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支局長からの手紙:イブの日 /京都
クリスマスイブの日に元タレントの飯島愛さん(36)の死亡が伝わり、驚きました。記憶があいまい
ですが、彼女がテレビに出始めて間もない93年ごろに毎日新聞大阪本社内で取材したことがあります。
若くて可愛いタレント取材などほとんどしたことが無かったので、あれこれ質問を準備し、わくわくして
その日を迎えました。
ところが、お会いしてすぐにマネジャーから手渡されたプロフィルを見て、「あれっ?」と思いました。
彼女の経歴がテレビデビューからしか書かれていなかったからです。当時の視聴者の誰もが知っていた
わけではないでしょうが、テレビタレントになる前から成人向けビデオ作品に出ていたことは知られて
いたことでした。
その点を確認するとマネジャーは「以前の事務所時代のことは知りません。彼女はテレビ出演をもってデビューしたのです」と
言い切りました。「そんなことを言われてもデビューを偽っては書けない」などと、楽しみにしていた
飯島さんの取材はそっちのけでマネジャーとのやりとりが延々と続きました。その間、彼女は困った
表情を見せるわけでもなく、私たち2人のやりとりには全く無関心の表情だったことが印象的でした。
とりあえず型通りの取材を終え、担当デスクに相談すると「うそを書く必要はない」ということで記事
は出ませんでした。私が記事を書くまでもなく彼女は人気タレントになりました。
ご存じのように彼女はその後、ビデオ出演についても赤裸々に告白した著作を発表しました。このとき、
「ようやく過去を語れる自由を得たのだろうか」と思う一方、「以前は過去を隠すように言われ、今度は
さらけ出すように事務所から言われたのだろうか」という感じもしました。だからこそ人気絶頂時の昨年
3月、芸能界を引退したとき、「ああこれで本当の自由を得たのだろうな」と想像しました。そんな自由
な時間も早すぎる死によって終止符が打たれました。彼女の意思による再登板がなくなり本当に残念です。