10/03/11 10:26:19 Q421lvnJ0
翌日(あくるひ)一人は新宿へ出て区議と談判を始めた。
「何で私に漱石の著作の使用許可を出せと云わないんですか」
「へえ?」と区議はあっけに取られている
「房之介には出せ、おれには出さないで好いと云う法がありますか」
「それは向こうの方が本家で……」
「その都合が間違ってまさあ。私が出さなくって済むなら房之介だって、出す必要はないでしょう」
「その辺は説明が出来かねますが―房之介さんは共有財産で自由に使っていいと言っていますし、
、あなたにお金を払う必要を認めませんから」
なるほど狸だ、要領を得ない事ばかり並べて、しかも落ち付き払ってる。一人は仕様がないから
「それじゃ私も財団法人を作りましょう。房之介君が、社会貢献もせず、生計立てているのに、
私が安閑として、留まっていられると思っていらっしゃるかも知れないが、
私にはそんな潔白な事は出来ません」
「それは困る。学校の国語の授業がまるで出来なくなってしまうから……」
「出来なくなっても私の知った事じゃありません」
「君そう我儘を云うものじゃない、少しは著作権法の事情も察してくれなくっちゃ困る。
それに、そんな財団を勝手に作ったら君の将来の親戚付き合いに関係するから、
その辺も少しは考えたらいいでしょう」
「親戚なんか構うもんですか、親戚より金が大切です」