09/07/08 16:36:07 nwItlUnG0
「おい河村、帝王学って知ってるか?」
麻生は首相執務室の椅子からおもむろに立ち上がると窓の外を眺めながらつぶやいた。
「と、いいますと・・・」
突然の問いかけに戸惑う河村をよそに麻生は続けた。
「首相というのはな、馬鹿に見えないといかん。昔から『御輿は軽くてパァーがいい』ってな。
トップがパァーに見えた方が周りも気楽にやりやすいもんよ」
「それじゃ総理、まさか・・・」
はっとする河村に目を向けることもなく、麻生は葉巻に火をつけるとその苦味に顔を一瞬しかめてみせた後
天井を仰ぎつつ静かな調子でつぶやいた。
「確かに漢字も読めない振りをしたら馬鹿にされるのはそりゃ当たり前よ。
でもそれで日本が上手く回るんだぜ。保守政治っていうのは馬鹿な振りをすることだよ。ハハハッ」
愉快そうに笑って見せる麻生を見る河村の目には溢れんばかりの涙が珠のように光っていた。
熊田五郎著 『宰相・麻生太郎』より