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日本映画「おくりびと」に涙を流した人には、水を差すような話が飛び出した。
最近、厚生労働省が新型インフルエンザの感染拡大を防ぐために、埋火葬を円滑に実施
するガイドラインを発表したが、その中で、遺体を“感染源”として扱う考え方が随所に
見て取れるのだ。
たとえば、こうだ。「新型インフルエンザによって死亡した者については、感染防止の
観点から24時間以内の埋火葬が認められている」「このような病原体に汚染され、また
は汚染された疑いがある遺体は、原則として火葬する」などと記述されている。病原菌に
侵された遺体は即刻焼却しろというわけだ。「汚染」という言い回しも遺体をモノ扱いし
ているようで不愉快と感じる人は多いのではないか。さらに、火葬の前に最期の別れをし
ようとする遺族に対して手袋を着用させるよう葬儀業者に指示している。これには「納棺
師」も仰天だろう。
医療ジャーナリストの西松空也氏がこう言う。
「感染の可能性を問題にするなら、遺体よりも生きている人間からの感染の方がはるかに
被害が広がります。感染者がせきをひとつするだけで空気中に無数の感染菌が飛び散って
しまう。仮に遺体が何らかの菌に感染して死亡したとしても、遺体から流れ出た体液や分
泌物に直接触れなければほとんど問題はありません」
国はなぜこんな対策を講じるのか。万が一の際に、国が何もしていなかったという国民
の批判をかわすためか。納棺師も映画のようにはいかないイヤ~な世の中だ。
(日刊ゲンダイ2009年4月8日掲載)
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