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『えん罪マット死事件 濡れた遺体の謎』を読んで
９３年１月１３日２０時１０分頃、山形県新庄市立明倫中学校の体育館の用具室内で、男子中学生
Y君が巻いて立ててあったマットの中心空洞に逆さまに入って死亡していたのが発見されたのが
「山形マット死事件」である。司法解剖では「胸部圧迫による窒息死」「自他為の別は不明」とされた。
翌日には「イジメ」と発表され、捜査の結果、主犯格として連行されたＡが自白、その自白でＢ、Ｃが否認のまま逮捕、
１４歳未満のＤ、Ｅ、Ｆ、Ｇの４人が補導された。その後、Ａ、Ｂ、Ｃは少年審判でアリバイを主張して否認、
９３年８月、家裁で不処分（無罪）が確定した。Ｄ、Ｅ、Ｆも児童相談所送致後に否認（その後Ｇも否認）したため、
相談所は家裁に逆送致したが家裁はアリバイを否定し、初等少年院と教護院に収容した。
Ｄ、Ｅ、Ｆは高裁、最高裁に抗告したが自白が信用され、３人の処分が決定。仙台高裁はその判決理由の中で、
すでに無罪が確定したＡ、Ｂ、Ｃについても関与を示唆する異例の付言をした。
その後、Ｄ、Ｅ、Ｆの３人は保護処分取消（再審）を求め、Ｇも行政処分取消確認を求め最高裁まで闘ったが、
何れも棄却され処分（有罪）が決定した。
被害者Ｙ君の遺族は９５年、無罪が「確定した３人」を含む７人等に、損害賠償請求の民事裁判を起こした。
山形地裁は０２年３月「自白の信用性を肯定することは出来ない」「本件の事件性すら認定することができない」と、
７人を事実上の無罪とした。
しかし、この控訴審で仙台高裁は“Ｙ君の自過失か否かの確定は出来ない”としながら、「複数の者が暴力をふるい、
力ずくで押し入れた可能性が高い」と少年審判（刑事）で、何と「無罪が確定」している３人を含む７人全員に５７６０万円の
賠償支払いを命じた。７人は上告したが棄却された。以上が法的経過である。
唯一の目撃証言をした少年も公判で、「イジメは見ていない。（警察から）ぼくが犯人にされそうだからウソをついた」と証言し、
目撃を否定している。また、当初、７人がＹ君をいじめていたと証言した４人のうち３人も、その後「マット室前の取り囲みは
見ていない」と否定証言をしている。
（続く）