09/09/21 23:39:03.38 3xWxWoKl
だが、神よ、魔王の牙より私を護りまた救いたまえ! 私の打った音の反響が
鎮まるか鎮まらぬかに、その墓のなかから一つの声が私に答えたのであった!
―初めは、子供の啜り泣きのように、なにかで包まれたような、きれぎれな叫び声
であったが、それから急に高まって、まったく異様な、人間のものではない、一つの長い、
高い、連続した金切声となり、―地獄に墜(お)ちてもだえ苦しむ者と、地獄に墜(おと)し
て喜ぶ悪魔との咽喉から一緒になって、ただ地獄からだけ聞えてくるものと思われる
ような、なかば恐怖の、なかば勝利の、号泣―慟哭するような悲鳴―となった。
私自身の気持は語るも愚かである。気が遠くなって、私は反対の側の壁へとよろめいた。
一瞬間、階段の上にいた一行は、極度の恐怖と畏懼とのために、じっと立ち止った。
次の瞬間には、幾本かの逞しい腕が壁をせっせとくずしていた。壁はそっくり落ちた。
もうひどく腐爛して血魂が固まりついている死骸が、そこにいた人々の眼前にすっくと立った。
その頭の上に、赤い口を大きくあけ、爛々たる片眼を光らせて、あのいまわしい獣が
坐っていた。そいつの奸策が私をおびきこんで人殺しをさせ、そいつのたてた声が
私を絞刑吏に引渡したのだ。その怪物を私はその墓のなかへ塗りこめておいたのだった!