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「立ち退きのための補償金については個々の家の資産によってマチマチで、
どこも言いたがりませんし、情報公開を取っても非開示なのです」(前出の鈴木郁子氏)
日刊ゲンダイ本紙の取材では最高の家で10億円近いが、確たる話ではない。
自公政権時代の国交省は地元説明会でさえ、下流都県から契約済みの家に
支払われる感謝のお金に関する資料は配布しなかったという。一説には
1戸当たり800万円くらいとされていたようだが、よほど公表したくない金額なのかと勘ぐられても仕方ない。
移転を決意した人にとって、こうした補償制度が見直されたり、元に戻ることが怖い。
それで「ダム建設を計画通りに進めてほしい」の合唱になるわけだ。すでにダム建設予定地周辺には、
道路建設費も含めて3217億円の税金が投じられている。ダム本体建設にはさらに1400億円が予定され、
そういった工事をアテにしている地元民も多い。地元観光協会や旅館関係者はダム完成後の新しい
観光地に期待している。ここで中止は死活問題というのもうなずける。
しかし、民主党は生活再建を支援するための特別措置法を準備し、何も過去の補償金を召し上げるつもりもない。
国が買い上げた田畑をもう一度借りて農業を続ける方法だってある。
世間は水没住民に同情する人ばかりではない。騒動拡大以来、長野原町の役場には全国から
「ダム建設中止は当然だ」「地元だけの損得で反対するな」という抗議の電話が殺到している。
政権交代の意味を深く考えない民放テレビのワイドショーや大新聞は「地元民がかわいそう」の論調でやっているが、
この調子だと「地元エゴじゃないか」の大反発を食らいかねない情勢だ。(おわり)