08/01/17 22:59:03 PrcxMedX
私は鬱陶しくなつてしまつた。
「先生そりゃああんまりですよう。師匠なんとか言ってくださいよ」
「だから、僕は君の師匠じゃないと言っているだろう。
まあ、いくら関口君だろうとそう思うさ。至極正論だね」
「うへえ」
「京極堂。僕は何でこんな物を書かされているんだ」
「君が陰鬱な私小説への創作意欲がなかなか出ないと言うのでね。榎木津の提案だ。
嫌な思いをさせれば君の陰惨な小説のアイディアが浮かぶと奴が主張するのでね。
しかし、当の本人は雪合戦に出掛けたまま帰ってこない。どこかで凍死でもしてなきゃいいがね」
「この体験が十分陰鬱だよ」
「じゃあそれを書けば良いじゃないか」
人を最高に小馬鹿にした態度で目の前の男は笑っている。
横にいる青年はがつがつと蜜柑を食っている。
旅に出よう。そう思った。