10/06/20 12:07:13.94 DJ2PYY6x
夏に入る前、葉山にあったサマーハウスの準備にやってきた英子が、ついでに逗子の竜哉の家を訪れた時、彼は英子をヨットに誘った。
夕方舟から上った彼女が、もう東京に帰るのは面倒だから今夜は葉山に泊ると言うので、彼は英子を自宅に連れ戻すと一緒に食事を取り風呂をすすめた。
湯上りの彼女を庭に建てられた自分の離れに案内し、「僕もやっぱり風呂に入って来らあ。悪いけど一寸待ってて。どうせ今夜は良いんだろ」
(中略)
風呂から出て体一杯に水を浴びながら竜哉は、この時始めて英子に対する心を決めた。
裸の上半身にタオルをかけ、離れに上ると彼は障子の外から声を掛けた。
「英子さん」
部屋の英子がこちらを向いた気配に、彼は勃起した陰茎を外から障子に突きたてた。
障子は乾いた音をたてて破れ、それを見た英子は読んでいた本を力一杯障子にぶつけたのだ。
本は見事、的に当って畳に落ちた。
その瞬間、竜哉は体中が引き締まるような快感を感じた。
彼は今、リングで感じるあのギラギラした、抵抗される人間の喜びを味わったのだ。
彼はそのまま障子を明けて中に入った。(以下省略)
(石原慎太郎 『太陽の季節』 (新潮文庫) より)