06/07/05 05:16:47
鼻ぴょんのあの鷲鼻と云えば、練馬で知らない者はない。
長さは五六寸あって上唇の上から顎の下まで下っている。
形は元も先も同じように太い。
いわば細長いフランクフルトのような物が、ぶらりと顔のまん中からぶら下っているのである。
26歳を過ぎた鼻ぴょんは、生まれた時から、歯科助手の職にのぼったった今日まで、内心では始終この鼻を苦に病んで来た。
勿論表面では、今でもさほど気にならないような顔をしてすましている。
それよりむしろ、見栄っ張りなので自分で鼻を気にしていると云う事を人に知られるのが嫌だったからである。
鼻ぴょんは日常の談話の中に、鼻と云う語が出て来るのを何よりも恐れていた。