09/03/15 20:35:32 vUoM5CZt0
「いいか、これから俺は30分間気絶するからな。絶対に逃げるなよ。」と
看守の西村は言い放ち収監所の門の脇のベンチに寝転がった。風はない。
西村の体に桜の花びらが降っている。暖かな日だまりで昼寝でもする気
なのだろうか?
誰かの視線を感じ、振り返ると、惜しみなく散らす花片の向こうに、門の外に
ノリコと妻が立っている。側に止められたタクシーの橙が点滅する音がここまで
聞こえるようだった。私は逃げてもいいのか?門の外に一歩踏み出すと、
「パパ!」とノリコと妻が仔犬のように私の胸の中に飛び込んできた。How great
thou art! どうやら私は許されたようだ。 [ カルデロン・ノリコ物語 完 ]