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「残念です・・・」それが男の最後の言葉だった。直ちに刑務間官が男に目隠しと手錠を施し
両脇を抱え、約1メートル四方の死刑執行台へと連行していった。
2001年(平成13)12月27日、名古屋市中心部に位置する名古屋拘置所。御用納め前日という
異例の執行日だったためだろう、男は虚をつかれたような表情を浮かべてはいたものの、
暴れだす気配も取り乱した様子もなかった。執行直前に行われた簡素な宗教儀式(聖餐式)
では長年にわたって教誨を担当した牧師と静かに抱き合い、刑場に消えていった。
男の名は長谷川(旧姓竹内)敏彦。享年51歳。愛知、半田保険金殺人事件で死刑が確定していた。
長谷川(旧姓竹内)敏彦の通夜と葬儀は執行の翌12月28日と29日、長谷川が信仰を寄せた
名古屋市昭和区の教会の礼拝堂で行われた。 葬儀には実姉や弁護士、支援のキリスト関係者ら
に加え、長谷川に殺された被害者の長兄も駆けつけた。参列者は総勢50人ほどになった。
大抵の死刑囚は親族とも断絶してしまい、遺体の引き取り先すらないケースが珍しくない。
ましてや葬儀に被害者遺族の参列を受けた死刑囚など皆無であろう。そういう意味では長谷川
は極めて”幸せな境遇”に置かれた死刑囚だったといえるかもしれない。
棺に納められた長谷川は静かに目を閉じていたが首には白い布が巻かれていた。その布が
拘置所で巻かれたものなのか、教会の誰かが巻いたのかは分からない。ただ、布を取って
みると太い縄の痕が青黒い痣となって首にくっきり残っていた。