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(>>2の続き)
■客観性は無定見の口実にならない
われわれが新聞に期待するのは世の中の出来事を解き明かしてくれることであって、理解の妨げに
なることではない。だが日本の報道機関がやっているのはまさに後者、インフルエンザ騒動がいい例だ。
新政権にとって新型インフルエンザは最も憂慮すべき問題の1つだと朝日新聞は書いたが、それはちがう。
多くの報道機関と同じで、朝日も危険性と感染力を混同している。新型インフルエンザはたしかに感染力
がとても強い。だが致死率は通常のインフルエンザとそれほど変わらず、重病ではない。
新聞の仕事は、今後の政治の見通しを読者に理解させること。そのためには、自らの立場を明らかに
しなければならない。客観性を口実にどっちつかずの態度を取ることは許されない。八ッ場ダムの建設は
中止するべきなのか。霞が関の「埋蔵金」はどこにあるのか。真に自立した外交政策は、どうしたら
打ち立てられるのか。
9月18日、イランのマフムード・アハマディネジャド大統領が、ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)は
作り話だと発言した。これに対し、ドイツの外相はアハマディネジャドはイランの恥だと抗議した。この
件に関して、岡田外相に意見を求めた記者が1人でもいるだろうか。メディアにはこうした問題に光を
あててもらわなければ困るのだ。
総選挙の晩、私は「これで日本も普通の民主主義国家になりましたね」と、日本人記者に話しかけた。
彼女は困った顔をした。「『普通』ってどういう意味ですか?」「二大政党が交互に政権を取る国家、
政治家が国民に対して責任をもつ国家です。今まで日本の民主主義は異常だった」。私の言葉が飲み込め
ないらしく、記者はそそくさと逃げていった。
COLUMNIST PROFILE
Regis Arnaud レジス・アルノー
1971年、フランス生まれ。仏フィガロ紙記者、在日フランス商工会議所機関誌フランス・ジャポン・
エコー編集長を務めるかたわら、演劇の企画なども行う。
-おわり-