09/11/03 21:56:37 wOfgMOmeO
第九条の改廃については、改憲論者にもいくつかの意見がある。
「第九条第一項の字句は、そもそも不戦条約以来の理想条項であり、これを残しても自衛のための戦力の
保持は十分可能である。しかし第二項は、明らかに、自衛隊の放棄を意味するから削除すべきである」
といふ意見に、私はやや賛成であるが、そのためには、第九条第一項の規定は、世界各国の憲法に
必要条項として挿入されるべきであり、日本国憲法のみが、国際社会への誓約を、国家自身の基本法に
包含してゐるといふのは、不公平不調和を免かれぬ。
その結果、わが憲法は、国際社会への対他的ジェスチュアを本質とし、国の歴史・伝統・文化の自主性の
表明を二次的副次的なものとするといふ、敗戦憲法の特質を永久に免かれぬことにならう。
むしろ第九条全部を削除するに如くはない。
その代りに、日本国軍の創立を謳ひ、健軍の本義を憲法に明記して、次の如く規定するべきである。
「日本国軍隊は、天皇を中心とするわが国体、その歴史、伝統、文化を護持することを本義とし、
国際社会の信倚と日本国民の信頼の上に健軍される」
防衛は国の基本的な最重要問題であり、これを抜きにして国家を語ることはできぬ。
物理的に言つても、一定の領土内に一定の国民を包括する現実の態様を抜きにして、国家といふことを
語ることができないならば、その一定空間の物理的保障としては軍事力しかなく、よしんば、
空間的国家の保障として、外国の軍事力(核兵器その他)を借りるとしても、決して外国の軍事力は、
他国の時間的国家の態様を守るものではないことは、赤化したカンボジア摂政政治をくつがへして、
共和制を目ざす軍事政権を打ち樹てるといふことも敢てするのを見ても自明である。
三島由紀夫
「問題提起」より