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「かわら版 第205号(2005.8.15 発行)亜弓の朱印帳16」全文4
同時に、亜弓には、これまで不思議に思っていたことが全て理解出来てきたの
でした。代表さんが昭和史や戦争について非常に詳しいこと、代表さんが何度も
遺骨収集事業に参加されていること、代表さんの知人に海軍関係者がたくさんお
られること、そして教育委員会をはじめとする行政機関のOBたちがきわめて好意
的でしかも秘仏見学にいろいろと便宜を図ってくださったこと、そういう海軍関係者
たちが「古佛へのまなざし」の九州旅行や信州旅行などに援助をしてくださったこ
と、などがいっぺんに思い出されました。比叡山延暦寺の秘仏本尊だって、吉野
水分神社のご神体女神像だって見せてあげますぞ、とある元海軍中佐の老人が
笑って話していた理由も、なんとなく分かりかけてきたのでした。
代表さんのお祖父さんが、あの戦争を終わらせた一人だったのです。その功績
は、たぶん日本の歴史のなかで最も素晴らしいものなのではないでしょうか。代表
さんの心意気、誇り、信念は、おそらくお祖父さんのものを受け継いでいるに違い
ありません。
「お嬢さん方、我々帝国海軍の生き残りの老いぼれどもが、常にあんたらの団体
を支援し馳走させていただくのも、その為じゃ。全国の教育関係の古株はほとんど
海軍の出身だから話はすぐに通る。宗教関係者にも話は通る。あんたらが、今ま
であちこちの秘仏を開いてみせてもらったのも、この一事による。日本を存亡の
危機から救い、600万同胞を塗炭の苦しみから救った一人の軍人の存在は、公
には秘せられて全ての公文書には記載もない。じゃが国家の政治中枢に身をおい
た者なら、一度はその存在を聞かされとるはず。大元帥天皇陛下が、最も信頼し
終戦への希望を託した人物の部下じゃからな。名前こそ歴史には残らぬが、その
業績は至高のものであった。いまの日本全国民は、その方に感謝せねばならんわ
なあ。そしてあんたらの代表さんは、その孫じゃ」
老紳士は、そう言って、ワハハハと大笑いされました。桜井さんが注いだ酒を一
口飲み、ポツリと言いました。