよかった覚えが…
487:maledict
07/10/15 22:13:13 HKLSkb6P0
>>449=>>481様
次回はちょっと遅れるかもしれません。
あんまり遅れそうなときは二回に分けるとか
するかもしれません。恐れ入ります。
488:maledict
07/10/15 22:19:28 HKLSkb6P0
普通の書き込みは名無しで書こうかと思ったのですが
IDがあるとあんまり意味のない話でした。
固定って疲れますね。投稿終わったら当分名無しに戻ります。
アンカーに「様」を付けたり付けなかったりちぐはぐですみません。
489:名無しより愛をこめて
07/10/16 00:01:30 4J/v4mxB0
バトルフィーバー サンバルカン ゴーグルファイブ
この辺は改造モノは無かった様な気がする。
洗脳して悪の手先に...ってのは有ったかな?
490:名無しより愛をこめて
07/10/16 01:30:20 CV0d4Gu60
バトルフィーバーのエゴス怪人は人間を改造して造ってるふしがあるから
(少なくともハイド怪人はバトルコサックの親友が改造された姿。ヘッダー指揮官も改造されたし)
怪人バラリンカとかの女性怪人も、人間の美女を怪人製造機に入れて改造したものと勝手に妄想してる
491:名無しより愛をこめて
07/10/16 01:41:24 JZGKWnBD0
>>489-490
URLリンク(www.geocities.co.jp)
#04 ネンリキ怪人 ♂
#37 ゲンソウ怪人 ♀
#39 ハイド怪人 ♂
492:名無しより愛をこめて
07/10/16 02:17:50 olVPw3iE0
ゲンソウ怪人って改造シーンってあったの?あったとしたらどんなかんじ?
493:名無しより愛をこめて
07/10/16 08:37:48 tNhndJ4l0
>>492
あるよ。冒頭で月影一族のモンシロお蝶という女盗賊が怪人製造機に入れられて
激しくもだえながらゲンソウ怪人に生まれ変わるシーンがある
URLリンク(www.geocities.co.jp)
494:名無しより愛をこめて
07/10/16 11:08:22 afUI6IXD0
くのいちっぽいテーストに、改造・花吹雪・バイオリン美女。
萌えワード満載です。見たいです!!
495:名無しより愛をこめて
07/10/16 17:07:23 XqQJvyZi0
私はSSは書かないけど、改造されたい女の子です。
可愛くはないかもしれないけど・・・
496:名無しより愛をこめて
07/10/16 18:37:19 YRgfkajH0
>>495
どんな姿に改造されたいのかな?
改造されて何をやりたいのかな?
497:名無しより愛をこめて
07/10/16 20:12:43 XqQJvyZi0
改造されたいのは蜂女とかかな?基本的にはなんでもOKです。
改造されてしたいことは人を洗脳したり、同じ改造人間にしたりしてみたいかも?
498:名無しより愛をこめて
07/10/16 21:09:47 XqQJvyZi0
あ、497は>>496さん宛です
499:381
07/10/16 22:14:18 yoqxSowK0
>>484
>逆に、ビシュヌはせっかくの花を使っての洗脳なのに、
>主婦にも、女子高生にも目立った美人がいなかったように思えます・・・。残念です。
仮面ライダーBLACKの45話「妖花ビシュムの死」ですね。
あの回は料理教室にて和服姿でほくそ笑む人間体ビシュムと
被害者となる朝霧女子高等學校の女子高生軍団が印象深いです。
地下の花園でズラッと一列に並んだ彼女達にはドキッとしました。
しかし凄いお嬢様女子校と言う設定なのに生徒達の容姿までは・・・残念です。
ビシュムが主役の回なので仕方無いかもしれませんが。
あと、この作品で美人だと思ったのはは8話「悪魔のトリル」のバイオリニスト百合ちゃんと
24話「女子大生の悪夢」の改造マシン内の娘ですかねぇ。
500:名無しより愛をこめて
07/10/16 22:16:53 +xgFRT/n0
500get!
501:名無しより愛をこめて
07/10/17 01:15:13 46wz8sZR0
>>450
>>479
この形式で、「死を呼ぶくちづけ」を表現しようとしたら、10や20じゃきかない・・・。
究極に美しいのは、上目遣いで強くなるためなら私は何を失ってもいいとラディゲに懇願する顔。
東京ドームシティでサラリーマンに微笑みかける顔のアップ。竜に今の姿を披露するシーンで、直前のポーズ前とポーズ後
でアングルが違うと、こうも表情が違うか!?とカンジさせる顔のアップ。
キリがない・・・。
502:376
07/10/17 06:57:08 C2VQhNRe0
>>499
>あと、この作品で美人だと思ったのはは8話「悪魔のトリル」のバイオリニスト百合ちゃんと
>24話「女子大生の悪夢」の改造マシン内の娘ですかねぇ。
「悪魔のトリル」は見たことないので、今度チェックしてみます。
「女子大生の悪夢」は、美人の女子大生をさらってゴルゴムの女戦士に
改造する、という作戦は良いのですが、なぜかあまり興奮するシーンが
ありませんでした。
オレにとっては惜しい、もったいない話。
>>501
ジェットマンの敵の女幹部の話ですよね。
彼女が好きな人にはたまらないエピソードですよね。
あと、今までこのスレでまったく話題に出てない、ひょっとしたら
微妙にスレ違いなのかもしれないが、オレが他に大好きなのは、
この前もファミリー劇場でやっていたけど、スケバン刑事Ⅱの
33話「変身!邪悪の少女サキ」です。この話本当に好き。
南野陽子演じるスケバン刑事麻宮サキが、青狼会(悪の組織)の
送り込んだ「ナメラ」というバケネコ怪人に首筋をかみつかれて
毒液を注入される。
その上でナメラの吹く笛の音でリモートコントールされ、
青狼会の悪の刺客として操られる。
笛の音が聞こえると、毒液の効果?でそれまで弱々しくふるえていた
サキの顔が突然変貌して濃いメイクになり、完全な悪の手先として
操られるところに興奮。
濃いメイクのサキの顔が美しい。
このスレ的な評価は微妙かもしれないが、女性操りモノとしては、
施術される女性の容姿や、施術後の変貌ぶり、操られぶりは、
このエピソードが特にすばらしいと思う。
503:名無しより愛をこめて
07/10/17 17:06:30 lVxsR4dY0
えと・・・SS職人の皆さんにお願いなんですが、吸血系の改造SS書いてもらえませんか?
自分、国語2なんで・・・
504:名無しより愛をこめて
07/10/17 19:45:16 3o6EHO5d0
>>503
「吸血系の改造SS」って具体的にどんなの?
蝙蝠男に血を吸われた美女が蝙蝠女になって別の女性を襲うとか?
でもそれじゃ、普通の吸血鬼ものとシチュ的に変わらないよね
505:名無しより愛をこめて
07/10/17 19:51:08 lVxsR4dY0
なんだろう・・・
いたって普通の女の子が突然拉致されて「お前は今から蝙蝠女(?)になるんだ。」
って言われるやつ?
これじゃ普通か・・・文章の才能無いから・・・
蝙蝠女の見た目、能力はSS職人の皆さんにお願いします・・・
書きたい蝙蝠女を書いてください!
506:名無しより愛をこめて
07/10/18 00:37:20 7HbsNYgf0
蝙蝠女はビザール風の衣装を着た悪魔っ娘みたいなのしか想像できんわ
ショッカーの蝙蝠男の女性版だと毛深すぎてあまりにも萎える
ズ・ゴオマ・グの女性版はありかも知れないが、女性吸血鬼の耽美さは無くなるな
507:maledict
07/10/18 00:47:22 G/NADIba0
なんかいつも流れを中断する感じですみませんが
課長さんと主人公のせっくるシーン、投下します。
あまり長いと読む方が大変と思い短めを心がけていたのですが
今回は最後と思い色々詰め込んだら原稿用紙50枚、40スレぐらいの
長いものになってしまいました。まともに連投すると「バイバイさるさん」が
何度も出るでしょうから一挙投下は多分無理です。
それ以前にそろそろスレが終わってしまうかもしれません。
(SSが多いと1000行く前に終わることがあるんですよね)
書き込み時間も未確定です。でもとりあえずいきます
タイトルは「追憶の改造手術室―奴隷生物九万九千八百八号の誕生」です
>>506様
部分的な思いつきですが、
コウモリの羽根の部分の皮膚で全身を覆ってるのはどうでしょう?
508:追憶の改造手術室・1
07/10/18 00:52:23 G/NADIba0
改造室への長いチューブは間もなく終点を迎える。
もう何も考えたくなかった。考える気力もなかった。
この人と同じモノになる。そして「つがい」を形成する。
このモノに抱かれるモノとして生きる。それが私の運命。
それに逆らう力も意欲もない。受け入れるしかない。
…でも、このモノは何なんだろう?あの人なの?
あの人と同じ顔。あの人だったはずの別のモノ…
わたしは何の表情もなくこちらを見ているモノに、
声をかけずにはいられなくなった。
「ねえ。洗脳されるってどういうこと?どんな気持ち?
わたしにはわからないの。あなたは地球で生まれ育った
地球人。それを忘れているの?あんなに抵抗したことも
忘れるの?覚えているなら、なんで今は平気なの?
どうやって納得しているの?」
「ワタシガオマエノ言ウ地球人デアルコトハ、モチロン
記憶シテイル。改造時ノ記憶モ保持シテイル。ダガ、
ワタシノ見ルトコロ、改造時ノワタシノ反応ニ
不可解ナ点ハ何モナイ。99ぱーせんと以上ノ地球人ガ
同様ノ反応ヲ示スト報告サレテイル。ワタシノ反応ガ
ゴク標準的ナモノデアルコトハ確認済ミダ」
「そんなこと聞いてるんじゃない!あなたの気持ちが
聞きたいの!地球人のあなたが、地球人であることも、
むりやり改造されたことも覚えていて、なのにどうして
喜んで宇宙人の奴隷なんてできるの?疑問はもたないの?」
509:追憶の改造手術室・2
07/10/18 00:53:21 G/NADIba0
「質問ノ意味自体ホトンド理解デキナイ。ワタシハ
地球人ダ。未改造ノ地球人ハ改造ニ対シ激シイ抵抗ヲ示ス。
ダカラ強制ガ必要ダ。強制ハ合理的ナ処理ダ。マタワタシガ
地球人デアルトイウ事実ト、ワタシガ他ノ地球人類ヲ
『主』ノタメノ資源トシテ搾取スルコトトノ間ニハ、
イカナル論理的矛盾モナイ。他方、『主』ノ道具トシテ
ぷろぐらむサレタワタシガ『主』ノ意向ニ背クコトハ、明白ナ矛盾デアル」
同じ日本語を話しているはずなのに、まるで話が通じない。
わたしはもう一つ気になって仕方がないことを聞いた。
「じゃあ、わたしのことは?
わたしのことはどれぐらい覚えているの?」
「オマエトノ接触ノ記憶情報ハスベテ保持シテイル。
ソノ大部分ハ不合理マタハ理解不能ナ動作ト言動ノ羅列ダ。
特ニ、交尾行動、シカモ繁殖ト無関係ナ交尾行動ヲ
目指シテナサレル繁雑ナ交渉行為ハ、不合理ノ度合イガ大キイ」
510:追憶の改造手術室・3
07/10/18 00:54:31 G/NADIba0
まわりくどい言葉の意味を理解できたとき、
わたしの中に猛烈な怒りがこみあげてきた。
―汚された。大事な思い出を。二人だけの、甘く、
謎めいた、かけがえのない時間。それがこの虫けらには
「交尾行動ヲ目指シテナサレル繁雑ナ交渉行為」
にしか映らないのだ。こいつはもうあの人ではない。
あの人があの思い出をそんな風に見ているわけがない。
こんなモノとの「交尾」を想像して濡れかけた
自分が恥ずかしくなった。痺れていた頭が急激に
はっきりしてきた。そして、宇宙人全体への怒りと
闘争心が沸き上がった。―あの人を永久に奪った
憎い奴ら。わたしは負けない。仇はとるわ。どんなに
肉体をいじり回されようと、心だけは渡すものか。
何としても洗脳に抵抗しおまえらを壊滅させてやる。
「ありがとう。あの人にお別れを言う決心がついたわ」
「不可解ナコトヲ。オマエノ『アノ人』ハココニイル。
肉体ヲ強化シ、不合理ナばぐヲでりーとシ、
優レタ制御しすてむヲ導入シタ以外ハ、オマエガ
交尾シタガッテイタワタシノママダ。ソシテワタシハ、
ツガイトシテオマエノモトニイツヅケル」
虫けらのたわごとはもう耳に入らなかった。
わたしは戦う。なんとしてもこいつらをたたきつぶす。
今はもういないあの人のために。
511:追憶の改造手術室・4
07/10/18 00:55:35 G/NADIba0
改造室に着くと、あの虫けらは部屋の奥に姿を消した。
それから何十分たっても改造手術は始まらなかった。
改造室の様子も、感情レコーダを通して見たときとは
少し様子が違っていた。ガイダンスはあの虫けらから
散々受けたから、ガイダンス役がいないのは当然かも
しれない。だが、例えば脳に接続されるコードを
繋ぎに来る気配がない。天井の注射器もセットされて
いない。周囲の補助装置の類も準備されていない。
―何これ?「準備完了」とか言ってたのに。
これこそ「不合理」じゃないのかしら。
だがこれは格好の機会だった。わたしには他の
捕虜にはない利点がある。ガイダンスは素体に
「これから何をするか」は教えても「どうやって」
については何も教えない。だがわたしはそれを
知っている。つまりレコーダの疑似経験によれば、
あの人の感情は、強烈な性的快感と激しい苦痛、
それによって意識が空白になった瞬間、少しずつ
消されていった。可哀相なあの人は何も
わからないうちにあっというまに虫けらに
されてしまった…いや、虫けらに乗っ取られ、
この世からいなくなってしまった。だが、
その仕組みを知ってさえいれば、もしかすれば
何か抵抗できるかもしれない。心の準備くらいは
できるだろう。―ひょっとしてレコーダの装着を
勧めたのは、あの人の最後の意志だったのかも
しれない―。そんな想像もわいた。
512:追憶の改造手術室・5
07/10/18 00:56:31 G/NADIba0
苦痛の方に大した対応はできない。だが
苦痛による感情消去は補助的なものだった気がする。
注射は平気な方だし、ともかく気を失わないことだ。
問題は性的快楽だ。オーガズムに達しない、
あるいは、肉体は達したような反応を示しても
精神が平静、という、可能なのか不可能なのか
よくわからない状態になれれば、ひょっとすると
感情の消去をやりすごせるかもしれない。少なくとも
男性のように単純明快な仕組みになはっていないから、
何とかできる余地は大きいような気もする。
そして今のわたしは性的快楽なんかとは正反対の
心境にある。これは大きな強みだ。
実はわたしはあの種のぬめぬめした虫っぽいモノが
生理的に大嫌いなのだ。さっきは中身があの人だから、
「愛の力」で克服できた。あの人だと思えたうちは
欲情さえ覚えてしまった。だがアレが本物の虫けら
だとわかったとたん、あんなモノと交わってしまった
ときの感触が気持ち悪くてたまらなくなってきた。
いいだろう。さっきまでのように興奮している
ふりをしてやろう。そのまま「演技」を続ける。
そして心の中ではあの気持ちの悪い感触を
思いっきり再生して、全身に虫酸が走るような、
心理状態に自分自身を追い込む。足りなくなったら
ナメクジとかカエルとか蓮乳とか、気味の悪いものを
総動員して、快楽とは程遠い精神を維持し続けてやる。
宇宙人の機械にそんなものが通じるとも思えないが、
今思いつく手立てはそれぐらいだった。
513:追憶の改造手術室・6
07/10/18 00:58:48 G/NADIba0
結局二時間ほども、わたしは空っぽの手術室で
ただ寝かされていた。その間に、わたしの心は
色々と準備を完了していた。
だが、奥の扉から出てきた「人」を見たとき、
それらの準備は一瞬で吹き飛び、わたしの心は
激しい動揺、その他あらゆる感情で満たされ、
混乱状態に陥った。
「…あなた…どうして」
そこには、改造される前と同じ体、そして
改造される前とまるで同じ表情を浮かべた
あの人が立っていたのだ。いや、一点だけ、
あの人ではないという確かな証拠があった。その人は
あの巻き貝のような男性器を生やしていたのだ。
「準備に手間取ってしまってごめん。
ぼくも知らなかったんだが、君の改造には色々と
新しい試みがなされるらしいんだ。ひとつはこれさ」
子供っぽい笑顔でにっと笑い、親指で自分を指さした。
あの人だ。全くあの人のしぐさだ。
514:追憶の改造手術室・7
07/10/18 00:59:44 G/NADIba0
「よくできてるだろ?外形擬態の方は、まあ
地球人が思うほど難しくはないんだ。すごいのは
この感情擬態さ。『主』はぼくの付けてた
感情レコーダと君とのやり取りを徹底的に解析して、
自動的に人間の感情反応そっくりの外的反応を生成する
エミュレータを作ったんだ。感情レコーダのときには
ブラックボックス扱いされていたアナログ情報が
完全にデータ化された。音声レコーダから楽譜を
作り出したようなものだ。そして、感情レコーダの
場合には少し生じてしまった「逆流」もなくなった。
擬態感情は装着者の精神に一切影響しない。実際、
何も感じないまま自動反応が起きているだけなんだ。
完成版では、装着者には必要に応じていつでも
停止する権限が与えられる。ただし僕の場合は
試用段階なので、権限は与えられていない。
―さて。ガイダンス終了だ。これで君はぼくの中身が
『全くの虫けら』であるという知識を得たわけだ。
さあ、どの程度の「錯覚」が起きるのかな。データを
とらせてもらうよ。楽しみだな」
そう言うと、あの人のだった・もうあの人のではない・しかし
あの人にそっくりな人は、わたしに感情レコーダをセットした。
515:追憶の改造手術室・8
07/10/18 01:01:42 G/NADIba0
「もう一つの実験はこれ」
そう言うとその人は天井からたれているノズルを
引き寄せ、その先端を自分の背中に突き刺した。
「偉大なる『主』は携帯洗脳改造装置を開発中だ。
これはそのためのデータ集めというわけだ」
そう言ってわたしに近づくと、背中のノズル付近から
束になったケーブルを取り出し、その先端を
わたしの首の後ろにそっと固定した。何かが刺さり
侵入してきたが、大した痛みはなかった。それから、
その人はとても柔らかにわたしに覆いかぶさった。
「いくよ」
やさしく官能的な声。いつもの「始まり」の合図の言葉。
今日のそれはわたしの人間としての人生に幕を引く合図。
…ああ、なんてこと。理性ではそれがわかるのに、肉体が
ついていかない。やめて。その目で見ないで。その声で
話しかけないで。…忘れちゃだめだ。このしなやかで
すべすべした肌の下には、ぬめぬめした虫けらの皮膚…
…でも…まったくあの人のままだ。ホクロの位置まで同じ。
汗も出てきた。かすかな体臭も。とてもなつかしい香り…
その人はわたしに唇を重ね、それから首筋、そして
耳たぶに舌を這わせた。…ぬめぬめした蟻男がわたしを
襲いにきた…そう思い込もうと努力する。感じては
いけない。感じてはいけない。感じてはいけない。
―この言葉は呪文だった。唱えれば唱えるほど
感じてしまう。いけない。いけ…ない…
516:追憶の改造手術室・9
07/10/18 01:03:13 G/NADIba0
男の舌はわたしの乳首に伸び、同時に指が、すでに
じっとりと湿りかけてきた下腹部の部分に触れた。
いつもと同じ、なつかしい手続きが順々に進み、
わたしの視覚と聴覚と嗅覚と触覚、さらには味覚は、
意地悪な官能の誘いに必死に抵抗した。
それははかない抵抗。わたしの意志とは無関係に、
わたしの肉体は快楽の山を登り始めてしまった…。
…次の瞬間、わたしは絶叫していた。一瞬、意識が
空白になった。胸から下の全体に激痛が走ったのだ。
男の前半身全体から太い注射針が何本も伸び、
それがわたしの身体に突き刺さっているのである。
「ふふ、びっくりしただろ?ちょっと意表をついて
やらないと君は意識を飛ばしてくれなそうだったからね」
間もなく注射針から大量の薬剤が射出され、同時に
男の全身がまばゆいグリーンの光に包まれた。
猛烈な熱が私の身体を襲う。わたしはまたも絶叫し
苦痛にもがき苦しんだ。
「これだと背中の方が不十分だからね。『主』は
苦肉の策で出力を危険値ギリギリまで上げたらしいよ。
まあ、多少のやけどは改造が終われば治るからね。
あとで、ちゃんと後ろからもやってあげるよ」
517:追憶の改造手術室・10
07/10/18 01:04:59 G/NADIba0
言い終わる前に男はいつの間にか固く鋭く勃起した
生殖器を、まだ完全には準備の済んでいない女性器に
強引にねじ込んだ。普通の痛みだけではなく、子宮の
奥に、傷ついたようないやな痛みが生じた。多分血が
出ていた。鋭い先端が突き刺さったのだ。
「ぼくの装備は試作品なんだ。これから性細胞移植を
しなきゃいけないんだけど、よく使われている
カプセルタイプよりできが悪い。こうやって、移植前に
組織をある程度損傷させないと定着しにくいんだ」
そう言うと男性器を抜いては膣のあちこちに突き刺し、
切り裂く、という作業を繰り返した。わたしは何度も
絶叫し、そのたびに頭が真っ白になった。
「さて、移植用性細胞をつけて、と」
男はやはり背中から薄いゴムのようなものを取り出し、
それを生殖器にクルクルとかぶせた。
「しばらくすると僕の生殖器が移植用に活性化する。
それを挿入すれば君の女性器も憧れのアレに生まれ変わる。
楽しみだなあ」
518:追憶の改造手術室・11
07/10/18 01:07:40 G/NADIba0
男はわたしの顔を覗き込んだ。あくまでも優しい笑顔。
プレイの最中のちょっと下卑た言葉遣いまでそのまま。
でももうコレをあの人だと思うことは決してできない。
わたしは恐怖に引きつった顔でソレを見つめた。
「お次はこれだ。こんな粗悪品、早く捨てちゃえよ」
そう言うと、擬態した指を突き破って伸びてきた鋭い爪を
左目にずぶりと突き刺し、こね回した。自分でも
信じられない声を上げてわたしの意識は一瞬遠ざかった。
世界の左半分が真っ暗になり、どろりと粘液が出てきた。
「すぐに最高級品が生えてくるよ。紫外線も認識できるし
解像度も比べ物にならない。きっと満足するよ」
ふと残った目で体を見回すと、すでにもう体が
人間の体ではなくなりかけている。皮膚の至る所から
粘液がしみ出し、染み出た部分を中心にぬめぬめした
青黒い皮膚になっている。いやだ。自分の皮膚が
最高に気持ちの悪い生き物の皮膚に近づいている。
いやだいやだいやいや。わたしは我を忘れて絶叫した。
「さあ、もう一方も、いくよいくよいくよ」
ギュッとつぶったまぶたごと、男は右目をえぐった。
「ふふふ、こうやって緊張しても痛みは増すんだよね」
たしかに、わたしの意識はまた一瞬失われた。
「触角細胞も刺激してあげなきゃ」
男は指の第二関節からねじのようなものを突出させると、
それを眉間の上のあたりに押し当て、骨に食い込むまで
ぐりぐりとねじ込んだ。作業は左右計二回、ゆっくりと
容赦なく続けられた。じわじわと続く苦痛に、わたしの
思考は麻痺した。
519:追憶の改造手術室・12
07/10/18 01:10:21 G/NADIba0
「お疲れさま。『苦痛』のメニューはこの辺で打ち止めだ。
さて、どうかな。もう半分くらい、いったんじゃないかな。
裏側を焼かなきゃいけないからちょっと体位を変えよう」
擬態した蟻男はわたしを逃がさないように注意しながら
エネルギーバリアをゆるめ、わたしをうつ伏せでひざを折った、
要するに後背位の姿勢に固定し直そうとし始めた。
少し間の抜けた作業の間、わたしには自分を見つめ直す
わずかな時間ができた。
―「もう半分くらい」とはつまり感情消去の話だろう。
虐待のあいだ、わたしはほとんどなすがままにされ
何度も気を失いかけた。多くの感情を奪われてしまったに
違いない。正直、自分で自分の心を見つめるのが怖い。
…そうか。恐怖感は残ってるわね…うれしくないけど。
課長の心を覗き見ているときと異なり、今のわたしは
実際に何と何の感情を奪われたのか、はっきりとした
自覚がなかった。こちら側に感情があるときは、課長の心と
自分の心を比較して、何が消えてしまったのかを
確認することができた。今はその比較ができないのだ。
漠然と、心の全体が液状化し始めたような不気味な感覚。
人間の発達させた複雑で精妙な感覚が、ただの原始的で
不定形な本能的衝動に置き換えられていく感覚。まるで
精巧に発達した手足や目が、アメーバの偽足や
原始的な光受容器に置き換えられていくような…。
520:追憶の改造手術室・13
07/10/18 01:13:42 G/NADIba0
バリアの操作が複雑なのか、擬態蟻男の作業は
もたもたと進まない。わたしはこの時間を利用して、
敵と「戦う」道がまだあるかどうか、なるべく冷静に
検討しようとしはじめた。
人間の心を丸ごと残す、という道はもう閉ざされて
しまった。「人間らしい心」という言葉から連想される
感情、例えば「こまやかな気遣い」「温かな共感」、
そんな言葉はコトバとしては思い出せても、もう
かさかさの記号としか理解できない。今のわたしが
人間社会に戻されて、たとえ外見が元通りになっても、
もうまともな社会生活は送れない気がした。
信じられないほど空気が読めない女、とんでもなく厚顔な
偽善者―そんな社会不適格者になっているに違いない。
それでも、たぎるような侵略者への憎しみ、そして
あの人への強い愛情、この感情だけは、まだ十分に
残っているのを感じた。レコーダの疑似体験でも、
強い思いほどなかなか消えなかった。
強い思いは心の中のあらゆる思考に浸透している。
だからこそレコーダによって、あちこちに潜む
感情の名残りを活性化させ、つきとめては消去する、
そんな作業が必要なのかもしれない。そう思った。
521:追憶の改造手術室・14
07/10/18 01:16:39 G/NADIba0
…ふと、わたしはありえないほど冷静に状況を
分析し始めている自分に気づいた。
感情が原始的な本能に退化し始め、理性や言葉と
かかわりあう力を失いつつあることで、逆に、
理性的な思考が感情に歪められずに進むように
なっている。そういうことらしい。
実際、こうやって冷静に反省してみると、
人間の感情というのは色々と「不合理」な歪みを
認識に加えていたのだということに気づいた。
自己欺瞞、希望的観測、現実逃避、好き嫌いによる
買いかぶり、みくびり…人間の感情がどれほど
現実に目をふさぐか。それに気づざるを得なかった。
通常の改造素体にはこんな冷静な反省をしている
余裕があるとは思えない。苦痛と快楽の洪水の中、
退化しつつある感情に押し流され、わけのわからない
うちに人間の心を失ってしまうしかないはずだ
―あの人がそうだったように。
わたしがこんな冷静な思索を進められているのは、
この擬態蟻男の変則的な作業がもたもたしている
からに過ぎない。まもなく再開されるはずの
苦痛や快楽の渦に巻き込まれれば、またこんな
冷静な思索を巡らすことはできなくなるだろう。
522:追憶の改造手術室・15
07/10/18 01:19:36 G/NADIba0
―この冷静な思考を利用できるのは今しかない。
何をすべきか、全力で考えよう―。
また多くの感情が奪われることは覚悟せねばなるまい。
だから、最低限譲れない感情に絞り、それだけは
何としても守り抜く、というやり方を選ぶべきだ。
その感情とは「侵略者への憎悪」と「あの人への愛」。
この虫けらではなく、いなくなった「あの人」への愛。
この二つの感情を、それだけを全細胞に焼き付けよう。
―さあ、第二ラウンドだ。
わたしの決意に呼応したかのように、
擬態蟻男の愛撫が再開された。
「待たせてごめん。再開だ」
蟻男は後ろからしがみつき、乳房をまさぐりつつ、
再び注射針と光線の責めを浴びせた。気の持ちようか、
実際に出力が落ちたか、さっきほどの苦痛はなかった。
蟻男はさっきまでと同じ、甘い言葉と優しく激しい
愛撫を加えてきた。
―バカじゃないかしら。あんなことされたあとで、
まだ素直にひいひい感じるとでも思ってるの?―
わたしは目の前のモノの虫けらぶりに軽く呆れた。
そして予定通り「演技」を始めた。乾いた愛液は、
大量にあふれる粘液が多分ごまかしてくれる。
523:追憶の改造手術室・16
07/10/18 01:22:59 G/NADIba0
そう。肉体の変貌は容赦なく進んでいた。
改造眼球と触角の形成はほぼ完了した。
新しい異様な視界が広がり、見たくもない
肉体の細部がいやでも目に飛び込んできた。
皮膚の変質は終わることなく続いている。
表面は青黒くぬらぬらと両生類のように変わり、
指先その他あちこちに、昆虫の肢の剛毛に似たものが
生えている。爪はやはり節足動物のような
鋭い黒い爪に変わっている。
背中ごしに見ると足のおやゆびが何倍にも肥大し、
他の指は昆虫のかぎ爪のようなものに退化している。
おやゆびの爪は厚皮化し、爪というよりひづめのようだ。
かかとの角質層も何センチもの厚さに伸びている。
最終的にあの「ハイヒール」ができあがるのだろう。
体毛は薬剤の作用ですべて抜けた。立てた太ももの
内側を、粘液に乗った恥毛がゆっくりと流れてきた。
髪の毛はゴッソリと落ち、代わりに生えてきた、蜂や
蛾の体毛のような紫の毛が下向きの顔にかかった。
「ここだけは薬が違うんだ」
乳房をまさぐる擬態蟻男の手のひら全体から、
無数の微細な針が伸び、突き刺さった。
今回、苦痛はなく、痒いような感覚が覆った…
「あ…やだ、なにこれ!!いっ…いっ…いっちゃ…」
…それが凝縮された性感だと気づいたのは少し後だ。
乳房の全体から体験したこともない快楽が流れ込み、
わたしは一瞬で果ててしまった。
524:追憶の改造手術室・17
07/10/18 01:26:04 G/NADIba0
―またやられた…。心の液状化がはっきり
進んでいた。もう普通の日常生活もできなさそうだ。
「あざーす!近ごろどーよ」
そんな耳慣れたあいさつすら、ふと思い出すと
意味が全く分からない。―今は午後よ?
それに一体具体的に何がどうだと言っているの?
何を聞きたいの?不可解。不合理…
―もう気を抜いてはならない!こんな虫けらに
感じるなんてこと、もう二度とあってはならない。
わたしは決意を新たにした。そろそろ、課長の心を
奪った、あの「移植用性細胞」が来る頃だ。
宇宙人への憎悪とあの人への愛情で心を一杯にして、
虫けらのセクハラに耐えなければならない。
「セクハラ」という言葉は雑居房のダニ男を
連想させた。ちょうどいいわ。虫けらとカエルと
ナメクジの外に、鳥肌のネタがひとつ増えた。
生理的な不快感と嫌悪感はまだ退化せずに
残っている。これで心を満たして、快楽なんて
感じるすき間をなくしてやる。その上で「演技」を
してこの虫けらをだます。色々しくじったけど、
これで当初の計画どおりだ。
525:追憶の改造手術室・18
07/10/18 02:32:10 G/NADIba0
「いいかい?入るよ」
「あああ、いいわ…入って」
もうわたしにとってこいつはただの虫けらだった。
人間の皮の下のぬらぬらした皮膚が透けて見えた気がした。
わたしの大事な部分に、巨大で生温かいナメクジが
挿入された。ああ気持ちが悪い。
「ああ…きもちいいいわ」
ナメクジはカエルに変態し膣の中をかき回し始めた。
うう、われながら悪寒が止まらない。
「ああん、ぞくぞくするぅ」
カエルはわたしの運転する自転車に轢かれ、内蔵と
内蔵の中の汚物が撒き散らされた。うう、吐きそう。
「あああああああ、もうだめ!いっちゃう」
グチャグチャのカエルはグチャクチャのままで
激しく動き始め、あのダニ男の声で卑猥な言葉を発し始めた。
『よう。姉ちゃんよう。すました顔して、実は
濡れ濡れじゃねえの。おれももういきそうだぜ、ほれ』
「…ああ、濡れ濡れだね。ぼくもいきそうだよ」
…そうそう。虫けらにはダニのせりふがふさわしいわ。
526:追憶の改造手術室・19
07/10/18 02:33:57 G/NADIba0
わたしはおおげさなよがり声をあげながら、
勝利の可能性を感じた。快楽を感じないわけではない。
あれから達してこそいないものの、心の液状化は着実に
進んでいる。守り抜くと決めた二つの気持ち以外、
何の感情も残らないかもしれない。でも、それだけあれば
十分だ。わたしは宇宙人を憎み、そしてあの人が愛した
地球を守る。その気持ちさえ消されなければ、わたしは
地球を守るためにこの身を捧げる。それでいい。悔いはない。
感情レコーダは回収されないうちに事故を装って
壊してしまおう。この虫けらどもを騙すのは多分簡単だ。
…だが、勝利が目前になり、再びあの冷静さが
戻ってきたわたしに、恐ろしい疑惑が生じてきた。
それは、実はずっと以前から感じていて、でも必死に
封じ込めてきた疑惑だった。だが、理性と感情の
つながりが切れ始めた今、もう自分をごまかし
続けることができなくなっていたのだ。
527:追憶の改造手術室・20
07/10/18 02:36:17 G/NADIba0
―あのダニ男とあの人は、そしてこの虫けらと
あの人は、本当にそこまで違うんだろうか?―
絶対に問いかけてはならない疑問だった。
さっきこの虫けらが発した、あのダニ男そっくりの
セリフ。考えて見ればあれはエミュレータによって
生成されたセリフなのだ。つまりたとえ擬態であり
何の感情もこもってなくとも、あの人の言葉なのだ。
―ならば、あの人とダニ男のどこが違うのか?
冷静に見て、感情レコーダで覗き見たあの人の
記憶は、そこまで「美しい」ものだっただろうか。
あの人の目から見たわたしたちの思い出は、
この虫けらが口にした「交尾行動ヲ目指シテナサレル
繁雑ナ交渉行為」そのものではなかったか?
あの人の思い出の中心にあったのは、
わたしの心ではなく、わたしの肉体ではなかったか?
虫けらの言葉にわたしがあんなに怒ったのは、
それが「図星」だったからではないのか?
―ならば、あの人と虫けらのどこが違うのか?
疑惑は確信に変わり始め、あんなに守ろうとしていた
「あの人への愛」が、感情消去を待つまでもなく
薄れ始めてきた。―いやだ。嫌い。男なんて嫌い!
大嫌い!男なんてみんな虫けら!いやだ!いやだ!
でも女だって同じだ。あの隣の女性だって、
横の内気な少年に色目を使っていた。いやらしい!
薄汚い!嫌い!人間なんて大嫌い。人間なんて、
一皮剥けば虫けらと同じ。いやだ!
わたしの感情は暴走しかけていた。
528:追憶の改造手術室・21
07/10/18 02:37:16 G/NADIba0
守ろうと決意していた二つの感情。その一つ、
「あの人への愛情」が色あせ、快楽の海の中で
液状化し始めた。
わたしはもう一つの感情、「侵略者への憎悪」
だけは手放してはならないと必死になった。
これを手放せばもうわたしはわたしでなくなるのだ。
―侵略者をたたきつぶす。虫けらは大嫌い。でも
人間も虫けら。虫けらは嫌い。人間でいるのもいや。
奴隷生物もいや。いやいやいやいや。全部いや!
消えて!全部消えて!消してやる!消してやる!
わたしの感情はその対象を見失い始めていた。
このままではいけない。我を忘れてしまうことが
一番危険だ。冷静にならなくては。この状況での
最善の選択。それを合理的に計算する。今のわたしは
それができるはず。さあ。考えて、わたし!…
擬態蟻男とのセックス、あるいは、快感による
わたしの洗脳作業もそろそろクライマックスだった。
わたしは、憎悪の心をたぎらせ、冷静に計算を進め、
なおかつ外面的には快楽にもだえる演技をする、
という離れ業をしなければならないのだった。しかし、
今やその中で「演技」が一番楽な作業になっていた。
たぎる憎悪の気持ちがすでに快楽の居場所をほとんど
なくしていた。微弱な快楽にほんの少し心を液状化させ、
それに大げさに反応していればそれでよかった。
そしてその演技がこの虫けらに実装されたあの人の目を
完全に欺いている自信があった。―実のところ、
演技は初めてではない。わたしのような優しい女ほど
「演技」は上手なものなのだ。
「ああ、いく!いく!あああああああああああ」
激しい痙攣とともに大量の愛液が流れ、わたしは一瞬
失神した…ふりをした。
529:追憶の改造手術室・22
07/10/18 02:39:15 G/NADIba0
「感情消去終了!と。
これよりドライバのインストールをするよ」
終わった!わたしは自分の心を点検し、色々と様変わり
してしまったものの、やはりわたしがわたしで
あり続けていることを確認できた。まずは勝ったのだ!
わたしは続く作業への心の準備を行った。
脳につながれたケーブルから「何か」が流れ込んで来る。
「ダウンロード終了。あとは起動だ。すぐに『主』からの
最初の命令が来る。その受信が起動の最終キイだ。
起動したら早速エッチなこといっぱいしよう。約束だよ!」
―その仕組みならば、ひょっとしたらアレが
試せるかもしれない―。わたしは好都合だと思った。
一応、わたしの中にたぎる強い感情は、多分「服従心と
恐怖心のドライバ」を不活性化させるだろう、という
見通しがあった。だがそれでは不安定だ。
それ以上のことができるならばそうすべきなのだ。
触角が宇宙人の通信を受信し、「命令」のダウンロードが
始まる。―できそうだ。「送信」は不可能じゃない。
わたしは強い想念を宇宙人の回線に送信した。パーソナルな
回線だからこの蟻男には傍受されていないはずだ。
530:追憶の改造手術室・23
07/10/18 02:40:21 G/NADIba0
「ちょっと話を聞いて!取引しましょう」
「不良品カ。自ラ欠陥ヲ申告スルトハ合理的ダナ。
スグニ再洗脳ノ指令ヲ出サネバ」
「待って。わたしの心を見てちょうだい。これでも
再洗脳の必要なんかある?」
「…高水準ノ『地球人類ヘノ憎悪』ヲ確認。稀ナ事例ダ」
―そう。それがわたしに残された「人間的感情」の
最終的な姿。わたしの感情と理性が到達した結論が
それだった。わたしははわたしであり続けるために、
憎悪の最大の矛先を人類に向けることを選択したのだ。
もはや醜い虫けらにしか思えなくなっていた人類を
「売り渡す」ことに大した迷いはなくなっていた。
わたしの人類への愛はあの人への愛と共に永久に
失われていたのである。
「稀少事例トシテ、感情れこーだノ分析を推奨。
ソレデハ再洗脳ノ指令ヲ…」
「待ってよ。あんたは誰?宇宙人じゃないの?責任者出して!」
「ワタシハ暗号名地球救済作戦実行用汎用こんぴゅーた。
『主』ヨリコノ方面ノ作戦指揮スベテヲ委任サレテイル。
ワタシガ責任者ダ。がいだんす終了。再洗脳ノ指令ヲ…」
「いいから、その『主』とかいうやつに繋いで。再洗脳前に
わたしのデータを送って確認してもらって。…そうだ。
その前にわたしのデータでシミュレーションしてみてよ。
今のわたしと洗脳後のわたし、実戦投入時、どちらの
作戦成功率が高いか」
「不可解ナ提案ダ。ダガタシカニ前者ガ高イ場合、オマエノ
再洗脳ハ不合理ナ選択デアル。…計算開始…前者ノ数値ハ
後者ノ18倍…再計算ノ必要アリ…再計算終了。…作戦変更。
再洗脳ハ保留。要求ヲ受理。『トリヒキ』ノ内容ヲ説明セヨ」
531:追憶の改造手術室・24
07/10/18 02:43:51 G/NADIba0
「わたしを指揮官にしてちょうだい。地球侵略のために
働くわ。不安ならば『反逆への恐怖』の方はインストール
してもいい。反逆なんて絶対にしないから大丈夫。
ただし、これ以上の感情消去は停止して。わたしの
今の高い能力は、感情退化がさらに進めばなくなる可能性が
大きいわ。それから、『服従心』のインストールもやめて。
わたしは自由でいたいの。わたしの望みはもっともっと高い
存在に進化すること。奴隷はいやだけど、人間でいるのも
いやになったの。人間も奴隷生物も大嫌い。あなた方の
『主』だって嫌いだけど、今は一番嫌いじゃないわ。
むしろその仲間入りをして宇宙を駆けめぐってみたい。
広い宇宙で自分の可能性を試したい。地球では
試したくても試せなかった。なまじ美人に生まれると
そういうことがあるのよ。あの人もわたしを部下として
評価してたわけじゃない。ひょっとすると追い抜かれるのが
怖くて恋愛でごまかしたのかもしれない。…まあ半分は、
楽な生き方を選んだわたしのせいなんだけど。…分かる?」
一部は感情の矛先を向け変える自分への口実、一部は本音だった。
「…続ケロ。『主』ヨリでーたノ請求ガ来テイル」
532:追憶の改造手術室・25
07/10/18 02:44:46 G/NADIba0
「…だんだん解ってきたの。地球人の感情はたしかに
いろいろ不合理だけど、改造人間が言うほどじゃない。
改造人間だって十分不合理。人工的に改造された生物だから、
ある方が便利な感情までなくなっている。多分あなたたちは、
改造人間と未改造の人間に連帯をさせないために、わざと
必要な感情まで消しているのよ。そして、そんなことを
思いつける種族は、多分、地球人とは違うかもしれないけど
色々余分な感情をもっているはず。そうでなくちゃ侵略や
戦争なんてできない。わたしは奴隷でも地球人でもなく
その中で自分の力を試してみたい。その世界に入ってみたい。
そのためなら地球の一つや二つあげるわ」
「面白い。事故の産物にしても、興味深い個体が生まれたものだ」
「あなた、宇宙人ね。やっぱり人間みたいな話し方をするのね
…と思ったけど違うか。感情エミュレータね。まあいいわ、
聞いて。言っとくけど、そろそろあの石頭のコンピュータと
ロボットと奴隷生物だけじゃやってけないわよ。
もっと頭を使える幹部が必要。例えばあの洗脳プログラム、
あんなシステム、絶対隠れた『不良品』が出てるわ。
感情エミュレータを実戦配備して徹底的に洗い出さないと
大変なことになるわよ。
どう?最初の作戦としてわたしに任せてみない?」
「いいだろう。こちらもいつまでもコンピュータに任せず、
誰か指揮官を回す予定だった。だがそんな辺境の奴隷狩り
など、誰もやりたがらなくてね。地球人の言い方で
言えば渡りに船だ。反逆抑止プログラムはちゃんと
インストールさせてもらうが、あとは任せよう」
533:追憶の改造手術室・26
07/10/18 02:45:49 G/NADIba0
辺境云々の言葉はかなり屈辱的だった―「屈辱」か―。
意外にいろいろな感情が残っているのだと気が付いた。多分、
「憎悪」にくっついてきたのだろう。一方、思いやり、優しさ、
愛情、その種の感情はウソのように消えてしまった。あの
虫けらのような男、そして虫けらのような人類への思いと共に
蒸発してしまったようだ。
通信が終わり、残っている感情が保護され『崇拝』ドライバが
インストール前にデリートされた。『恐怖』ドライバは
インストールされたが、とりあえず反逆しようとしなければ
心理構造を改変することはなさそうだった。
そして当面、わたしに反逆への意志はなかった。
わたしは外面的には正常にインストールされた奴隷生物
という建前になった。前例がないからである。ただし、
「管理者権限」を与えられ、正常な奴隷生物を任務のために
自由に接収できることになった。
感情面に関してはエミュレータを二つ装備することになった。
奴隷生物の無感情エミュレータと、わたしの感情レコーダを
もとに復元された人間感情のエミュレータである。その他、
予定されていたいくつかの装備も実装された。「本当のわたし」
を知る者は今のところあの宇宙人とコンピュータだけだ。
「改造素体十万八号は、ただいまをもって
奴隷生物九万九千八号百八号として完成した。
起立し、ただ今届いた『主』からの命令を復唱せよ
…なんか結婚式みたいだね。どきどきするな」
―ほんっと、うるさい虫けら。早く擬態切れよ。
534:追憶の改造手術室・27
07/10/18 02:47:01 G/NADIba0
「『主』カラノ命令ニ従イ、ココニ私ハ宣誓スル。
ワタシハ主ナル種族ノ生存ト繁栄ノタメニ、奴隷生物トシテノ
全能力ヲ駆使シ、永遠ニコノ身ヲ捧ゲルコトヲ誓ウ」
「おめでとう!最初の命令を伝えるよ。
君には簡易対人洗脳改造システムの試作型二号機が実装
されている。リアルタイム自律学習型で、改造手術中に
僕のデータを吸収し、改良版として成熟しているはずだ。
その試運転としてこの僕の外形擬態、および感情擬態の
解除を行うこと。一種のシミュレーションだね。ふふ。
なお、この装置の装備者にはドライバとして
『拡張再生産本能』が組み込まれてる。つまり人間を見ると
洗脳改造して自分の同類に変えたくてたまらなくさせる欲望だ。
いつもと違う快感に出会えるよ。ふふふ。ガイダンス終了」
―あら、面白そう―。わたしはちょっとしたいたずらを
おもいつき、思わずそう言いそうになった。そして自分に
残っている感情がずいぶんと偏っているいることに改めて
気づいた。―やだわ、なんかこういう悪趣味な感情しか
なくなっちゃったみたい。こんなので「さらなる進化」
なんて大丈夫かしら―そんな不安が頭をもたげかけたが、
思いつきを早く実行したかったので悩むのは後回しにした。
「了解。―その前にちょっと準備させてね」
わたしはまず自分の外形擬態を行った。改良型なので
この虫けらみたいな面倒な手間は不要だ。
「??わからない、それは命令と何の関係があるのかな??
理屈に合わないよ。筋が通らないよ…」
虫けら課長は混乱している。エミュレータを外したら
「不可解だ、不合理だ」を連発しているに違いない。
535:追憶の改造手術室・28
07/10/18 03:39:22 G/NADIba0
「それからこっち。ちょっといじらせてね」
わたしは課長虫の首筋に爪を差し込み、管理者権限で
動作を停止し、ベッドにバリアで固定した。
それから再び管理者権限で記憶データを操作し、
覚醒させた―。
おれが目覚めたのは殺風景な部屋だった。おれは
多分素っ裸、腰にシーツ一枚という状態で、何か
見えないベルトのようなものでベッドに固定されていた。
記憶がはっきりしない。おれは宇宙人が作ったと
噂されているムカデ型ロボットに捕獲され、円盤の中に
運ばれた。円盤の中には宇宙人としか思えない、昆虫と
人間の中間のような生物がいて、色々な作業をしていた。
おれは衣服をむしり取られ、ベッドに寝かされ、そして…
…よく覚えていない。恐らくその後麻酔か何かで眠らされ、
この手術室のような場所へ運ばれたのだろう。
おれが回りを見回していると、部屋の奥から
信じられない人が姿を現した。あのとき、ロボットの
魔手から救えたと思ったおれの恋人だった。しかも
おれと同じ全裸の姿だ。
「き、君も結局拉致されてしまったのか?
救えなかったのか。許してくれ」
言いながら、色々な違和感を感じた。なぜ彼女は縛られて
いない?おれを助けに来た?しかしなぜ裸なんだ…
536:追憶の改造手術室・29
07/10/18 03:40:20 G/NADIba0
「ここは侵略者の前線基地の一つよ。侵略者はここで
拉致して来た地球人に手術を行い、地球侵略の尖兵に
改造しているの。あなたが会った昆虫のような
生物はみな拉致された人間のなれのはて。一切の
人間的感情を消去され、原始的な本能以外には、
宇宙人への服従心と反逆への恐怖の感情しかもたない、
柔順で合理的な奴隷生物。そしてもうじきあなたもそうなる」
この女は…おれの知っている彼女ではないのか?
…まさか彼女はすでにその改造とやらを受け…。おれは
底知れぬ恐ろしさに包まれた。そんなはずはない。そんな…
「…そしてね。正確には、あなたはとっくに改造されてるの。
ある理由があって一時的にその姿に戻っているだけ」
「デタラメを言うなこの宇宙人!」
「デタラメかどうか、これを見るといいわ」
女はシーツをはぎとった。そこにあったのは、人間のもの
とは思えない、先のとがった細長いペニスが、
ゆるい円を描いて鎌首をもたげかけている姿だった。
「あらやだ、この状況で半立ち?あなた、そういう
趣味だったの?知らなかった」
女は意味不明の独り言を言った。
「ここだけが今の本当のあなた。今からわたしが完全に
元通りにして上げるわね。うふふふ。ガイダンス終了!」
537:追憶の改造手術室・30
07/10/18 03:41:16 G/NADIba0
わたしは、特に意味はないがなんとなく両腕をクロスさせ、
外形擬態を解いた。課長は恐怖と悲しみの絶叫を上げた。
わたしは無感情擬態と対人洗脳改造装置を起動させた。
とたんに目の前の人間がとてもいやらしい「獲物」に見えてきた。
―ちょっと、これやばいわよ。感情エミュレータに
行動を抑止する機能はついてないんだから、擬態して
町中でこんな機能起動させたら見境なく人間を
襲い始めちゃうわ。改良の余地ありよ!
「マズハ外形ノ解除カラダ」
わたしは課長の上に馬乗りになり、まず首の後ろに
手を当てて神経ケーブルを装着し、次に首筋にかみつき、
薬剤を注入した。擬態解除用だから少量だが、
体内にジェネレータを仕込めばちゃんと人間一人
改造できるようになるらしい。
薬剤を注入しながらわたしは発光した。擬態解除だから
やはり短時間でいい。外形擬態がみるみる解除されていった。
課長は自分の姿の変貌にうろたえ、怯えていた。
「コレデオマエハ元ノ姿ニ戻ッタ。虫けらが虫けららしい
姿にもどったってわけ。あははは」
「この宇宙人が!貴様も虫けらだろう」
しまった。うっかり地の声がでちゃった。気をつけなきゃ。
あとで記憶を消しておかなきゃね。
538:追憶の改造手術室・31
07/10/18 03:42:14 G/NADIba0
「不可解ナコトヲ。ワタシハオマエガ愛シタ女ダ。
肉体ヲ強化シ、不合理ナばぐヲでりーとシ、
優レタ制御しすてむヲ導入シタ以外ハ、オマエガ
交尾シタガッテイタワタシノママダ。ソシテワタシハ、
ツガイトシテオマエノモトニイツヅケル」
―言ってやった言ってやった。ああ楽しい。
「―外形復元終了。続イテ感情消去ト再起動ヲ開始スル」
ようやく改造人間のセックスをゆっくり堪能できる。
それがとてつもない快感を伴うことは改造中の体験で
何度も気づかされたことだ。だがあのときはナメクジと
カエルとダニ男―そうだ。あの男を再生させて、
本物のダニ人間に改造して、若い女性を襲わせるのも
面白いかもしれないわ―が邪魔して、ゆっくり
味わえなかったのである。
―で、ここはやっぱり言葉責めがはいらないとね。
わたしは洗脳を効果的に行うためというよりは、自分自身が
楽しむために、人間感情エミュレータを起動した。
「うふふ。ただいま。また起動してみたわ」
「…なんなんだ、お前は…」
539:追憶の改造手術室・32
07/10/18 03:43:20 G/NADIba0
「よく聞いて理解してね。わたしの内面はさっきのまま。
人間の感情を一切もたないし理解もできない虫けら。
でも人間社会に潜入するにはそれでは不便も多いわよね。
そこで偉大なる『主』は人間の感情を分析してエミュレータを
開発したの。これがあれば人間の感情的な反応を
自動認識して、感情的反応の偽物を作り出すことが
できる。でもそれは外面だけ。わたしがどんなに
笑っても泣いても、中身のわたしの虫けらの心には
一切届かない。体が勝手に反応しているだけ。不思議でしょ」
…言いながら急激に空しくなってきた。よく考えたら
この課長の感情も擬態なのだった。中身の虫けらは
無意味で不合理な文字列と動作に首をかしげている
だけなのだ。―もう、さっさと片付けてしまおう。
「さあ、これからわたしはあなたと交尾するわ。
絶頂に達したとき、あなたの人間的感情はすべて
消去され、あなたは反逆の恐怖と服従の快楽にのみ
支配される奴隷生物として復活するのよ」
「いやだ、やめろ、おれに触るな!奴隷なんていやだ!
誰が侵略者の手先になんてなるものか!」
「ふふふ、不合理ね。だがその愚かな思考回路から
今解放してあげるわ。感謝なさい」
―ああばからしい。感情消去ったって、エミュレータの
スイッチを切るだけなのにね。おおげさね。
…それにしても、崇拝の快楽ってそんなにいいのかしら。
なんだか興味があるわね。まあ絶対にお断りだけど。
540:追憶の改造手術室・33
07/10/18 03:50:15 G/NADIba0
わたしは人間だったときの通りに虫けらを責めた。
抵抗しながらも課長の巻き貝は徐々に硬度を増し
とうとう完全な太い針のようになった。
「うふふ、あなたも好きねえ。わかってるの?
わたしはあなたを洗脳しようとしている宇宙人の手先。
射精しちゃったらあなたの人間の心は消えてしまうのよ」
「ああ、いやだ、そんなのいやだ…いっそ殺してくれ」
「そうだ、これ切っちゃいましょうか。生えてくるまでは
人間でいられるわ。生えなければ一生人間でいられるかも」
硬度が少し落ち、ほんの少しカーブした
「やだ、冗談よ。ほら」
わたしは口で刺激し、硬度を回復させた。実は面白いから
感情を身体制御システムに接続してしまっているのだ。
別に感情を「感じる」ようになるわけではないが、
課長の心のエミュレータが身体を支配することは可能なのだ。
うっかり「不良品」でも作ってしまったら叱られてしまう。
「いくわ。さあ」
わたしは改造女性器に蟻男のペニスの先端をあてがい、
身体を垂直にして一気に体重をかけた。
541:追憶の改造手術室・34
07/10/18 03:51:24 G/NADIba0
つるん、という独特の感触と共に世界が裏返った。
改造女性器には膣としての穴が最初から空いている
わけではない。丸く中央がくぼんだ形の女性器の、
中央部の肉を針状の男性器が貫く、というのが
我々のセックスである。オスメスもその性器が貫通する
一秒あまりの瞬間に信じられない絶頂感を味わう。
ただしそれはオーガズムではなく、その先の段階への
入り口である。人間のようにその感覚を再び味わおうと
腰を上下させても、決してその感覚は帰らず、むしろ
高まった興奮が急速にしぼんで終わりである。
貫通したペニスは中央の空室で激しく吸引される。
この段階で初めてペニスの海綿体組織が肥大する。
空室一杯に広がったペニスと、空室の壁は、
それぞれ筋肉の力で動き始める。この段階になり
人間のような腰の動きも加わる。最終的に
ペニスの先からもう一段細い針が伸び、
それが深部の肉を突き刺すとき、オスメスともに
最後のオーガズムを迎え、深部の肉の奥にある
輸卵管へ射精が起きる。同時に、常時生産されている
卵子に受精し卵が形成される。
542:追憶の改造手術室・35
07/10/18 03:53:09 G/NADIba0
―なるほど。知識のない人間の女には無理だ―。
わたしは改めてそれを確認した。
わたしたちは第一段階の余韻を長い間味わいながら、
ペニスが十分な大きさになるのをゆっくりと待った。
それからわたしは人間のようにあのひとにしがみつき
身体をこすり合わせた。通常時の何倍もの粘液が
互いの体を濡らしていた。あの人はどういうつもりか
縛られた状態でわたしの乳首に舌を伸ばし、それを
丹念になめた。わたしもあの人の乳首をなめた。
わたしはそっとバリアをゆるめた。人間の感情に
制御権を与えたままの危険な状態だが、わたしは
この人が愛撫以外の行為をしないだろうという
理屈抜きの直観があった。恐らくそれはあの人にも
伝わったはずだ。そういう理屈を越えた共感が
そこには成立していた。あの人は手を乳房に、背中に、
肩に回し、快楽をかみしめるようにわたしをなでまわした。
わたしもそうした。いつまでもそうした。
第二段階が終わりにさしかかり、第三段階が近づいていた。
かつて愛した人が口を開いた。
「ありがとう。人間の心で君と交尾できるなんて思って
なかった。君を思って僕は改造後だれとも交尾して
いなかったんだよ。さよなら。もう僕のことは忘れてくれ」
543:追憶の改造手術室・36
07/10/18 08:00:34 G/NADIba0
言い終わると同時にあの人は果て、あの人のエミュレータは
停止した。抜け殻の虫けらは黙って横たわっていた。時限式の
わたしへの専従プログラムを起動させてある。
直属の『主』としてのわたしの命令を待っているのだ。
…今の最後の言葉は何だったのか。あんなプログラムを
組んだ覚えはなかった。記憶の前後関係からして、
あの場面が再生されるはずがない。いや、あの時期の
感情記憶は、レコーダにも本人の脳にも残っていないはずなのだ。
―いくら考えても納得の行く説明はつかなかった。
考えてみれば、あの人はもともとわたしを保護区に
送り、一生関係を断つつもりだったのだった。そう、
わたしが誘惑しなければ。そのずっと前、前妻への
滑稽なまでの操をからかい、誘惑したのもわたしからだった。
すべてわたしのせいなのだ。急にそれを思い出した。
わたしは何か取り返しのつかないことをしたような
気がしたが、今のわたしにはそれが何だったのかをはっきり
読み解くだけの感情リテラシーは失われていた。エミュレータが
大粒の涙をポロポロこぼし始めたので、ここはつらい場面
らしい、ということが察知できるだけだった。
544:追憶の改造手術室・37
07/10/18 08:03:13 G/NADIba0
エミュレータの涙は一向に止まらなかった。わずらわしい。
そう思いわたしはエミュレータを切った。驚いたことに
涙は止まらなかった。わたしも泣いていたのだ。
ただそれは、普通の人間の悲しみではなく、もっとずっと
間接的で淡い感情らしかった。つまり、あの人への愛、
あの人への哀惜、そんな、この場面にふさわしい感情が
わたしから永久に失われたことへの欠乏感のような
感情だったようだ―一度退化した感情は宇宙人の技術でも、
再生はほぼ不可能なのだ。外的なエミュレーションまでは
比較的簡単でも、本人に感じられる感情を取り戻すことは、
脳を赤ちゃんから育て直しでもしない限りは無理なのである。
―こんな淡い感情が、今のわたしにはふさわしい―
そう思った。そしてこれは多分、わたしが擬態なしで
流す最後の涙だろうと思えた。
わたしはこれから暗号名地球救済作戦の責任者として
奴隷生物の指揮をとらねばならない。そしてそのための
最初の任務を遂行せねばならないのだから。
545:追憶の改造手術室・38
07/10/18 08:05:23 G/NADIba0
不良品、出来損ない。その種の洗脳未遂者が一定数いる
という可能性は濃厚だった。これからは、洗脳実行時に
感情レコーダによる「残り火」消去にあたる作業を
義務化する必要があるだろう。エミュレータによる解析
を使えば一カ月は一時間に短縮される。
それから、疑わしい改造人間の目星をつける必要がある。
例えばあの風俗嬢。今思えばあのやりとりは真剣にわたしの
命を救うためのものだったように思える。改造人間には
ありえない心理だ。マークする必要がある。
それから…そうだ…
「『課長』、あなたわたしの馴致洗脳時に『感情を隠す
鉄の掟』とか言っていたわね。あれはだれのアイデア?
あなたの創作?」
「ワタシニ接触シタ『不良品』ガ自爆直前ニ口走ッタ
文字列デス。感情れこーだノ選択デ採用サレマシタ」
やはりそうか。なにか地下組織のようなものがあるに
違いない。用心して、網を張っていこう…。
「不良品」の摘発は単なる基地の防衛以上の意味がある。
まずそれは、洗脳システムの不備についての生きた情報
である。情報を得て洗脳システムはさらに完璧になる。
546:追憶の改造手術室・39(了)
07/10/18 08:07:06 G/NADIba0
第二に、ほとんどの不良品は直ちに検出され、あるいは
快楽の海に飲まれてすぐに再洗脳される、ということを
考えると、潜伏している「不良品」たちは、宇宙人の監視を
くぐり抜け、洗脳未遂の事実を隠し通せるような知力、判断力、
胆力、行動力等を備えている公算が大きいことになる。
彼らを「味方」につければ頼もしい戦力になるに違いない。
わたしは「不良品」の中から有能な補佐役を引き抜き、
「幹部」組織の中枢を固めるつもりでいた。
そのためにも、反乱はもちろん、自爆などという
もったいないことを彼らにさせてはいけないのだ。
巧妙に一人残らず生け捕りにして、感情レコードを
保存した上で、徹底的に再洗脳せねばならない。
「さあ『課長』、いくわよ!」
--------------------------------------
―暗号名地球救済作戦の中心的指導者として、「課長」
「風俗嬢」「ヲタク」などのコードネームをもつ冷酷な幹部を
従え、地球人類を恐怖のどん底に突き落とし、やがて
本星への反乱と本星住民の総奴隷化により強大な権力を握り、
さらには宇宙全域を恐怖と混沌に陥れた、コードネーム「OL」、
通称「破滅の女王」―その初めての任務の開始だった。
<了>
547:maledict
07/10/18 08:16:50 G/NADIba0
以上、お粗末さまでした。長くて本当にすみません。
設定が定まっていることもあって状況説明とか小道具のたぐいを充実、
という課題はあまり果たせませんでした。またいつかの宿題にします。
最後の最後のところはちょっと暴走というか悪ふざけです
いつかこの愉快な幹部連が活躍するもっとずっと軽い美少女改造ものを
書ければと思っています
ヒロインをSSBのエイミーさんみたいなかっこいい幹部にしたかったのですが
うまくいったかどうか…
ネーミングのセンスが某・運の悪い少年以上に無いこともあって、
登場人物や宇宙人の名前を付けずじまいだったのですが、
悪のりして最後の最後で「そりゃねーだろ」という名前をつけちまいました。
もっとましなのを思いついたらそれに変えます
それではまた、いつか…
548:名無しより愛をこめて
07/10/18 08:44:25 h1w6vo7p0
>>547
乙カレー。GJ過ぎる。
ただ主人公のモノローグだけで話を進めるには苦しい展開があったかな?
冷静に状況描写をしなければならないため、逆に主人公の感情の起伏が文章から
伝わりにくくなっているきらいがある。
次回は3人称による客観的な描写と1人称描写を交えながら書いてみるといいと思うぞ。
特に「カッコいい」と思わせるのは、主人公の客観的な一挙一動による部分が多いので
モノローグだけでそう思わせるのは難しい。
あと長編SSになればなるほど、文章にメリハリが必要だと思うから
セリフを本文から独立させて、その部分だけ改行して、読みやすくする工夫もあればいいと思う。
次回にも期待だ。
549:名無しより愛をこめて
07/10/18 10:32:08 hDIQY25F0
>>547
長編GJ
楽しませていただきました。
S.S.Bのエイミーさんをご存知とは、もしかしてきっしんの常連さん?
今度はああいったテイストの改造モノもお願いします。
思考の変化はとてもツボでした。
あらためてGJ
550:名無しより愛をこめて
07/10/18 16:19:10 e9xQ9tQ70
>>547
GJ
>>548
別に煽ってるわけじゃないから気悪くしたらごめんな。
人称混ぜるとか台詞独立させるのがメリハリになるとか
俺の常識からしたら信じられないんだが
これがケータイ小説やラノベを読む世代の感覚なのかねぇ…
551:名無しより愛をこめて
07/10/18 19:59:18 h1w6vo7p0
>>550
いやあ、表現が極端過ぎたかな?
maledict氏の文章はモノローグで構成されてるといっても、その中に
「地の文(主人公の意識を追っている文章)」
「主人公の発話されていないセリフ」←「ーー」で区切られてるものとそうでないものがある
「客観的な状況描写(主人公の立場ならば認識するのが困難だろう状況の描写)」
など異質な要素が混在していて、しかもそれらが改行によって区切られることなく
つむぎ出されている印象だったから、それらを分けた方が読みやすくなるかも?
と思ったのさ。別に文章作法の議論をしたいわけじゃないので、捨て置いてくれや。
552:maledict
07/10/18 20:28:22 huFaMQj70
>>548様、>>549様、励みになります
>>548様。なるほどと思います。どうもモノローグ以外では書きにくいのですが
修行してみます。
>>549様。書き込んだことはありませんがずっとロムっています。
昔のこのスレのリンクで「サソリ女」の改造シーンを見たのが
衝撃の出会いで、それ以来ずっと見ています。
実は上の話の最後の課長への悪ふざけは、名作
「エイミーさんのクリスマス」からヒントをもらったネタです。
ヒントやインスピレーションの元を挙げるときりがないのですが
(他にも舞方氏やBEEF氏など…)
>>503=>>505様
いなくなるつもりだったのですが、>>507で自分で考えたネタに自分で興奮して
ちょっと形にしてみました。どうでしょう?さっと書いたせいもあり、
またモノローグ形式になってしまいましたが。
追記>>550-551
>>551様、あ、そうなんです。「モノローグ」と言っても「語り手」と「作中人物の独白」という
二層があって、しかもたしかに「―」の使い分けがあいまいです。
意識的に「―」を「省略した」場合もありますが、たしかにわかりにくいかも。
553:血吸蝙蝠女・1/8
07/10/18 20:31:23 huFaMQj70
わたしは高校の帰り道、友達のヒトミと共に気味の悪い黒ずくめの男たちに誘拐されてしまった。
目隠しされたままの長い移動の果て、わたしはヒトミと引き離され、研究所のような建物の中、
黒ずくめの男たちに全身の衣服を切り刻まれた。さらに脇の下や大事な部分の毛、さらには
髪の毛や眉毛まで剃られ、そしてそのまま無理矢理この手術室のような部屋に連れてこられた。
男たちはわたしを丸いベッドの上に大の字に寝かせた。ベッドは柔らかく、灰色で粘着性の
素材で覆われていた。、沈み込んだわたしの身体はベッドに接着され、わたしがどんなに
もがいても動くことができなくなった。そして天井から不気味な声が響いてきた。
「きみはこれから融合生物チスイコウモリ女として改造される。そして我々の
世界征服のための忠実な僕として働いてもらうことになる。君の身体を固定している灰色の
シートは、チスイコウモリの皮膜を培養し、強化細胞と改造用ナノマシンを配合したものだ。
活性化が始まるとそのシートはまず君の皮膚と融合し、それから体内組織と神経系の
改造を開始する。一時間後には君はもう人間ではなく、すばらしい能力を備えた融合生物に
生まれ変わっていることだろう」
「いや!そんなのいやです!やめて!やめて!」
泣きわめき続けるわたしの言葉には耳も貸さず、黒い男たちはわたしの身体が入るくらいの
楕円形の枠を運んできた。枠には気味の悪い灰色のシートが張ってあり、上部には丸い
小さな穴が三つ空いていた。男たちは枠ごとそのシートをわたしの身体の上にかぶせた。
シートは鼻と口の穴以外のわたしの全身をすべて覆った。次に天井からライトのようなものが
降りてきた。
554:血吸蝙蝠女・2/8
07/10/18 20:32:24 huFaMQj70
「活性化光線、照射!」
天井の声を合図に、天井からのライトと手術台から不気味なピンク色の光線が照射された。
全身のシートは柔らかくなり、そして生き物のように動いてわたしの全身に密着した。
上下のシートも相互に密着し、わたしの全身はちょうど真空パックのお肉のような状態で
二枚のシートの間にすき間なく挟まれた。シートは微妙な圧迫と独自の刺激をわたしの皮膚に
加え、わたしの中にとても変な感覚を産み出した。その感覚と共に、女の子の大事な部分から
変な粘液が大量に出てきた。このとても変な拷問が約一時間ずっと続き、わたしの頭は
ぼおっとしてきた。
「融合完了!」
黒づくめの男の声と共にライトが消えた。恐ろしい瞬間だった。
「見るがいい!これが生まれ変わったお前の姿だ」
天井の声と共に、ライトが移動し、その背後の大きな鏡が現れた。
「いやああああああああああああああああああああああああ!」
わたしは絶叫した。
全身の皮膚はあの気味の悪い灰色の皮膚で置き換えられていた。乳首やおへそが少し
ひしゃげており、見た目は半透明のビニールを被せられているように見える。しかしそれが
今のわたしの皮膚そのものであることは、肌に触れる空気の感触ではっきり分かった。
555:血吸蝙蝠女・3/8
07/10/18 20:34:05 huFaMQj70
手の先とつま先を繋ぐライン、それに、両足の間、さらに手と足の指と
指の間すべてに、あの気味の悪い灰色の皮膜が広がっていた。指の間、脇の下、
左右の太ももの間に薄い皮膚が広がっている形だ。コウモリの羽根そっくりだった。
黒目は真っ赤に変わり、耳は鋭くとがり、口からは鋭い牙が生えていた。髪と眉は
ねずみ色のとても細い毛に置き換わっていた。きっとチスイコウモリの体毛なのだ。
「この後しばらくの時間をかけ、神経組織の再編成が進行する。お前の中に徐々に
チスイコウモリの本能と我々への忠誠心が芽生えてくるだろう。抵抗しても無駄だ。
だが、我々としてはむしろ君がその本能に全力で抵抗してくれることを期待している。
抵抗心が強ければ強いほど、完成態は強靱な意志を持つ勇敢な融合生物へと
成熟するからだ」
「…おねがい。元の身体に戻して…」
「それは技術的にも不可能だ。だが、元の身体に近い状態になる方法はある。
君の精神融合が完成し、チスイコウモリの本能が完全に覚醒すると、君は自分の
肉体を自分の意志で変形できるようになる。皮膜の伸縮も自在だ。手と指を伸ばし
て本物のコウモリのように空を飛ぶこともできる。そして人間に擬態することもできる」
男の言葉は残酷だった。わたしが人間の姿に戻るためには、わたしが人間の心を
完全に失うことが必要だということだ。いやだ、そんなのいやだ…。
「精神融合が完了するまでの時間、待機室で身体を休めるがよい。中には
『順番待ち』の友達が待っているはずだ。友達にその新しい姿を見せてあげるがいい」
さらに残酷な言葉と共に天井の声は止んだ。わたしはまだ麻痺している身体を
黒ずくめの男たちに引きずられ、「待機室」へ運ばれていった。
556:血吸蝙蝠女・4/8
07/10/18 20:35:37 huFaMQj70
「いや!来ないで化け物!あっちにいって!」
親友の残酷な出迎えにわたしは傷つき、涙を流した。
待機室の中にはやはり全裸にされたヒトミがいた。ヒトミの場合、わたしとは
異なり、髪の毛と眉毛は無事だった。何かわたしとは違う「改造」をされる予定なのかも
しれないと思った。ヒトミの改造は明日行われる、という告知が来ていたのだった。
ヒトミは根本的に優しい子だった。わたしの心がまだ以前のわたしであることが
分かってくるにつれ、わたしの奇怪な外見を極力気にしないように気丈にふるまって
くれた。そしてわたしにひどい対応をしてしまったことを心から詫び、泣いてくれた。
わたしはこの子だけは改造させてはならない、と強く誓った。わたしがわたしでいるうちに、
この子をこの建物から逃がす。
あいつの話ではわたしの心はやがて完全にチスイコウモリの本能に支配されてしまうという。
それは逃れられない運命なのかもしれない。たしかに心の奥に不気味などす黒い衝動が
うごめき始めているのをわたしは感じている。あまり時間はないような気がする。でも、
なんとかその残った時間で、この子を連れて脱走できたら、わたしはもう無理でも、
この子だけは助けることができるはずだ。
実はわたしはこういう、通常の科学力を超えた力をもつ存在と密かに戦っている人物に
心当たりがあった。その人物に彼女を委ねられれば、何とかなりそうな気がするのだ。
557:血吸蝙蝠女・5/8
07/10/18 20:37:39 huFaMQj70
「未完成の融合生物と改造素体一体が脱走!至急発見し捕獲せよ!」
待機室の壁を破り、黒ずくめの男を蹴散らし、わたしはヒトミを連れて逃げた。やつらが
わたしに与えた人間離れした力が今は役に立った。心の中の闇は少しずつ大きくなっている。
だが、まだまだ大丈夫だ。わたしたちは例の人物の電話番号を覚えている。一度聞くと
絶対に忘れない変な番号。そのチラシを学校の周りでばらまいているときはただの変態だと
思った。だが、その人物が不思議な姿に「変身」し奇怪な化け物と戦っている姿を
わたしたち二人は確かに見た。この建物を脱出し、どうにかしてあの電話番号につなげれば、
なんとかなりそう、そんな気がした。…目撃なんかしたせいで誘拐されてしまったのかも
しれない、という可能性は、いまは考えないことにした。
「ヒトミ、お願い。絶対に怪我だけはしないで。お願いよ。怪我しないでね!」
「任せて。本当にユミコはユミコのまんまだね。やさしいね!」
わたしの目のすぐ上にはヒトミのおしりがあった。すべすべして、とてもきれいなおしり。
この10メートル程度の崖を降り、下に流れる沢をたどれば、多分脱出のめどがたつ。最後の難関だ。
人間では無理だが、今のわたしの超人的な握力ならばなんとかなる。ただし、反対側の断崖が
迫っており、おぶって降りることはできない。わたしはヒトミを両肩にの上に立たせ、少しずつ降りる、
という作戦を思いついた。それほどの危険はない。しかし両側の崖から飛び出る鋭い岩が、
ヒトミの柔らかな肌を傷つける危険は少なからずあった。そして、今のわたしたちにとって、
それはとても深刻な危険なのだ…
558:血吸蝙蝠女・6/8
07/10/18 20:39:11 huFaMQj70
それがいかに危険なことなのか、ヒトミに正直に話すべきだろうか。…話すべきなのだろう。
わたしの心が少しずつ恐ろしい衝動に蝕まれている、という事実をきちんと告げるべきなのだ。
だがわたしは怖かった。ヒトミがまたあの恐怖の視線をわたしに向けるのが耐えられなかった。
自分勝手だとは思う。だが、わたしが何とかすればいいんだ。―そう。終わりよければすべてよしよ…
実際、もうほとんど地上に降りてきていた。あとは沢を下り、警察か人家を探す。やつらの
息のかかったやつらならわたしがやっつける。そしてあのヒーローに電話をかける。それで多分大丈夫。
ヒーローというのはそういうものなのだ。
そうしてわたしはヒトミに永遠の別れを告げ、ヒトミの見えないところで自分の命を絶つ。予定通りだ。
しかし、ヒトミはやはりことの重大さを認識していなかった。あたりまえだ。私が何も言わなかったのだ。
そしてヒトミはわたしに全幅の信頼を置いているのだ。
ヒトミは最後の最後で強引な飛び降り方をし、ひざ小僧をすりむいたのである。 ほんの少しの
赤い血がにじんできた。赤い赤い赤い赤い血。わたしは急速に自分の意識が麻痺するのを感じた…
559:血吸蝙蝠女・7/8
07/10/18 20:40:45 huFaMQj70
わたしはユミコにひどいことをしてしまった。
ユミコはわたしと共に謎の男に誘拐され、恐ろしい「手術」を受けて人間ではない生き物に改造されて
しまった。先にわたしが手術されなかったのは単なる偶然だ。わたしが先にああなっていたかもしれない。
なのにわたしはユミコを見て「化け物」と叫んでしまった。こっちに来るなと追い払ってしまった。
ユミコは泣いた。ユミコはこんな姿になってもまだ人間の心をそっくり残していたのだ。そんなことを
してしまったのに、ユミコはわたしをここから逃がそうとしてくれている。その人間離れした力を駆使して。
「あなただけは改造させない」
ユミコは何度もそう言って、やつらの手下をはねのけ、 壁を壊し、建物を脱出し、裏山にまで
たどり着いた。高い崖をわたしをかついでやすやすと降りてくれた。ドジなわたしは降りるときに
へまをして足をすりむいてしまった。ユミコは、大した傷ではないのに、
「このへんはやつらの影響圏。変な菌でもいるといけないわ」
そう言って丹念に血を吸い出してくれた。本当に優しい子。そして勇敢な子。
ほとんど絶望だと思えたのはそのすぐ後だ。もうあとは山を下るだけ、と思ったそのとき、
そばに近づくまで全然見えないような、不思議な仕掛けのしてある、とても高い壁に突き当たったのだ。
高さは50メートル以上。左右に果てしなく伸びている。つるつるした金属製で、ユミコの力でも
登ることなんて不可能だ。遠くからは追っ手の声が聞こえている。見つかるのも時間の問題。
そのとき、わたしの頼もしいナイト、ユミコが意を決してこう言ったのだ。
「この姿だけは見せたくなかった。でも、やむをえないわ。あなたを改造させるわけにはいかない。
ヒトミ、捕まって!」
そう言うとユミコは両手を大きく広げた。ユミコの腕はみるみるうちに太く、長くなり、その指は
細く、しなやかに伸びていった。やがてユミコの両腕は巨大なコウモリの羽根に変わっていた。
560:血吸蝙蝠女・8/8
07/10/18 20:43:45 huFaMQj70
「ユミコ、すごい!きれいよ!」
正直な気持ちだった。ユミコはにっこり笑ってくれた。そしてわたしはユミコに捕まり、
二人は大空へ飛び立った。
ユミコが向かったのは人家のある方ではなく、人気のない山奥だった。
「ユミコ、どこへ行くの?」
「いいから。わたしを信じて。わたしに任せて。あなただけは改造させない」
何か考えがあるんだ。わたしはユミコに全てを委ねた。
「さあ、着いたわ」
二人が着いたのは本当に人気のない林の中。
「ここまで追ってくるのはさすがに時間がかかる。今のうちよ」
「…今のうちって…どういうこと」?
わたしはほんの少し不安になった。
「あなたを改造されては困るの。あなたにはわたしの最初の僕になってもらわないといけないわ」
「何?何を言っているの?ユミコ?」
「ユミコ?わたしはそんな名前ではない。わたしの名は、融合生物チスイコウモリ女。
人間に強化細胞とナノマシンを注入し、わたしに似た存在に作り替える力があるわ。
しかもその精神をわたしの僕として簡単にコントロールできるの。これからもわたしを信じ、
私の言うことを聞いていればよくなるのよ。あっはっはっはっは」
ユミコだったモノはそう言うとわたしに抱きつき、わたしの首筋に牙を突き立てた。
<了>
561:maledict
07/10/18 20:53:44 huFaMQj70
お目汚し失礼しました。>>503様、どうでしょうか?
なんか自分の趣味に走ってしまった気もします。
「好きなパターン」というのが自分で分かってくるのも恥ずかしいものですね
最初片仮名で「チスイコウモリ女」と書こうとしたのですが、
以前同じタイトルがあったような気がして漢字にしました。気のせいかもしれません。
それと、「吸血鬼改造」ネタはKiss in the dark別館の「ハマダラカ女」が
ずばりそのものだった気がします。未読でしたらぜひどうぞ
そういえば>>550様もありがとうございます
地の文と独白の移行は読み直すと今回も一箇所あったことにあとで気づきました。
自分で色々試してみます。
それでは。
562:名無しより愛をこめて
07/10/18 21:56:35 hDIQY25F0
>>561
GJです。
こちらの作品も楽しませていただきました。
ただ、個人的にはユミコの意識が変わって行く所を読みたかったです。
これだけのものを書けるのであれば、
海マツリのチャットにでも顔を出してみたらいいんじゃない?
g-than氏や舞方氏と話ができるかも。
563:名無しより愛をこめて
07/10/18 22:56:03 aOfQhl1D0
>>561
GJ! やっぱあんた才能あるわ
何よりBeeF氏並みの速筆に驚いた。昨日の今日でもう書いちゃってんだもんな
564:名無しより愛をこめて
07/10/19 07:14:55 wpeG+VuH0
>>561さんありがとうございます!!まさかこんなに早く書いてくれるなんて
思ってませんでした!
蝙蝠女も良かったです!またなにか別な改造SSが見たくなったらお願いします!
565:maledict
07/10/19 21:01:10 8PQX1AYO0
>>562様
ありがとうございます。
オチの「かわいそうさ」を況を優先させてしまったんですが、
言われてみれば、ユミコの意識、血をなめたときにはまだ
完全には乗っ取られてなかったはずですよね、設定ミスでなければ(爆。
自分でも気になるところなのでちょっと続きを書くかもしれません。
チャットは家人もいるしなかなか難しいのですが、ちょっと惹かれます
>>563様
恐縮です。BEEFさんは精力的でしたよねえ。
ただ、あの憑かれたような熱意が今はちょっとわからないでもないです。
>>564様
気に入って頂けたようで本望です。
それでは…
566:maledict
07/10/19 22:03:55 8PQX1AYO0
そうだ。>>564様、せっかくのチスイコウモリ女さんとその僕さんなんですが、
お二人がちょっとひどい目に遭う続編が来てもいいでしょうか?
続編というより、「話はつながっているが作品の色が全然違う話」というか、
作者がやる二次創作みたいなものというか、パラレルワールド
みたいなものだと思って頂ければいいのですが…
567:名無しより愛をこめて
07/10/19 22:05:16 wpeG+VuH0
maledictさん
おkです!待ちどうしい!!!
568:maledict
07/10/20 09:11:46 L0L5ntWo0
>>567様は>>503様ですよね?(名前欄で名乗ってもらえるとわかりやすいです)
で、すみません。ちょっと後味悪いです。では。
569:血吸蝙蝠女Rx・1/5
07/10/20 09:13:02 L0L5ntWo0
わたしの意識は急激に麻痺していった。血血血血、
血への渇望が心を支配し、他の思考を追い出して行く。
そしてわたしの中にいるどす黒いもののが急速に
成長を始めた。破滅へのカウントダウンが始まった。
二つのわたしが混然とわたしの体を支配する。
わたしはヒトミの血をこれ以上見たくないという思いで、
わたしはヒトミの血を一口でも味わいたいという思いで、
ヒトミの血を口に含んだ。そして、
決して飲んではいけない、飲んだら終わりだ、
飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい、
という必死の思いで血を吐き出した。…いつまでもつだろう。
この甘い誘惑にいつまで耐えられるだろう。わたしはあと何分
わたしでいられるのだろう…。
あの声は「意志の力」と言っていた。抵抗は無駄。いつかは
必ず衝動に支配される。しかし同時に声は、意志の力で抵抗して
みせろとも言った。その方がやつらにとっての優秀な怪人が
作り出せるという残酷な理由で。―だがそれは、意志の力で
精神融合を覆すことは絶対にできなくとも、それを遅らせることは
できる、ということだ。そういう風にできている、ということだ。
570:血吸蝙蝠女Rx・2/5
07/10/20 09:14:17 L0L5ntWo0
わたしはこの、なんべんも確認した結論をもう一度思い浮かべ、
自分を励ました。あと何分持ちこたえられる?…いや違う!
あと何分持ちこたえればいい?
そうだ。もう崖は降りたのだ。計画を早めて、今わたしが
姿を消す方が、結局はヒトミの安全のためだ。わたしが
完全に恐ろしいチスイコウモリ女となり、ヒトミがその
最初の犠牲者となってしまう前に、わたしは自分の命を絶つ。
ヒトミが一人で里に逃げ、あのヒーローを呼ぶ。危険はとても多い。
でも、恐ろしい怪人と行動を共にするよりもはるかに安全だ…
わたしは、ヒトミに全てを話し、別れを告げる決意を固めた。
しかしその決意は次の瞬間無に帰した。わたしたちの前に
絶望が立ち塞がったからだ。
光学迷彩。多分わたしに装備されている装置の大規模なもの。
その光学迷彩を施した巨大な壁がわたしたちの道を塞いでいた。
わたしの思いつきは不可能になった。里に降りることは
できない。そしてもう追っ手はそこまで来ている。最後の手段。
それを試してみなければならない。うまくいくだろうか?それが
はたしてヒトミにとって幸福な選択だろうか。わからない。
だがいまはそれしかない。
わたしは決意を固め、増大する黒い衝動に自らを委ねた…
571:血吸蝙蝠女Rx・3/5
07/10/20 09:15:27 L0L5ntWo0
ユミコはいつのまにか本物の怪物になってしまっていた。
いつからなのだろう。最初からわたしをだましていた?
そうじゃない。少しずつ怪物の心に脅かされながらも、
わたしを怯えさせないようにそれを隠して戦ってくれたのだ。
たぶんわたしのせいだ。ユミコはわたしが血を流すのを
異常に恐れていた。きっと、血を見ることでチスイコウモリの
本能が目覚めることを恐れていたのだ。なのにわたしは…
ユミコの牙が首筋に触れる。…いいかもしれない。こういうのも
いいのかもしれない。
あの部屋からの脱出の間、ユミコはずっとわたしの頼もしい
守護者だった。ユミコはわたしの拠り所であり、あこがれであり、
ほのかな恋愛感情の対象にすらなっていた。ユミコの恐ろしい姿は
いつしかとても頼もしい、美しい姿に見えてきていた。
…だから、こういうのもいいのかもしれない。あこがれの人と
似た姿に生まれ変わる。そしてその忠実な人形として生きていく。
それは世間一般の幸せではないけれど、今のわたしには
とても幸せな生き方かもしれない。
ユミコの牙が突き刺さった。わたしの体は熱く火照り、感じた
こともない強烈な快感が全身を貫いた。そして心にぼんやりとした
心地のよいもやがかかり始めた。ああ、マスター、いえ、ユミコ、
わたしに命令をちょうだい。人形のわたしを動かしてください。
偉大なマスター。偉大なユミコ。
572:血吸蝙蝠女Rx・4/5
07/10/20 09:16:55 L0L5ntWo0
ユミコ、いえ、チスイコウモリ女様は早速口を開いた。
「聞いてヒトミ。最初で最後の命令を伝えるわ。その能力で
わたしを殺しなさい。そして、正義の心を失わず、
自分の意志と判断を使い、幸せに生きなさい。命令よ」
「マスター…ユミコ…何を?従えない…従えません!」
「最後の賭けだったの。あの壁を越えるには、翼を使うには、
一度本能に主導権を譲らないといけなかった。そして、
本能に屈服したふりをして身を潜めた。チャンスは一度。
血を吸う瞬間、吸う側も吸われる側も変な快感に包まれる。
その瞬間を待ったの。さあ早く!時間がないの。本能に支配されて、
今の命令を撤回されたら終わりよ。命令!命令よ!!」
ユミコも涙を流していた。わたしも涙を流した。だが
マスターの命令は絶対だった。なかば自動的にわたしの
爪は鋭くとがり、ユミコの右の乳房の下に押し当てられた。
そしてもう人間のものではなくなりかけている強力な
腕で、その爪を斜め上に突き上げた。そこはナノマシンが
教えてくれたわたし達の急所。ユミコはごぼごぼという音を
たててあっというまに泡になった。お別れを言うひまもなかった。
「第一の命令完了。続いて第二の命令に移行。正義の心を
失わず、自分の意志と判断で、幸せに…幸せに生きます」
言いながら嗚咽がとまらなかった。言い終えるとわたしは
大声で泣いた。いつまでも泣き続けた。
573:血吸蝙蝠女Rx・5/5
07/10/20 09:19:14 L0L5ntWo0
ユミコの遺したナノマシンがわたしの体を変えていた。
皮膚の色は薄黒いネズミ色に変わっていった。ユミコの
ようなきれいな半透明じゃない、のっぺりした色。
腕と足に伸びた皮膜もユミコのよりちょっと頼りない。
目と耳と歯が変化するのも感じられた。そして、凶暴な
闘争本能と、どす黒い吸血衝動が育っていくのを感じた。
わたしはもう二度と人間には戻れないことをはっきり感じた。
だけど、ユミコはわたしに「正義の心」も遺して
くれた。わたしの意志と判断力も返してくれた。これさえ
あれば、闇の力に負けることはない。そう思えた。
ユミコ、あなたはわたしに擬態して人間社会でひっそり
生きることを願ったんだと思う。でもごめん。わたし戦うわ。
あんなやつらがいる限りこの世界に本当の「幸せ」なんて
来はしない。あなたの人工筋肉には及ばないけど、強い
力を手にいれた。そしてこの邪悪な吸血鬼の力もある。
戦い方はいくらでもあるわ。例えばあの黒ずくめの男たちを
襲って片っ端からわたしの僕にする。組織は大混乱。
その隙に建物を破壊する。きっとできる。やってみせる。
「キキィィィィィィッ!」
わたしはコウモリのおたけびを上げた。宣戦布告だった。
「でたな怪人!変身!とうっ」
いつの間にかにわたしの後ろにはあのヒーローが立っていた。
ヒーローは問答無用で強力なキックを放った。まっすぐ
右胸に近づいてくるつま先を見ながらわたしは思った。
―もうじき会えるね、ユミコ…。
<了>
574:maledict
07/10/20 09:23:58 L0L5ntWo0
以上。お粗末様でした。
「改造させない」という気持ちが徐々に黒く歪んでいくパターンと
どちらがいいかと思ったのですが、色々考えてこっちにしました。
別パターンも何らかの形で書いてみたい気はしています。
タイトルは「話はつながっているが作品の色が全然違う」という
ことでこうしました。別に批判の意味はないのでファンの方怒らないでください。
ぼくはどちらも大好きです。
実はさらに、「話はつながっているが作品の色が全然違う話」も思いついたので
勢いで書いてしまいました。あの洗脳システムだとこんなことも
起きてしまうのではないかな、というのが着想の元です。
575:血吸蝙蝠女《蛇の足編》・1/4
07/10/20 09:25:26 L0L5ntWo0
チスイコウモリ女第二号アイコは強欲で高慢な、悪の使者に
ふさわしい女性だった。彼女はかつての親友だった僕、すなわち
吸血人形のイクエとともに人間社会に潜伏し、世界征服のための
工作に日夜暗躍していた。今日も二人は会社のトイレでタバコを
ふかしながら恐ろしい悪の計画を練っているところだった。
「ねー、あたし『電車男』に出て来たエルメスのティーカップが
欲しいの。手に入れてくれない?」
吸血人形イクエは悩んでいた。彼女はアイコの忠実な僕だったが
経済的には追い詰められていた。―そうね、一番元手のかからない
方法というと…―。彼女は同僚のウメコを非常階段の下に呼び出し、
その正体をむきだしにして言った、
「わたしはチスイコウモリ女第二号アイコ様の忠実な僕。おまえは
わたしの忠実な僕に生まれ変わり世界征服のために働いてもらう」
「ひっ…!」
悲鳴を上げる間もなくウメコの血液ににナノマシンと強化細胞が、
そしてその脳には強烈なエクスタシーが注入された。苦痛と恍惚の
入り混じった表情のまま、薄目の奥の目は赤く変じ、耳はとがり、
口からは鋭い牙が生え、その皮膚の色は生気のない灰色となり、
ウメコは恐ろしい吸血人形に変貌してしまった。
「吸血人形ウメコよ。最初の命令を伝える。エルメスのカップを
入手し、偉大なる第一マスター、アイコ様のもとへ届けるのだ」
576:血吸蝙蝠女《蛇の足編》・2/4
07/10/20 09:27:50 L0L5ntWo0
吸血人形ウメコは親がかりの裕福な暮らしをしていたが、
たいそうものぐさな女だった。彼女は帰宅後まっすぐ家に帰ると、
妹エリコのいる風呂場に向かった。エリコはちょうど風呂上がりで
これから体を拭くところだった。ウメコは正体をむき出しにした、
「どうしたのおねえちゃ…ひっ」
「わたしはチスイコウモリ女第二号アイコ様の忠実な僕である
イクエ様の忠実な僕。おまえはわたしの忠実な僕に生まれ変わり
世界征服のために働いてもらう」
悲鳴を上げる間もなくエリコにナノマシンと強化細胞と強烈な
エクスタシーが注入された。
「あ、あ、あふ…」
苦痛と恍惚の入り混じった表情のまま、薄目の奥の目は赤く変じ、
耳はとがり、口からは鋭い牙が生え、イクエに抱きかかえられた
その身体は見る間に生気のない灰色に変色した。太ももには、
流れ出た一筋の愛液と共に、コウモリのような皮膜が成長し始めた。
皮膜は脇の下と手足の指の間にも伸び、エリコは身も心も
コウモリと人間を合成したような怪物に変わってしまった。
「吸血人形エリコよ。最初の命令を伝える。エルメスの食器を
入手し、偉大なる第一マスター、アイコ様のもとへ届けるのだ」
577:血吸蝙蝠女《蛇の足編》・3/4
07/10/20 09:31:28 L0L5ntWo0
吸血人形エリコは僕となる前から姉思いの優しい子で、ぜひとも
マスターの望みを叶えたいと思ったのだが、残念なことに「エルメスの
食器」のことをよく知らなかった。―仕方ない。たしかオトエの家は
瀬戸物やさんだったはずだ。明日高校で…。そう思ってとりあえず
エリコは寝ることにした。
翌朝、エリコはオトエを屋上に呼び出すと正体をむき出しにして言った、
「わたしはチスイコウモリ女第二号アイコ様の忠実な僕である
イクエ様の忠実な僕であるウメコ様の忠実な僕。おまえはわたしの
忠実な僕に生まれ変わり世界征服のために働いてもらう」
いいかげん悲鳴を上げる暇くらいありそうなのだが、ともかく
悲鳴を上げる前にエリコはオトエの喉笛に鋭い牙を突き立てた。
エリコとオトエは強烈なエクスタシーに包まれ、オトエの体内の
ナノマシンはオトエを見る間にエリコと同じ姿に変えていった。
さらに青い性に火のついた二体の吸血人形はそのままいけない遊びに…
(以下自主規制。…というのはウソで作者の能力不足です)
「…あふ。えー、吸血人形エリコよ。最初の命令を伝える。エルメスの、
えーと…お皿を入手し、偉大なる第一マスター、アイコ様のもとへ
届けるのだ。…ごめんね、わたしこういうのに疎くって」
人を怪物に変えておいて[「ごめんね」もないものだと思うが、今のエリコは
そんな人間の倫理が通用しない、恐ろしい吸血人形なのだった。
578:血吸蝙蝠女《蛇の足編》・4/4
07/10/20 10:06:17 L0L5ntWo0
吸血人形オトエは悩んでいた。マスターであり親友であるエリコの
命令、今すぐにでもかなえに行きたかったのだが、極度に生真面目で、
無断欠席や早退などがどうしてもできない性格だったのだ。―そうだ、
たしかカナコが午後は授業ばっくれて買い物に行くとか言っていたわ。
オトエはカナコを校舎の陰に呼び出し、正体をむき出しにした…
―アイコの元に、ブラジル在住の主婦にして69代目の吸血人形ポリーンが、
1/250スケールのザクレロのプラモを献上しにきたのはその翌々日だったという。
…世界征服の日は近いのか、遠いのか…
<了>
579:maledict
07/10/20 10:07:51 L0L5ntWo0
…失礼しました(汗
そういえば初めての三人称作品でした。
三人称はどうも苦手だと思っていたのですが、
この話だとごく自然に書けました。不思議ですね。
それでは。
580:maledict
07/10/20 10:10:43 L0L5ntWo0
しまった。>>577の16行目の「エリコ」は「オトエ」の間違いでした。
似たようなミスがもし他にあったら脳内変換してください。すみません。
581:名無しより愛をこめて
07/10/20 10:25:03 58uP5Lb40
>>580
GJ。maledict氏はすっかりこのスレの顔になってしまったな
でも個々のSSについて感想が欲しいと思われるのなら、連続投稿は控えた方がいいと思うぞ
582:maledict
07/10/20 10:52:50 L0L5ntWo0
>>581
たしかに。ちょっと速すぎでした。すみません。
妄想力もちょっと衰えてきたのでほんとにお休みせねばという気がします。
583:maledict
07/10/20 11:45:03 L0L5ntWo0
>>581様
言い忘れましたがレス下さってありがとうございます。
リンクに「様」を付けるのも忘れてました。失礼しました。
584:>>503=>>567
07/10/20 19:42:12 6jzmJCgE0
読みました!私が頼んだものをここまで広げてくれてありがたいです!!
また見たいものがあったら頼みますね!!!
585:名無しより愛をこめて
07/10/21 00:45:49 2ZQdAegu0
>>489
ゴーグルファイブと言えば終盤マズルカが手術台みたいなものに寝かされて手術を受けるシーンがあったと記憶しているんだが。
誰か知っている人いません?
586:maledict
07/10/21 09:20:12 nGpiXqqt0
>>584(503)様
二番目の話、なんかいやな話ですみません。書いてて鬱になりました
続きの予定はありませんが、ヒトミが死ぬシーンはないので
ひょっとしたらヒーローが間違いに気づき
以後ドジっこの助手としてレギュラー化する可能性もゼロではないかと。
多分体力はタックルくらい。で、多分必殺技は「カタルシスバイト」。
人間の悪人を改心させるすごいワザなんですが
改心した人の肌のつやが悪くなったりむやみに血が吸いたくなったり
する副作用が出るのでそうなので封印中なんです。多分
それでは少しお休みします。いつかまた…
587:名無しより愛をこめて
07/10/23 23:57:28 iKT2JukY0
さとう珠緒を改造したいな。
うるうる光線やおっぱいミサイル、プンプンビームで世の男たちを骨抜きにして欲しい。
588:maledict
07/10/24 01:38:53 a4STUdqs0
…勢いで海マツリに投稿してしまいました。本格的に妄想絞り尽くしました。
当分書けません(すでに、けっこう既出ネタとかぶっているし)
もともと、あのページのトップの言葉を読んで自分でも書いてみたくなった
という経緯があるので、やっと送れてうれしいのですが
589:名無しより愛をこめて
07/10/24 01:43:42 /NNUYh/E0
テレ東でやってる実写版キューティーハニーで改造シーンとかないの?
590:名無しより愛をこめて
07/10/24 01:46:01 0MfHJMWa0
>>587
さとう珠緒といえば昔「志村けんのバカ殿様」で蝶の妖精で出たことがあった。
あれみて珠緒ちゃんを蝶の改造人間にしたいなと思ったよ。アゲハチョウかモンシロチョウの。
591:名無しより愛をこめて
07/10/24 02:10:08 aPEgS6uI0
>>590
見た!!よかったねアレ!!
592:名無しより愛をこめて
07/10/24 10:59:27 a4STUdqs0
>>589
こないだの回、悪の病院で知らぬ間に改造されてしまうというイイ話なのに患者が男ばっかり…
593:名無しより愛をこめて
07/10/24 11:52:27 tR0HH2r50
>>588
投稿オメ。
見てきました。
面白かったです。
他の方々に勝るとも劣らない作品だったと思います。
またこちらにもなんか書いて下さいませ。
594:名無しより愛をこめて
07/10/24 23:40:17 XCpzEzDb0
元ZONEのメンバーを改造してジャッカー電撃隊みたいな女の子だけのサイボーグ戦隊にして悪と戦わせたい。
595:名無しより愛をこめて
07/10/25 22:14:27 j1YTfm+g0
岩盤浴の機械って改造手術マシンみたいなのが多い
町のポスターで見かけたズバリというのが見つからないけど、例えばこれとか。
URLリンク(www.ganbanyoku-navi.net)
一件くらい本物の悪の組織の出店が混じってるのではないかと妄想
596:名無しより愛をこめて
07/10/27 12:52:06 hAT2M9YI0
今回のUltrasevenX、エスが寄生生物の細胞(?)を飲むシーンがよかった。
「人質から解放されたふりをして仲間に襲いかかる」シーンに続けばもっとよかったのに…
597:maledict
07/10/28 13:45:55 BEYKCrFh0
多分一種の病気なのでしょうが、ちょっと違う方向に妄想が進みました。
三部作ですが次回は間が空くと思います。
石ノ森御大の出身地で、自分も昔住んでいた仙台を舞台にしました。
タイトルは「アンチショッカー同盟仙台基地壊滅!!(前編)」です
本編の展開や地理関係(方向音痴なので)に誤認矛盾等あったらすみません。
10レスで終わりますので、またちょっとだけお目汚し失礼します。
598:AS同盟仙台基地壊滅(前編)
07/10/28 13:47:47 BEYKCrFh0
時は1972年の仙台市。朝の広瀬通り沿い、繁華街の少し手前の
喫茶店。広瀬葉子はそこで、マスターが丁寧に入れるコーヒーを
待っていた。今日は久々の非番の日なのだった。
彼女の表向きの身分は国立東城北大学の事務職員。だがその
真の姿はアンチショッカー同盟日本支部東北分室の人事部長。
かつて彼女はCIAにつながる機関に属する有能な女スパイであった。
謀略渦巻く世界に嫌気がさしていた折、アンチショッカー同盟の
さる幹部から「引き抜き」を受け、今の仕事に就いたのだった。
秘密組織の人事管理は極めて重要な職務だ。情報漏洩は即組織の
壊滅を意味するからである。現在、仙台基地常駐職員43名と東北地区
外部構成員95名の個人データを、ほぼ彼女一人が管理している。
ばたんと音がしてウェイトレスが入って来た。遅刻らしい。
「営業中」の札がからんからんと鳴っていた。遠くの救急車の
音が一瞬聞こえた。「交通戦争」か。ゲルショッカー以外
にも物騒なことの多い世の中だわ、と彼女は思った。
ウェイトレスはエプロンをつける間もなく会計をしている。
これでお客は彼女一人。今日はいやにお客が少ないな、と感じた。
599:AS同盟仙台基地壊滅(前編)・2/10
07/10/28 13:49:09 BEYKCrFh0
基地の安全管理の脆弱さが今の彼女の懸念だった。来週からでも
早速、情報管理体制の抜本的刷新に着手する予定でいた。幸い
現段階では、東北にこれほど大規模な基地が存在するという情報が
漏れている気配はない。今のうちに立て直せば多分大丈夫だ。
この地の構成員の多くは家族を悪の組織に殺された一般人である。
彼らは悪を憎む心こそ人一倍強いが、戦いや組織運営については
素人が多い。込み入った人材管理などはどうしても彼女のような
プロに丸投げになってしまう。しかしそれは非常に危険なことなのだ。
万一彼女自身が敵の手に落ちれば、基地は一挙に壊滅するのだから。
通常の拷問や自白剤の類ならば、なんとか持ちこたえる自信はある。
しかし、ゲルショッカーという組織に常識的な抵抗手段は通用しない。
なぜなら、やつらは…
ようやくコーヒーが入った。葉子は丁寧にその匂いをかぎ、一口
なめて味を確かめ、水を飲むふりをして舌を洗う。スパイ時代からの
機械的な習慣。明らかに上質なコーヒーに申し訳がない気がして、
今度はきちんと味わうためにゆっくり飲んだ。…おいしい。
いつもよりほんの少しおいしい。葉子は何気なくマスターに尋ねた。
「ねえマスター、気のせいかな。豆変わった?香りが上品になった
気がするの…うっ…」
葉子の全身に突然しびれが拡がり、彼女はテーブルにつっぷした。
「…へえ。さすがは元腕利きスパイですねえ。無味無臭、
絶対に気づかれない麻痺剤って話だったのに…」