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長塚節 『土』 第四章
小作人勘次の女房お品が病死して、葬儀の手伝いに集まった村人が、
日頃めったに口にできない白いコメの飯を貪り食った。
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“それでも切昆布(きりこぶ)と鹿尾菜(ひじき)と油揚(あぶらげ)と豆腐との外は
百姓の手で作つたものばかりで料理された。
皿には細かく刻んで鹽(しほ)で揉(も)んだ大根と人參との膾(なます)がちよつぽりと乘せられた。
さういふ残物と冷たく成つた豆腐汁とをつゝいても麥(むぎ)の交らぬ飯が
其の口には此の上もない滋味(じみ)なので、
女房等は其の強健で且(かつ)擴大(くわくだい)された胃の容(い)れる限りは
口が之を貪(むさぼ)つて止まないのである。”
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