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宅配便は、便利な時代になったと実感させる代表的なサービスである。
その業界で、一角を担うはずの新生「ゆうパック」が出足からつまずいた。中元シーズンの最中に
大規模な遅配を招き、多方面に迷惑をかけている。商品価値を失った生鮮品が少なくない。メロンや
サクランボは熟れすぎたり傷んだりした。影響は深刻だ。
混乱が起きたのに、公表が遅れたことも問題だった。利用者は早く事情が分かれば、他の業者を通じて
送り直しもできたはずだ。新たな宅配便事業は、日本郵政グループの郵便事業会社が、日本通運の「
ペリカン便」を買収し、自前のゆうパックに統合して、この1日からスタートさせた。
ところが、現場の職員が新しいシステムに習熟していなかったために、集配の遅れが各地で起き、混乱が広がった。
現場では、トラブルはある程度予想されていたようだ。各支店では新しい機器の使い方を訓練する機会が少なかった。
本社からの指示も不十分だったという。社内には、繁忙期の統合は避けた方がいい、との異論が出ていた。こうした声は
経営陣に届かなかったのだろうか。当初の計画にこだわり、準備不足のまま見切り発車させたとすれば残念だ。
事業統合は日本郵政の斎藤次郎社長と、郵便事業の鍋倉真一社長が指揮を執った。ともに官僚の出身。民営化見直しを掲げた
国民新党の亀井静香代表の肝いりで就任している。
それまでは西川善文・前日本郵政社長が主導し、日本通運と共同出資の形で統合を進めていた。
新体制は“西川路線”を転換し、すべてを郵便事業が引き受けた。取扱量を増やして業務の効率化を図る狙いだったが、
赤字を止めようと急ぎすぎた。
宅配便業界はヤマト運輸、佐川急便の2社で4分の3のシェアを占める。3番手のゆうパックは苦しい競争を強いられている。
信用が傷ついたゆうパックの打撃は大きい。経営陣は混乱を一過性のことと軽視せず、責任の所在をはっきりさせるべきだ。
社内の意思疎通、トップの判断は適切だったのか、検証が必要だ。
民営化の見直しで、国が日本郵政の大株主としてとどまる。事業の失敗は、国民負担につながりかねない。経営陣の責任は重大だ。
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