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「橋はかかる」(11日発売、ポプラ社)を読んだ。著名な装丁家が帯に書いているように「わけもなく涙がでてきた」。
どうしてなのだろう。書いた夫婦、猿回し芸人の村崎太郎さん(49)とテレビプロデューサーの栗原美和子さん(45)に会った。
太郎さんは08年、被差別部落出身であることを公表した。そのことを栗原さんは私小説として著し、
差別がなくなることを願って自身も半生記を書いた。でも、世の中は変わらなかった。
テレビで顔の売れた自分が、身を切る思いで告白してもダメなのか。実家とのあつれきも重なる。
夫婦3冊目の本は、太郎さんが「どん底」から再生する物語でもある。
心の奥の奥にある感情。それを解き放たない限り、再生はなかった。夫婦は語り合った。
差別を知らない妻が、差別の歴史と個人史を夫から聞く。反発し、沈黙し、そして激論する。ある時、太郎さんが思わず言う。
「あなたは川のあちら側の人。こちら側の人間の気持ちは理解できない!」。妻は絶望する。
こんなに赤裸々に話し合っても分かり合えないのか。それでも、夫婦は語り合う。毎日3時間以上、向き合う。
最後に栗原さんはこう書いた。「私たち夫婦が重ねている推敲(すいこう)作業、それこそがこの本の意義のような気がします」
太郎さんは4代目次郎を連れて全国を旅している。高齢者ばかりの限界集落、ハンセン病療養所、被爆者の人たちに会い、
児童養護施設にも。タイトルは住井すゑさんの大作「橋のない川」を意識したはずだ。
人が人を差別し、分断する「川」はたぶん、この世の中のいろんなところにある。見える川、見えない川。だけど、
話をすれば最後の最後は分かり合えると、2人は信じている。結婚して3年間、語り尽くしてきた夫婦の結論だった。
記事引用元:毎日jp(毎日新聞 2010年6月16日 0時36分)
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