07/03/28 18:37:34 5WLqBEvJ0
禁止エリアから逃れるように踵を返し、市街地を進もうとする。
「ま、待ってくれ……。私も連れて行ってくれ……」
自分に縋る望月の姿に軽蔑の視線を送る。
失血により視界がきかないのだろう。誰でもいいから助けて欲しいと無様な姿を晒しているのだ。
「今楽にしてやる」
拳銃、デザートイーグルを向け、引き金に指をかける。
静かな住宅街に雷鳴のような音が轟か――なかった。
(何故だ! 何故撃てない!!)
フラッシュバックするのは銃を撃たれ無残な姿を晒していた女性の死体。その光景が、リュウガを躊躇わせていた。
舌打ちし、望月の腹を蹴る。蛙が踏み潰されたような声を上げるのを見下す。
「まあいい。あと一時間もすれば禁止エリアになる。それまで残りの短い生を噛み締めるんだな」
心とは裏腹に冷徹な声で吐き捨て、その場を後にする。
漆黒の龍が去った後には、死を待つのみの男が取り残されたのみだった。
(私は死にたくない!)
生への執着心を持って、片手で這いずり回る。地面を掴む指は爪が剥がれ血が滲む。
(ドラスに会えれば助けてもらえる。ドラスと合流さえすれば……)
地面を掴もうと腕を動かすと、固い感触に当たる。
ゴミ捨て場より、腕に当たった壊れたオルゴールの箱が落ち、静かな音を奏でる。
旋律が、望月博士の心を刺激した。
―宏、音楽を聴くと優しい気持ちになれる。
自分が、愛する息子に教えた言葉が浮かぶ。
281:Round ZERO ~ Clown RESOLUTION ~ ◆TJ9qoWuqvA
07/03/28 18:39:36 5WLqBEvJ0
箱と同じように旋律も壊れて、音が飛び飛びに演奏される様はまるで今の自分のようだ。
(私の望みはネオ生命体が進化の頂点に立つことだ。人間を抑え、決して間違わない完璧な生命体を作る。
……それだけを願って麻生君を無理矢理改造し、ドラスを作り、今は自分が救われることしか考えていない。宏、駄目な父親ですまない)
自嘲の笑みが顔を支配し、身体を仰向けにする。消耗した体力ではそれが精一杯だった。
(放送の少女など、私のような人間にも希望を与えようと命を懸けた。なのに私がしたことといえば命乞いだけだ……)
首輪から甲高い音が鳴り響き、テンポを速めていく。もう自分は終わりらしい。
そう悟ったとき、再び拡声器を通した声が聞こえた。
『……俺は自分の願いを叶えます! こんな戦いをぶっ壊して、みんなを必ず救い出します。
だから、真理ちゃんが言っていたように希望を捨てないでください! 勇気を持ってください! 正しく生きることを諦めないで下さい!』
麻生が正義を貫く宣言をしている。少し前の自分なら、彼の決意を馬鹿にし、ドラスを探す方に意識をやっただろう。
だが今は違う。音楽と昔の自分を取り戻した彼は、麻生の決意に満足気な微笑を浮かべた。
「麻生君、私が無理矢理与えてしまった力を正しい方向に使ってくれてありがとう。そして私はもうお終いみたいだ。
願わくば、この殺し合いを壊して宏の事を守ってくれ。私のことは恨んでくれて構わない」
音が一際甲高くなり、最期の時が迫る。万感の想いを込めるため、肺を空気で満たす。
「宏、愛している」
己の汚さも、悲しさも、優しさも含んだ笑顔を浮かべ、首を爆発に飛ばされる。
しかし、博士として生き、父親として最期を迎える男に、死の恐怖はなかった。
(今度はキックホッパー……麻生という奴が拡声器を使っているのか)
聞こえてくる放送にリュウガは眉を顰める。脚を丘に向け、麻生の元へ向かおうとする。
だが疑問が浮かび、足を止めた。
(行って、俺はどうしようというのだ?)
もちろん、殺し合いを加速させる為、丘に集まるお人好しを一網打尽にするべきだ。
(あそこに集まる連中を殺すのが正しいはず。なのに俺は……あの少女の願いを叶えたいと考えているのか!?)
282:Round ZERO ~ Clown RESOLUTION ~ ◆TJ9qoWuqvA
07/03/28 18:40:43 5WLqBEvJ0
ガラスに亀裂が入るように、リュウガの心に迷いが生まれる。
鏡を彷徨い続けたライダーは、苛立ちを壁にぶつけた。
(あそこは俺が行かなくても、多くの殺戮者が向かっているはずだ。なら俺は、あそこに向かう馬鹿を殺す!)
その中に城戸真司がいる事を考え、市街地を徘徊する。
もう一人の自分との融合が、今の自分の迷いを消すと信じて。
眠っている始の横顔を、剣崎に姿を変えた神代が見つめる。
先程、助けに入ってしまったのは自分でも予想外の行動だった。
キックホッパーが勝ったことに祝福し、街を歩いていると剣がぶつかる音が聞こえ、そこに足を運んだ。
見える姿は、黒龍の戦士と、剣崎の親友である始、カリスだった。
カリスが追い詰められ、死を運ばれんとしたとき、剣崎に姿を変え、助ける為に立ち向かった。
これは、剣崎の想いに突き動かされたのだ。
そして、神代は一つの結論を出した。
(始は俺が殺す。だが、その前に剣崎と話をさせよう)
身勝手なのは百も承知だ。それでも、一度だけは剣崎として始に相対し、二人の関係に決着をつけさせる。
静かに思考していると、先程のキックホッパーの訴えが聞こえてくる。
ショ・ミーンの少女の名が真理である事を知った。真理の話で出た麻生という青年が、キックホッパーの新しい主なのだろう。
麻生の決意が聞こえてくる。真理に応えようと決意を精一杯伝える麻生に、自分は反対の答えを返すしかないとはいえ、笑顔を浮かべる。
再び始に顔を向け、少し危険だが、死人と対面させる為、一時的に剣崎に身体を譲った。
高貴なる振る舞いとまでは言わなくても、せめて二人を話させたかったのだ。
始が起きるまで、それから一時間を要した。
―始、お前は人間の中で生きろ。
そういい残し、唯一無二の親友は消えた。
283:Round ZERO ~ Clown RESOLUTION ~ ◆TJ9qoWuqvA
07/03/28 18:41:57 5WLqBEvJ0
どれほど行方を捜したか分からない。再会をどれほど望んだか分からない。
その親友が姿を見せ、自分を救った。
―待ってくれ! 剣崎!!
暗闇より去っていく背中を掴む為、腕を伸ばす。
かけられていた毛布が跳ね除け、腕を掴んだ。
「どうしたんだ? 始」
昔と変わらず穏やかな笑顔を向けられた。
幻でないことにホッとするが、一つの疑問が脳裏をよぎった。
「剣崎、何故お前は放送で名前を呼ばれたんだ?」
「俺にも分からない。死に掛けたんだが、それを勘違いしたとは考えにくいし……もしかして俺たちを殺し合いさせるためか!?」
剣崎の推理に、それは無いと応える。剣崎に言わなかったが、始には心当たりがあった。
自分はジョーカーとして参加したが、南光太郎はしぶとく生き残っていたらしく、まだ一人も殺していない。
そんな自分に業を煮やし、偽の情報を流したのだろう。
(次は天音ちゃんが危ないかもしれない)
剣崎と殺しあうことは出来ない。適当に言って別れようと身を浮かせると、剣崎が話しかけてきた。
「始、これだけは言っておく。俺はもう二度とお前を封印しない。必ずな」
その剣崎の言葉に眼を見開く。剣崎は自分を救うためにアンデッドになり、封印しない道を選んだ。
二人の別離のきっかけ、それを何よりも剣崎が間違えるはずがない。
そして、始は放送の意味を悟った。
「変身!」
―Change―
ベルトのバックルにハートのAを通す。
驚きの表情をする剣崎……いや、驚く演技をしている剣崎の偽者に、刃を振るう。
284:Round ZERO ~ Clown RESOLUTION ~ ◆TJ9qoWuqvA
07/03/28 18:47:35 5WLqBEvJ0
「何をするんだ! 始!!」
「黙れ! その顔で……その声で喋るな!」
剣崎の仇を討たんと民家の壁を切り刻み、ドアを突き破って外に出る剣崎の偽者を追う。
参加者の中にティターンのような能力を持つものがいるのだろう。
(そいつが剣崎を……!!)
姿を現さんと嵐のように剣を振り回す。だが一向に剣崎の偽者は姿を変えない。
「うおおおおおおおおおおお!!」
悲痛な叫びを上げ、怒りの刃を振り下ろす。
剣崎の偽者を引き裂き、血を飛ばさんと迫らせた。
「何故避けない」
剣崎は頭に寸止めされていなければ切り裂いていた刃を、ただ微笑んで見つめていた。
「信じていたから。始なら、絶対止めてくれるって」
カリスが戸惑うのが見える。これが、他のワームであるのなら、結果は違ったであろう。
剣崎の意志は強いとはいえ、完全にワームを抑えるほどの力は持たない。剣崎の意思を抑え、生存本能を優先させるワームが大多数だ。
だが、神代は違う。彼は、始を信じ無防備になる剣崎の気持ちも、剣崎の仇をとらんと怒りに燃える始の気持ちも理解できた。
神代は、自分と姉の絆を、自分を育ててくれたじいやとの絆を、親友である加賀美との絆を、ライバルである天道との絆を知っていた。
神代剣は、絆を知る数少ないワームの一人だ。ゆえに、命すらも剣崎に委ねた。
「すまない。何に怒っているか分からないけど、これだけは言える。
俺は、始と二度と戦いたくない。始がこの殺し合いに乗ったのなら、きっと何かあると思う。
天音ちゃんに何かあったかもしれないし、アンデッドの宿命を終わらせたいと思っているかもしれない。
それなら俺の命を持っていってくれ。始なら、後悔しない」
そう言い、剣崎が佇むのが見え、確信が胸に宿る。
(こいつは……剣崎だ。間違えるはずがない。俺のために命を捨てていいと言って、行動に移す奴は剣崎以外の何者でもない!)
285:Round ZERO ~ Clown RESOLUTION ~ ◆TJ9qoWuqvA
07/03/28 18:50:55 5WLqBEvJ0
カリスの胸に、後悔が宿る。親友を、この手で殺そうとしたのだ。
(俺はお前に応えれない。ジョーカーである俺は……!!)
悲痛な想いがカリスを支配し、別れのカリスアローを剣崎の足元に放つ。
「変身しろ……剣崎!!」
「何でだ! 始ぇぇ!!」
「変身しろと言ったんだ!」
カリスアローが剣崎の頭上を通り、水槽タンクを貫く。
圧力により、水槽タンクの水が噴出し、二人に降り注ぐ。
剣崎が懐からダイヤのJを取り出した。
「伊坂は俺が封印した。残るアンデッドは君とキングだけだ。出来れば君とは戦いたくない!」
「戦うことでしか……俺とお前は語り合うことが出来ない!!」
お互い、何時か交わした言葉を告げ、迫る。悲痛の表情を浮かべ、剣崎がブレイドバックルを取り出した。
カテゴリーAを収め、腰をカード状の帯が一周する。剣崎が右腕を突き出す。
「変身!」
両手が入れ替わり、右手でバックルを回転させ、スペードの意匠を正面へ向ける。
―Turn Up―
青いゲートが現れ、自分に進むように潜ってくる仮面ライダーブレイドの剣を受け止めた。
「やめろ! 俺たちが戦うことなんてないんだ!!」
訴えを無視し、蹴りを腹にくらわせる。
続けて刃を煌めかせ、銀の装甲に切り傷を幾筋も走らせた。
「どうした! その程度か!! いくらお前が手加減しても、俺は! 容赦はしない!!」
身体を弾き飛ばし、拳の連打を接近して放つ。
「戦え! でなければ俺はここの人間を殺す! 仮面ライダーとして、人を救うんだろ! 止めて見せろ! 剣崎!!」
剣をなぎ払い、突き飛ばすが、ブレドは地面を踏みしめ、その場に留まる。
「何でこんな事をするんだ!?」
286:Round ZERO ~ Clown RESOLUTION ~ ◆TJ9qoWuqvA
07/03/28 18:52:33 5WLqBEvJ0
「お前には理解できない。だが、俺にはこれしかない!」
その言葉に立ち尽くす、ブレイドを悲しげな赤の瞳が見つめた。
「お前には理解できない。だが、俺にはこれしかない!」
かつて、神代が加賀美に言い放った言葉が、剣崎の耳を通して入る。
―違う! それは違うんだ!
悲しみに心を満たしている剣崎に、神代が万感を込めた思いを伝える。
―俺が罪を背負う。だからお前たちの高貴なる行いを汚してはいけないんだ!
―俺が言う資格が無いのは分かっている。だから剣崎、カ・ガーミンの言葉をお前が始に言ってやってくれ!
神代を通して加賀美の言葉が、剣崎の心を刺激した。
「馬鹿野郎!!」
ブレイドの拳がカリスの頬を打ち抜き、尻餅を付かせる。
「俺たちは親友だ! そんな悲しいことは言わないでくれ! 俺は……お前を救いたい!!」
加賀美の想いが、神代と剣崎の想いを一つにし、悲劇のジョーカーを立ち直らせんと言葉になる。
カリスは押し黙り、ゆっくりと立ち上がって、二枚のカードを取り出す。
「……剣崎。決着をつけよう」
「く……始……」
二人のカードが、ラウザーに読み込まれていく。
―Drill・Tornado―
―Kick・Thunder―
「「おおおおおおおおおおおおお!!」」
二人の雄たけびが重なり、顔を発光させる。
―Spinning Attack―
―Lightning Blast―
風を纏った回転キックと、雷を纏ったキックがぶつかる。
287:Round ZERO ~ Clown RESOLUTION ~ ◆TJ9qoWuqvA
07/03/28 18:53:42 5WLqBEvJ0
「剣崎ィィィィィィィィィ!!」
「始ェェェェェェェェェ!!」
風と雷の嵐が民家を、ビルを、ガラスを砕き、瓦礫を作り上げていく。
力の拮抗が爆発音を上げ、破壊を続けるもお互い譲らない。
だがそれは勝つ為でなく、お互いを思いやっての拮抗だった。
均衡が、行き場を失ったエネルギーの暴発で崩れる。
盛大な破壊のエネルギーが、お互いの姿を見失うほどの距離を開けさせた。
煙が晴れ、粉塵が舞い落ちきった後には、ただ廃墟が広がるだけだった。
(……無事のようだな)
カリスから始へと変わり、身体の痛みで意識を覚醒させる。
デイバックは近くに落ちており、あの爆発と共に吹き飛んだようだ。
中にある首輪探知機が動く事を確認し、震える脚を無理矢理立たせる。
(俺がすべきことは決まった)
静かな炎が、男の胸を包み込む。
続けて後戻りする気の無い歩みを進める。
(剣崎を優勝させる。そのために俺は……全て殺す!)
最早、親友は亡き者となっている事を知らず、悲しくて、皮肉な決意を固めてしまう。
自分が対面したのは死者と知らず、道化として殺し合いを求め歩いた。
しかし、道化の運命を歩ませたものは……
剣崎の意思がスゥッと消えていくのが分かる。
―しばらく身体を借りてすまなかった。
288:Round ZERO ~ Clown RESOLUTION ~ ◆TJ9qoWuqvA
07/03/28 18:54:44 5WLqBEvJ0
もともと、親友である始に逢ったことにより、剣崎の意識が一時的に強まったにすぎなかった。
始との邂逅が終わり、剣崎の魂は知識と力を残し、神代の身体より出て行った。
「何故なんだ?」
意識を取り戻した神代は呟く。
「何故自分の高貴なる振る舞いを汚そうとする!? 何故自分に自棄になっている!?
始は、剣崎と共に新しい世界で幸せに暮らすべきなんだ! 手を汚すのは俺だけでいいはずなんだ!! なのに何故……」
神代剣は知らない。今の始は、自分と似ている事を。
「相川始! お前を見つけ出す! そして、その手を汚す前に俺が殺す!! 俺が汚させはしない!! 待っていろ!!」
サソードヤイバーを杖代わりにして無理矢理身体を起こす。
結果的に道化の道を歩ませた貴族は、道化を笑わず、ただその心を救いうために殺すことを選んだ。
道化と貴族、二人は同じ道を行く。
振り返らぬ決意を乗せて。
289:Round ZERO ~ Clown RESOLUTION ~ ◆TJ9qoWuqvA
07/03/28 18:55:49 5WLqBEvJ0
【望月博士 死亡】
残り36人
【リュウガ@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地D-6】
[時間軸]:劇場版登場時期。龍騎との一騎打ちで敗れた後。
[状態]:健康。
[装備]:コンファインベント。
[道具]:ファイズショット。デザートイーグル(357マグナム)。
[思考・状況]
1:もう一人の自分と融合し、最強のライダーになる。
2:ジョーカーの役目を果たす。
【相川 始@仮面ライダー剣】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地E-6】
[時間軸]:本編後。
[状態]:全身に負傷。腹部と胸部に切傷。中程度の疲労。二時間カリスに変身不能。
[装備]:ラウズカード(ハートのA、2、5、6)。首輪探知機(レーダー)。
[道具]:未確認。
[思考・状況]
1:剣崎を優勝させる。
2:ジェネラルシャドウを含め、このバトルファイトに参加している全員を殺す。
290:Round ZERO ~ Clown RESOLUTION ~ ◆TJ9qoWuqvA
07/03/28 18:56:49 5WLqBEvJ0
【神代剣@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地E-4】
[時間軸]:スコルピオワームとして死んだ後。
[状態]:全身に負傷。中程度の疲労。始に憤り。二時間ブレイドに変身不能。
[装備]:サソードヤイバー。剣崎の装備一式。
[道具]:陰陽環(使い方は不明)。ラウズカードのスペード9&10。ダイヤのJ。
[思考・状況]
1:始と再会し、手を汚す前に自分の手で殺す。
2:この戦いに勝ち残り、ワームの存在を無かったことにすることで贖罪を行う。
3:さらに、自分以外が幸せになれる世界を創る。
[備考]神代は食パンを「パンに良く似た食べ物」だと思ってます。
※剣崎と神代剣両方の姿に切り替えることができます。
剣崎の記憶にある人物と遭遇しそうなら、剣崎の姿に切り替えるつもりです。
291: ◆TJ9qoWuqvA
07/03/28 18:59:46 5WLqBEvJ0
投下終了。誤字、矛盾があれば指摘お願いします。
デザートイーグルは別名ハンドキャノンと言われるほど強力な銃ですが、口径が小さいなら重量で反動が抑えられるので、明日夢にも撃てるだろうと判断しました。
292:名無しより愛をこめて
07/03/28 19:05:33 nDh6HLdAO
リアルタイムに遭遇。超GJ!
加賀美の意志を汲み取って貰えて凄く嬉しい。キングといい、最近は嬉しいハプニングが多いな。
因みに一カ所、真似が前になってました。
望月博士の死に様も美しい…
|葬式会場| λ...博士…
剣崎登場と見せどころが沢山でお腹一杯だ。
293: ◆TJ9qoWuqvA
07/03/28 19:14:03 5WLqBEvJ0
>>292
指摘ありがとうございます。
> その言葉に驚愕する。こんな目立つ前をすれば狙われるのは誰だって分かるはずだ。
を
> その言葉に驚愕する。こんな目立つ真似をすれば狙われるのは誰だって分かるはずだ。
に差し替えてください。
294: ◆TJ9qoWuqvA
07/03/28 20:06:13 5WLqBEvJ0
自分で誤字発見orz
> 結果的に道化の道を歩ませた貴族は、道化を笑わず、ただその心を救いうために殺すことを選んだ。
を
> 結果的に道化の道を歩ませた貴族は、道化を笑わず、ただその心を救うために殺すことを選んだ。
に変えてください。
295: ◆A.IptJ40P.
07/03/28 20:29:40 VfNj2nMj0
投下乙!
剣崎登場―――!!
いやあ自分の蒔いたフラグが拾われるのは嬉しいなあ。
しかしデザートイーグル支給は死亡フラグだぞ。大丈夫なのかリュウガ。
296: ◆A.IptJ40P.
07/03/28 20:31:42 VfNj2nMj0
あ、予約分はあと少しで書き上がる……筈。
推敲込みで何とか明日には……!!
だからもう少しだけ時間を……!!
297:名無しより愛をこめて
07/03/28 21:54:30 1ayj3bGvO
投下乙。
色々言いたいことはあるが、一言。
リュウガって、もはやサラマンd(ry
いや、結果的に望月博士死んだけどね…
298:名無しより愛をこめて
07/03/28 22:11:37 nDh6HLdAO
>>297
他に何を言いたかったんだw
今のリュウガを見ると…。
|葬式会場| λ...ザンキさん…
299:名無しより愛をこめて
07/03/28 22:41:40 lX0TEzCz0
なんか、今のリュウガを作った張本人としては
嬉しいような胸が痛いような・・・複雑な心境です。
いずれ決着つけようかとは思いますけどね。
今のキャラの現在位置が知りたいですね。暇が出来たらお願いします。
300: ◆TJ9qoWuqvA
07/03/28 22:46:41 5WLqBEvJ0
現在位置は少し時間下さい。
来週中までには更新したいですが……
リュウガはサラマンダー脱出の機会が作れなかったですね。
未熟ですいません;
301:名無しより愛をこめて
07/03/29 07:06:55 SM1YK578O
投下乙。
話は面白かった。
ただちょっと始に違和感あり。
そして、珍しく誤字が多い。
指摘のあった他にもブレイドがブレドになっている。
似たような言葉の繰り返しが多く、テンポが悪かった。
予約まではあと数日あったし、急いで投下することはなかったのでは?
302:名無しより愛をこめて
07/03/29 12:29:57 6eT4VIZH0
お二人ともGJ!!
批評を貰って描写にさらに磨きがかかったように感じます。
あ、総合スレの方にとりあえず水のエルのテンプレ紹介投下しました。
DVD見ながら書いたんで間違ってはいないと思うが訂正追加あったらお願いします。
あ行のキャラから攻めていってるんで始、蓮、浅倉ももうすぐ投下出来ると思います
303: ◆naAqV94LaU
07/03/29 12:40:13 PdtxesVD0
投下乙
俺も色々言いたいことがある。
だが、一つだけ言っておこうと思う。
戦闘の展開がまんまnaAqV94LaU氏のFULL FORCEと同じな気がするんだが…。
加賀美云々の描写があったからというのもあるが、会話から台詞から何まで加賀美対剣を思い出してしまった。
でも面白かったし、難癖つけて荒らしたいなんて気持ちは全く無いから誤解しないでくれ。
作品を読んでの純粋な感想です。
何は無くとも乙でした
304:名無しより愛をこめて
07/03/29 12:45:40 +uUiMpUH0
>>303
鳥出ちゃってるぞー
まあ自分名義で指摘するのはアレだから名無しとして発言しようとするのは正しい。
305:名無しより愛をこめて
07/03/29 12:47:18 PdtxesVD0
あちゃ、IDついてた。
交流雑談所から飛んできたんだけど…私もなんとなくそう思えてしまったので。
でも前述の通り、特に気にしてないんでスルーしてくださいw
自演みたいになってしまってすみません。
因みに作品の完成度は7割ぐらいです。もう少し。
306:名無しより愛をこめて
07/03/29 12:52:26 PdtxesVD0
失礼、鳥でしたorz
重ね重ねすみません…
ホント、色々気にしないで下さいorz
307:名無しより愛をこめて
07/03/29 15:24:55 ScLnAnB9O
すまん、Round・ZEROの話だが神代の所がよくわからなかった
神代が剣崎を演じてるのか剣崎が神代の体を一時乗っ取ったのか神代と剣崎が意識共有してるのかどういうことなのか誰か教えてくれ
308:名無しより愛をこめて
07/03/29 15:25:46 4rWI3ySY0
>>307
>神代が剣崎を演じてる
神代はワーム擬態能力で、なりきっている。
と、思う。
309:名無しより愛をこめて
07/03/29 17:20:41 oikuPfsTO
自分は乗っ取りかなと思う。
その方が夢?がある気がする。
310: ◆TJ9qoWuqvA
07/03/29 17:54:41 eYxvuZyd0
たくさんの批評ありがとうございます。言われないと気づかないもんが多すぎですorz
◆naAqV94LaU氏、FULL FOCEに似てしまったのはすいません。
もともと劇場版の冒頭、ジョーカーvsブレイドに神代を足した話にしたかったので、FULL FOCEと被ってしまうのは考慮しておくべきでした。
練りこみ不足の上盗作みたいになっちゃって申し訳ないorz
今回大人数を一気に書くのが苦手というのが前面に出てしまいました。
まだたいした人数じゃないのに……
本来の予約期限までには修正版を上げたいと思います。
では!
311: ◆A.IptJ40P.
07/03/29 18:30:33 +uUiMpUH0
書き上がりました。遅れてすいません。
推敲して今日中に投下します。
かなりボーダーです。下手したらまた論争があああああああ……
……一部アッパー入ったテンション/妙なスイッチ入った状態で書いたから見直すのが怖い……
312:名無しより愛をこめて
07/03/29 19:22:38 SV46+itWO
>>310
こちらこそ申し訳ありません。
盗作なんて不名誉なことは全くございませんよ!前述の通り、純粋に面白かったです。
もともと立ち位置が似ているキャラですしねw
これからも期待してますので、お互い頑張りましょう!
因みに私もあと一割ぐらいで書き上がります。
313:企てる男、燃え上がる男 ◆naAqV94LaU
07/03/29 19:57:18 PdtxesVD0
完成しましたので投下します。
314:企てる男、燃え上がる男 ◆naAqV94LaU
07/03/29 19:58:24 PdtxesVD0
「―…はぁ、はぁ…。」
息が切れる。疲弊しきった身体も悲鳴を挙げていた。
それでも胸に秘められた憎悪の炎は消えることは無い。
寧ろ時が経つにつれて、その炎の勢いは増していた。
―…参加者を全員皆殺しにして…真理を生き返らせる。
新たなる目標に向けて冷徹な戦士は、千切れそうな足を引き摺って歩く。
「仮面ライダーキックホッパー…貴様は俺の真理を守れなかった。」
近くに居ながら、真理を見殺しにしたのだ。
「クククッ…一番に貴様を殺してやる…!」
言うなれば礎。
真理を守れなかった罪、命を以って償わせる。
草加の表情が快楽に歪んだ。何故か笑みさえ浮かんでくる。
―…この島に居る参加者全員の命を足しても君の命には叶わない。
それは分かっている。
だが、安心してくれ。
今しばらくの辛抱だ。沢山の生贄を捧げ、必ず君を生き返らせて見せる。
「…君は俺が守る。」
―…仮面ライダーキックホッパーも、乾巧も必要無い。
闇を切り裂き、光をもたらすのは俺だッ!
そう呪詛のように呟きながら、草加は進んで行く。
やがて、眩しい朝焼けと共に市街地に辿り着いた。
沢山の建物が並んでいる。
いい加減、身体も限界だった。
今のままでは戦うことは出来ない。
邪悪な闘志に満ち溢れた草加自身にも、それは分かっている。
今戦っても、返り討ちに遭うのが関の山だろう。
ならば、今は身体を休めることだ。
万全とはいかなくても、傷の治療ぐらいはしたい。
「さて…。」
静観とした市街地を歩きながら辺りを見回す。
一般の家庭なら治療具ぐらい有る筈だ。
315:企てる男、燃え上がる男 ◆naAqV94LaU
07/03/29 20:01:04 PdtxesVD0
出来れば、今誰かに遭うのは避けたかった。
だが、もし不測の事態が起きて、誰かと出会うなら単純な馬鹿が良い。
簡単に騙され、自分を信じてくれるお人好しだ。
今までの経緯から言っても、草加は自分の立ち振る舞いには自信があった。
菊池啓太郎に取り入り、巧を悪人に仕立て挙げ、精神的に追い詰めたこともある。
誰かに襲われた…と言って相手を丸め込む事も出来るだろう。
そのまま利用するというのも上等手段だ。
一時的にでも利用できる道具は利用するべき。
「真理を助ける為には…俺一人では厳しい。」
爆発しそうな程の激しい怒りを抱えながらも、草加は冷静だった。
現在の状況を判断し、これからの事を淡々と画策する。
自分一人で勝ち抜く事は難しい事、協力者が必要な事。
既に理解していた。
使えそうな人物を集め、暫くは行動を共にする。
―…但し、あの秋山蓮のようなゴミは要らない。
オルフェノクを初めとする人外な連中にも用は無い。
全うな人間であり、自分を好いてくれる者。
そして、戦う力を持つ者。
全ては真理を蘇らせる為だけに切り捨てる駒だ。
恐ろしい程冷静に思考を巡らせながら、市街地を覚束ない足取りで進んでいった。
その後ろ姿には一部の迷いも無い。
++
316:企てる男、燃え上がる男 ◆naAqV94LaU
07/03/29 20:02:08 PdtxesVD0
ガタックゼクターとの激戦を終えた後、南光太郎もまた歩みを進めていた。
放送で促されていたエリア、H-7。
其処には良い物があると言っていた。
武器か、脱出をする為の鍵か。
それは現在では知る事は出来ないが、光太郎の胸には僅かな期待が燻っていた。
しかし。
「待てよ?…ゴルゴムが俺達に有利な物を配置するというのは…。」
到底有り得ない話である。
こう言って参加者達をかく乱する罠かもしれない。
そう、光太郎は思い立ったら一直線。
巡らされた考えは一つの結論に行き着く。
「おのれゴルゴム…!俺達を罠に嵌めるつもりだな!!」
静かな市街地に光太郎の声が響き渡った。
そして、気がついた。
こうしてはいられない。
誘いに乗った人々が今、苦しんでいるかもしれないのだ。
「急がなければ…!さっき襲い掛かってきたゴルゴムの刺客も居る。
また罪も無い人々が犠牲になってしまう!」
先刻入手した用途不明のアイテムをデイバッグに放り込み。
気合一発、両頬を叩く。
「よし!」
―…目的のエリアまで猛ダッシュだ!
しかし、
「みんなぁ! 殺し合いなんてもうやめてー!!」
その意志は少女の大きな声で止められることとなる。
317:企てる男、燃え上がる男 ◆naAqV94LaU
07/03/29 20:06:16 PdtxesVD0
規制にかかってしまったので避難所に投下します。
318:企てる男、燃え上がる男 ◆naAqV94LaU
07/03/29 20:12:23 PdtxesVD0
投下終了いたしました。
相変わらずの駄文、失礼致しました。
319:名無しより愛をこめて
07/03/29 20:17:51 eYxvuZyd0
投下乙!&GJ!
こ う き た か !!
えらいもんを味方にしたもんだw 草加はw
二人のキャラが弾けすぎです。シリアスなのに笑ってしまうのは光太郎さんの人徳かw
面白かったです。
あと、ゴルゴムの仕業といっているのが気になりました。
前まではクライシスの仕業といっていたので。
まあ、何でもかんでもゴルゴムの所為にしているのは光太郎さんらしいんですがww
320: ◆naAqV94LaU
07/03/29 20:24:24 SV46+itWO
感想有難うございます!
大きな間違いを犯してしまった…。ゴルゴム→クライシス帝国でお願いしますorz
後で修正しておきます!
321: ◆naAqV94LaU
07/03/29 20:25:48 SV46+itWO
追記。
ここぞとばかりに吹聴する草加と、信じ込む光太郎をお楽しみ下さいw
322: ◆A.IptJ40P.
07/03/29 20:38:06 +uUiMpUH0
GJ!
草加マジ外道ww
光太郎……そいつにだけは騙されちゃ駄目だ。
草加が言ってたのは、半分ぐらい本音かも知れんなあ。
推敲も終わったので投下します。
323: ◆A.IptJ40P.
07/03/29 20:39:15 +uUiMpUH0
◆
赤い装甲と、格子状の仮面を纏ったライダーが、剣を一気に振り下ろした。
武器らしいものは何も持っていない、怒りを眼に湛えた男に向かって。
◆
些細な偶然から、戦士になってしまった男。
鍛錬と願望の果てに、戦士として在った男。
戦士としては歪んだ男。
戦士の仮面を喪った男。
出遭ってしまった二人の男。
出逢えなかった二人の戦士。
―――その遭遇は、偶然か必然か?
―――その対面は、不幸か幸運か?
―――そしてその邂逅は、この世界に何を齎すのか?
◆
声の元に向けてひた走る。
連なる声は、どす黒い悲劇を繰り広げていた。
低い声が、
『仮面ライダーの知り合いめ、嬲り殺しにしてやる』
告げた。絶望が身を侵す。
……間に合わないのか、俺はっ!?
324: ◆A.IptJ40P.
07/03/29 20:40:17 +uUiMpUH0
◆
道の真ん中に散らばっているそれを拾い集める。全身の傷が意識から消える程の動揺。
「ザビー……ゼクター……」
ライダーとしての自分と供に在った、唯一無二の相棒。
その外殻は無残にも砕け、内部も多くの箇所が歪み、捩れ、捻り潰されている。
完全に壊れたという訳ではなさそうだが、回路が幾つもの箇所で寸断されているのは間違いない。
それは、紛れも無い死だ。
機械に命が無くとも、あの確かな鼓動は消えた。
もう二度と、戻って来る事は無い。
「……ぁああああああああぁぁぁぁぁぁっっ!!」
蹲った。
瞼の裏を灼く熱と、脳髄を抉る冷たい激痛のギャップ。
それが双眸の奥を苛み、熱を眼の端から溢れ出させる。
―――その時、声が聞こえた。
◆
「くそっ!!」
――何で間に合わなかったんだ!俺はっ!
325: ◆A.IptJ40P.
07/03/29 20:41:20 +uUiMpUH0
市街地に辿り着いた時、末期の声が聞こえた。
あの声が、何処までも重く背中に圧し掛かる。
――仮面ライダーは……闇を切り裂いて、光をもたらす!
「俺は……人を守る為にライダーになったっていうのに……!!」
また、誰も守れない。
あの放送で死んだ六人も、
今、何処からか呼びかけて来た女の人も、
誰も、守れない。
「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
自分の在り方は―――そんなにも、弱いものだったのか。
◆
「はは…………」
自嘲の笑いが口から零れる。
自虐の笑みが口から漏れる。
あの少女の魂の叫び。
――仮面ライダーは……闇を切り裂いて、光をもたらす!
「俺は、もう……仮面ライダーじゃないんだ……」
326: ◆A.IptJ40P.
07/03/29 20:42:29 +uUiMpUH0
ザビーゼクターの残骸を握り締め、ビルの壁へと寄りかかる。
全身の疼痛と迫り来る闇に心を浸し、ゆっくりと眼を閉じた。
―――望むのはただ、力だけ。
◆
そして―――彼らは邂逅する。
歪んだ合わせ鏡のように、相似の疵を抱え込み。
華と砕けた鏡のように、互いの瑕を拡げ合う。
―――二人は遂に、相見える事となる。
◆
市街地を当ても無く彷徨っていると、道の端で建物に寄り掛かるように倒れている男がいた。
胴には刺し傷。顔は青褪め、そして、
血を吐くかのような苦悶の表情で。
大切な誰かを喪ったかのような慙愧の表情で。
、、、、、、、、、、、、、、、、、
自分の在り方を否定されたかのような、漆黒の闇よりも暗く沈んだ表情で。
眼を、閉じている。
―――――何故か、鏡を視ているような気がした。
「……大丈夫ですか!?」
327: ◆A.IptJ40P.
07/03/29 20:43:34 +uUiMpUH0
幻想を振り払い駆け寄る。七人もの人を救えなかった自分に出来るのは、これから一人でも多く救うことだけだ。
かなり大きな声で呼び掛けたのに、全く反応が無い。
……また救えないのか、俺はっ!
だが、傍に立った時、その男が眼を開いた。
……良かった、生きてる。
「あの、大丈夫です……か……?」
確かに、男の眼は開いていた。
、、、、、、、、、、、、 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
非人間的なまでに充血した、地獄の悪鬼そのものの両眼を見開いていた。
反射的に、飛び退く。
―――これは、眼を合わせてはいけないモノだ。
浅倉とは違う。
東條とは違う。
須藤とは違う。
今までに出逢ったどんなライダーとも違う、真下へと沈み込む螺旋を象った精神性。
脳裏に恐怖を刻まれ、カードデッキを取り出した。
握り締めたカードデッキを男の瞳へと突き出し、龍騎へと変身する。
否、変身―――しようとした。
328: ◆A.IptJ40P.
07/03/29 20:44:38 +uUiMpUH0
「おい!何するんだよ!」
だが、それは阻まれる。
一挙動で飛び起きた男が、カードデッキを奪い取ったのだ。
◆
こいつの顔を見た瞬間、直感で解った。
俺と同じだ、と。
拠り所を喪った俺と同じだ、と。
自分を成り立たせる為の拠り所を喪った俺と同じだ、と。
何か黒いものを持ったその右手が突き出された。腰に現れるベルト。
―――こいつは、力を持っている。
それが許せない。
俺は全てを喪ったというのに、こいつは力を持っている。
だが、まるで何もかもを手放してしまったかのように絶望している。
力を当然のものとして認識するその考えが、どうしようもなく腹立たしい。
四肢と胴体の筋肉を一度に動かし、壁に寄り掛かる姿勢から一気に飛び掛る。
素早く右手を伸ばし、黒い板状のそれを奪い取った。
「おい!何するんだよ!」
傷の痛みの所為か、血が足りない筈の頭は酷く冴えていた。
奴のベルトが消え去ったことをしっかりと認識し、それについて考察を巡らせることが出来るほどに。
329: ◆A.IptJ40P.
07/03/29 20:46:40 +uUiMpUH0
掴んだそれを掲げる。腰に現れるベルト。
……思い通り。
どういった原理かは知らないが、ベルトの存在はこれに依存しているらしい。
そして、バックル部分は空白であり、片側だけが開いている。
恐らくは、これを入れる為の隙間。
装填した。
それが全身を覆う。ベースの赤と銀の装甲、その輝きによって強い印象を与える龍の鎧が。
「……は、はははははははははははははは!!」
力だ。
壁を軽く殴りつけると、それだけで無数の亀裂が走る。
その感触に酔いつつ左手の違和感に眼を向けると、龍の頭を象った手甲があった。
かしりとスライドし、板状の何かを差し込むスペースが現れる。
……何だ?
サイズは丁度、あの黒い板と同程度。
腰の正面に手を遣り、板を探った。
指先に感触の違いが引っ掛かる。
するりと抜け出たそのカードには、『SWORDVENT』の文字と、大陸風の曲刀が描かれていた。
……やはりな。
それを左手の機械へ置くと、しっかりと重なった。スライドを引き戻す。
『SWORDVENT』
電子音声、頭上から飛来する刃。
掴み取り、倒れ込んで喚いていた喧しい男に振り上げる。
そして―――振り下ろした。
330: ◆A.IptJ40P.
07/03/29 20:47:55 +uUiMpUH0
◆
龍騎に変身した男の、狂気と狂喜の高笑い。
「……は、はははははははははははははは!!」
拳を叩きつけ、壁に罅を入れている。
「くそ、何なんだよあんたはっ!」
叫ぶ。だが、全く反応が無い。
地面を転がり、何とか距離を取る。
その間にも声を挙げるが、聞いている様子が無い。
見れば、カードデッキからカードを取り出し、バイザーにベントインしていた。
「……何で知ってるんだよ!?」
自分が見よう見真似でやっていたのを思い出す。その時の再現のように、使ったカードまでもが同じ。
『SWORDVENT』
低い声。刃が大気を切り裂く音。
奴の右腕に、長大な刃が握られていた。
振り上げられる刃。仰向けに倒れている自分。
……ここで、終わるのか……!?
誰かを救う為にライダーになったのに、誰一人として救えずに。
331: ◆A.IptJ40P.
07/03/29 20:49:14 +uUiMpUH0
そんなことを、認められる筈も無い。
叫んだ。
全力で、その意志を。
◆
赤い装甲と、格子状の仮面を纏ったライダーが、剣を一気に振り下ろした。
武器らしいものは何も持っていない、怒りを眼に湛えた男に向かって。
だが、刃を正面から見据える男は大きく息を吸い込み、叫んだ。
「あんたも……」
「あんたも、誰かを傷付ける為にライダーになったっていうのかよ……!?」
刃が、止まる。
からん、と乾いた音。
それを支える握力を喪ったライダーの手から、剣が滑り落ち、路面を叩く音が響いた。
◆
知らず、右手から刃が零れ落ちていた。
―――あんたも、誰かを傷付ける為にライダーになったっていうのかよ……!?
俺は、一体、何をしようとしていた―――!?
332: ◆A.IptJ40P.
07/03/29 20:50:23 +uUiMpUH0
他人から力を奪い取り、
それを振るう感触に酔いしれ、
挙句の果てに、ライダーでもワームでもない者を殺そうとした。
それは、その行動は、不協和音そのものではないのか。
そもそも、俺は何の為にライダーになった?
いや、何の為にゼクトに入った?
ワームを倒す為――違う。
リーダーになる為――違う。
パーフェクトハーモニー――違う。
それらは全て手段に過ぎない。
脳裏に去来するのは―――
「―――そうだ、俺は―――」
ワームから救った少年の笑顔。
護り切った女性の感謝。
そして――身を挺して庇った部下の安堵の声。
「―――誰かを護るために、仮面ライダーになったんだ……!!」
333: ◆A.IptJ40P.
07/03/29 20:52:23 +uUiMpUH0
◆
戦士の意志に呼応し、それが―――鋼の甲虫が眼を醒ます。
だが、飛び立つことは無い。
今は、まだ。
◆
男の変身が解除される
現れた顔は、何処か穏やかな笑顔だった。
今見れば、両眼の充血は泣き腫らしたものだと分かる。
カードデッキを差し出され、戸惑いつつも受け取った。
「……ありがとう。君のお陰で、最も大切なものを取り戻せた」
「え、ちょ、あんた、あんたは一体なんなんだよ!!」
俺の言葉に対して、その男はにやりと笑い、言った。
何処か誇らしげに。
「―――矢車」
それこそが、今の自分だというように。
「―――仮面ライダーではなくなった男、矢車想だ」
何処か誇らしげに、言った。
334:名無しより愛をこめて
07/03/29 20:52:27 6eT4VIZH0
面白かった!!けど一寸疑問。
出発したのって名簿順だよな?
光太郎は乾も草加も見てないんだっけ?
335: ◆A.IptJ40P.
07/03/29 20:53:25 +uUiMpUH0
◆
朝焼けに包まれて、彼は走り出す。
往くべき道を。
その情熱のベクトルは、誰かの胸を貫くのか。
◆
336: ◆A.IptJ40P.
07/03/29 20:54:42 +uUiMpUH0
【矢車想@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地G5】
【時間軸:8話 ザビー資格者】
【状態:重症。全身打撲&火傷&刺傷(急所は避けていました。大出血もありません)】
【装備:ライダーブレス(ザビーゼクター破壊)】
【道具:アドベントカード(サバイブ)】
【思考・状況】
1:もう二度と、こんな過ちは犯さない。
2:仲間を集めてパーフェクトハーモニーで脱出!
※矢車はBOARDという名前に嫌疑(ワームの組織では?)
※やさぐれ抜けた所為で、傷の痛みと出血で気絶する可能性があります。
※カブティックゼクターは、どのような形でかは分かりませんが島に存在します(不明支給品?)
【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地G5】
[時間軸]:47,8話前後。優衣が消えたことは知っています。
[状態]:健康。小沢さんは思考の彼方。
[装備]:カードデッキ(龍騎)
[道具]:なし
[思考・状況]
1:何なんだこの人は!?
2:ひとりでも多くの人を助ける。
3:戦いを絶対に止める。
4:蓮たちを探す。
337: ◆A.IptJ40P.
07/03/29 20:56:38 +uUiMpUH0
投下終了……
うん、まあ、その、7ホメ3ケナシ位の批評を下さい。
……一部の文章が自分が書いたとは思えない。何考えてたんだろ自分。
338: ◆A.IptJ40P.
07/03/29 20:59:55 +uUiMpUH0
傍点ずれとるorz
修正が出来ればお願いします……
339:名無しより愛をこめて
07/03/29 21:00:14 yhqaXa8Y0
お二方GJ!
光太郎ヤバス!下手すると死亡フラグかも・・・。光太郎なら余裕で跳ね返しそうだけど。
矢車さんがヤサ車さんにならなくて意外だけど、この矢車さんもなかなか・・・。
>>334
今確認してきましたが、取りあえず開始時刻には変身したままでしたね。
自分の前の人の名を覚えているとすれば・・・?
340:名無しより愛をこめて
07/03/29 21:04:19 SV46+itWO
GJ!
私もやさぐれ脱出フラグを狙ってました。悔しいけど…嬉しいw
矢車さんに色々フラグが立って今後の展開に期待です。
相変わらずお見事!乙!!
>>334
見知らぬ相手の顔と名前など、光太郎が一々覚えてる訳が無いと判断しました。
無論、嘘がバレたら草加に死亡フラグが立つ訳ですがw
341:名無しより愛をこめて
07/03/29 21:06:38 yhqaXa8Y0
>>340
納得。そういえばそうか、光太郎だもんなww
342: ◆naAqV94LaU
07/03/29 21:13:01 SV46+itWO
そういえば当初から変身していたんですね。
すると尚更、光太郎に余裕が無い訳でw
しかし光太郎だから、で納得してしまうとは素敵過ぎるww
343:名無しより愛をこめて
07/03/29 21:15:34 eYxvuZyd0
GJ!
密かにパーフェクトハーモニーなキックホッパーを企んでいたりw
やさぐれ脱出のきっかけはよかったです。
それにしても真司はまた変身の機会を逃しちゃったなw
気になる点が一つ。前回、矢車が真理の放送を聞き逃したことになっていることです。
麻生さんの放送で代用は無理でしょうか?
>>334
だって光太郎さんだもんw
344: ◆A.IptJ40P.
07/03/29 21:25:18 +uUiMpUH0
>>343
ぎゃああ何てミスを……
明日中には修正版出します……
……矢車さんが再覚醒→カブティック召喚する時には真司が死んでそうだなあ……
345:名無しより愛をこめて
07/03/29 21:36:12 6eT4VIZH0
投下ぶった切ってゴメンなさい…
いや、光太郎はそういう人だろうからそれでもイイが
(それならそれで一言描写が欲しい所)
草加がそのことを考慮に入れずに嘘つくかなあと思ったのだ
皆が違和感ないならそれでいいけど
346:名無しより愛をこめて
07/03/29 22:03:31 eYxvuZyd0
草加からすれば光太郎さんは変身してたからあの場にいない人物=偽名名乗ってばれない奴と判断したのでは?
今回の草加は真理が死んだ所為か、幾らか感情的になっているのが見えたんで違和感というほどは強くなかったかな。
347:名無しより愛をこめて
07/03/29 23:10:41 vswDA9MsO
えーと、カブティックゼクターってコーカサス?
なんかカブトから変身ツール出過ぎな気がするんだが。
これ以上意思のあるゼクター増やすのってどうかな…別に他作品の変身ツールだって使えるんだし。
あーでも、作品自体はGJです。矢車は強力なリーダーになれる器だな。
城戸もサバイブ化できそうだが、いち早くハイパー化して速攻で逝った加賀美って前例がいるから安心できないよw
348: ◆E1yyNEjdEc
07/03/30 00:31:59 7ohUXZ+I0
まとめサイト更新しました。
ozOtJW9BFAさん>
人物それぞれの動きがどれもらしくて面白かったです。
特にギャレンとレンゲルを綺麗(?)に仲間割れをさせたのは敬服。
TJ9qoWuqvAさん>
どうなるんだろうと思った望月博士がかなり綺麗に死を迎えたのは意外でもあったり、良かったり。
伊坂も回収されて一安心。
個人的にはサラマンダーはカリスの方がらしいような。。。
naAqV94LaUさん>
一応、ゴルゴムはクライシスに修正しておきました。
今までコミカルな描写ばかりだった光太郎にも転機がきたなあという感じです。
最もドロドロな男との絡みがとても楽しみだったりします。
A.IptJ40P.さん>
矢車さんがどうしようもなく格好いいです。
城戸真司に苦しんだとのことでしたが、まったく違和感がありませんでした。
極端な話ですが、私は氏の作品で一番好きな作品だったりします。希望があって(お
ただひとつだけ。タイトルくださいorz
カブティックがあるならヘラクスが好み。
349: ◆naAqV94LaU
07/03/30 00:51:03 1z323fWx0
◆E1yyNEjdEc氏、超乙!
相変わらず仕事が早い…。まさに上の上、ですね。
修正もして頂いて大変助かりました。
氏には頭が上がりませんorz
しかし、そろそろMAPの更新も欲しいところですね…。
350:名無しより愛をこめて
07/03/30 06:34:44 9b7n1MyM0
作品自体はGJなのだが、
サビーのライダーブレスって劇場版の三人のゼクターに流用できるの?
それとも公式では不明なのでバトロワでは流用可能にする、ということ?
351:名無しより愛をこめて
07/03/30 07:33:26 /7gQWTog0
E1yyNEjdEc氏更新乙です!!
更新されたばっかりの所にすみません
総合スレにキャラ紹介テンプレ、相川始、秋山蓮、浅倉威の3つ投下しました
追加訂正あったらヨロシク
352:名無しより愛をこめて
07/03/30 10:02:58 l3TltvjrO
光太郎……死亡フラグの率もあるが逆にロボやバイオへの変化もありえる
死亡フラグが立つ気がしねー
353: ◆ozOtJW9BFA
07/03/30 10:18:41 3zhd6jBE0
>>348
まとめ更新乙です!
何時もこまめな更新、助かります。
>>351
テンプレ作成乙です!
詳しい解説が付いていて参考になります。
城戸真司、草加雅人、南光太郎予約します。
354:名無しより愛をこめて
07/03/30 12:31:51 s9MGE3RdO
>>351
管理人氏に続いて感謝。これから書くのに非常に参考になるうえ、キャラクター図鑑とも言える的確且つユーモラスな解説につい笑ってしまいますw
始関連アイテム
>タコヤキ
浅倉特徴
>トカゲでもドロでも食える
に吹いたw
355: ◆A.IptJ40P.
07/03/30 12:34:03 p+2lKM5a0
修正版投下しました。
ライダーブレスの流用は、>>350氏が言うように公式では不明なのでロワ仕様、ではどうでしょうか?
カブティックゼクターの色は不明で。登場する話を書く書き手の方に任せます。
……最悪黒カブトでも繋がるんだよなこれ。
>>348
更新乙!
……希望かあ。
城戸は丁寧さと馬鹿っぽさの割合に悩む……
>>351
……浅倉でコメディ書きたくなったのは俺だけだろうか。乙!
>>352
死亡フラグ=強化フラグですしね。
>>353
期待……って城戸は矢車さん放置ですかそうですか。
356:名無しより愛をこめて
07/03/30 13:31:24 s9MGE3RdO
>>353
直ぐにリレーして貰えるとは嬉しいですね。期待してます!
お人好し(バカ)に囲まれて草加…ヘタレフラグだったりしてw
357:名無しより愛をこめて
07/03/30 14:31:26 9b7n1MyM0
>>353
流石にこの状況で真司が矢車無視は無理だろ
単純に書き忘れ?
358:名無しより愛をこめて
07/03/30 18:53:19 pXjo+ErB0
>>352
普通騙される側に死亡フラグが立つはずなのに
光太郎の場合、むしろ騙した草加の側に死亡フラグが立ったとしか思えないのが恐ろしいw
359:名無しより愛をこめて
07/03/30 20:18:42 5L+n6TmgO
久々に来たら何気に賑わってるな
お二方乙!
……あの荒れ方からよくここまで……
360: ◆TJ9qoWuqvA
07/03/30 20:42:28 3elwqekm0
修正版を投下しました。
>>276-288を
URLリンク(yy47.60.kg)
に差し替えてください。
結果は変わっていません。変更点は、
・描写の追加。
・FULL FOCEとの被る部分をなるべく排除。
・剣崎の意思が現れる描写。
以上です。
リュウガは丸投げです。すいませんorz
二重人格っぽくなったのは間宮ことウカ姉さんを参考にしました。
剣崎の意思が今後、再び現れるかどうかは書き手に任せます。
二人ともGJ! 忘れているキャラがいるので、キャラ紹介は助かります。
まとめ更新乙です。迅速な対応ありがたい。
URLリンク(kasamatusan.sakura.ne.jp)
そしてお待ちかね、進行表の更新です。
いつか文化の真髄を見せたいのですが、なかなか上手くいきませんね。
361: ◆4wyf44BgsE
07/03/30 21:58:26 Lrn0BSiq0
書き手の皆様乙です!
>>351
GJ!助かる上に楽しみが増えました。
管理人氏、まとめ更新更新乙です。
◆TJ9qoWuqvA 進行表更新乙でした。
では、投下します。
362:想い紡ぐ者達 ◆4wyf44BgsE
07/03/30 22:03:42 Lrn0BSiq0
「ちょっと巧! 早く座ってよ。」
(んん……真理?)
「もう!せっかく美容師の資格取れたんだよ? あんた、お客さん第一号でしょ。 ほら!こっち早く。」
「あぁ。」
ハサミを片手に、俺を急かす。
「うるせーな。 本当に上手く切れんのかよ?」
「ちょっと、 話しかけないでくれる。 気が散るから。」
シャキッ シャキシャキ……
リズム良く、切り落とされて行く髪。 心地良さに重くなる瞼、少し目を閉じる。
シャキッ シャキシャキ……シャキッ シャキシャキ トン トトッ……
―オイ、 何か音おかしくねーか?
トントントントントントントントントントントントントントントントンッッ!
「お前!何やってっ……うゎっ!」
ガタタッッ ガタンッ!
「痛てっ!」
……ここは?
見慣れない模様の床。
打ち付けた腰を擦り、ハッと我に帰れば、キッチンから天道が睨み付けている。
「現状を忘れて、眠り惚けている奴の言葉とは思えんな?」
「別に!ちょっと、夢見てたんだよ。」
そうだ。 あの後、気絶してるあきらを海辺のこの別荘まで運んで……
疲れて、そのまま寝ちまったのか。
「大声を出すな。あきらが目を覚ます……」
「あぁ。」
伸び過ぎている髪をかき上げ、平静さを取り繕う。
まだ、何も終わっちゃいない。
363:想い紡ぐ者達 ◆4wyf44BgsE
07/03/30 22:06:00 Lrn0BSiq0
「乾、出来たぞ。」
包丁の類は無かったらしく、天道の手には鋭く尖った石が握られている。
そして石で切ったとは思えないほど、綺麗に切り揃えられた葱。
さっきの変な音は、これか。
「こんな時に、のんびり飯かよ。」
言葉とは裏腹に、味噌汁の匂いが鼻腔をくすぐる……
改めて座り直し、プラスティックの容器に入れられた味噌汁を、ふぅふぅと冷ましながら一口。
「……うまい。」
少し悔しいが差し出されるまま、おにぎり、また味噌汁と貪りつく。
「当たり前だ。 誰が作ったと思っている?」
スカした奴だな。 だけど、やっぱ美味いわ。
「ひよりって奴、幸せ者だな。 こんな美味い味噌汁作れるお前と、一緒に居るなんて。」
「フッ、馬鹿を言うな。 ひよりの料理は、俺をも凌ぐ……」
お互いの口許から、つい零れる笑み。
「なら、そいつから真理に料理教えてやってくれよ。」
こんな状況じゃなきゃ、もっと良かったがな。
「……」
「なんだ? お前、聞いてんのかよ。」
やけに厳しい表情。 その視線の先……
束の間の安息を嘲笑うかの様に、リビングの鏡から浮き上がってくるスマートレディの虚像。
×××××× 死亡者6名。
残酷な現実だけを残し、平穏な朝はスマートレディと共に鏡の向こうへ消え去った。
364:想い紡ぐ者達 ◆4wyf44BgsE
07/03/30 22:07:30 Lrn0BSiq0
―予想以上だな。
突き付けられた現状と、ひよりや加賀美が無事だったと言う安堵が複雑に入り交じる。
憤りを感情のまま自分に投げ付けて来る乾を、頭の隅に追いやり思考を整理する。
何かが、引っ掛かる。
放送の瞬間、 此方を向いていた乾が振り返った。 そして、
「乾……お前、今の女が何処に見えた?」
「あぁ!何処って鏡から突然、それが何なんだよ。」
俺には、窓ガラスから浮き上がって来た様に見えたが?
いや、確かに乾の視線は俺とは若干外れ、リビングの鏡を見ていた。
ホログラム?
首輪から投影され媒体を通して立体化しているのか……
それに加え、生態反応感知と能力制限の為の電子チップ、首を吹き飛ばす量の爆薬、
位置を把握するための発信機、あとは盗聴機あたりが組み込まれていても、おかしくは無い。
この小さな首輪にそれだけの機能が搭載されているとすれば、恐らく起爆と施錠の仕組み自体は、単純にせざるを得ないだろう。
爆破の条件は、3つ。
・無理に外した時
・禁止エリア
・神崎士郎によるリモート爆破
首輪の正面に組込まれプラスティックのプレートの部分。
恐らくここが投影、発信機、リモートによる爆破を司る通信部の本体。
ここを取り除けば、爆破条件の内二つはクリア出来る。
しかし、同時に情報も遮断される。
365:想い紡ぐ者達 ◆4wyf44BgsE
07/03/30 22:10:59 Lrn0BSiq0
「どうした、天道? まさかお前の仲間が。
「いや…… だが、思っていたよりは酷い状況だ。」
まだ断定は出来ない。 乾に伝えても、事がややこしくなるだけだ。
「乾、 あきらを起こせ。 充分とは言えないが、休息は取れただろう。」
考えを気取られまいと、手早くキッチンを磨きあげる。
光沢を放つシンク、最後の水滴をふき取った。その時……
―その時、聞こえた少女の願いを、俺は生涯忘れはしない。
366:想い紡ぐ者達 ◆4wyf44BgsE
07/03/30 22:12:48 Lrn0BSiq0
「この声!真理じゃねーか!」
表に飛出し姿を捜す。 途切れ途切れに聞こえて来る音声、距離はかなり遠い。
「お前の言っていた、園田真理か!?」
デイバックを手に天道が駆け寄る。
「そうだ。あのバカ!どこだ。 遠過ぎるぜ!」
―ウルフオルフェノクになって走れば、まだ! だが、天道…… 畜生、でも真理が!
ガガガガガガッ!
ためらう思いへ、制裁を与える銃撃音。
―真理!
もう、迷ってる暇は無い……
「天道…… 俺の、俺の本当の姿は……」
開放され身体を駆巡るオルフェノクの因子。
「ウォォァァアアァァ!」
―まだ、生きているかもしれない、 まだ救うことが出来るかも知れない。 一縷の希望を架け 変身する。
ウルフオルフェノク すべてを切り裂く鋼の爪、忌まわしき銀色の肉食獣。
367:想い紡ぐ者達 ◆4wyf44BgsE
07/03/30 22:14:12 Lrn0BSiq0
突き放されて当然だ。 出来れば見せたくはなかった。
「……お前のベルトが入っている。 持って行け!」
困惑する俺に、天道はデイバックを差し出す。
「乾!何をグズグスしている? その姿なら、間に合うかも知れないのだろう。
園田真理を救う、それが本当のお前だ!!」
迷いは、その一言で張り倒された。
「天道……」
「あきらを頼むと言いたいのか。お前に言われなくとも、そのつもりだ。行け!」
―やっぱ、スカしたヤローだな! デイバックを咥え、走り出す。
「乾! かならず生きて帰ると約束しろ!二十四時間後!あの、一番高いビルの屋上で、あきらと待っている!いいな!」
あぁ。絶対に生きて帰ってやる!真理も一緒にな!
仮面ライダーは、ファイズは、闇を切り裂き光をもたらす!
その言葉を胸に、2人でかならず帰るつもりだった。
数分後、麻生の言葉を聞くまで。
368:想い紡ぐ者達 ◆4wyf44BgsE
07/03/30 22:16:09 Lrn0BSiq0
―間に合わなかったか、乾。
園田真理の最後の願い、乾の思い、麻生と言うライダーの魂の叫び。あきらに知らせる現実。
今は自分の胸にしまい込み、後手にドアを閉める。
「天道さん、ここは? 」
窓から差し込む光に、眩しそうに目を細めながら、ソファからゆっくりと起き上がる。
「目が覚めたか。」
少し体力が回復したのだろう。顔色も良い。
「痛むところは無いか? さぁ、少しだけでも食べるといい。」
「ありがとうございます。……おいしい。」
まだ、ぼんやりとしながら朝食を口にするその姿はあどけない少女その物だ。
「あの、乾さんはどうしたんです? まさか!」
次第に青ざめていく表情。
「お前を襲って来た奴は乾と倒した。 心配することはない。」
「なら、何処に居るんですか。」
―辛い役目だが。一呼吸置き、あきらを見つめる。
「乾の事も含めて、お前に伝えなければならないことがある。」
一つ一つ言葉を選び、紡いで行かなければ。
「何か、遭ったんですね。」
昨日、あきらが話したディスクアニマル、そして音撃戦士、持っていた鬼笛。 ならば……
369:想い紡ぐ者達 ◆4wyf44BgsE
07/03/30 22:17:16 Lrn0BSiq0
「これに見覚えはあるか?」
――これは、変身鬼弦?そして音撃弦・閻魔! 確か、裁鬼さんの武器。
「ここに来る途中、見つけた。 その傍らに落ちて居たのがこれだ。 やはり、お前に縁のある物だったか。
日本古来の神聖なる戦士たちの操る武器……
恐らく墓石の代わりだったのだろうが、あきらの身を守る道具になればと、乾が持って来た物だ。」
「裁鬼さんが、鬼が倒されるなんて……」
放送、禁止エリア、園田真理と乾の思い、約束の場所、そして麻生たちの言葉、あきらに送られた言葉。
「明日夢、あきら、きっと助ける、待っていてくれ。そう言っていた。」
「その人は、きっと響鬼さんです。」
あきらの瞳から、堰を切ったように大粒の涙が溢れ出した。 かける言葉が見つからないのが歯痒い。
「大丈夫だ、乾の目指す先にその男もいる。
歩けるか? 少し遠いが、今は乾を放っては置けない。」
「はい。」
不意に、光を遮る影。
「危ない!」
ガツッ ガツッ ガッシャーン!
窓ガラスを叩き割り、飛来する物体。
「あきら、隠れていろ!」
変身すべく、伸ばした手を擦り抜けて行くカブトゼクター。 そして、戯れ会いながら飛交う、青き闘神の化身。
ガタックゼクター!?
370:想い紡ぐ者達 ◆4wyf44BgsE
07/03/30 22:18:39 Lrn0BSiq0
突然、飛込んで来た青い甲虫。
形状は違うけれど、式神の役割を果たしているのだろう。
きっと、助けを求めに天道さんの元へ来たんだ。
立ち上がろうとして手を掛けたテーブルの上、指先に触れる裁鬼の遺品。
もし、ここが日常なら。
修行半の身、心身共に未熟な自分はきっと触れる事さえも躊躇う。
でも今は、そして、私に出来ることは……
―裁鬼さん。 戦うつもりはありません。 でも、生き残る為に…… 音撃弦 閻魔 お借りします。
「行って下さい、天道さん。」
「あきら?」
さっきまで泣いていた私にこんな事を言われたら、天道さんで無くても不思議に思う。
「ディスクアニマルとこの音撃弦があれば、明日まで逃げ延びる事ぐらいは出来るでしょう。
私、乾さんを探します。
そして、響鬼さんや麻生さん、皆で必ず約束の場所で待っています。
だから天道さん、行ってあげてください。」
371:想い紡ぐ者達 ◆4wyf44BgsE
07/03/30 22:21:15 Lrn0BSiq0
真っ直ぐに自分を見つめる澄んだ瞳。
戦士を選んだ強き志、それ所以の物なのか。
すまない、あきら……お前の覚悟に、少し甘えるとしよう。 加賀美の為に……
「わかった。でも決して、無理はするな。」
「はい。」
ガタックゼクターの標す道は、苦しくも2人の行く先を分ける。
戦士となった少女を見送り、世話のかかる加賀美の無事を切実に祈り、走る。
胸に、敬愛する祖母の言葉を抱きながら。
―おばあちゃんが言っていた。
人は、糸と似ている……一糸は弱く儚い。
だが、それぞれの想いを紡いで行けば強き紐と成り、信頼を織込めば、解く事の出来ない堅い絆となる。とな……
神崎士郎、俺たちの織り成すお互いを想う絆、紡ぐ想いを、貴様に断ち切る事は出来ない!
372:想い紡ぐ者達 ◆4wyf44BgsE
07/03/30 22:23:17 Lrn0BSiq0
【乾巧@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地F-7エリア】
【時間軸】中盤くらい
【状態】精神的に大ダメージ、 変身が解けるまで全速力で走ったため疲労している。
【装備】ファイズドライバー、ファイズフォン
【道具】ミネラルウォーター×2(一本は半分消費) カレーの缶詰 乾パンの缶詰
【思考・状況】
1:真理が、死んだ?
2:麻生って奴を捜す。
【天道総司@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地G-7エリア】
【時間軸】ハイパーゼクター入手後
【状態】若干疲労、
【装備】カブトゼクター&ベルト
【道具】食料など一式
【思考・状況】
1:ガタックゼクターを追う。
2:ひよりの救出。
3:24時間後、乾、あきらと合流する。
373:想い紡ぐ者達 ◆4wyf44BgsE
07/03/30 22:26:15 Lrn0BSiq0
【天美あきら@仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地G-7エリア】
【時間軸】中盤くらい
【状態】体力、気力とも回復。
【装備】破れたインナー、鬼笛・ディスクアニマルアカネタカ&戦国時代のディスクアニマル、音撃弦・閻魔
【道具】変身鬼弦(裁鬼)
【思考・状況】
1:絶対に生き残る 。
2:皆を捜し出し、天道さんと合流する。
374:想い紡ぐ者達 ◆4wyf44BgsE
07/03/30 22:28:55 Lrn0BSiq0
投下終了です。
誤字脱字、指摘、感想、よろしくお願いいたします。
375: ◆TJ9qoWuqvA
07/03/30 23:58:38 3elwqekm0
GJ!
真理の死に駆ける巧、化け物の姿に動揺せず、天の道を行く天道、裁鬼さんの遺志をつぐ決意のあきら、
三者三様に見せ場があって面白かったです。
激戦区での三人の運命が楽しみです。
では霞のジョー、安達明日夢、水のエル、グランザイラス予約します。
376: ◆ooH1rChbak
07/03/31 00:12:09 6Q38UW6A0
GJ!
天道の巧とあきらへの思いやり、そしてそれに対する二人がとてもかっこよかったです。
さり気にあきら変身のフラグも・・・w
神代剣、リュウガ、氷川誠、日下部ひより、秋山蓮予約します。
後、剣とひよりって劇中で会ってましたっけ?
377:名無しより愛をこめて
07/03/31 00:25:33 StONDSIc0
影山が坊ちゃまの誕生日の歌を歌うときに会ってます。
……それぐらいですね。
新作楽しみにしています。
378:名無しより愛をこめて
07/03/31 00:59:35 KZRu48ZJ0
>>376
神代剣登場初期、天道とのスポーツ対決で外野で加賀美と一緒に観戦してました。
379: ◆ozOtJW9BFA
07/03/31 08:56:13 U2vIB0y30
>>374
GJ!三者各々の見せ場と首輪解除フラグが、きれいにまとまっていて面白かったです。
>>355>>357
確かに矢車は走り去ったと言っても重症でしたね。失礼しました。orz
>>353の予約に矢車想を追加して下さい。
380:名無しより愛をこめて
07/03/31 09:01:22 AMPgD/Sg0
>>376
ひより→俺様系二人目…ハァ…(ため息)
坊ちゃま→ひよりの料理の腕を見込んで自分の誕生祝いのテーブルを任せようとしていた
天道の妹だということは知らない
お互い相手の正体のことは知らない。
確かこんな感じだったはず
381: ◆A.IptJ40P.
07/03/31 11:25:37 LUCYVOWd0
>>379
最後の三行は「矢車さん本格的に脱出派へ!」って比喩です……分かり辛くて申し訳ないorz
何か物足りんなあとAlve a lfe聞きながら考えてたら思いついたんです……実際には走ってません……
382: ◆A.IptJ40P.
07/03/31 11:37:12 LUCYVOWd0
>>374
GJ!
巧はオルフェノクの姿で走って行くけど、結局間に合わないんだよなあ……
少しも慌てない天道に流石、と。
で、最後はやはり「おばあちゃんが言っていた」……
ただ、幾つか指摘が。
・二十四時間は少し長い。つーか凄く長い。このペースからすると大体百話分位になる。
・鏡に映るだけで、浮き上がりはしてない、筈。
383:名無しより愛をこめて
07/03/31 12:53:27 AMPgD/Sg0
4wyf44BgsE氏乙!!GJです!!
3人バラバラになっちゃって…ヤバイ兆し?
あきらの決意がけなげだなあ…
あと一つ突っ込みたい所が。
たっくんのフーフーが足りない気がする!!
ヤツは一般人が美味しいと思う温度の食べ物は食べられないww
384:名無しより愛をこめて
07/03/31 14:21:57 arGBdHNVO
>>383
天の道を往く男の事だ、すぐ飲める温度にしたんじゃまいかWWW
385:名無しより愛をこめて
07/03/31 17:01:41 3Lau3POA0
⊂⊃
⊂⊃
(〔o〕) \。/ /Hヽ 人
( 0H0) ( <::∨::)( 0M0) ( 0w0) ウェイ♪
( O┬O ( O┬O ( O┬O ( O┬O ウェイ♪
≡ ◎-ヽJ┴◎-ヽJ┴◎ヽJ┴◎-ヽJ┴◎ ______...,、___
⌒::;;⌒⌒⌒;;::⌒⌒.:: :⌒;;⌒::.;;.⌒⌒/ /| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/ /::. :; ;⌒⌒:.:⌒:;⌒;;⌒⌒⌒
::: ;;: :,;: ;;.. : :; ,::.; / /| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/ /.., ,; .: ,,。, ::;;,
::: :;.. .,;; ; : :::., / /| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/ /,,; ::: :; ;;:
386:名無しより愛をこめて
07/03/31 17:04:41 ArDXbpk/0
GJ!!ウルフェノク見てもひかないとは…さすが天道…いいやつだな…
あ、キャラ紹介書いた者です。
実力派執筆陣の皆さんの力作に比べりゃGJでも何でもないんだが
ちょっとでもお役に立つのであれば幸いです。
今乾と小沢書いてます。(明日夢あきらヒビキはDVDも一度見てまとめて書く)
書くとき思い出すのに便利だからコイツの先に書いてよってのあったら
リクドゾー(あ、昭和はムリ。平成なら任せてくれい)
387:名無しより愛をこめて
07/03/31 17:37:54 6Q38UW6A0
氷川と剣のキャラ紹介お願いします。
388: ◆4wyf44BgsE
07/03/31 18:04:34 hzOLNHtRO
皆様感想ありがとうございました。
>>382
そうでした…
鏡から浮き上がって来たと思い込んでました。確認ミスです。
あとやはり24時間は長いですね。
修正後また投下することに致します。
>>383
ふぅふぅ少なかったですね。
でめ文章的に余り繰り返してしまうと、くどくなるので。>>384さんのレスを取りあえずの解答とさせて下さい。
いい文章を思いついたら修正しておきます。
389:名無しより愛をこめて
07/03/31 18:05:32 N85wnIMd0
そういえば、剣崎憑依のぼっちゃまってなんか電王みたいだよねw
今更ながら修正GJ!と言いたい。
390: ◆E1yyNEjdEc
07/03/31 21:14:12 72G3NM390
>>374
GJ!
首輪の秘密をやすやすと見破る天道の聡明さが際立つ話でした。
バラバラになった3人が無事に再度の邂逅を果たすのか、次の話が気になります。
まとめサイト更新、および修正箇所の修正をいたしました。
結城丈二、ドクトルG、シャドームーンを予約します。
391:名無しより愛をこめて
07/03/31 22:56:31 StONDSIc0
>>390
まとめ更新乙。変身時間表が出来て、ますます描きやすくなりました。GJ!
後申し訳ありませんが、修正部分で抜けていた部分を避難所に投下しましたので、修正お願いします。
本当に申し訳ありませんorz
392: ◆TJ9qoWuqvA
07/03/31 22:58:22 StONDSIc0
トリ忘れていました。
重ね重ね申し訳ありません。
393:名無しより愛をこめて
07/04/01 00:50:36 iGaIaa6q0
一つ質問。
リュウガがエリアD6にいる時間って十一時なんですか?
394: ◆TJ9qoWuqvA
07/04/01 00:58:49 7B3ngizj0
禁止エリアから出た直後でも、始と剣の戦いを終えた後でもどっちでもいいように曖昧にしました。
後の書き手さんにお任せします。
395: ◆4wyf44BgsE
07/04/01 14:38:46 bq1I5BpS0
まとめサイト更新乙です。
更新直後に、いつもながら大変申し訳ありませんが、避難所に修正版を投下しました。
修正したのは、
・「浮き上がる」の描写に関係のあるすべての文節
・約束の時間は指定せずに場所のみ
・猫舌描写の追加
以上です。
約束の場所(市街地の一番高いビルの屋上)については、次の書き手さんにお任せします。
どうぞよろしく。
396: ◆4wyf44BgsE
07/04/01 14:52:48 bq1I5BpS0
管理人様。
あつかましくももう一点お願いがあります。
ガタックゼクター!?
の後に一行分だけ改行して頂いてもよろしいでしょうか?
397:名無しより愛をこめて
07/04/01 15:06:16 GrVo0a8/0
まとめ更新乙です!!
>>387
氷川&神代、総合の方に投下しました。
追加訂正誤字脱字…ありましたらお願い致します。
398:名無しより愛をこめて
07/04/01 16:05:01 Madckp4PO
キャラ紹介職人様、投下乙です。
良ければトリップつけてはどうでしょうか?もうこのスレには欠かせない存在ですし…
399:名無しより愛をこめて
07/04/01 16:05:59 6qbtkixoO
>>397
仕事が早い!超GJ!!
参考資料としてもそうですが、見てて凄く楽しいです。
真司と天道をお願いしても大丈夫でしょうか?
400:名無しより愛をこめて
07/04/02 12:22:48 DJytBuqMO
最近になってようやく
神代=食パン
巧=乾パン、カレー
あきら=米、味噌
とキャラによって支給食糧が違うの気付いたオレ乙WWW
401: ◆ozOtJW9BFA
07/04/02 19:27:29 hvQoC7iV0
>>397
キャラ紹介投下乙です。
本当に仕事が早くて、読んでても面白いです。
途中経過を報告します。約2割位出来ています。
筆は進むんです。南光太郎が勝手に動いてくれるから……。
ただ話を書き直す事が多いんです。南光太郎があらぬ方向に暴走するから……。
402:名無しより愛をこめて
07/04/02 21:16:35 zDtJIE3f0
ガンガレ
そういや矢車のゲームについての考察フラグってどうなってる?
>だとすればこの殺し合いにも説明が付く。
>恐らくは、新兵器の実戦テスト。それも模擬戦ではない。
『砕ける剣』のこれ。
あと、読み専の人ってどれ位いる?
403: ◆ooH1rChbak
07/04/02 22:05:42 dTFqb6uO0
途中経過。
まだ二割程度しか出来てません。
後、下手するとちょっと話が長くなるかもしれません・・・。
>>397
キャラ説明をリクしたものです。
本当に有難うございました。使わせていただきます。
404:名無しより愛をこめて
07/04/02 22:14:33 jm2yghVp0
>>402
読み専ノシ
たまに感想投下させてもらってます
皆さんクオリティ高い…
405:名無しより愛をこめて
07/04/03 00:33:09 QU7h5jTW0
>>402
ノ
406:名無しより愛をこめて
07/04/03 01:25:43 omBXzJVN0
>>402
ノシ
407:名無しより愛をこめて
07/04/03 01:45:45 3gvVi4cL0
>>402
ノシ
408:名無しより愛をこめて
07/04/03 02:29:51 BifFQJB2O
読み専の人って結構いるんだな。
密かに励みになるわw
409:名無しより愛をこめて
07/04/03 12:14:59 wPc124mp0
>>402
ノシ
410:名無しより愛をこめて
07/04/03 12:54:07 jTaik4HJO
ノ
いつも楽しみにしてます!
411:名無しより愛をこめて
07/04/03 14:49:50 UwyaQ7/vO
>>402
ノシ
412:名無しより愛をこめて
07/04/03 15:41:45 vvmpvKZT0
>>402
自分も読み専ですノシ
書き手の皆さん、頑張って下さい!
413: ◆AppnCvvfGU
07/04/03 18:01:37 L7p0m1Op0
キャラ紹介書きの者です。先に乾、小沢が出来たんで投下してきました。
そしてナマイキにもトリップつけてみました…
ノシ 俺も読み専といやあ読み専か?
書き手さん方いつも楽しみにしています!!
414:名無しより愛をこめて
07/04/03 23:33:55 tIe5SBLw0
>>402
ノシ
415:名無しより愛をこめて
07/04/04 09:33:27 YaZQjSgEO
読み専、参上!
いや本当は何か書いたりしたいんだけどあまりにも遅筆だからできないだけで
416:名無しより愛をこめて
07/04/04 16:36:30 3/9ddqGM0
>>413
橘さんと睦月のキャラ紹介もお願いします。
417:名無しより愛をこめて
07/04/04 17:39:55 J33IZ6As0
読み専です
このスレのSSはレベルが高い
面白いので定期的に閲覧しております
418:名無しより愛をこめて
07/04/04 19:56:40 8rqQVYxaO
俺も\(^o^)/ 読み専
ちなみにこれが初ロワ
419:名無しより愛をこめて
07/04/04 20:06:34 QaPOLQNZO
読み専ってこんなに多かったのか…。
初めての書き手参加っていうのもあって、全然自信が持てない。
もっと感想貰えたら嬉しいなぁ…って思います。
420: ◆E1yyNEjdEc
07/04/04 23:22:04 fKIgcCOG0
避難所に結城丈二の紹介を投下しました。
まとめサイトもちょこちょこ更新。
読み専多くてびっくり。増えるに従って喜びから重圧に変わるこの不思議。
そんな中ですが投下します。
421:仮面ライダーの重圧 ◆E1yyNEjdEc
07/04/04 23:25:13 fKIgcCOG0
―ピ~ン♪ポ~ン♪パ~ン♪ポ~ン♪
氷川くんたちがシャドームーンに連れ添ってこの場を離れてから数分後、1回目の放送を告げるチャイムが鳴り響く。
そこで語られた内容は俺を動揺させるのに充分な内容だった。
「ほぉ、立花藤兵衛、珠純子が死んだか。誰が殺したか知らんが結構なことだ」
ドクトルGの言葉に、俺は殴りかかりたい衝動に襲われる。だが、ここで感情を顕にするわけにはいかない。
「……そうだな」
できるだけ耽々と、感情が篭もらぬように言葉を紡ぐ。
「だが、ラーイダV3は生きている。あやつらが生きている内は安心はできんな。……うん?何をしておる」
「一応約束したからな。俺も西へ向かう。折角の駒が殺されては台無しだからな」
シャドームーンとの約束、氷川くんたちと共に行動してもらう代わりに俺も南を探す。
しかし、それは建前だ。やはり氷川くんたちをシャドームーンに任せておくのは不安が残る。
俺も合流して一緒に行動する。それが最善だ。
「なるほど。ならば俺も付き合おう」
「いや、動くのは俺ひとりで充分だ。ドクトルGは待っていてくれ」
ただ、そのためにはドクトルGとは別行動をとらなければならない。
俺はドクトルGの申し出を断ると、トランシーバーとディパックの中身一式を懐に入れ、準備を整える。
「いいだろう。しかし、残りのトランシーバーは置いて行け。連絡が取れないと困るからな」
ドクトルGの言い分は尤もだったが、俺は答えに窮した。
本心としてはこちらの会話内容を聞かれる心配があるトランシーバーを置いていきたくはない。
だが、置いていかないと言ってもドクトルGは納得しないだろう。長々と問答をしている暇もない。
「わかった。何かあったら必ず連絡を入れるようにする」
俺はそう答えるとその場を離れた。ドクトルGが俺に向ける不信の目に気づかぬまま。
「こちら風見、こちら風見。氷川くん、応答してくれ」
D10エリアを離れて2時間、ドクトルGから充分に距離をとったところで、風見の名を借り、トランシーバーへと呼びかける。
だが、返ってくるのはザーという無機質な音ばかり。
「くっ、一体どうしたんだ。氷川くん、応答してくれ」
俺は懸命に呼びかけるが結果は変わらない。
422:仮面ライダーの重圧 ◆E1yyNEjdEc
07/04/04 23:27:09 fKIgcCOG0
やはり俺の判断は間違いだったのか?
―カシャ、カシャ
俺の思考を遮り、聞き覚えのある金属音が俺の耳に届く。この音は……
音が響く方向へと俺は走る。そこには予想していた通り、銀色の男の姿があった。
「シャドームーン!」
―カシャ
俺の叫びに、彼は動きを止め、こちらへと首を向けた。彼の周りに氷川くんと日下部くんの姿はない。
「貴様、氷川くんたちをどうした!」
自然と語気が荒くなる。
「その声、風見志郎か。……ふっ、さあな。いつの間にかいなくなっていた。いずれにせよ俺にはどうでもいいことだ」
シャドームーンの言葉に、俺の心が怒りが満ちる。
「ヤァッ!」
俺は反射的にライダーマンに変身していた。そして、刃となった右腕を構え、シャドームーンへと突進する。
「ふっ、かかってくるか!」
俺の行動に虚をつかれた様子もなく、同じく右腕を構えるシャドームーン。
彼のエルボートリガーと俺のパワーアームがぶつかり合う。
刹那――
―パキッ
無機質な音を立てて砕け散ったのは――彼のエルボートリガーの方だった。
「何!?」
その有様にさすがのシャドームーンも動揺する。
423:仮面ライダーの重圧 ◆E1yyNEjdEc
07/04/04 23:29:18 fKIgcCOG0
すかさず俺はパワーアームを横薙ぎに払る。パワーアームはシャドームーンの硬質的な身体をかすめ、大きな火花を散らせる。
呻き声を上げ、よろめくシャドームーン。
「ドリルアーム!」
俺は止めとばかりに、右腕を強固な装甲も穿つ、長く尖ったドリルに変え、全身の力を込め、穿孔を放った。
それで勝負は決まった。
「うぐっ、がぁ、馬鹿な……」
派手な音を立てながらシャドームーンの装甲を砕き、腹に突き刺さるドリル。俺の腕にシャドームーンの身体から徐々に力が抜けていくのが伝わってくる。
これでドリルを回せば、さすがのシャドームーンも命はない。その確信が俺にはあった。
だが……
「………」
熱くなっていた俺の心が急激に冷めていく。
俺はシャドームーンの腹からドリルを抜くと崩れ落ちそうになるシャドームーンを支える。
彼の意識はもうない。
「すまない、シャドームーン」
シャドームーンに氷川くんたちを託したのも俺ならば、シャドームーンに行きたい場所に行けと言ったのも俺。
氷川くんたちが危険な目にあっているというのなら、その責任は全て俺にある。
俺の怒りは本来なら自分自身に向けるべきものだ。だが、俺は怒りに我を忘れ、シャドームーンを攻撃してしまった。彼に責任がないのにも関わらずだ。
例え敵とはいえ、俺の行動は誉められるものではなかった。
俺は自分の性格を悔いる。
大局を見ず、自分の信じるがままに行動し、結局、最後は周りに流されている。
ずっと同じ。
―仮面ライダー
例えV3からその名前を授かっても、俺自身は変わっていない。
『仮面ライダーは闇を切り裂いて、光をもたらす! こんな殺し合い、ぶっ壊してくれるから、脅えないで自分と戦って!』
先程聞いた少女の訴えが俺の心に再び響く。
424:仮面ライダーの重圧 ◆E1yyNEjdEc
07/04/04 23:30:56 fKIgcCOG0
俺は闇を切り裂き、光をもたらすことができるのだろうか?
「このままにしておくわけにはいかんな」
俺はライダーマンの姿のまま、シャドームーンを抱え上げる。
このまま放置していては、いつ誰に止めをさされるかわからない。
自分が瀕死の状態に追い込んでおいて勝手だとは思うが、今の俺にはとどめをさすことも放置することもできない。
「とりあえず南に向かうとするか」
シャドームーンは北に向かっていた。ならば、氷川くんたちは南にいる可能性が高い。
南へしばらく歩みを進めていると、突如ライダーマンへの変身が解ける。腕にずっしりとシャドームーンの重みが圧し掛かる。
やはりそうか。シャドームーンと実際に戦ったことはないが、南と対等に戦える相手がこうもあっさりやられるとは考えにくい。シャドームーンの戦う前のあの自信も実力に裏打ちされたものだろう。
ならば、能力になんらかの制限がかかっていると考えるのが自然だ。
変身、または全力が出せる時間は10分程度。一度変身すると数時間は能力に制限がかかるといったところだろう。
まったく、とんでもないことが出来るものだ。だが、逆に考えればチャンスともいえる。
ドクトルGやヨロイ元帥、悔しいがまともに戦っては俺が勝てる見込みはわずかしかない。
しかし、これを利用すれば、どんな強敵も倒すことが可能になる。
なるほど、ただ殺し合いをさせるだけなら、何の力もない女性や子供が混じっているのはおかしいと思っていたが。
そうすると主催者の目的はなんだ?こんなことをして何の意味がある?
……考えても仕方のないことか。俺がやるべきことは首輪の外し方を見つけ、皆と一緒に脱出すること。
そのためには、まず氷川くんたちとの合流だ。
俺はシャドームーンを抱えたまま、道を進んでいった。
「結城丈二め、一体何のつもりだ?」
木々の陰からドクトルGは結城の姿を捉える。
425:仮面ライダーの重圧 ◆E1yyNEjdEc
07/04/04 23:32:11 fKIgcCOG0
同じデストロンとはいえ、信用すればいつ寝首を掻かれるかわからない。幹部にまで上り詰めた者にとってそれは常識だった。
結城の言動を怪しんだドクトルGは結城が場を離れてから、すぐに後を追った。
ひとつひとつ結城の行動を確認する度にドクトルGの疑念は深まっていく。
なぜ駒ごときに必死になる?なぜシャドームーンにとどめをささない?
そして、ドクトルGが抱いた最大の疑念は自分にトランシーバーが繋がらないことを確認して、駒に呼びかけたこと。
ドクトルGは斧を磨ぐ。結城丈二の聡明さは惜しい。だが、自分を裏切るなら―
―生かしてはおかない
426:仮面ライダーの重圧 ◆E1yyNEjdEc
07/04/04 23:33:56 fKIgcCOG0
【結城丈二@仮面ライダーV3】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地D7エリア】
【時間軸:仮面ライダーBLACLRX終了後】
【状態:健康。2時間変身できません】
【装備:カセットアーム】
【道具:トランシーバー(現在地から3エリア分まで相互通信可能)、名簿を除くディパックの中身一式】
【思考・状況】
1:氷川くんたちを探し、合流する。
2:シャドームーンの扱いを思案中。
3:首輪を外すために必要な情報をもっている人物と首輪と同様のテクノロジーをもつ道具を探す。
4:同一時間軸から連れて来られたわけではないことを理解。ドクトルGを利用することを模索。
5:ヨロイ元帥を倒す。
427:仮面ライダーの重圧 ◆E1yyNEjdEc
07/04/04 23:35:18 fKIgcCOG0
【シャドームーン@仮面ライダーBLACK RX】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地D7エリア】
[時間軸]:RX27話以降
[状態]:気絶。右腕のエルボートリガー破損。腹にドリルによる刺し傷。後1時間30分程度戦闘できません。
[装備]:シャドーセイバー
[道具]:なし
[思考・状況]
1:気絶中
【ドクトルG@仮面ライダーV3】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:樹海C7エリア】
【時間軸:死亡後】
【状態:軽症】
【装備:斧、盾】
【道具:トランシーバー(現在地から3エリア分まで相互通信可能)】
【思考・状況】
1:結城丈二に不信感。裏切るような行動を取れば殺す。
2:デーストロンのため、絶対に勝ち抜く。
3:ヨロイ元帥を探す。
※ドクトルGは結城丈二に不信感は持っていますが、デストロンでないとは思っていません。
428:仮面ライダーの重圧 ◆E1yyNEjdEc
07/04/04 23:42:08 fKIgcCOG0
投下完了。
誤字、脱字、指摘事項、感想があればよろしくお願いします。
次いで質問。
構想が2つあるのですが、どちらにもそれぞれ問題が。。。
1つは神崎士郎を絡ませるのは有りでしょうか?
もう1つは以前投下された作品に登場した人物の、その作品以前の話を書くのは有りでしょうか?
当然、以前投下された作品での矛盾点は発生させませんが、キャラ状態表に変化はあります。
ご思案、よろしくお願いします。
429:名無しより愛をこめて
07/04/05 00:41:55 mSAEWgEV0
GJ!
結城の葛藤が伝わって面白かったです。
直情型なのも彼らしくて素敵。シャドームーンは自身が裏目に出た感じでした。
ドクトルGの今後と、結城丈二の運命が気になる作品でした。
神崎士郎の絡ませ具合によると思います。
誰か参加者に偏らせるような関わらせ方だと問題だと思いますが、作品見ないとなんとも。
過去話もラノロワにも、ライダーロワの過去作にもありましたので、作品を見ないと判断がつきません。
避難所で試験投下してスレ住民に判断してもらうって言うのはどうでしょうか?
430: ◆4wyf44BgsE
07/04/05 08:51:17 xzjpRsNJO
投下乙です!
そして更新、キャラ紹介GJ!
揺れる結城と鋭いドクトルGが面白かったです。
神崎と過去話については自分も>>429さんと同じ意見です。
あと参考までに、神崎については、自分も2人のライダー2枚のジョーカーを書く時
神崎がジョーカーにコンタクトを取る事は有りですか?と質問した所、しない方が良いとの意見がありました。
趣旨が違っていたらごめんなさい。読み流して下さい。
431: ◆4wyf44BgsE
07/04/05 09:46:58 xzjpRsNJO
すみません。
自己リレーになるんですが…
乾巧、天美あきら、影山冴子、ドラス、麻生勝、日高仁志で一本書きたいんです。
現在執筆中の書き手さんや>>428さんも含めて他に書きたい方がいなければ予約させて下さい。
週末ぐらいにまたお伺いします。
432: ◆TJ9qoWuqvA
07/04/05 19:56:29 mSAEWgEV0
>>430
自分の意見は>>429ですが、ロワはなるべく主催者の干渉をなくしたいのが本音です。
ただ神崎のキャラを考えると……って言うところなので、方針を決めたいところではあります。
>>431
前の話との時間を調べたら120時間以上経っているのでいいと思いますよ。
書けるキャラに関してのルールは>>4ですし。
まあ、自己リレーしまくりな自分がいうのもあれですが。
それでは、投下します。
433:火を噴けグランザイラス ◆TJ9qoWuqvA
07/04/05 19:57:47 mSAEWgEV0
後悔に襲われ続ける男が一人、名を霞のジョーという。
自らを襲う矢を掻い潜り、彼は無我夢中で走る。
(兄貴……どこにいるんだ! 俺は……俺は!!)
ジョーは混乱している。なぜなら、ここに来てしばらくの間、記憶がハッキリとしていなかったからだ。
だが彼は怪人のいいなりとなり、人を殺そうとしていた事を思い出してしまったのだ。
(兄貴、助けてくれ!!)
ジョーは罪悪感に押しつぶされそうになる。自分の尊敬する人、南光太郎に叱責してもらい、立ち直らせて欲しいと願う。
だが誰も彼に応えず、心を蝕んでいく。
迷える彼が光を掴んだのは、北より響く少女の願いがきっかけだった。
『みんなぁ! 殺し合いなんてもうやめてー!!』
ジョーは救いを求める足を止めた。
振り返れば、自分が逃げた方向から声が聞こえてきたのだ。
方法は分からないが、少女が殺し合いを止める為、必死の思いで訴えを続けているのを理解した。
『ファイズは、仮面ライダーは……闇を切り裂いて、光をもたらす!』
「兄貴以外の、V3達以外の仮面ライダーもここにいる。正義の為に戦っている!」
闘志が沸く。彼はもともと考えるのを得意としない。
ただその身を戦いに投じ、愛用のサイと共に人を守るだけだ。
(もう二度と怪人のいいなりなんかにはならない。俺は……兄貴達、仮面ライダーと共に戦う!)
ジョーは決意を固める。そんな彼を嘲笑うかのように、少女が無残にも散る様子が流れた。
(怪人が近くにいたのかよ!?)
少女の命をなんとも思っていない声がする。怒りを燃料に胸のエンジンに火を灯す。
「よーし! あそこまでひとっ走りだ!」
434:火を噴けグランザイラス ◆TJ9qoWuqvA
07/04/05 19:59:01 mSAEWgEV0
叫んで気合を入れる。彼は救いを求めるより、救う側に回るのだった。
「ハア、ハア、ハア、ハア」
殺し合いの跡が残る場所で、少年は硝煙の匂いと共に空気を吸い込む。
(加賀美さんが死んでしまった! 僕一人でこの殺し合いをどうやって勝ち抜けって言うんだ!!
大体僕を守るって言ったのに、こうも簡単に死んでしまうなんて!!)
明日夢は命の恩人に、理不尽な怒りを抱く。
殺し合いという闇に歪められ、下町で平和に暮らしていた素直な少年はもういない。
ここにいるのは、幼いだけの殺人者であった。
『みんなぁ! 殺し合いなんてもうやめてー!!』
北より聞こえる声に顔を上げる。
自分と同じくらいの歳であろう少女は、殺し合いをやめるように訴えているようだ。
(凄い人だ。自殺行為を平気でやるなんて)
明日夢は無謀な行為を行う人間に対し、呆れる。
『帰りたいから殺すの? 守りたい人がいるから殺すの? ただ殺したいから殺すの? 怖いから殺すの?』
(帰りたいから殺したに決まっているじゃないか! ヒビキさんに助けを求めて、裏切られた僕の気持ちを君が分かるのかよ!!
誰も頼りになんてならない。仮面ライダーなんて、何の役にも立ちもしない)
明日夢の悪意を肯定するように、銃弾が響く。
(ハハッ、ほら見ろ。言わんこっちゃない)
明日夢は暗い愉悦感を抱く。自分の行為を否定した者の末路に満足し、その場を後にした。
突然、明日夢は路地を駆けて来る足音が聞こえてきた。
(誰か来る! は、早く隠れなくちゃ!)
明日夢は余裕が無くなり、周囲に視線を彷徨わせた。
435:火を噴けグランザイラス ◆TJ9qoWuqvA
07/04/05 20:00:05 mSAEWgEV0
身を隠そうとして足がもつれる。
「うわっ!」
明日夢は殺し合いの場で大声を上げた事を後悔しながら、無様に倒れる。
訪問者は明日夢の様子に気づいたらしく、影が明日夢に覆いかぶさる。
「こ、殺さないでっ!」
明日夢は頭を抱え、命乞いをする。
少年は相手を確認することも、殺すことも考えていない。
彼はただ命が惜しかっただけだ。
霞のジョーは少女を助ける為、走り続けること数分、一人の少年と出会った。
(まだ子供じゃねえか……)
よっぽど酷い目に遭ったのだろうと、ジョーは脅える少年に同情する。
そんな少年に殺し合いを強制する神崎士郎に、ジョーは腹を立てた。
「殺すなんてしねえよ。それよりも怪我は大丈夫か?」
ジョーは手を差し出す。戸惑う少年に笑顔を浮かべる。
「俺は霞のジョー。よろしくな」
ジョーはおずおずと差し出された手を強く握り、明日夢を立ち上がらせる。
その時、少女の声が聞こえた方向から、再び拡声器を通した声が聞こえた。
『俺は闇を切り裂き光をもたらす、仮面ライダー! キック! ホッパァー!!』
戦士の宣言が、ジョーの耳と心を貫いた。
(悔しいけど、あそこは仮面ライダーキックホッパーに任せるしかないか。この子供を手当てしないとな)
「とりあえず手当てをしないとな。あそこにおあつらえ向きに薬局もあることだしよ」
自分の無力さを噛み締め、ジョーは明日夢を薬局に連れて行く。
436:火を噴けグランザイラス ◆TJ9qoWuqvA
07/04/05 20:01:10 mSAEWgEV0
その少年が殺し合いに乗っていることに、霞のジョーは気づけるはずが無かった。
(僕はついている)
明日夢は、加賀美新に代わる庇護者を手に入れ満足していた。
「ちっきしょぉ! この殺し合いに乗るなんて……自分の友達を殺すなんて何を考えてるんだ!!」
お互い自己紹介を終え、加賀美が自分を保護し、友人である神代剣に殺された事を、明日夢は伝えたのだ。
そのことに怒りを示すジョーを見て、明日夢はジョーが加賀美と同じくお人好しである事を確信した。
(これで加賀美さんと同じく鬼の力を持っていると良いんだけど……)
さすがにそれは高望みをしすぎるかと思い、明日夢は右腕に巻かれた包帯を擦る。
その瞳には、冷徹に生き残る算段をする冷たい輝きが宿っていた。
そんな時、天から三度戦いを止める訴えが響く。
明日夢はキックホッパーの訴えに闘志を燃やすジョーを見つめ、続けて行われた宣言に眼を見開く。
『明日夢! あきら! きっと助ける。だから待っていてくれ』
ヒビキが明日夢を勇気付ける為に声を張り上げていた。
明日夢の心が揺れる。
「よかったな、明日夢! お前の知り合いの居場所が分かったぜ!」
喜びながら背中を強く叩くジョーに、明日夢は笑みを浮かべ頷く。
明日夢はヒビキの必死の想いを聞きながらも、ジョーとは違って素直に喜べなかった。
(助けるから待っていてくれ……か。ヒビキさん、僕はあなたを待っていたんですよ。ずっと)
明日夢はジョーの視界から外れているのを確認し、顔を背ける。
純粋だった少年は、唇を真一文字引き締め、怒りに身体を震わせていた。
(ヒビキさんに憧れていました。そしていつかヒビキさんみたくなりたいって、思っていました)
本来なら、明日夢がいろいろな人と出会い、一年と半年を費やして得る結論を、本来の答えとは逆の意味で構築していった。
437:火を噴けグランザイラス ◆TJ9qoWuqvA
07/04/05 20:02:11 mSAEWgEV0
(でもこの殺し合いでそれじゃ駄目なんじゃないかって気づきました。
ヒビキさんに何でも頼って、ヒビキさんの真似をして……これじゃ生き残れないってヒビキさんが教えてくれたんです)
明日夢の経験と出会いの足りない想いは歪みを生み、少年を闇に踊らさせる。
(ヒビキさん、僕は鬼にはなりません。僕は人助けなんてしない。殺しぬいてでも生き残る!)
明日夢はヒビキが願った道と逆を進み、手を汚す。
ただ、自分が日常に帰る事を望んで。
麻生とヒビキの訴えから一時間経った。
ジョーは明日夢の怪我もそろそろ良いだろうと判断し、丘へ向かう事を提案しようとする。
だが、突如轟音が響き、建物が揺れる。
「な、なんだ!!」
彼が窓から外の様子を伺うと、風と雷の嵐が破壊を繰り返し、瓦礫を生むのが見えた。
彼は巨大な爆発が起きるのが見え、明日夢を抱え込む。
薬局のガラスが飛び散り、棚にある薬が落ちてくる。
彼は背中に痛みを感じながらも、数分そのままの姿勢でうずくまる。
(今明日夢を守れるのは俺しかいない。絶対に殺させはしねえ!)
彼はひたすら爆発が収まるのを亀のように耐えた。
「もう安全のようだな」
あれから幾らか時間が経ち、ジョーは周囲を確認して明日夢に声をかける。
薬局からひょっこりと顔を出す明日夢を、彼は先導した。
「あっちの方向に向かえば仮面ライダーと明日夢を助けるって言った奴……ヒビキだっけか?
とりあえず合流する為に行こう」
彼は向かうのに時間がかかってしまったことを悔やむが、明日夢を守るためには仕方ないと割り切る。
438:火を噴けグランザイラス ◆TJ9qoWuqvA
07/04/05 20:03:16 mSAEWgEV0
(こいつはなるべく使いたくないけど、いざという時は……)
彼はいい思い出の無いスマートバックルをデイバックから掴み、決意する。
彼の歩みは希望で満ちていた。
明日夢はジョーから丘へ向かうと聞いて、戸惑った。なぜなら、あの場所は殺戮者が集まる事を容易に想像出来たからだ。
だが、すぐに少年は思い直した。
(丘に向かえばヒビキさんに保護してもらえる。邪魔な奴はヒビキさんに始末させて、油断したところで殺す)
少年はそれが一番、優勝の近道であると確信し、ジョーに従う。
(僕はヒビキさんを許してあげます。その代わり……死んでください)
少年はデイバックのナイフを掴み、決意をする。
彼の歩みは殺意で満ちていた。
異なる想いを乗せる二人の歩みを、炎が遮った。
「明日夢!!」
ジョーは明日夢を抱えながら炎を避ける。
黒焦げになった道筋を辿ると、彼の知る敵がそこにいた。
「てめえ……グランザイラス!!」
「ほう、俺を知っているのか。たしか、RXの仲間、霞のジョーとかいったな」
彼はまるで初対面のような口ぶりに戸惑うも、怒りを口にする。
「お前はバイオライダーに倒されたはずだ! まさか蘇ったのか!?
だが、何度蘇ろうとも、兄貴や仮面ライダーがお前を倒す!!」
「バイオライダーに倒された? 何を馬鹿な事を。
俺は皇帝直属の最強怪人グランザイラス、バイオライダーなどに倒されたことなど無い!」
439:火を噴けグランザイラス ◆TJ9qoWuqvA
07/04/05 20:04:21 mSAEWgEV0
怪人は言い放ち、炎を噴出した。
怪人の炎がコンクリートや鉄筋を飴のように溶かしていく。
「明日夢! 逃げろ!!」
彼は業火を掻い潜り、サイを構える。
人殺しに利用されたスマートバックルを使う事を、彼はまだ決意できていない。
(せめて明日夢が逃げる時間を稼ぐ)
彼は少年が逃げていく気配を感じながら、震える足を叱咤し立ち上がる。
サイを構えなおした彼は、怪人を睨みつけた。
(あんな魔化魍に出会うなんて最悪だ!)
明日夢は魔化魍と対峙する霞のジョーを背に、廃墟を駆けていた。
少年の脳裏に浮かぶのは、敗北し物言わぬ死体となった加賀美だ。
(僕もあんなふうになるのか? そんなの嫌だ!!)
少年は叫びたい衝動に駆られ、グッと抑える。
(生き延びてやる。どんな手を使ってでも!)
だが、その決意を嘲笑うかのように、少年は固い感触に突き飛ばされる。
少年は尻餅をつき、視線を上げていくと、鯨を模した怪物がいた。
「うわっ!」
少年は悲鳴をあげ、助けを求めるが応える者はいない。
怪物が左手を対峙する二人に向けるのを、少年は見ていることしか出来なかった。
「うおおお!!」
ジョーは両手に持つサイをグランザイラスの身体に突き刺す。
440:火を噴けグランザイラス ◆TJ9qoWuqvA
07/04/05 20:05:24 mSAEWgEV0
しかし、サイは甲高い金属音を立て、弾かれてしまう。
「痒いわ!!」
怪人は叫び、鉤爪状の右腕を振るう。
重い衝撃が彼を貫き、壁へと叩きつけられる。
「ぐぅぅ……」
彼は痛みに呻いた。
怪人が炎を噴出す右手を向けるのを、彼は目撃する。
「終わりだ。霞のジョー」
怪人より炎が噴出し、彼を焼き尽くさんと襲った。
(兄貴、すまない)
結局、彼はスマートバックルを使えず、その人生を燃やされようとした。
だが炎は彼の目の前でピタリと止まり、怪人に襲い掛かる。
「な、なに。グワァァァァァ!!」
怪人が炎に身を焼かれ、転げまわる。
空より灰色の怪人が、青い光を纏って現れた。
「お、お前は……」
彼はその灰色の怪人に見覚えがあった。
―お前はアギトではない。だが人間でもない。
鯨の怪人はそう言い、男性を守っていた。
「お前はアギトではない。だが人間でもない」
そして鯨の怪人はあの時と、一言一句変わらない言葉をグランザイラスに向けた。
今度は自分を守る為にグランザイラスと斬り合う。
441:火を噴けグランザイラス ◆TJ9qoWuqvA
07/04/05 20:06:28 mSAEWgEV0
霞のジョーの側には、スマートバックルが冷たく輝いていた。
(なんだ! こいつは!!)
グランザイラスは戸惑っていた。
目の前のそれは、自分と同じ怪人にしか見えない。
それが人を守る為に戦っているのである。
「仮面ライダーにでもなったつもりか? 生意気な!!」
グランザイラスは気合をいれ、鯨の怪人、水のエルのバルディッシュを跳ね上げた。
「ムウン!」
しかし水のエルはバルディッシュの柄を、グランザイラスの咽に叩きつけた。
よろめきながら後退するグランザイラスに、水のエルは左手を向ける。
「か、身体が動かないだと!」
水のエルの念力がグランザイラスを拘束する。
「滅びよ!」
声と同時に空気が一瞬停滞する。
青い梵字が空に浮かび、グランザイラスを襲う。
爆発が巻き起こり、グランザイラスが瓦礫に埋もれた。
瓦礫の隙間から、踵を返し去ろうとする水のエルが視界に入る。
「舐めるなよ!!」
瓦礫を跳ね飛ばし、振り返ろうとする水のエルの背中を抉る。
「ぬぅ!」
怪我を深められ、呻きながら地に膝をつく水のエルをグランザイラスは蹴り上げる。
「よくもやってくれたな! その身体、切り刻んでやる!」
水のエルの身を、グランザイラスの右腕が削り取る。
442:火を噴けグランザイラス ◆TJ9qoWuqvA
07/04/05 20:07:30 mSAEWgEV0
複数の仮面ライダーを圧倒させた怪人同士の戦いは、炎の怪人が優位に立っていた。
「ジョーさん、今のうちに逃げましょう」
明日夢が腕を引き、ジョーに共に逃げるように言う。
しかし彼は動こうとしなかった。
スマートバックルを手に取る。
(俺はこんなものを支給されたばっかりに、怪人に利用された。
取り返しのつかないことになる前に、あの鯨の怪人と仮面ライダーに助けられた)
戦う意思が、彼の胸を焦がす。
彼はスマートバックルを腰に巻く。
「明日夢、離れていろ」
「まさか戦うつもりですか!?」
「ああ、あの鯨の怪人には借りがあるからな」
彼は左手にサイを構え、グランザイラスに駆ける。
右手をバックルに添える。
「うおおおおおおお!! 変身!!」
彼の尊敬する南光太郎、及び仮面ライダー達の使う魔法の言葉を叫ぶ。
勢いよくバックルを倒す。ベルトが光り、強化スーツを精製する。
ライオトルーパーに変身したジョーは、迷わずグランザイラスへと向かっていった。
「ぐぅぅ!」
水のエルはグランザイラスに壁に叩きつけられた。
「もう終わりだ!」
敵が言うが、水のエルはまだ終わる気は無かった。
443:火を噴けグランザイラス ◆TJ9qoWuqvA
07/04/05 20:09:02 mSAEWgEV0
(まだアギトを抹殺していない。主の命令を果たすまでは死ねない)
しかし、彼らに迫る影、ライオトルーパーを水のエルは見つけた。
(奴までいたか。人間だが、邪魔するなら……)
彼はバルディッシュを強く握る。
背中を怪我している上に二人がかりとはいえ、彼は使命を果たすことを諦める気は無かった。
「おおおお!」
しかし、水のエルの予想と違い、ライオトルーパーはグランザイラスに斬りかかっていた。
「キサマ、霞のジョーか!?」
振るわれるグランザイラスの右腕を、彼はサイで受け止める。
そのまま彼の右手に持つアクセレイガンで、グランザイラスの胸を斜めに切り裂いた。
「グハッ!」
後退するグランザイラスを尻目に、ライオトルーパーは水のエルの横に並び立つ。
「この前は襲って悪かった」
ライオトルーパーの謝罪が、水のエルに告げられる。
「邪魔をしなければ構わない」
水のエルの言葉に、ライオトルーパーは鼻の辺りを擦る。
「へっ。じゃあいくぜ! 覚悟しな!! グランザイラス!!」
ライオトルーパーは気合を入れ、身軽な動きでグランザイラスの周りを舞う。
その様子を水のエルは静かに見つめ、翻弄されるグランザイラスに近付き、バルディッシュを数度振るった。
「グワッ!」
よろめきながらも、グランザイラスは反撃しようと水のエルに右腕を振るう。
しかし、ライオトルーパーがアクセレイガンをガンモードにし、光弾を放った。
火花が散り、水のエルは動きが止まるグランザイラスにバルディッシュの刃を突く。
グランザイラスが身を転がしていく。
444:火を噴けグランザイラス ◆TJ9qoWuqvA
07/04/05 20:10:06 mSAEWgEV0
「キサマ等! 許さん!」
グランザイラスは火の玉になり、ライオトルーパーと水のエルを吹き飛ばす。
「がっ!」
グランザイラスはライオトルーパーの悲鳴に満足しながら、火の玉から怪人へと姿を戻す。
「地獄に送ってやろう」
グランザイラスはゆっくりと右手を二人へと向ける。
その様子を見ながら、ライオトルーパーが水のエルに顔を向けた。
「お前の念力、俺にかけてくれないか?」
「どういうつもりだ?」
水のエルの疑問に、ライオトルーパーは悔しそうに拳を握る。
「変身しても俺の力じゃグランザイラスに深手は負わせられない。だから俺にお前の力を貸してくれ!」
無茶な注文に、水のエルは呆れる。
「お前の身体が耐えれないかも知れんぞ?」
「構いやしない。俺は霞のジョー、命に代えてもやり遂げるべき使命があるんだ!」
使命という言葉が、水のエルの心を刺激する。
(使命……主は人を愛している。ゆえにアギトを抹殺するのが我が使命! だが人間であるこいつにも、使命があると言う。
それにこの男が、人間が死ぬのなら、主は悲しむだろうか?)
水のエルの葛藤に気づく様子も無く、ライオトルーパーが立ち上がる。
「だから頼んだぜ! うおおおおおおお!!」
ライオトルーパーがサイとアクセレイガンを構えて跳躍する。
「馬鹿が! 自棄になったか!!」
グランザイラスが、ライオトルーパーを焼き尽くそうと炎を噴出させた。
それを見ると、水のエルは自身に相応しくない、奇妙な熱い感覚に突き動かされる。
445:火を噴けグランザイラス ◆TJ9qoWuqvA
07/04/05 20:11:09 mSAEWgEV0
水のエルは焦りながら両手をライオトルーパーに向け、念力でライオトルーパーを加速させた。
ライオトルーパーは地面を蹴って、グランザイラスを貫く加速を得る感覚を感じていた。
(感謝するぜ!)
彼は炎に身を焼かれるのは覚悟している。彼はグランザイラスと刺し違える気でいた。
(名前は知らねえが……明日夢の事を頼んだ!)
鯨の怪人が人を守る為に動いているのを、彼はとっくに知っている。
だから、明日夢の事を心配せずグランザイラスに向かって行ったのだ。
しかし、予想と違って炎が彼を避けていった。
彼が後ろを見ると、炎の余波を身体に浴びながらも、両手を自分に向け続け、念力を送る鯨の怪人が見えた。
(ありがてえ!)
彼は一瞬で視線を前に戻し、グランザイラスを貫くことだけを考える。
驚愕の表情を浮かべるグランザイラスに、水のエルの力を乗せて衝突する。
「ぐぇぇぇっ!!」
サイとアクセレイガンがグランザイラスの胸を抉る。
(まだ足りねえ!)
アクセレイガンをガンモードへと変え、グランザイラスの体内で光弾を発射させる。
彼はダメージを受けながらも、爆発の反動で剣を抜いて地面を滑る。
グランザイラスは勢いよく吹き飛び、地面に倒れる。
「ぐぅぅぅ……」
ライオトルーパーはあれで倒せないことに気落ちする。
だがグランザイラスは、自身を炎に変え、その場を去る。
(この俺が……最強怪人のこの俺が霞のジョー如きに逃げねばならないだと! 憶えとけよ! 霞のジョー、鯨の怪人!)
446:火を噴けグランザイラス ◆TJ9qoWuqvA
07/04/05 20:12:15 mSAEWgEV0
その胸に復讐心を宿して、最強の怪人は逃げていった。
グランザイラスが去ったのを確認して、ライオトルーパーは変身を解除しながら膝をついた。
しかし、ジョーの顔には喜びが表れていた。
「いよっしゃー!! 勝ったぞ! あの、グランザイラスに!!」
叫んでいる彼に、明日夢が近寄る。
「やりましたね! ジョーさん!!」
「ああ、勝ったんだ。あの、仮面ライダーを追い詰めたグランザイラスに、俺達が!」
明日夢の肩を乱暴に叩きながら、彼は喜び続けた。
鯨の怪人を探す為、視線を彷徨わせると、立ち去ろうとする姿が眼に入った。
「待ってくれ! あんたは……え~っと」
「水のエル、我が名だ。一つ聞いていいか?」
ジョーは真剣な表情を水のエルに向ける。
「お前はアギトではない。アギトになる人間でもない。だが、お前は戦い続けた。何故だ?」
「なんだ、そんなことか」
ジョーは笑顔を浮かべる。水のエルは、力を持たないはずの自分が戦いきったことが不思議らしい。
「簡単なことさ。ここで逃げ出しちゃ兄貴に申し訳がたたねえ!」
「それが、お前の使命とやらか?」
自分の使命という言葉に興味を持ったらしい。だから、彼は胸を張って水のエルに答える。
「違う。俺の……人間の使命は誰かを守ることだ。ただの人間だからこそ持てる、最高の使命だ」
言い切ると、水のエルが沈黙していた。
(人を守るのが使命か……)
なんとも単純で、難しい使命である。