【天声人語】「ある朝日に目覚めたら…叩かれていた」at NEWS
【天声人語】「ある朝日に目覚めたら…叩かれていた」 - 暇つぶし2ch1: オダマキ(京都府)
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2009年4月21日(火)付

 「情熱の詩人」で知られる英国のバイロンは1812年、24歳のときに『貴公子ハロルドの巡礼』を出版した。
ギリシャなどを巡って書いた長編詩はたちまち大評判となり、あの名ぜりふが吐かれることになる。
「ある朝目覚めたら、有名になっていた」

▼その詩人の国から、せりふを地でいく話題が届いた。スターを発掘するテレビ番組に出た無名の女性が、
インターネットの動画サイトで一躍、時の人になった。少々太めの「おばさん」の見事な美声がいま、世界を
駆け巡っている

▼スーザン・ボイルさん(47)で、教会のボランティアだという。動画を見ると、彼女は最初、野暮(やぼ)ったい姿で
登場して会場の失笑を買う。だがミュージカル「レ・ミゼラブル」の中の曲を歌い出すや、審査員は感嘆し、観衆は
熱狂に包まれていく

▼小紙の記事によれば、動画はこれまでに、世界で5千万回近く視聴されたそうだ。あの「ブッシュ大統領が
靴を投げられた場面」の約3300万回を軽く抜いて、まだまだ増える勢いらしい

▼バイロンの名声を決定づけた本の売れ行きは、出版3日で500部、3週間で5千部だったという。
洛陽ならぬ「ロンドンの紙価を高めた」時代から、国境のないネット時代へ。詩人と歌姫をめぐる数字のはざまに、
200年の時の流れを見る

▼張りめぐらされた網の中でいま、人はたやすく名声も得れば、たやすく忘れられ、時折たやすく汚名を着せられもする。
「ある朝目覚めたら……」の驚きは、幸であれ不幸であれバイロンの時代よりずっと身近である。

朝日新聞社
URLリンク(www.asahi.com)


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