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物語日本史(中) 平泉澄
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四十五章 源頼朝(下) 頼朝出現の意義
文治元年の夏、尾張の国に、玉井四郎助重という者があって、元々乱暴者であり人々を困ら
せていましたが、それが今度は、勅命に背いた廉で召喚せられたののに、出頭しないばかりか、
却って朝廷に対して誹謗の言葉を吐きました。その報告を詳しく聞いた頼朝、何と言ったと思いま
すか。
綸命に違背するの上は、日域に住すべからず。関東を忽諸せしむるに依りて、鎌倉に参る
べからず。早く逐電すべし。
綸命は勅命、日域は日本、忽諸はないがしろにすることです。つまり、勅命に背く以上は、日本国
に住むことは許されない、幕府の指示に従わない者は、鎌倉へ来て保護を受ける事は出来ない、
早速日本国の外へ出て行くがよい、こう言って国外追放を宣告したのです。
何という鮮やかな、何という痛快な裁決でありましょうか。それが口先だけの説教ではなく、天下兵
馬の権を握る者の言葉でありますから、一言直ちに実行に移され、違背すればたちまち首が飛び
ます。それ故にこれが人々に与えた影響は、実に重大であったに違い有りません。