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開国もクールに!
塩野七生(作家) 文藝春秋 2008 12月号より一部抜粋
移民を一千万人受け入れると言い出す人がいる。
これくらい、一言でいえばバカなことはない。
移民政策では先行していたのがイギリスやドイツやフランスやイタリアだが、
これらの国の現状を見てほしい。移民受け入れに積極的であった国々だが、
今ではそれゆえに苦労が絶えないのである。
ヨーロッパ人がアメリカへの移民であった百年前とは、事情が変わったのである。
以前は移住先の国の言葉を習得し法律を守るのは当たり前と思われていたが、
今はまったくそうではない。移り住んだ国に同化するよりも、その国の中に自分たちのための
治外法権区域を作ることのほうに熱心な感じだ。
これが現状である以上、今の日本の選択すべき道は、一つしかないように思われる。
深く静かに潜行してきたこれまでの厳しい移民政策を、これ以後も黙ってつづけることなのだ。
来られては困る人々を、なるべく人目に立たずに排除するために。
それでは労働力が不足し日本は孤立する、というかもしれないが、その心配はない。
労働力の不足はこれまで活用してこなかった日本人(女と非正規労働者)と技術を
今度こそ本気で活用することで相当な程度に解決できる。
また孤立の問題も、現代の知的労働者が何を欲しているかを見極めれば、
わが国はそれを充分に満足させる条件をもっていることで解決は可能だ。
それは、治安の良さと機能する日常生活、につきる。ITの時代だから仕事はどこにいてもできる。
いかに知力では優れていても個人ではどうにもできない現代社会の病弊が、
治安の悪さと日常生活上の不便である。
この二つが日本に住めば解決するとなれば、世界中の知的労働者たちは日本に関心をもつはずだ。
なぜなら、現代では先進国でさえ、城塞都市かと思うくらいに高い塀をめぐらせガードマンが見張る中で、
日々を暮らすようになりつつあるからである。