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ネットで暴走する医師たち [著]鳥集徹[掲載]週刊朝日2009年1月30日号
[評者]永江朗
URLリンク(book.asahi.com)
■匿名で医療事故被害者を批判するとは…
医師不足や“医療崩壊”の原因のひとつは患者側の変化だ、という言い方がある。
医療事故などで真相の究明や医師の責任を問う声があがる。ときには刑事事件になることもある。
それが現場を萎縮させ、産科医や外科医の不足につながっている、というのだ。
だが、患者原因説はどこまで本当だろうか。
患者は“クレーマー”や“モンスター”で、医師だけが常に正しいのだろうか。
鳥集徹『ネットで暴走する医師たち』は、医師専用サイトや2ちゃんねるなどで
医師が匿名でどのような書き込みをしているのかをルポルタージュした本である。
正直いって、そのあまりのおぞましさに胸が悪くなる。
典型的な事例が三つ登場する。脳出血をおこした妊婦が19の病院で受け入れられず死亡した奈良県大淀病院事件。
幼児の喉に割り箸が刺さった杏林大学割り箸事件。産科医の逮捕で大きな注目を集めた福島県立大野病院事件。
事件のたびにネットに書き込まれる医師たちの意見は、いつも論調が同じだ。現場の医師は最善をつくした、
それ以上を求めるのは患者のワガママだと。やがてそれがエスカレートしていく。
当事者でもないのに憶測と妄想による書き込みがおこなわれ、〈患者=悪、医師=被害者〉という図式がどんどん広がっていく。
患者のプライバシーがさらされ、ときには根も葉もない噂が事実として語られることもある。
患者や遺族は二重三重に傷つけられていく。
なぜこうなるのか。本書の最後に著者がネット医師(=匿名サイトに熱心に書き込む医師)とコンタクトを取ろうとした経緯が書かれている。
医師は「メディア社会そのものが怖い」などと言って逃げ回る。自分は匿名で医療事故被害者らを批判しているくせに、
「メディア関係者と会うストレスで、心身不調になった」と泣き言をたれる始末。現場の医師はここまで疲弊し、ひ弱になっているということなのか。
もちろんネット医師など医師全体からすればごくごく少数なのだけど……。