10/03/26 00:17:52 Sdg0AGzB0
平成10 藤子不二雄
子どもの世界を描き、その中で「ほんとうの子ども」を活躍させるためには、
かつて自分が子どもだった頃をふりかえって、
その姿を自分の主人公に投影しながら描いていきます。
じつは、意外とこれが、むずかしいことなのです。
人間は成長していくにつれて、
自分の視点が少しずつ高くなってきていることに、なかなか気づきません。
小さい頃と今とでは、いつのまにか視点が違ってしまっている。
自分は、まぎれもない子どもを描いているつもりでも、
ひどいときにはそれが子どもの姿をしたおとなであったり、
おとなが外から観察し概念的にとらえた子どもであったり。
そういう危険性が、往々にしてあります。
ジェネレーションギャップというのも、
そういうところから生じてくるのだ、と思います。
以前、電車の中で女子中学生と思われるグループが、
興奮して話し合っていました。話の内容から察すると、
どうもその子たちは中学二年生らしく、さかんに嘆いているのは、
「近ごろの一年生どもは……」ということでした。
わずか一年の間に、これだけのズレができてしまうのです。で
すから、自分がまぎれもない子どもだった頃の姿を、
修飾したり歪曲したりすることなく、
一所懸命探ろうと努力することがたいせつだ、と思うのです。