08/04/14 00:05:44 oQOlf3nJ
ひょんなことから遼希と二人きりで帰ることになった。
放課後に学校の新入生歓迎会の準備があり、
結局残ったのが男子は俺と遼希の二人だけと
女子三人だったのだ。
なんとか作業は終わり、俺と遼希は何となくその場の流れでどこかでダベろうと
いうことになった。
「五人しか残らなかった。結局みんな面倒くさいことやりたくないだけじゃん」
「それでも残ってやろうとする俺たちはエライ!(笑)」
そんなことを愚痴りながらコンビニで買ったコーラやポテトチップスを食べたり
飲んだりして、河川敷に座りこんだ。
夕日が空や草やすべてをオレンジに染め上げていて、目の前の川の水面がキラキ
ラ輝いている。
遼希は俺の目を見るわけではなく、まっすぐ遠くを見るような目で夕焼けの方を見ていた。
俺は気付かれないようにたまに遼希の方も見た。
遼希の瞳の中までオレンジが映りこんで、宝石のようだった。
遼希「考えてみればさ、中一ん時から同じクラスではあったけど、ほとんど話し
たことがなかったよね」
俺「でも、すごくおこがましいかも知れないけど、話さなくても遼希とはどこか
通じ合えるんじゃないか、わかり合えるんじゃないかってずっと思ってた(笑)」
遼希「それ俺も思ってた(笑)」
俺「ほんと!?」
俺は嬉しくてたまらなかった。まさか遼希が同じことを思っているとは思わなかったから。
時々笑った時にくっきりできる綺麗なえくぼにドキドキした。
遼希は少し凛々しい顔になって唐突に切り出した。
遼希「なんかさ、夕焼けってロマンチックだと思わない?夢心地っていうのかな、
みんなオレンジ色に染まって、世界がひっくり返ったみたいなさあ。
俺、ここから見る夕焼けの景色大好き」
俺「うん、いいよね」
夕焼けも綺麗だが、夕焼けに染まる遼希は宇宙一綺麗だ、と思ったけど口には出さなかった。
その後も学校の話とか勉強の話、好きな食べ物の話とか他愛のない話をいっぱいした気がする。
はっきり言って内容はあんまりよく覚えていない。
とにかく、遼希と話をできることが、意思の疎通が取れたことが嬉しくてドキドキしてたまらなくて、
遼希の方を見たり、相槌を打ったりするだけで精一杯だったから。
永遠にこの時が続けばいいのに、と思った。
遼希と別れ一人になった時、グっと幸せな気持ちがこみ上げてきた。
「おもいでぽろぽろ」という映画で、主人公が空を駆け上がるシーンがあるけれ
ど、まさにそんな気持ちだ。
これ以上幸せなことってあるだろうかと思った。
今日は最高の日だ。