08/02/13 21:43:04 q2r8N0U/
金田一耕助シリーズの素晴らしいところは、
原作を読んで湧くイメージ以上の映像を具現化したところだと思う。
原作では把握に労を要した複雑な人間関係を、個性的な役者の配置でさらりと語り、
あのおどろおどろしい情景描写を越える実像をフィルムに描いた。
そして、石坂浩二もはまり役だが、轟警部、そして岸恵子の魅力を最大限引き出したと思う。
役者の使い方で言えば、「細雪」の江本猛紀の使い方が忘れられない。
当時、野球を辞めて俳優業なんぞ始めた江本だが、大根も大根、
ひどくて見られたものではない演技であった。
その江本を使うというので、どういう風に料理したものか? と興味津々であったが、
素晴らしい使い方であった。(種明かしは本編にてご確認下さい。)
また、獄門島では若き日の Casval Rem Deikun を起用したところも先見の明か。www
映像は多くの人が語るように素晴らしいにつきる。
「細雪」の全てのカット、構図、影の量、光の捉え方等々、
静止画としては今でもこれを越えるフィルムは皆無であろう。
ラストシーンの美学も忘れられない。
また、金田一シリーズでは、「女王蜂」お茶会での殺人のシーン等、
マトリクスカットでの登場人物の驚きの表現等、随所に実験的で斬新な試みも多い。
晩節を駄作で汚したのは、個人的には人間ぽくていいかな、と思う。
初期の頃の作品を見ても、今から見るとそれほどインパクトはないものも多いし。
人間、旬というのは、やはりあるのだと思う。
そして、この板にいる人はもうご存じの通り、
市川映画のトレードマークでもある、オープニングの極太明朝体題字をパズル的に並べる手法は、
もちろん「エヴァンゲリオン」庵野秀明にパクられ、もとい、受け継がれている。