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・幕を開けた2010年代は、世界的な構造変化が加速するに違いない。経済の分野では、米国
一極集中から多極化へ、といううねりだ。
米国の過剰消費に世界中がもたれ掛かればなんとかなるという時代は終わった。世界大恐慌以来の
経済危機を克服するうえで協調は不可欠だが、同時に各国が内需を振興して自立的な発展を
進めることが前提になる。
特に、アジアなどの新興国が「豊かでエコで安心・安全な社会」をどう築くか。世界の安定と調和は
そこにかかる。
日本経済は生き残りをかけて、アジアへの融合を図ることが求められる。アジアの需要をただ
取り込むという発想でなく、近隣諸国の豊かな社会づくりに寄与し、結果として生まれる市場の
果実を得るようにしたい。
たんに商品やサービスを売るのでなく、現地に溶け込んだ商品・販路づくりや人材育成が
欠かせない。現地の発展に日本のどんな資源が生かせるか。志を高く持ち、考え抜く人材を一人でも
多く育てる必要がある。
すでに多くの企業がアジア向け製品開発に走り出している。パナソニックは、中国で家電製品が
行き渡っていない農村地帯にどんなニーズが眠るか、徹底的に調べている。
任天堂のゲームづくりを率いる専務の宮本茂さん。頭脳には失敗を含めゲームづくりの経験と
知識が詰まっている。世の変化に応じて過去の蓄積から使える要素を引き出し、組み合わせてきた。
「枯れた技術の水平思考」だ。
イノベーションに発明が欠かせないというのは間違いだ。需要と供給の微妙な食い違いへの「気づき」
からも生まれる。米IBMはコンピューターを学術計算に使うという固定観念にとらわれず、事務処理に
使えばいいと思いついて巨大企業になった。
新たな光をあててみるべきものは、企業だけではない。日本の地域に眠る「緑」「水」「海」などの
自然の幸、独自の伝統文化や安全な社会といったソフトパワーにも再評価が必要だ。
追い風は吹いている。すでに世界で日本の顔となったアニメ、漫画をはじめ、さまざまなポップ
カルチャーや若者ファッション。(>>2-10につづく)
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