07/04/24 01:43:05
>>192-194の続き
「パーケン．．．」
声をかけたと言うより、呟く様な今野の声で、高橋はゆっくりと眼を開けた。
それから、もう音も、振動もしないサブマシンガンの引き金から、指を外した。
弾は全て使い果たした。もし攻撃されそうになったら、見せる事で威嚇するか、鉄パイプ代わりにするか以外に、役に立たないだろう。
凄惨な光景ではあったが、妙に現実感がなかった。
理由は何であれ、俺が殺したんだ。
言葉だけが、頭の中を上滑りしていく。
戦場の写真を見ている様な感覚に似ていた。
捏造でもない限り、その写真の光景は現実に起こったことなのだろう。
でも自分はその光景をまのあたりにしてシャッターを切ったカメラマンでもなければ、被写体でもない。自分の身近で起こった事ではなく、どこか遠い国での出来事。
結局はいかに凄惨な光景とはいえ写真だ。自分はただの傍観者にしか過ぎない。
そんな感覚。
ジャイの顔は、流石にもう血の気はなく、それ故そばかすも生前以上に目立っていたが、いつもの無邪気な笑顔を浮かべたままだった。
だからかなあ。
高橋の頭の中で、脈略のない言葉がよぎっては、消えていった。
沼の底に溜まったガスが、わきあがってはあぶくとなり消えていくかの様に。
ジャイさん、もう死んでいるのに笑っているから、現実味がないのかなあ。
死んじゃったのに、何で笑っているんだろう。もう誰も殺さないで済むから？
以前言っていた羊の中に、多分俺や今野も含まれていたんだろうけど、でも、それ以上に、相方が人を殺すのを見たくなかっただろうな。