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自分は何者? 何度もそう自問した。希望を捨て、道に迷い、社会からはみ出した。光に導かれ、天を
見上げた時、ようやく穏やかな気持ちになれた。まだ物心もつかない頃、母親に言われた言葉が忘れ
られない。「日本人とは結婚できない。いい会社には就職できない。夢は持つな」
大阪生まれの在日韓国人3世。小学校時代からいじめに遭った。3世と告白すると、彼女は目の前から
姿を消した。自分の「血」を何度も恨んだ。世間に背を向け、のめり込んだのがロック。中学校時代に
小遣いでギターを買い、高校を卒業後、定職につかずバンド活動に明け暮れた。長髪にひげを生やし、
ワインを毎晩1本空けた。「将来のない自分には、ほかに道がなかった」
24歳の時、バイト先のコックに勧められ、初めて教会に足を運んだ。神の存在を意識した時、「死んで
まで地獄じゃたまらない」と思った。2か月後に洗礼を受け、長い髪とひげを落とした。韓国語は、読む
ことも、書くことも、話すこともできない。日本人でもない自分には「帰る場所がない」とずっと思ってきた。
自分のルーツがある韓国に初めて足を踏み入れたのは、32歳の時。戸籍に記されていた住所を訪ね
ると、近くに教会があった。空を仰ぎ、十字架を見た時、「俺の故郷はきっと天にある」と思った。迷いが、
消えた。
大阪の教会の牧師は今、義理の父。その義父が責任者を務める宮城県の神学校で牧師となり、12年前
にいわき市に教会を構えた。妻、啓子さん(42)との間には2男1女を授かった。閉ざされていた扉が開き、
失望は希望に変わった。毎週日曜の礼拝では、エレキギターを弾きながら信者と賛美歌を歌う。
今、同じ境遇の人に出会ったら、手を握ってこう伝えたい。「私たちの国籍は天国にある。地上では、
人は旅人のようなもの」
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