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ローマ人はイタリア半島を長靴みたいな形と知っていたのに、中世のひとって。。
■深い読みで見える人間の営み
地図は目的地に正しく行くために人類が発明した道具の傑作であるが、その歴史は文字の歴史よりも古いという。
太平洋の小島の、木の枝と貝殻で作った素朴な地図などを見ると、確かに地図は文字より古いのかもしれない。
本書は、世界の各大陸に残る地図を分析し、その存在理由や科学的思考の発展の歴史的展開を追ったものである。
その特徴は、地図の社会的記録といった側面に焦点を当てていることである。
人々、社会、文化、歴史をキーワードに、一枚の地図に分け入れば、
そこから作成者の目的、人々の生活や活動範囲、夢や世界観などさまざまなものが見えてくる。
この作業は議会図書館という資料の宝庫の中での仕事だけに、その読みの広さ、深さは尋常ではなく、さらには大胆な解釈が読者を魅了する。
かくして、有名なプトレマイオスの地図の背後に、エラストテネスの考案した経緯線、ヒッパルコスが築き上げた三角法、
さらには、地球が球体であると認識していたピュタゴラスなど古代ギリシャ人の知恵を読み取るばかりでなく、
後にローマがこの地図によってヨーロッパ世界の輪郭をとらえ、次々に隣国を征服して自らの覇権を拡大していった事実を読み取る。
一方、中世の代表的な地図ヘレフォードの「マッパ・ムンディ」は地理学的な無知と迷信の産物ではなく、
キリスト教の教えを図式化することによって字の読めない信徒に聖書の世界をわかりやすく視覚化したものであったと喝破する。
ことほど左様に、地図を材料にして、その時代、社会、文化など人間の営みを自由に読み取るのが本書の最大の魅力で、
地理や歴史に関心のある人には必読の書である。(ヴィンセント・ヴァーガ、アメリカ議会図書館著、川成洋ほか訳/東洋書林・7875円)
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