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・両親は帰国し、中一の娘だけ日本に残る…。不法滞在のフィリピン人家族の問題は、それで
解決したわけではない。両親が帰国しても、日本でいずれ同居できる方策を国は模索すべきだ。
確かにカルデロン・のり子さんの両親は偽造旅券で入国した。母親の不法滞在が発覚し執行猶予付きの
有罪判決を受けた。強制退去の取り消し処分を求める訴訟を起こしたものの、昨年九月に最高裁で
国外退去処分が確定した。
しかし、のり子さんは日本生まれの日本育ち。埼玉の中学に通う少女である。日本語しか話せない。
フィリピンに行ったこともない。日本の社会にも、学校生活にもなじんでいる。
法務省がのり子さんに在留特別許可を出したのは、そうした事情に配慮したからだ。
両親についても、原則的に五年間は再入国できないが、短期の再入国を認める方針だ。
両親は来月帰国すると、既に入国管理局に伝えた。問題はそれからだ。のり子さんは親類とともに
日本で生活し、学業を続けるが、親子に長く離れ離れの暮らしを続けさせてよいものだろうか。娘と会うため、
両親にフィリピンと日本の間の往復をずっと繰り返せというのだろうか。
両親が帰国しても、「一緒に日本で生活したい」という家族の願いをかなえるべく、国は継続的に力を
尽くすべきである。両親はこれまでまじめに働き、長期間、日本社会にも受け入れられていたのだ。
二万人もの人々らから、一家残留を求める署名があり、市議会でも同趣旨の意見書を採択した点にも
留意してほしい。日本が批准した国連の「子どもの権利条約」では、意思に反して、児童が父母から
分離されないことを明記している。いったん両親が帰国したら、違法状態は解消する。両親は法に
従うのだ。やがて再び来日するだろう。
その後も短期在留を繰り返すのは、家族の結び付きの点からも経済的にも、あまりに不自然だ。
国際化時代にもそぐわない。両親に長期滞在を認め、いずれ「定住者」の在留資格を与える方策を
国は真摯に探るべきだ。晴れ晴れと日本で暮らす道筋をつくることを望む。それが人道であろう。(一部略)
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