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余録:周産期医療の瀬戸際
「うす紅いろの小さな爪(つめ)/こんなに可愛い貝がらが/どこかの海辺に落ちていたらば
/おしえてください/光る産毛 柔かな髪/こんなに優雅な青草が
/はえている野原があったら/そこはきっと神さまの庭です」。新川和江さんの詩「赤ちゃんに寄す」の一部だ
▲小さな命をこの世に迎えた母の喜びはこう結ばれている。「吾子(あこ)よ/おまえを抱きしめて/
<わたしが生んだ!>/とつぶやく時--/世界じゅうの果物たちが/いちどきに実る/熟した豆が/
いちどきにはぜる/この充実感/この幸福(しあわせ)」
▲人の世の続く限り世界中の果物や豆の祝福を受ける母のつぶやきも絶えることはない。
そう誰もが疑わずにいる。それなのに、母親が安心して赤ちゃんを産める場所、施設が
どんどんこの世から消えていってしまうのはどうしたことだろう
▲なかでも危険なケースに24時間対応できる出産の「最後のとりで」とされる
総合周産期母子医療センターである。だが産科施設として著名な東京の愛育病院が、
産科医の不足からセンターの指定を返上すると都に申し入れていたというのだ
▲病院の申し入れの背景には、労働基準監督署から受けた夜間の医師の超過勤務の是正勧告があった。
医師確保ができぬため現在の医療を維持したままでの是正は不可能という病院側は、今後、
都との協議を通し返上か継続か決めるという
▲他のセンターでも医師不足が恒常化する今日である。愛育病院の例は、がけっぷちに立つ
全国の周産期医療の一端にすぎぬようだ。赤ちゃんをこの世に迎えるのに力を尽くさない社会が、
神さまの庭から運ばれてくる喜びや希望も乏しい社会になるのが怖い。
p://mainichi.jp/select/opinion/yoroku/news/20090327k0000m070143000c.html