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・社会のなかで「希望」を考える際に、希望を失った層について分析することが不可欠だ。
昭和40年代半ばから現れ始めたとされる「ひきこもり」の人たちや、長期間、定職を持たず
アルバイトを繰り返すフリーターと呼ばれる人たちのなかにも、「希望を持たない人」が多くいる。
ひきこもりに詳しい大阪大非常勤講師の井出草平氏(29)は「ひきこもりの自殺のことを最近、
聞くようになった」という。
ひきこもりは、いまや数十万人の規模と概算されている。昭和40年代前半に生まれた
「ひきこもり第一世代」が40~45歳になった。この世代は、あと10年ほどの間に、親を
次々と亡くしていく。親の年金でかろうじて生きている人たちは、親が死ぬと同時に生活の
資金を失う。
ひきこもりの人たちに「親が死んだらどうする」と質問すると、ほとんどが「自殺する」
「そのまま餓死する」とし、「なんとか働く」と答える人はわずかだ。すでにもう自殺者は
出始めている。井出氏は「私たちはこれらの問題に本格的に向き合わなければならない」と
訴えている。
「希望は、戦争。」。フリーターの31歳の男性が平成19年、こんなタイトルで雑誌に論文
を投稿し、話題になった。
「社会のゆがみは若者に押しつけられ、一生懸命まじめに働いても生活が成り立たない。
不平等が固定化されている。戦争が起き、たくさんの人が死ねば日本は流動化する。多くの
若者はそれを望んでいるように思う…」。論文にはそう綴られていた。
夜遅くアルバイトに行って8時間、休憩もろくに取らずに働いても月給は10万円前後。
まともな就職先は新卒しか受け付けてくれない。論文には、社会に対する不満が渦巻いていた。
東大希望学プロジェクトでも、この論文は衝撃を持って受け止められ、議論になった。
「戦争」というのはあまりに短絡的ととらえられたが、メンバーの中には、この論文に理解を
示す若い研究者もいた。宇野重規准教授(42)=政治学=はこう語る。(>>2-10につづく)
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