10/07/20 16:31:13 0
(>>1のつづき)
標高などから計算された付近の気温はわずか2度。坂井副隊長は男性に防寒ジャンパーを
手渡しながら、「こんなに寒い中、軽い気持ちで富士山に入っちゃだめだ」としかりつけた。
男性は疲れ切った様子でささやいた。
「はい。すみませんでした。ごめんなさい」
男性にけがはなく、無事に下山した。そして、富士宮署で登山の経緯を語り始めたのだが…。
「電車の窓から見えた富士山がきれいだったから登ろうと思った」
男性は前日から行く先を決めずに、“ぶらり旅”をしていた。熱海で1泊して東海道線で西に
向かう途中、車窓の中でそびえ立つ立つ富士山の姿に心を打たれ、富士駅で電車を
飛び降りたというのだ。
タクシーで5合目の登山口まで乗り付けたとき、時刻はすでに午後5時。男性は迷わず
入山しひたすら頂上を目指した。夏山とはいえ、8合目を超えると雪がまだ残っている。
氷に近い状態の雪の上を歩き、バランスを崩して転ぶこともあった。それでも男性は電車の
車窓で見た富士山の頂を思い描きながら、必死に歩を進めた。
9合5勺(3590メートル)付近に到着したとき、異変が起きる。頭痛とめまいが襲ってきた。
これらは高山病の典型的な症状とされており、悪化すれば脱水症状や呼吸困難を
引き起こし、意識を失う可能性もある。寒さの厳しい富士山で意識を失った場合、
命を落とす危険がある。
男性はこの段階でようやく、「気力がなくなり、下山を始めた」。119番通報して救助されたが、
富士宮署員は「助かったのは非常に運が良かっただけだ。一歩間違えれば死ぬ可能性は
いくらでもあった」と憤る。
「準備を重ねて相当気をつけていても時にミスは起こるもの。この男性のケースは完全に
アウトのパターンですね」
アルピニストの野口さんもばっさり切り捨てる。野口さんによると、足首が固定される登山靴を
履かなければ、デコボコした登山道で捻挫して、上り下りできない状態に陥る危険性がある。
また、「夏は麓が暑いから山の寒さが頭から抜け落ちてしまいがちだ。しかし夏山は天候が
変わりやすく、雨に降られると急激に気温が下がって凍死することも珍しくない」と指摘する。
(>>3-10につづく)