10/01/31 20:48:07 GxbtnmS/O
>>447続き
(中略)
変革とは一つのプランに向かつて着々と進むことではなく、一つの叫びを叫びつづけることだ、といふ考へが、
私の場合には牢固としてゐる。前述の自衛隊二分論は、相対的解決策としての変革にすぎぬが、その中にも
私の叫びの貫流してゐることを、聞く人は聞くであらう。
かつてアメリカ占領軍は剣道を禁止し、竹刀競技の形で半ば復活したのちも、懸声をきびしく禁じた。
この着眼は卓抜なものである。あれはただの懸声ではなく、日本人の魂の叫びだつたからである。彼らは
これらをおそれ、その叫びの伝播と、その叫びの触発するものをおそれた。しかしこの叫びを忌避して、
日本人にとつての真の変革の原理はありえない。近代日本知識人が剣道のあの裂帛の叫びを嫌悪するのは、
あれによつて彼らの後生大事にしてゐる近代ヒューマニズムと理性の体系にひびのはひるのをおそれるからだ。
あの叫びこそ、彼らの臆病な安住の家をこはしにかかる斧の音をきくからだ。
三島由紀夫「『変革の思想』とは―道理の実現」より