08/03/15 23:03:48 heoC0nsR
『樹を植える日ノ本家』
つぼみがふくらんできた庭の桜の木を見ながらパパが言いました。
「さくら、この桜はニッテイおじいさんが植えてくれたものだよ」
そこにママも話に加わります。
「おじいさんが植えたときにはほんとうに小さな苗木だったのに、いつのまにこんなに大きくなって」
「でも、おじいさんは自分が植えた木がこんなに大きく育ったのを見る前に亡くなってしまったのね」
ニホンちゃんがそう言うと、パパは感慨深げに言いました。
「そうだね。けれどおじいさんは、ひいおじいさんやさらにその親たちの植えてくれた花を眺めていたのだし、
そんなご先祖様たちはさらにそのまたご先祖様の植えた花を見ていたんだよ。この家では代々みんなが
そうしてきたんだ」
「そうかあ、いつの人も自分のいなくなった後のためにずっとずっと植え続けてくれたんだね」
そんな話をしているとみんなは少し感動して、なんとなくしんみりした気持ちになってしまいました。
でもそんな気分をぶち壊すかのように、パパは別の話題を持ち出します。
「しかしどうも気分が悪いな。この妙な黄色い霞は」
パパが空を見上げて顔をしかめると、ママも肩をすくめました。
「チューゴ家のほうから飛んできた砂のせいね。洗濯物が汚れて困るわ」