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>>307
カイロには,日本人旅行者がよく泊まる安宿があって,そこには充実した情報ノートが置いてある。
ページを繰ってみると,そのなかにはたくさんの“ピラミッド登頂記”があって,登頂の様子を知ることができる。
登頂を果たし降りてくると警官が待ちかまえている。オフィスに連行され尋問,ボディチェックの後,
バクシーシ(=賄賂)をまきあげられて釈放されるのがお決まりのコースである。このとき渡すバクシーシの
“相場”まで情報ノートには書いてあり,さらに
「少額札で各人がばらばらと出すと,たくさんあるようにみえ,又,分配も楽なので喜ばれる」(同97年2月5日)
という情報まである。
●バクシーシ(=賄賂)を踏み倒した小池百合子~小池百合子著『振り袖、ピラミッドを登る』より●
20代娘の百合子さんは5年目、ついにカイロ大学を卒業しました。さあ、仕上げはあの大切な儀式、
高いところでヤッターと叫ぶ儀式です。目指すはピラミッド頂上!
目をつけたのはクフ王のピラミッド。友人二人をカメラマンと荷物運びとして雇い、早朝5時に出発。
いでたちはジーンズにテニスシューズ。
20メートルほど登ったとき、下から警官の声が。「おーい、ピラミッドは登っちゃいかんのだ」
百合子「知ってますよーだ」 ここでやめるわけにはいかない。
警官「こら、聞こえんのか」
百合子「1ポンドでどう?」
警官「だめだ、5ポンド払え」
百合子「じゃあ、3ポンド。とにかく登ってから払うわ」
警官「よし。3ポンドだぞ。じゃ、気をつけてな」
そうしてついに頂上征服! やった! 百合子さんはここで荷物係からかばんを受けとり着物に
着替えた。振袖だ。風呂敷をひろげ、茶器を取り出し、お茶を入れた。格別の味だ。
「振り袖日本人娘早朝のピラミッド頂上でラアの神(太陽)にお茶を差し出す」の図。パシャ、記念写真。
そしていつもの儀式。「やったー! ワアーッ!」と大声を朝日にぶつける。
そんな最高の気分に浸っていると、下から声が。「おーい、まだかー?」警官の声だ。
急いでジーンズに着替え、登った面とは反対側から10分でピラミッドを下った百合子さん、
3ポンドは払わず逃げ帰ったのでありました。