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唐突な消費税増税は、実は周到に計算されたシナリオがあった。
だが功を焦った菅は、自らそれをぶちこわした。
菅直人は、カナダで開かれたG7から帰国した2月、すっかり人が変わった。
「キミらどうするんだ。こんな生ぬるいことをやっていて大丈夫なのか」
菅の叱責の矛先は、当時鳩山由紀夫首相の腹心である官邸高官たちに向かった。
その一人は、内閣府副大臣だった古川元久が「たいへんだ。菅さんが……」と
血相を変えていたのを覚えている。菅が「消費税を上げろ」と言い出したのである。
突然辞任した藤井裕久の後を継いで、菅が副総理を兼ねたまま財務相に就任して、
まだ1カ月しかたっていない。彼にとって、このときが国際会議デビューだったG7では、
財政破綻したギリシャについて話し合われた。
そもそも菅は増税に冷ややかなはずだった。財務相就任直後の1月の衆院予算委員会で
「(消費税は)逆立ちしても鼻血も出ないほど無駄をなくしたと言える」まで上げないと明言した。
だが、カナダから帰国すると、まるで別人だった。
普天間隠しの消費税
「普天間でこうなっているときこそ、消費税増税という力強いメッセージを出そうよ」
首相官邸にいた高官の一人は、菅がそう意気込んで持ちかけてきたのを覚えている。
そのころ、米軍普天間基地問題が迷走していた。菅の消費税増税案は、参院選を
控えるのに支持率が急落する民主党政権を、再び浮揚させる狙いがあった。
関係者によると、菅はこのとき2010年度の国債発行額約44兆円を消費税で賄う考えでいた。
おおざっぱな計算だが、消費税率1%で2兆円余の税収になるため、単純に約44兆円をそれで割ると、
22%になる。つまり現行から「17%増の22%にしよう」と言い出したのである。
(後略)
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