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「わたし─は─しゃべる─IP データグラム─です」
グローリアはかなしそうにそれを見つめた。それはたしかにしゃべったけれども、声は
どこか奥のほうからきこえてくる。話しかけようにも顔がなかった。
グローリアは言った、「助けてもらえますか、IP データグラムさん?」
「わたしは─あなたを─助ける─ことが─できます」
「ありがとうございます、IP データグラムさん。CodeRed を見ませんでしたか?」
「CodeRed─とは─だれですか?」
「ワームですよ、IP データグラムさん。このくらいのサイズなんです。それで
とってもりっぱなの。ちゃんとヘッダがあるの。」
「ワ─ム?」
「はい、IP データグラムさん。あなたみたいなパケットですけど、もちろんしゃべれ
ません。それから、ほんものの HTTP リクエストのようなかっこうをしています」
「パケット─わたし─みたいな?」
これに対してしゃべる IP データグラムは、なにやらわけのわからぬことを早口に
まくしたて、ときおり突拍子もない音をはさんだだけだった。