10/07/05 23:53:46.83 MW24Cwh2
『せんずり』
落語に、『蔵前駕籠』というのが御座いますが、あの蔵前通りと申しますと、昔は日本橋の方から、吉原へ行
く時に、あそこの所を通ったものでありまして、たいてい駕籠で参ります。
駕籠にのるといっても、別に吉原のゆきかえりの客ばかりじゃぁない。お大名のお姫さまだって乗って通ります
職人甲「え、どうでぇ、あそこぉ駕籠でゆくなぁ、どこのお姫さんだろうなぁ?良い女じゃねぇか」
職人乙「ウン、いい女だ。あぁ言うお姫様と、おりゃぁ一遍でいい、やってみてぇもんだ、なぁ?」
職人甲「なにぉう?ズウズウしいこと言うねぇ。てめぇなんざぁ、お姫様どころか、夜鷹でもすぎらぁ、せん
ずりでもかきやがれ!」
大きな声で、勝手な事を言っている。こいつをお姫様が乗り物の中で聞いちゃってねぇ、お屋敷へお戻りにな
って、お供の老女を呼んで訊く。
「今日、蔵前の町人どもが、せんずりをかけと言いおったが、アレはどういうことじゃな?」
さぁ、これにゃぁ老女も弱っちゃった。本当の事を言う訳にはいかないし、黙ってる訳にもゆかない。
「はい、それは定めし……えー、くたびれたであろうから、次へ下がって休憩をいたせ……と言うような意味
でございましょう……」
「あぁ、左様か…」
お姫様は納得いたします。
そこへ、国元から国家老が江戸へ出府して参りまして、お姫様にご挨拶をする。
「お姫様に於きましては、御機嫌、おン麗しく、恐悦至極に存じ奉りまする…」
「遠路の所、遥々ご苦労であった。爺、次へ下がって、アー、せんずりをかけ!」