07/01/17 21:42:31 7TyWbg8Q
元来農村の暮らしと言うものは、日常的に顔を合わせるのは限られた共同体の成員のみなので、円滑な人間関係は
顔見知り同士だけで成立すればよく、外部の人間は基本的に他者として、潜在的に敵として認識されている。
また、人口密度も低いため、人込みは存在せず、道で突然立ち止まろうと誰に迷惑をかけるわけでもない。
一方都市の生活というものは、毎日膨大な数の人間のなかで営まれるものであって、生涯二度と会わないであろう無数
の他人とも円滑な人間関係を維持することが必要となる。
たとえば江戸のような歴史の浅い都市でも、そのためのノウハウが蓄積されていたのだが、明治以降、とくに戦後は
都市に流入する人口があまりにも多く、新住民と旧住民の棲み分けが起こった結果、そうしたノウハウが新規住民に
伝達されることなくほとんど喪われてしまった。
一歩自分の家から出れば、そこは公共空間であり、常に他者の動向を意識しながら過ごさねばならないという常識は、
人口過密な都市において、お互いに気持ちよく暮らすための必須の知恵だったのだが、もはや歴史の彼方へ消えようと
しているようだ。