16/06/06 20:48:06.16 jPIckLl00.net
「ななななななな何やってるんだよ父さん!」
「あ…いやこれはその…」
「いくら母さんとイチャイチャできないからって僕となんて!駄目だよ!」
あー最悪だ……
だが、だとしても!
「セイ、これは俺の、、、せめてもの罪滅ぼしなんだ」
「うるさい!最悪だよこんなの!ずっと尊敬していたのに…こんな……」
セイの目から涙が溢れる
「聞いてくれセイ」
「聞きたくないよ!出てってよもう」
涙が溢れ、目を手でこするセイ
俺は…俺は…
「すまないセイ」
「もういいよ早く出てって!」
「聞くんだ!」
俺の出せる限界の声量で叫ぶと、ジタバタするセイは静止した。
「俺は今まで世界を飛び回り…、お前のことはリンちゃんに任せっきりで、何もしてやれなかった
父親らしいことも、愛でることも、叱ることも、一緒に笑い合うことも…
だからこれは、申し訳ないと感じた俺の愛情表現、そしてこれまでの罪滅ぼしなんだ」
「父さん……?」
「セイ……わかってくれるか?」
「僕の方こそごめん。でも、やる前に言ってよね」
「それは悪かった」
「父さん、大好きだ……」
目を背け、照れながら気持ちをぶつけてくるセイ
「俺も、好きだよ」
その日、俺とセイは、一つになった
もう離さない、誰にも渡さない。
セイは、俺だけのものだ
完
151:通常の名無しさんの3倍
16/06/08 04:43:50.32 BkIz5SXz0.net
こりゃワッチョイ導入だわ・・・。
152:通常の名無しさんの3倍
16/06/08 14:52:18.24 jv4jR0iX0.net
これ別の場所にも貼ってたな
こんな駄文、マジで目障りだわ
153:通常の名無しさんの3倍
16/06/09 06:51:15.70 lWDdAbon0.net
投下作品には「つまらん」と言わず一行でも良いのでアドバイスや感想レスを付けて下さい。
154:通常の名無しさんの3倍
16/06/09 07:03:25.36 UQnzw84J0.net
「作品」なら付けるよ
155:通常の名無しさんの3倍
16/06/09 10:21:42.21 HjM0dpT70.net
161 名前:通常の名無しさんの3倍 :2016/06/09(木) 07:03:57.33 ID:lWDdAbon0
軍くつのバルツァーつまらんわ
旧式のマスケット銃から軍国式ライフルに装備を変えただけで戦力アップとかありえん
普通に考えて兵士にまで新型の武装を施す必要がなく
一騎当千の指揮官のみに新型ライフル与えて雑魚は囮の横列陣形でいいだろ
そうだねこっちにしとくか?
156:通常の名無しさんの3倍
16/06/09 15:46:34.94 4EUZIKFd0.net
↓のスレのか、それにしてもここまで馬鹿を晒せるとは…
スレリンク(shar板:161番)
157:通常の名無しさんの3倍
16/06/09 23:16:16.92 4EUZIKFd0.net
URLリンク(hissi.org)
スレリンク(shar板:169-170番)
169 :通常の名無しさんの3倍[]:2016/06/09(木) 19:27:25.19 ID:lWDdAbon0
URLリンク(comic-twitter.c.blog.so-net.ne.jp)
これ描いてる奴絶対戦闘ってもんを理解してないだろ
170 :通常の名無しさんの3倍[]:2016/06/09(木) 19:33:07.85 ID:lWDdAbon0
URLリンク(cdn-ak.f.st-hatena.com)
しかもこいつ、アホ丸出しだろ
小学生でも50mを数秒で移動するぞ?
100mでも20秒を軽く切るだろ
なのに100m1分ってwww
あwwwたwwっwまwwwwわっるwwwwwwww
スレリンク(shar板:185番)
185 :通常の名無しさんの3倍[]:2016/06/09(木) 22:16:24.28 ID:lWDdAbon0
つまり連結式ライフル作れよって話だな
スレリンク(shar板:188番)
188 :通常の名無しさんの3倍[]:2016/06/09(木) 23:07:58.29 ID:lWDdAbon0
ロロナのグリフォンは種のグリフォンのパクリだろ
158:通常の名無しさんの3倍
16/06/09 23:38:38.82 CynlMbX90.net
そういうのは他所でやってくれ
迷惑だよ
159:通常の名無しさんの3倍
16/06/10 14:53:08.56 x9JWosFo0.net
荒らしはともかく構う奴はなんなの?
>>1に荒らしはスルーって書いてるのに
160:通常の名無しさんの3倍
16/06/10 15:54:15.02 aGuvTNpA0.net
未だに前スレ埋まってないのってなんなの?
もう何度も話題に上がってるのに
新人職人がSSを書いてみる 32ページ目
スレリンク(shar板)
161:木星少年
16/06/14 14:12:49.33 An3MYd1X0.net
そっちは破棄しなって
162:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/06/24 20:43:00.20 moAwnMSl0.net
投下開始
「自動小銃が欲しい!三八じゃだめだ。自動小銃があったら、メリケン野郎に負けるもんか」ガダルカナル
163:戦のある日本兵 最期の言葉 連合兵戦記 第6章 猛攻 グゥルに乗ったノーマのシグーは、途中までは地を這う様な低空飛行で、 市内が見えてきてからは少し高度を上昇させて、敵部隊の潜伏する放棄された都市に接近した。 都市から少し離れた場所には後退してきたウーアマン中隊の姿が確認できた。 先程まで激しい戦闘が繰り広げられていた市内は、銃声一つしない静寂を保っていた。 だが、市内の建築物に開いた大穴や各所からあがる黒煙は、 そこが先程まで戦場であったことを雄弁に見る者に教えていた。 また内部には、孤立しているザフト部隊がいたが、 それらを地球連合軍は殲滅することなく、放置しているようであった。 並みの部隊なら孤立している部隊を運用可能な戦力の全力をもって 叩き潰すところだろうが、ノーマ達ザフト軍と戦っているこの部隊の指揮官は、 孤立させた敵部隊の戦力を殲滅せず、最小限の戦力で監視、包囲することに留めて 敵の支援砲撃や空爆を防ぐための盾として利用していた。 相手の指揮官の有能さに彼女は思わず舌を巻いた。 「…」 ノーマはシグーを市内へと向かわせた。 「酷いものね…」 搭乗者たる金髪の美少女は、自機の正面モニターに映る光景を一瞥して言った。 旧世紀に第二次世界大戦を引き起こし、ヨーロッパ全土を地獄に変えたナチス・ドイツの独裁者 アドルフ・ヒトラーと その腹心の部下で公私ともに交流のあった建築家 軍需大臣 アルベルト・シュペーアは、古代ギリシャ・ローマ建築の様に第三帝国が滅亡した遥か未来に廃墟となった後 も建造物が美しい姿を留めていられるように、廃墟価値理論というものを考え、 それをナチス政権の建設計画での建築物設計に適用した。 今のノーマには、それが痛いほど理解できた。 ギリシャの古代文明の栄華を残すパルテノン神殿やジャングルに呑み込まれても尚、美しさを保つ カンボジアのアンコール・ワットが、ロシア正教の伝説にある、死してなお芳香を放ち、不朽を保つ聖人の遺体とするならば、 眼の前の放棄された都市は、雑菌と外気に蝕まれ、悪臭を放つ醜い腐乱死体と形容出来た。 目の前の廃墟が、恐らく身体的、精神衛生的にも人の居住には適さないであろうことは明白であった。 ノーマが都市内に展開する地球連合部隊が大規模ではないと推測したのも、都市のインフラが大量の人員の生活に耐えうる状態ではないことを知っていたからである。 墓標の如く聳え立つ灰色の高層建築の中へとグゥルに乗ったノーマのシグーが侵入を図った。 「(どこに敵がいるの…)」 「!!」 彼女が周囲に視線を巡らせようとした次の瞬間、ミサイルアラートがコックピットに響き渡った。
164:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/06/24 20:47:38.42 moAwnMSl0.net
「たった1機で突っ込んでくるとは大した自信の持ち主だ!大歓迎してやれ!ミサイル班、引き寄せてから撃て」
ゲーレンの部隊は、ノーマのシグーの直�
165:iルート上の廃墟に展開していた。 この部隊は、ウーアマン中隊が市内に突入する少し前、航空攻撃を仕掛ける為に先行して低空を進撃していた ディン6機を有する対地攻撃部隊エレノア襲撃中隊を、ディン1機を除く全機撃墜という大戦果を挙げていた。 指揮官であるゲーレンはたった1機で向かって来るそのシグーを指揮下の部隊の火力を出来る限り叩き付けて撃破するつもりであった。 「全ミサイル斑ミサイル発射!」 指揮官を務めるゲーレン中尉の声が有線通信機を通じて、各所に潜伏していたミサイル斑に伝達された。 そしてミサイル斑は、命令を実行した。 彼らの部隊は、ミサイルの多くを航空兵力対策に温存していた。 その為ミサイルは、ウーアマン中隊との戦闘後も半数以上が発射可能であった。 廃墟の各地に隠蔽配置されていたミサイル陣地から一斉に、 正面から向かって来るたった1機のシグーに向けて数十発のミサイルが発射された。 その中には、対空用ではなく、装甲車両用のミサイルもあった。 白煙を上げて蛇の群れの如くシグーに向かうミサイル群…一見すると1機のモビルスーツを標的にしているものとしては過剰に見える。 しかしこれはゲーレン中尉とその部下が、航空兵力の脅威を正しく認識していたからである。 ノーマのシグーを包み込むように迫るミサイル、全弾を受ければ、シグーと言えど、 先程匍匐飛行中にMLRSのロケット弾の雨を受けたエレノア襲撃中隊の所属機の二の舞になるであろうことは間違いなかった。 「!」 ノーマは、自機が確実に回避出来ないミサイルのみを重突撃機銃で撃墜する。 ノーマのシグーは、ビルが森林の木々の様に林立する市内に突入した。
166:通常の名無しさんの3倍
16/06/24 20:57:46.56 SmrupqlM0.net
④
167:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/06/24 21:01:40.09 moAwnMSl0.net
「なんだと!」
ゲーレンは思わず叫んだ。彼の予想では、グゥルに乗ったままでの市内への突入は、危険だと判断してグゥルを放棄して地上に着地するか、
ミサイルを迎撃後、高度を上げると考えていたのである。
そしてシグーのパイロットが前者の選択を取った場合は、少し後方にいる機甲歩兵部隊に援護要請を出し、
先程撃破してきたザフトの部隊やモビルスーツと同様に市内でじっくり料理してやるつもりだった。
逆に後者の選択、高度を上げる方を選択した場合は、貴重な航空機用の対空ミサイルやビルに仕掛けられている無人ミサイル陣地の集中攻撃で叩く、
というのが彼の作戦だったのである。
「早すぎる!」
「なんて奴だ!」
ミサイル斑の兵士が、驚愕の余り叫んだ。
ビルの合間から次々とミサイルが、ノーマのシグーに向けて放たれる。
グゥルに乗ったシグーは、ビルの間という航空兵器の動きが制限される状況でも機体の動きを傾けたり、
シールドガトリングの弾幕でミサイルを撃墜するといった方法で突破する。
少しでも操作を間違えれば、周囲の廃墟に衝突して大破することは間違い無かった。
「撤収!ここに残っててもいい的だ。」
一部の陣地は、人員が恐怖の余り逃亡した。
「貴様らは逃げろ!早くしろ!」
第21号陣地と呼称されていたその陣地の班長を務める下士官は、
同じ陣地にいる部下、その年齢と容貌は、兵士というよりも学生に近い…を、銃を振りかざして追い出すと自分だけで陣地内のランチャーを操作した。
彼が覗くミサイルランチャーの赤外線誘導装置のモニターの向こうには、両腕の火器を熱で真っ赤に染めた鋼鉄の悪魔が戦友に暴威を振るっていた。
168:「食らえ!宇宙の化け物!」 陣地から対戦車ミサイルが発射されたのと同時に、シグーから放たれた砲弾数発が直撃した。 「わずかな間に…しかも傷一つつけられないだと!」 巧妙に市内に設営されていたミサイル陣地は、その殆どが壊滅していた。 残されていたのは、指揮官であるゲーレンの陣地のみだった…
169:通常の名無しさんの3倍
16/06/24 21:07:59.13 moAwnMSl0.net
ミスで一部の文章が飛んでしまいました申し訳ありません
「消えなさい!」
グゥルの下部に搭載された対地ミサイルが発射され、ノーマのシグーの下に存在していたミサイル陣地の1つに着弾した。
対地ミサイルのサーモバリック弾頭が炸裂し、オレンジ色の灼熱の炎が中にいた人員を瞬間的に黒焦げの炭化物に変換した。
火柱の様な弾頭の爆発を背後に、ノーマのシグーは更に激しい攻撃を叩き付ける。
「そこ!」ノーマがトリガーを引く。
シグーが、ミサイルの発射された方向に向け、シールドガトリングを連射した。
ガトリング掃射を受け、廃墟に潜伏していたミサイル陣地が3つ破壊された。
ノーマのシグーは、右手の重突撃機銃と左腕のシールドガトリング、両腕にマウントされた火器で、
順調に廃墟に設営されたミサイル陣地を撃破していった。
「撤収!ここに残っててもいい的だ。」
一部の陣地は、人員が恐怖の余り逃亡した。
「貴様らは逃げろ!早くしろ!」
第21号陣地と呼称されていたその陣地の班長を務める下士官は、同じ陣地にいる部下、その年齢と容貌は、兵士というよりも学生に近い…を、銃を振りかざして追い出すと自分だけで陣地内のランチャーを操作した。
彼がのぞくミサイルランチャーの赤外線誘導装置のモニターの向こうには、両腕の火器を熱で真っ赤に染めた鋼鉄の悪魔が戦友に暴威を振るっていた。
「食らえ!宇宙の化け物!」
陣地から対戦車ミサイルが発射されたのと同時に、シグーから放たれた砲弾数発が直撃した。
「わずかな間に…しかも傷一つつけられないだと!」
巧妙に市内に設営されていたミサイル陣地は、その殆どが壊滅していた。
残されていたのは、指揮官であるゲーレンの陣地のみだった…
「化け物かよ!」
自らのいる建物へと向かって来るシグーを見据え、彼は、肩に背負う対戦車ミサイルのトリガーに指をかけた。
「遅い!」
それよりも早く、シグーの右腕の重突撃機銃が火を噴いた。重突撃機銃より発射された76mm弾が大気を引き裂く轟音が、彼が知覚した最後の音であった。
ゲーレンが指揮所としていたビルの12階のフロアの一つに着弾した76mm弾は、そこにいた人間達を纏めて吹き飛ばした。
辛うじて残っていた窓ガラスは、粉々に砕け、オレンジの爆光の中で、さながら夜の星の様に束の間の間、煌いた。
そこにいた者達は、死体すら残らなかった。
僅かに焦げたタンパク質が、建造物にこびり付いていたのみであった。
170:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/06/24 21:16:05.57 moAwnMSl0.net
同じ頃、地球連合側の指揮官であるハンスは部下の機甲兵部隊と共に着用しているパワードスーツ ゴライアスの補給作業が完了した時であった。
パワードスーツは、一般的に歩兵同様に余り電力を消費しないと見られているが、それでも電力で動いている。
パワードスーツを動かすモーター、パワードスーツの繊細な動きを可能とする、全身に張り巡らされた人工筋肉、
装着者の健康状態を一定に保ち、内部の環境を快適な状態にしておくことで継戦時間を延ばす生命維持装置やそしてそれらに装着者の意志を伝達する操作機器も電力を消費する。
ちなみにパワードスーツがエネルギー切れになった場合は、自動的に着脱モードに移行して直ぐに脱げるようになっている。
災害救助や後方での建設作業等では、部隊に所属する機甲兵の一部のパワードスーツに小型バッテリーを背負わせたタンカー役にすることが出来たが、
戦場でそれをやるのは無謀すぎた。
またパワードスーツを着用している人間の問題もある。
かつて再構築戦争期の〝最後の核〟の直後には、放射能汚染された地域でも活動可能なように鉛の板や放射能遮蔽装置等が装備され、装着者は、高温と生理的不快感に耐えることになるような
人間工学を鑑みないパワードスーツが試作されたこともあった。
それらは、運用時間が、2時間が限度であるということと鈍重さが問題視され、採用されることは無かった。
流石にゴライアスを含め、現在のパワードスーツの大半は、軍用、民間用問わず宇宙服に採用されている生命維持装置と同じものが搭載されている。
それによりスーツ内の着用者は、寒波吹き荒れるシベリアの様な極寒の大地でも、灼熱と砂嵐が吹き荒れる北アフリカの砂漠でも、蒸し暑いジャングルでも、毒ガス兵器や細菌兵器が散布され、死者の街と化した市街地でも、
全てのインフラが破壊された都市の様な場所でも快適な状態を維持して戦うことができる。
しかしそれでも数時間にわたって着用し続けるのには限度がある。
その為、こうして整備、補給の際には、着脱している兵士も少なくなかった。
ハンスは、補給作業が完了するまでの数分間、ヘルメットを外しただけで、カロリーバーとイオン飲料を間食として摂取する時も、着用し続けていた。
いつ敵が現れてもおかしくないからである。
幸いパワードスーツ ゴライアスのマニュピュレーターは、人間の生身の腕と遜色ないと言われる程の精密な動きとパワーの調節を可能にしていたので、
彼がカロリーバーを握りつぶすとかイオン飲料のプラスチック製容器を粉砕するといった事態は起こらなかった。
「ハンス大尉!」
通信部隊から報告が入った。その若い通信兵の声には狼狽と恐怖が感じられた。
171:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/06/24 21:23:26.88 moAwnMSl0.net
「市内に侵入したシグーはどうなった?」
部下と共に補給作業中だったハンスは、偵察隊からシグーが1機だけで突入してくるという報告と、その直後にゲーレン中尉の部隊が迎撃に出たという報告を受けていただけで、
その後の戦闘の結果は、まだ知らなかったのである。
敵を撃墜するのは、無理だろうが、短時間で撃破されることはまず無い…そう彼は考えていた。
だが、同時に彼は、戦場に絶対などというものは無いということを彼は知っていた。
そしてその考えの正しさは、今この時実証されたのである。
「…ゲーレン中尉の第1特別防空隊は戦力の過半数を喪失、ゲーレン中尉は戦死したとのことです。」
「…」
ヴォルフラム・ゲーレン中尉、大西洋連邦軍が残存部隊を再編してユーラシアの戦場で臨時編成した第1特別防空隊の指揮官となっていたこの男は、
整った顔立ちと目の覚めるような金髪が特徴的で、任務以外の時も、共に酒場に繰り出したり、トランプゲームを楽しんだこともある掛け替えのない戦友の一人であった。
そしてたった今、彼は、死者の列にその名を連ねた。
深い悲しみがハンスの心を一瞬支配した。しかし死者を弔うのは、戦いが終わってからである。
兵士として訓練を受けたハンスは、戦友を突如として喪失した悲しみに沈むよりも、戦友の敵を討つことを選択した。
「!!短期間にゲーレンの部隊を壊滅させるとは…奴はエースパイロットだな」
ハンスは直感した。この敵は、先程までとは違う、都市に仕掛けられたトラップや潜伏した歩兵等では対処できる相手ではないと…
172:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/06/24 21:34:05.37 moAwnMSl0.net
「そろそろ潮時かもしれんな…」
ハンスは、ゴライアスの正面モニターのタイマーの時刻を見ると、部隊の脚である輸送トラック部隊に撤退の準備を命じた。
これで、彼が撤退命令を下せば、いつでも脱出が出来るようになるはずであった。古今東西の歴史をひも解いても、戦争で最も損害を出すのは、撤退戦の時である。
このことは、歴史が記録される以前の石器時代の人骨からも判明していることであった。
いかに壊走ではなく、部隊を統制と戦闘能力を維持した状態で退却させるかは、部隊を率いる指揮官の優秀さに掛かっていた。
「どうしますか。隊長!」
「…〝トゥームストン〟でいく。まず、その為には、12地区に誘い
173:込む」 「…やってくれるな、ディエゴ曹長」 ディエゴ曹長の率いる機甲兵部隊は、中隊内では、指揮官であるハンスの部隊に匹敵する技量を持つ小隊であった。 「やってやりますよ!隊長殿!」 ディエゴ曹長は、笑顔で答える。 まるで、彼の好きなチームが出るベースボールの試合を観戦しに行くときの様に。 先程の戦闘で、市内の下水道を利用して郊外に展開していたザフト軍の車両部隊を襲撃、 大損害を与えて帰還した彼の機甲歩兵部隊は、ハンスの部隊とは別の地下の補給施設で補給作業を受け、それが完了したばかりであった。 ディエゴ曹長率いる機甲歩兵部隊と地球連合軍部隊は、防衛陣に入り込んだシグーを撃破すべく、行動を開始した。
174:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/06/24 21:36:24.52 moAwnMSl0.net
今日は此処までです。リアルではイギリスのEU離脱など我々の生活にも
ダメージが来る可能性があるヤバい出来事が起きてますが、なるべく速く投稿できるように
頑張りたいです。
では感想、アドバイスの方お願いします。
175:通常の名無しさんの3倍
16/06/24 23:57:34.41 K6M6n7kh0.net
投下乙です
MSは凄まじい兵器であり当時のザフトの恐ろしさがどれ程か窺わせるのは容易な事である
トラップの効果が見込めない強敵相手にどう撤退戦を繰り広げるか楽しみにしております
176:通常の名無しさんの3倍
16/06/26 08:47:31.17 vHLZzmbW0.net
投下乙
さぁ燃える展開きましたよコレ。
古来より様々なドラマを生んできた(撤退戦)というステージ
どんなドラマが生まれるのか非常に楽しみです。
177:通常の名無しさんの3倍
16/06/26 20:37:14.23 I9CieM2x0.net
投下乙
エースパイロットの操るモビルスーツの恐ろしさが分かる戦闘シーンでした
それと主人公が補給を受けているシーンも個人的にリアリティがあって良かったです
178:通常の名無しさんの3倍
16/06/27 19:20:11.48 m1SD9i870.net
軍くつのバルツァーつまらんわ
旧式のマスケット銃から軍国式ライフルに装備を変えただけで戦力アップとかありえん
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とノ 彡⌒ミ. |│\____\
/ 彡;゚;ё;゚;) || .| 三星 |
┌( つ つ___||/ ̄ ̄ ̄/
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(⌒::::::::::;;;;;:-=*=┃-=*=)←ウンコ臭いゴミガイジ豚 URLリンク(twitter.com)
};::::::::::::;:.::(;;*:.*::;):.:)←孤独死するだけの虚しい人生なのに他人に迷惑を掛け続ける最低最悪の生き物
(~;;;;('';:;;;:∴;;)3(;;:∴::)<今日も朝から床ウンチョブリブリ!アボジ、オモニ、片付けるニダあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!
\;;;;;ヽ:::::::::;;;;;;;;;;;;;;;:::;;ノ←いい歳して親のスネかじりの社会不適合者
\;;;;;ヽ;;::;;,;;,,,.;;::;,;ノー、←都市伝説レベルの屑
r―‐~こここここここ)' 々i←結婚どころか女も出来たことない生まれついての負け犬
! メ  ̄`. ´  ̄` .ノ←親からも粗大ゴミ扱いのうんこ製造機
.'- .ィ 吹上寝糞豚 「 ,←他人に迷惑を掛け続ける最低最悪の生き物
. | :。:: メ :。:: ! i←誰にも共感されないし必要ともされてない価値の無いリアルでもネットでも負け犬の社会のゴミ未満の存在
ノ # メ ヽ、←無能だから働けない発達障害者
, ' ヽ :::;;;;;;:::: , ' ヽ←触れる全てのものを不幸にする全ての元凶
(( .{ _.ト、 Y;;;;;Y # ,イ .} ))
'、 .>ト. ':;*;;. ' イノ ノ
' .,,_ ___ ノ-^-`、 ___.... - '
,l゙:.:.'i ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!
__. ,-'''"::;::;;:‘----,,,,、 ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!
,i´ :.:o。;゚;ё;゚;.:.:.:.:.:。゚。.:.`'.
゙''¬---―''''''゙゙゙''―-┘ URLリンク(i.imgur.com)(グロ注意)
( ^ω^)マジでいい加減殺処分されろやこのヒトモドキ
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179:通常の名無しさんの3倍
16/06/27 19:21:19.95 m1SD9i870.net
ロロナのグリフォンは種のグリフォンのパクリだろ
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とノ 彡⌒ミ. |│\____\
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(⌒::::::::::;;;;;:-=*=┃-=*=)←ウンコ臭いゴミガイジ豚 URLリンク(twitter.com)
};::::::::::::;:.::(;;*:.*::;):.:)←孤独死するだけの虚しい人生なのに他人に迷惑を掛け続ける最低最悪の生き物
(~;;;;('';:;;;:∴;;)3(;;:∴::)<今日も朝から床ウンチョブリブリ!アボジ、オモニ、片付けるニダあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!
\;;;;;ヽ:::::::::;;;;;;;;;;;;;;;:::;;ノ←いい歳して親のスネかじりの社会不適合者
\;;;;;ヽ;;::;;,;;,,,.;;::;,;ノー、←都市伝説レベルの屑
r―‐~こここここここ)' 々i←結婚どころか女も出来たことない生まれついての負け犬
! メ  ̄`. ´  ̄` .ノ←親からも粗大ゴミ扱いのうんこ製造機
.'- .ィ 吹上寝糞豚 「 ,←他人に迷惑を掛け続ける最低最悪の生き物
. | :。:: メ :。:: ! i←誰にも共感されないし必要ともされてない価値の無いリアルでもネットでも負け犬の社会のゴミ未満の存在
ノ # メ ヽ、←無能だから働けない発達障害者
, ' ヽ :::;;;;;;:::: , ' ヽ←触れる全てのものを不幸にする全ての元凶
(( .{ _.ト、 Y;;;;;Y # ,イ .} ))
'、 .>ト. ':;*;;. ' イノ ノ
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,i´ :.:o。;゚;ё;゚;.:.:.:.:.:。゚。.:.`'.
゙''¬---―''''''゙゙゙''―-┘ URLリンク(i.imgur.com)(グロ注意)
( ^ω^)マジでいい加減殺処分されろやこのヒトモドキ
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180:通常の名無しさんの3倍
16/08/20 10:43:35.19 lm03P6J50.net
URLリンク(hissi.org)
181:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/08/20 20:33:19.74 9NDEZKLo0.net
「!」
ノーマは、建物の影に潜伏していたゲーレン隊の残存である対空ミサイル車両を重突撃機銃で狙撃した。
その攻撃は、正確に対空ミサイル車両の車体側面を撃ち抜いた。
海外派遣時に輸送機での輸送を考慮に入れた設計による高機動化、軽量化によって
一般車両とほとんど変わらない重量と装甲だったその対空ミサイル車両は、木端微塵に吹き飛んだ。
「化け物め!」別の車両が対空ミサイルを発射した。
先程までは、指揮官であるゲーレン中尉の命令で、ミサイルを温存していた。
だが、指揮官以下部隊の大半が戦死し、敵が襲来しつつある状況ではそんなことを言っていられる状況ではなかった。
ミサイルが発射されるのを確認すると同時にノーマのシグーは即座に低空飛行に移行、砲撃で歪に変形したビルの影に隠れる。
「そこよっ」
ビルの影から飛び出すと同時に重突撃機銃を叩き込む。
対空ミサイル車両は、戦車をも撃ち砕く高速徹甲弾に車体をズタズタに引き裂かれて炎上した。
ゲーレン隊が保有していた対空ミサイル車両は、1両残さず、燃え盛るスクラップに変換された。
「食らえ!」
廃墟の影に隠れた歩兵が携帯型対空ミサイルを発射した。
「被弾した!」
ノーマは、咄嗟に回避しようとしたが、間に合わず、
ミサイルは、グゥルの左エンジンに命中した。
ミサイルはグゥルのエンジンに突き刺さると同時に弾頭を炸裂させ、燃料タンクに誘爆したグゥルは数秒で火球と化した。
ノーマのシグーは寸前でグゥルから飛び降り、ボロボロのコンクリートの地面に着地した。
「やった!」グゥルが爆散するのを見た若い兵士は、満面の笑みを浮かべて叫んだ。
「お返しよ。」
ノーマのシグーは、着地�
182:ニ同時に重突撃機銃を叩き込み、歩兵を吹き飛ばした。 地面に降り立ったシグーに廃墟からミサイルや砲弾が浴びせられた。 攻撃を行う地球連合部隊は、ディエゴ曹長率いる機甲歩兵部隊を中核としていた。 「食らえ!」ディエゴ曹長のゴライアスは、左手に握った20mmチェーンガンを乱射する。 だがシグーの装甲には、牽制にもならない。 「作戦通りにいくぞ!」 「「「「了解!」」」」 ディエゴ以下、ゴライアスを装着した機甲兵達は、決められた作戦通りに脚部のローラーを駆使して都市の奥へと撤退を開始した。 「引いていく…逃がさない!」それを見たノーマのシグーもそれを追う。
183:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/08/20 20:37:22.21 9NDEZKLo0.net
先程の戦闘で機甲兵部隊にモビルスーツを含むザフト部隊が苦しめられていることをノーマは認識していた…
だからこそ彼女は、あえてそれを追撃したのである。
推進剤を節約するため、ノーマのシグーは、スラスターを使わず走行することで追撃した。
対するゴライアスの数機は、白い煙幕を展開した。だが、シグーは、ディエゴ率いる機甲兵部隊を追撃した。
お互いに移動中の相手を銃撃することは無い。弾薬を無駄にしないためである。
廃墟の建物の間を駆け抜けるディエゴ曹長の機甲兵部隊のゴライアス6機とノーマのシグーは、都市の中心部の付近にまで到達していた。
その場所には、かつてのこの都市の中心部に隣接していたこともあって高層ビルが林立していた。
1年前には、多くの人々が中で労働していたのであろうそれらの高層建築物は、砲撃の影響によって荒廃し、
チーズの様に穴だらけになっていた。
「全機、身を低くしろ!」ディエゴがそういうと同時に、6機のゴライアスが姿勢を低くした。
「…」ノーマは、その動きを見て怪訝な表情をした。
次に彼女の眼に一瞬だが、進路上に、廃墟の間を横切る白い線の様な物が見えた。
「ワイヤー?」
ノーマは、その正体を即座に推測した。そして、敵の意図も……ノーマの優れた動体視力、判断力だけでなく、指揮官用として設計され、
ジンよりも高性能なシグーの高解像度のモノアイがなければ、彼女は、ワイヤートラップに気付くことは無かっただろう。
全長が約2~3mのゴライアスは、接触することは無い。だが約18mにも及ぶシグーの巨体では、腰の部分で接触することになる。
ノーマは、そのワイヤーは、ワイヤーに反応して爆弾が炸裂するタイプのトラップであると推測していた。もし無視して通過すれば、
ノーマのシグーは、爆弾の爆発に巻き込まれることになる。
「ワイヤートラップなんて単純な手で!」ノーマは、シグーを寸前でジャンプさせることで、
張り巡らされていたワイヤーを回避した。
ノーマのシグーがワイヤーを避けて移動した次の瞬間、その廃墟は爆発し、ノーマのシグーの背後の空間を瓦礫が占領した。
「追い詰めたわよ…」ノーマがそう言った直後、再び爆発音が響いた。
それは、ノーマのシグーでも、ディエゴ曹長率いる機甲兵部隊によるものでもなく、ノーマのシグーの真上で起ったものだった。
咄嗟にノーマは上を見た。
シグーの直上、廃墟の中でも比較的原型をとどめる高層建築の影が聳えるそこには、
オレンジ色の爆発の華が咲き、高層建築を構成していたコンクリートの瓦礫が今にも地面に向かって落下しようとしていた。
184:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/08/20 20:45:47.79 9NDEZKLo0.net
つい数十秒前までビルを形成していた巨大なコンクリートの塊がシグーに襲い掛かった。
「よし!掛かったな」
ゴライアスを着用したディエゴ曹長は、笑みを浮かべて言った。
彼の目の前で、ビルの瓦礫は、彼の想定通りに真下に落下した。そしてその落下点には、ノーマのシグーが立っていた。
「!!」ノーマは、相手の真の意図にようやく気付いた。
機甲兵部隊で、敵のMSを誘導し、爆弾で動きを止めてから、隣接するビルの上層階を爆破、
敵のMSを降り注ぐビルの残骸の下敷きにすることで止めを刺�
185:キ。 先程のワイヤートラップは、本命であるこの瓦礫のトラップに対する囮だけでなく、退路を断つという目的があったのである。 「くっ!」 トゥームストン………その巨大な墓石は、地面にいるノーマとシグーに向けて轟音を立てて落下した。 少なく見積もって数十トン近い質量を有するその物体の直撃を受ければ、モビルスーツさえも破壊されることは間違いなかった。 「そんな単純なトラップで!」 ノーマは、シグーの背部のスラスターを全開にした。 ディエゴ曹長のゴライアス部隊は、シグーの動きを止めるべくチェーンガンや対戦車ミサイルを乱射する。 ノーマは、左腕のシールドを投げつける。投げつけられたシールドは、一瞬銃弾の火花を浴びて真っ赤に染まり、 止めとばかりに撃ち込まれたピルム対戦車誘導弾が大穴を開けた。タンデム成型炸薬弾頭を搭載したミサイルの一撃は シールドの裏に装着されたガトリング砲の基部を破壊し、弾倉が爆発したシールドは砕け散った。 シールドのミサイルによって空いた穴を起点に爆発が起こり、爆風が砕け散るシールドを覆った。 同時に爆風の中からシグーが飛び出す。 コンクリートの豪雨がシグーを打ち砕く寸前、シグーは、離脱に成功した。 爆風から現れたシグーは、すれ違いざまに右腕の重斬刀を振るう。 近くにいたゴライアスが切り捨てられる。 シグーは、ゴライアス隊の前に着地した。シグーが地面に着地する轟音が、 ディエゴ曹長の耳には、やけに大きく聞こえた。 同時に背後のコンクリートの瓦礫の山がはじけ飛んだ。中に仕掛けられていた爆薬が爆発したのである。 本来ならビルの下敷きになったシグーに対する止めとなるはずだった爆薬は、コンクリートの瓦礫を砕いただけに終わった。 次の瞬間、シグーの左腕に握られていた重突撃機銃が、ディエゴ曹長率いるゴライアス部隊に浴びせられた。 「畜生!」そう叫んだディエゴ曹長の視界は炎に呑まれた。 廃墟の一角で、毒々しい色の爆炎が吹き上がった。 「…」ノーマはそれを一瞥して、次の敵を叩き潰すべく歩みを再開した。
186:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/08/20 20:57:20.74 9NDEZKLo0.net
「ディエゴ曹長戦死!」
「そんな……ディエゴ曹長の隊がやられました。」
その報告は、直ぐにパドリオの操縦するガンビートルの通信システムを介して指揮官であるハンス大尉に伝えられた。
更に、ディエゴ曹長の隊の支援に向かっていたユーラシア軍所属の歩兵部隊がシグーによって全滅させられていた。
「ディエゴ……我々の隊で迎撃するぞ!」ハンスは、即座に決断を下す。
「指揮官自らですか?」
その通信は、ユーラシア歩兵部隊の残余を率いるガラント少尉からであった。
「ああ、これ以上防衛線の内側であの怪物を飼うわけにはいかんからな!」
「第22歩兵小隊、第24歩兵小隊壊滅!」
「まずいぞ…このままでは、外のザフト部隊まで…」
「!!」ハンスの言葉は、直ぐに現実となった。
市内の地球連合軍の防衛線が崩壊しつつあるということは、郊外に待機していたザフト軍部隊の眼にも明らかであった。
そして、それを見逃す程彼らは、無能でも、お人よしでも無かった。
「ノーマ小隊長がやってくれたぞ!全軍進撃開始、この機を逃すな!ザフトの為に!」
ウーアマン中隊が進撃を再開した。
「俺達も突撃するぞ、ナチュラル共を叩き潰せ!」
カッセル軽砲小隊も突入を開始した。
「!支援砲撃を任務とする我々が市内に突入するのですか?」部下の1人は、指揮官であるカッセル小隊長に質問した。
「ドローンによる射撃管制が半分機能していない今、まともに支援砲撃が出来ると思うな!」
「了解!」
更に先程まで<リヴィングストン>と共に後方に展開していた車両部隊も、
ウーアマン隊と合流し、都市の地球連合軍を叩き潰すべく市内に突入し始めた。
「畜生!支えきれんぞ」
「こちら第3小隊!後退許可を!」
度重なるザフト軍との戦闘、特に単機で防衛部隊を幾つも壊滅させたノーマのシグーによって
防衛線が大打撃を受けていた地球連合軍側には、それを押しとどめる手段はもはや残されていなかった。
「お前ら!車には乗ったな!味
187:方と合流するぞ!」 包囲されていたザフト軍 アンリエッタ歩兵中隊も行動を開始した。 指揮官のアンリエッタ・エルノー中隊長は、包囲していた敵の戦力が低下しているのを見て、友軍部隊との合流を決意したのである。 この中隊は、先程の戦闘で、機甲歩兵部隊の猛攻をうけ、既に半数以上の兵員と装備を喪失し、 歩兵小隊レベルにまでその戦力を低下させていたが、 ノーマの活躍によって包囲陣が弱体化した為、突入を開始したザフトの車両部隊との合流に成功した。
188:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/08/20 21:07:45.75 9NDEZKLo0.net
「ハンス隊長!」
「支えきれないぞ!」
「後退!後退!」
市内の地球連合軍部隊は、各所で退却を余儀なくされ、一部の部隊は逃げ遅れて全滅した。
もし、退却準備を事前に指示していなければ、更に被害は拡大していた可能性があったことを考えると、まだマシであった。
公園に配置されていたロングノーズボブは、友軍部隊の放つ信号弾に従い、援護の砲撃を行っていたが、弾薬切れとなったことでそれも行えなくなった。
「弾切れです!」
「ここまでか…」
ダン以下砲兵隊員は、ロングノーズボブを放棄した。
その直後ザウート部隊の砲撃を受けてロングノーズボブは、スクラップに変換された。
ザフトが廃墟となった都市に侵攻を開始したのと同じ頃、ハンス率いる連合部隊は、ノーマのシグーと交戦状態に突入していた。
「ミサイル発射!」スラスターを全開にして突入してきたシグー目がけ、ハンス率いる機甲兵部隊が一斉に対戦車ミサイルを発射した。
ゴライアスが、肩に背負った対戦車ミサイルランチャーを発射し、白い噴射煙が、ゴライアスのマットブラックのボディを包みこむ。
同時に周囲の廃墟と化したビルからも銃撃やミサイルが浴びせられる。ノーマのシグーは、3方向からのそれらの攻撃を回避した。
NJ下で誘導装置の信頼性が低下していることを考慮しても驚異的な回避能力である。
「なんて動きだ!」
シグーの回避運動を見たゴライアスを装着する連合兵の一人は悲鳴を上げた。
「当たれよ!」
廃墟に隠れた歩兵が、携帯型対戦車ミサイルを発射した。
だがシグーは、そのミサイルも回避するか、撃墜してしまう。
ハンスと部下の多くは、サブフライトシステム グゥルを破壊したことで、シグーの機動性を減殺できたと考えていた……
しかし、シグーは、地上に足を付けてからの方が更に素早く動いていた。
この廃墟を縦横無尽に駆けまわり、その巨体を時折、廃墟の影を利用することでこちらから見えなくすることさえやってのける、
このシグーは、巨大な幽霊とでも形容できた。
また1機、廃墟の影に隠れようとした部下のゴライアスが撃墜された。
シグーの重突撃機銃によるもので、旧式の戦車砲弾並みの口径の砲弾を受けたそのゴライアスはバラバラに砕け散っていた。
189:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/08/20 21:15:34.92 9NDEZKLo0.net
それは、シグーの重突撃機銃によるもので、旧式の戦車砲弾並みの口径の砲弾を受けたそのゴライアスはバラバラに砕け散っていた。
シグーの隣のビルから遠隔操作でミサイルが発射される。
それを見たハンスは、元工兵隊の貢献を思った。
撤退時に取り残された彼らに、ハンスは部隊の指揮官として、
都市内のトラップ設置、防御陣地の設営への協力を要請…事実上は命令…をした。
ハンスは、それがどれほどの重労働となるか、認識したうえでその決断を下した。
そうしなくては、戦いでの自軍の犠牲を減らすことはできず、自軍の被害を減らす為の策を怠ることは、
指揮官として失格である、と考えていたからである。
最初、ハンスは、工兵隊指揮官のライオネル・タイソン中尉を含む工兵たちから相当の反発を買うと推測していた。
だが、彼らは、文句一つ言うどころか、満足に銃も扱えない自分達がザフトのブリキ人形に一矢報いるチャンスをくれたと、
喜んで、汗みずくになって防衛ラインの構築に貢献�
190:オてくれた。 もし工兵である彼らがその技術と経験を最大限に活かしてくれなかったら、ここまで防衛することができたかは疑わしかった。 またシグーの死角である位置から発射されたミサイルが、シグーに迫る。 だが、ノーマのシグーは、それを回避し、更にハンスの機甲兵部隊の攻撃も回避し、ハンス達機甲兵部隊の前に立ち塞がった。 着地と同時にシグーがミサイルの発射された方向に重突撃機銃を叩き込む。 その右腕には、重突撃機銃が、左腕には、重斬刀が握られている。 「此処までなのか…」ハンスがそう呟いた瞬間、彼の視界の片隅に小さく動く影が現れた。 シグーの背後の廃墟…… 「…!」 そこには、損傷したディエゴ曹長のゴライアスが、ピルム対戦車誘導弾を構えていた。 「ハンス隊長…皆!」 先程彼は、ノーマのシグーによって部隊を壊滅させられたが、 彼自身は、部下のゴライアスと廃墟が盾になる形で、難を逃れていたのであった。 このピルム対戦車誘導弾は、大西洋連邦のある軍事企業が開発した対戦車火器である。 この対戦車ミサイルが開発された頃は、大容量バッテリーの開発、モーターの高出力化、素材の改良による 軽量化に伴う装甲車両の重装甲化が進んでいた時期であった。 戦車の装甲、防御力は、一種の最高点に達し、 大口径のリニアガンでなければ、貫通不可能な程にまでなっていた。 各国は、敵の重装甲化した戦車に対抗する為、新型戦車、陸戦用MAの開発を進めると共に、 遥かに安価な歩兵や機甲兵でも撃破できる様、携帯式対戦車火器の改良も進めていたのである。 このピルム対戦車誘導弾は、通常の機械化歩兵では1人での操作は難しかったが、機甲歩兵にとっては、片手で運用可能な火器である。 機甲歩兵や機械化歩兵の火力でも装甲車両を撃破できるようにと設計された特徴的な大型のタンデム式の成型炸薬弾頭は、 ザフトの最新鋭機であるシグーを撃破することも可能な威力を持っていた。
191:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/08/20 21:22:43.55 9NDEZKLo0.net
タンデム成型炸薬弾頭を背後から受けて撃破されるシグーの姿をハンスと彼の部下は幻視した。
だが、そのシグーは、背中に眼があるかの如き素早さで反転、右腕の重斬刀を横薙ぎに振るった。
その一撃は、装着者のディエゴ曹長をゴライアスごと両断した。
叩き斬られたゴライアスは、投げ出され、空中で破片を撒き散らして爆発した。
周囲にオイルと血液が飛び散り、真横の灰色のビルの壁をグロテスクな色に染め上げた。
「ディエゴ!」
シグーは、再び、ハンスらの方に向き直った。
シグーの頭部の赤い単眼が彼らを睥睨する。
「くっ…」
ハンスは、血に染まった様なその赤い機械の眼を凝視した。
こいつには、勝てない…ザフト軍のモビルスーツや戦闘機、戦闘車両とこれまで交戦し、
部下と共にそれらをことごとくスクラップに変換してきた彼にとって、
それは開戦以来の初めての経験であった。
「もう駄目だ!」
部下の一人が悲鳴を上げた。
その直後、爆発が付近の廃墟に立ち上った。
「爆撃!?」
「…始まったか……!」
それは、予定されていた地球連合空軍戦略爆撃部隊の空爆の始まりを告げるものであった。
192:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/08/20 21:28:56.56 9NDEZKLo0.net
今日は此処までです。
次辺りでひとまずこの戦闘の話は終了します。
では、感想、アドバイスお願いします。
193:通常の名無しさんの3倍
16/08/21 22:27:01.93 ToMANJ040.net
投下乙です
戦略爆撃機と聞いて連想するのは最近映画:シンゴジラで活躍したB-2スピリット
しかしシンゴジラ然り、ガンダム世界然りその他の兵器はやられメカなのが常である(B-2の値段知って撃墜シーン見たら悲鳴が上がるぞ!)
そしてその他兵器扱い故に「コズミックイラの戦略爆撃機ってどんな感じだろ」
まぁ次回をお楽しみに!なんですけどね
194:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/08/22 00:31:02.25 TSyZqwsX0.net
投下
「爆撃だと!ナチュラルめ味方を攻撃する気か…」
目の前で友軍の車両が爆弾を受けて爆砕したのを見てカッセルは、驚愕した。
この時彼は、再編成を終えた旗下の部隊と共に既に市内のかなりの部分にまで突入していた。彼のザウートの手前のコンクリートの地面に爆弾が落ち、大穴が開いた。
その横でザフト軍に鹵獲され、オリーブドラブに再塗装されたユーラシア連邦製の装甲車が爆弾の直撃を受けて爆砕する。
巻き起こる紅蓮の炎が虫を食らうカメレオンの舌の様に周囲の兵士を呑み込み、爆風の衝撃で跳ね飛ばされたザフト兵がコンクリートの壁に激突した。
「総員!市外へ退避しろ!急げ!」
カッセルは、残存する指揮下の兵士に撤退命令を下した。
しかし郊外すら安全地帯と言えるのか微妙なところであった。
カッセルとてそれを十分に認識していた。だが、現状でそれ以外、部下を安心させる方法は彼の選択肢には残されていなかった。
「空爆!?」
空爆…それもザフト側航空兵力の迎撃範囲外である高高度からの絨毯爆撃であった。
ディンやインフェストゥス等現在、のザフト軍の航空戦力は、殆どが制空権確保、地上部隊支援を主眼に設計されており、
地球連合軍の保有する高高度を飛行する戦略爆撃機を攻撃することは出来なかった。
NJ以前に、これらの戦略爆撃機等を撃墜するのに有効とされた高高度対空ミサイル等は、NJによってその信頼性を著しく低下させていた。
この時期の地球連合軍は、地上のザフトの手の届かない上空から爆撃を行う戦術で、ザフトのMSを主体とする侵攻作戦に対抗しようとしていた。
命中率の低さは、予め爆撃機が爆撃する地点を設定し、爆撃機の数と搭載爆弾の数を限界まで増やすことで、カバーする。
ハンスの部隊が廃墟と化した都市に陣地を構築していたのも、
ザフト軍の部隊をこの近辺になるべく足止めするという目的があったのである。
195:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/08/22 00:37:31.60 TSyZqwsX0.net
ハンスの部隊だけでなく、この近辺の撤退作戦に参加した部隊は、
空を飛ぶ戦闘機部隊や戦闘爆撃機部隊、攻撃ヘリ部隊から機甲師団まで、その為に活動していた。
そして、ハンスが撤退する時間の設定とその準備を部下に整えさせていたのも、
友軍の行うこの爆弾の豪雨に巻き込まれることを避ける為のものだった。
ザフト軍にユーラシア連邦の戦車師団が大損害を受けた等、多大な被害を受け、多くの都市や拠点を失ったイベリア半島での戦線で初めて使用されたこの戦術は、
戦闘爆撃機やヘリ部隊、機甲師団による攻撃と異なり、反撃を受けずにザフト軍MS部隊に打撃を与えることのできる唯一の戦術であった。
湯水の如き大量の爆弾の消費と避難民や友軍を巻き込む危険性と引き換えに……
爆弾が次々と鉛色の雲を引き裂き、大地に突き刺さる。
大地に次々と火柱が生まれ、それまでの戦闘で痛めつけられていた都市の建物が轟音を立てて崩れ落ちる。
「全部隊撤退!!後は〝宇宙飛行士〟どもに任せろ!」
ハンスは、即座に撤退用の信号弾を放った。
ハンスは、既に有線通信もこの状況では機能していまいと考えていた。
宇宙飛行士…………それは、安全圏の宇宙空間すれすれの高空から敵味方お構いなしに薙ぎ払う無差別爆撃を行う爆撃機部隊
に対して地上の地球連合軍の兵士が付けた蔑称であった。
パワードスーツ用キャリアーと兵員を乗せたトラックや車両が撤退を開始、残存のゴライアスもそれに続く。
ハンスの部隊もシグーを撒くために煙幕を展開すると、退却した。
ノーマのシグーは彼らを追撃しようとしたが、目の前に爆弾が落下し、後退を余儀なくされた。
もし少しでも進んでいたら確実にシグーは、爆弾の直撃で破壊されていたであろう。
降り注ぐ爆弾を迎撃すべく、シグーは、重突撃機銃を上空に向けて撃ちまくった。
爆弾のいくつかが空中で撃墜され、爆発した。
空中爆発の炎がシグーの
196:白い装甲をオレンジに染める。だがさらに爆弾は降り注ぐ。
197:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/08/22 00:46:13.16 TSyZqwsX0.net
シグーは、もはや追撃どころではなく、空から雹の様に降り注ぐ爆弾の雨を回避するので精一杯だった。
「爆撃!友軍ごと!」
ノーマは、味方のいる市内に爆弾を叩き込む地球連合空軍の戦法に驚愕した。
それは、地球連合軍が敵である彼女等ザフトだけでなく、市内に展開している地球連合軍部隊、つまり友軍ごと攻撃していることにであった。
郊外に展開していた部隊にも爆撃の被害は及んだ。
市内に砲撃を行っていたザウート1個小隊に弾薬を供給していた輸送車両が爆弾を受けて大爆発する。
ザウートが徹甲爆弾の直撃を受けて砕け散る。僚機の同型が錯乱気味に背部の大型砲を上空に乱射したが、
雲海の高みを飛ぶ爆撃機には届かず、付近のビルの一つに着弾した。
直後、その僚機の頭上でクラスター爆弾が炸裂し、破片の豪雨が降り注ぐ。
その煽りを受けて、廃棄されていた事故車の車列が、次々と鼠花火の様に爆発した。
絨毯爆撃を受けた都市は、無機質な灰色の景色の中で鮮やかなオレンジの炎に沈んでいった。
同じ頃、<リヴィングストン>を擁するファーデン戦闘大隊にも地球連合軍の攻撃は及んでいた。
「全機突撃!デカ物を狙うぞ」
<リヴィングストン>と車両部隊を強襲したのは、イシュトバーン・バラージュ少佐率いる第34航空中隊であった。
ユーラシア連邦空軍を主体とするこの飛行隊は、スピアヘッド12機で編成されていた。
「いい機体だ。武装、加速性、操縦性…どれも最高だぜ」
ユーラシア連邦の空軍パイロットのイシュトバーン少佐は、スピアヘッドの性能に惚れ込んでいた。
かつての乗機であったユーラシア連邦軍の戦闘機……スパーダ、エクレール、プファイル、ツヴァイハンダー…
のどれよりも高性能であったからである。
しかし、このスピアヘッドでさえ、ザフトの有するモビルスーツの相手をするには、不足であった。
対するザフト航空戦力は、アプフェルバウム隊所属のディン2機、インフェストゥス6機だった。
アプフェルバウム隊のディンは、先程修理が完了したばかりであった。
「きやがった!」
「隊長はこのことを予想していたのか?」
2機のディンは、突撃して来るスピアヘッド部隊を迎撃する。
198:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/08/22 00:52:54.13 TSyZqwsX0.net
対空散弾銃を受け、スピアヘッドが1機爆散した。インフェストゥス部隊も2倍近い敵機を前に積極的に攻撃を仕掛ける。
インフェストスは、高い運動性で、スピアヘッドを翻弄しようとした。
対するスピアヘッドは、加速性能と火力でインフェストゥスを撃墜しようとする。
<リヴィングストン>と周囲の車両部隊も対空砲火で向かって来る敵機を阻もうとする。
スピアヘッドの1機は、翼下にマウントされていた誘導爆弾を投下した。
対空戦車がその爆風を受けて横転した。
対空戦車の機銃弾をエンジンに受けたスピアヘッドが燃料を誘爆させ、上空で火球と化した。
<リヴィングストン>にも爆弾やミサイルが着弾し、その灰色の巨体に幾つもの爆発が起こり、黒煙が上がった。
「このリヴィングストンは陸上戦艦なんだ。戦艦が簡単に沈んで堪るかよ!」
部下達の動揺を抑える為、司令官であるエリクは内心の怯えを押し殺してCIC全体に聞こえるような大声で叫ぶ。
都市にいたザフトを含むザフトの多くの部隊を統括する司令部を兼ねていた<リヴィングストン>の上空が魔女の宴の如き混乱状態となったことは、
空爆を受けていた廃墟での戦闘に影響を与えた。
その隙に第22機甲兵中隊以下地球連合軍部隊は、廃墟から退却することに成功した。
辛うじて脱出できた第22機甲兵中隊とその指揮下にいた地球連合軍部隊の残余は、
離れた地点で、火炎地獄へと変貌しつつある都市を眺めていた。
199:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/08/22 00:59:49.66 TSyZqwsX0.net
指揮官のハンスは、他の機甲兵同様にゴライアスを着脱し、他の兵士同様に輸送トラックに乗り込んでいた。
ハンスは、輸送トラックの荷台の部下達が、1か所に集まっているのをみとめた。
周囲の部下達の間から、横たわっている部下の両脚が見えた。
「誰がやられた?」
ハンスは、部下達を半ば押しのける形で、その横たわる部下に向かっ�
200:ス。 「…」 横たわっていた部下、マックス軍曹は腹部から出血しており、助からないのは誰の眼にも明らかだった。 彼は、撤退時に部下を庇った際、爆弾の破片を腹部に受け重傷を負ったのであった。 「マックス、死ぬな!」ハンスは、思わず叫んでいた。 「隊長、すみません畜生!!!モビルスーツさえ モビルスーツさえ俺達にもあれば…」 間もなく彼は、静かに事切れた。 「くっ…!!」 モビルスーツさえあれば……その言葉は、現在の地球連合兵士の心を代弁したものであった。 こちらにもモビルスーツがあれば、数で劣るザフトには地球連合は決して負けない……… 「この借りは、必ず返す!」 ハンスは、拳を握り、怒りに燃える東洋の怪物…赤鬼の様に顔を真っ赤に染め、唇を噛み締めた。 裂けた唇から赤い血がポタポタと零れ落ちた。 それを見た部下達は声も上げることが出来なかった。 その遥か背後では、ザフトがいる都市に向けて空爆が行われており、爆撃の炎が都市全体を覆い尽くさんとしていた。 オレンジの炎が天を焦がし、辺りを不気味に照らし出している。 ザフトも無用な損害を被ってまで半壊した部隊を追撃する愚を犯したくないのか、 残存部隊を追撃してくる気配はなかった。
201:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/08/22 01:05:48.63 TSyZqwsX0.net
その遥か高空で、その単調で退屈な任務を終えた爆撃機部隊は、地上の惨劇を全く気にも留めず、空になった弾薬庫の蓋を閉じた。
そして今までの任務と同様の予定通りに猛禽の嘴に似た鋭角的な機首を上にあげ、高度を稼ぎつつ、
勝利の旋回を雲一つ存在しない蒼穹に刻みながら、着陸地であるグリーンランドの空軍基地への帰路についた。
このヨーロッパ戦線の片隅で行われた撤退支援作戦は、グリーンランド ヘブンズベース基地に付属する飛行場より発進した
爆撃部隊と第22機甲兵中隊を初めとする殿部隊の奮戦もあって主力の撤退に成功すると共にザフト軍に打撃を与えるという地球連合側の戦略的勝利に終わった。
だがそれは、将兵の祝杯の打ち鳴らされる音と軍楽隊の音楽が高らかに鳴り響く様な華々しい勝利とは程遠いものであった。
なぜならば、その為に払われた地球連合軍の将兵の犠牲は、敗軍であるザフトよりも甚大なものだったからである。
この作戦に従事した部隊は、いずれも壊滅的打撃を蒙り、第22機甲兵中隊も、約半数の兵員を失い、事実上の全滅を喫した。
だが、この損害ですら当時の地球連合軍の機甲兵部隊の平均損耗率から考えれば、善戦した方であったのである。
比較としてこの20日前にイベリア半島 マドリード近郊で行われたエブロ川防衛戦で、戦車師団の支援の為に出撃したユーラシア連邦陸軍の機甲兵大隊、
グティ380機の内無事に帰投できたのは、15名、パワードスーツを着脱して脱出できた乗員は、20名というものであった。
202:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
16/08/22 01:14:31.64 TSyZqwsX0.net
前言ったようにこの戦闘の話は、ひとまず終了です。
続きの話は、かなり先に投下すると思います。
では続きの話お楽しみください
>>175
この時点での爆撃機の扱いは、数少ない連合側のMSに対抗できる戦力という扱いです
但し、運用には問題や制限もあり、ザフト軍の侵攻を防ぐには通常戦力では足りない状況で、
更にザフトも対抗手段を編み出していくことになります。
203:通常の名無しさんの3倍
16/08/22 01:18:21.13 Tw0u5phj0.net
④
204:
205:通常の名無しさんの3倍
16/08/22 01:19:27.92 Tw0u5phj0.net
寝る前に見てみたら間に合わなかったwww
乙です
206:通常の名無しさんの3倍
16/08/22 20:17:43.71 FPPwJrhO0.net
>>182
なるほどー
背景を鑑みるに味方ごと爆破も止むを得ず
かつ絶対に撃墜される危険のない状況でしか使えないな
それに本来制空権を確保してるのはザフト側だし一度手札を晒したら対策されないワケがないと
モビルスーツがあれば、血涙を流して絞り出す悲鳴だ
207:通常の名無しさんの3倍
16/08/22 23:14:22.83 Reh6sQZS0.net
投下乙
爆撃機で味方ごと爆破なんて・・・爆撃機のクルーがどう思っているのかが気になる
最後の連合兵の台詞がなんとも悲しいです
続きの話も期待しております。
208:木星少年
16/08/23 05:07:52.97 VRnVanxn0.net
[マスカレイド]
汗が目に入って、喉の奥から嗚咽も漏れる
背筋を伝う太く無配慮な指が、ゾッとする軌跡を描いた
「はっ…ん…はっ…あ」
白い肌の弾力を愉しむ様に、悪魔は尚も指も舌も身体中全てで少年を舐め回す
まるでそう… これは、蛞蝓だった
あいつから逃げて、荒んだ日々を生き抜き、自由を求めたのにまたあの場所に堕ちていく
ボクには光を浴びる勇気も才能も無かったのかもしれない
ーそうして私は…
「アンジェロ、聞こえているか?」
はっと我を取り戻した少年は、そこに自分が守るべき大佐がいて、その自分がベッドに寝ている体たらくに気付くと
先程の夢や身体の不調より先に、大佐であるフロンタルに手を煩わせたであろう経緯をまず後悔した
「セルジュの奴が珍しく血相を変えてたぞ
何でも先の暴動で被害にあった民家の修復に若い兵達を充てていたそうだな」
「申し訳ありません、大佐に話を通すべきでした」
アンジェロは病室に飾られた人口の花と同じ紫色の瞳に涙を溜め、羞恥と後悔に震える
それがアンジェロという青年だった
209:木星少年
16/08/23 05:09:03.54 VRnVanxn0.net
「構わんよ。平時の新兵の管轄は親衛隊に一任してある。そうした表向きの点数稼ぎも我々の仕事さ」
アンジェロにとってフロンタルは神も同じだ
愚かな体制を唾棄し、次の世界を創るべき棄民達の王。それはアンジェロでなくとも、この水も空気もない漆黒に生まれ子供達には似た様な存在だった
だが、不安になる…
自分ごときがおこがましい事ではあれど、それでも不意にあまりにも冷静な神の配慮を見せらると、
実体の無い物に乗っている様な不安定さを自覚してしまう
だがやはりそれは、アンジェロには許し難い事だった
「こういう言い方は恥ずかしいのだがな…」
「え?」
「どうも私は部下とのスキンシップが苦手らしい。付き合いの長い部下をそれで何度か死なせている」
「そ…それは決して大佐の責任では!」
「いや親衛隊やネオジオンの兵達の話ではない。もっと昔の事さ」
アンジェロは目を丸くした
「大佐の、昔…ですか?」
「意外か?私だって軍人だ。劣等感や思い出もある」
(れ…劣等感?!思い出?!)
「いけません�
210:I!!貴方は棄民の王です!そんな世俗の世迷言を!」 「世迷言か。言ってくれるな 私だって怒る時もあるし、泣く事もある」 「なっ…?」 フロンタルは仮面のまま、いつもと同じようにアンジェロの唇を奪う その時のフロンタルの力は尋常ではない。軍人だからではない。人間の力ではないのだ だが、それがまたアンジェロを酔わせる 「大佐…」 劣等感や思い出などあろうはずがない。フロンタルは青年が描きうる中で最高の神だった 人には人の、神には神の使命がある だが、(どうしてこんなに辛いのだろう) 今日のフロンタルの前のアンジェロは、いつもに増して涙が枯れなかった
211:通常の名無しさんの3倍
16/08/23 14:36:50.97 ggUpKZGR0.net
>>186
こういうのって
「味方は一人残らず壊滅した」とか
「○○地点は完全に敵に占領された」とか
「俺達ごと爆撃しろ、敵に嬲り殺しにされるよりマシだ(マジで現実にあった話)」とか
一番定番なのは
「俺達は○○地点に爆撃しろ、という命令しか受けてない、まさか味方がいただなんて・・・」
という感じで情報のほとんどが伏せられるとか
212:通常の名無しさんの3倍
16/08/23 21:42:34.55 57PbPzet0.net
>>189
3番目はベトナムでのエピかな
この話だと予め予定されてたらしいから爆撃機パイロットも知ってるはず
多分、下には味方もういないよな?みたいな感じで爆撃してた可能性も
213:通常の名無しさんの3倍
16/11/03 22:50:12.53 c0u8LyIL0.net
age
214:通常の名無しさんの3倍
16/11/06 20:31:35.53 raBiicFW0.net
木星少年が普通に面白い
215:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
17/01/25 00:26:39.12 YaZbQpVC0.net
皆さん新年初の投下となります
連合兵戦記の新章開始です。
戦争はフットボールの試合ではないのだ、49対51での勝ちなど勝ちではない。
抵抗できない赤ん坊をメリケンサックをつけて殴る、それが理想的な戦争の戦い方だ。
ジョーンズ米陸軍中佐
12月10日 西ヨーロッパ戦線の戦況は、ザフト軍の圧倒的優勢となっていた。11月下旬にフランス州の全域を制圧したザフト軍は、南北中央の3つに部隊を分け、進軍を再開、
北部の部隊は、オランダ州とかつてのユーラシア連邦首都 ブリュッセルが存在するベルギー州の制圧を目的としていた。
北部の部隊は、12月1日に人口が開戦前の半分までに減ったブリュッセルを無血占領した。
中央の部隊は、ユーラシア連邦有数の兵器工場が存在し、また同時に西ヨーロッパ最大の重工業地帯が存在するドイツ州に侵攻、12月7日にフランクフルトとハンブルクを制圧、
12月14日には、一部部隊は、隣接するポーランド州近郊にまで迫った。
南部の部隊は、輸送機と軌道上からの降下により、補給を受けた後イタリア北部に向けて進軍を開始、11月下旬、イタリア半島南端に上陸した部隊との合流を図った。
ユーラシア連邦軍を中核とする地球連合軍は、唯一ザフト軍の迎撃を受けない爆撃機による高高度無差別爆撃、物量作戦と機甲兵部隊による遅滞戦闘を展開して、
MSを擁するザフト軍の猛威を少しでも押しとどめようとしていた。
また大西洋連邦領 グレートブリテン島とヨーロッパ大陸を繋ぐドーバー海峡横断トンネルは、
ザフト軍の侵攻を防ぐ為、トルコ州に存在したボスポラス海峡トンネルの後を追う様にして地球連合軍により爆破された。
ザフトは、こうして再び大陸と切り離され、孤島となったグレートブリテン島の地球連合軍の補給を遮断し、
無力化する為にボズゴロフ級潜水空母と艦載MS部隊を用いた�
216:C上封鎖作戦<オペレーション リング・オブ・アンフィスバエナ>を発動した。 対する地球連合軍は、封鎖を突破する為、大西洋連邦は、本土であるアメリカ西海岸と西インド諸島より護衛空母を中核とする護衛を含む輸送船団と大型輸送機の編隊を派遣した。 またレアメタル等の戦略物資や電子機器、科学者や高級将校を交換輸送する目的でこの時代では、もはや旧式化しつつあった非原子力動力型の潜水艦が少数派遣された。 ユーラシア連邦も西ヨーロッパの大半をザフトに制圧され、東欧戦線でも苦戦を余儀なくされている中、スカンジナビア王国領付近の都市より、艦隊と航空部隊による支援作戦を開始した。 この作戦では、再構築戦争以来、ユーラシア連邦軍が開発・配備してきた地面効果翼機も少数用いられた。地面効果翼機とは、 西暦期にソビエト連邦が開発した航空機の一種で、航空機の高速性と船舶の輸送量を両立できるという利点を有していた。 ユーラシア連邦は、輸送機として地面効果翼機を数百機近く保有しており、輸送作戦に活用した。これら奇怪な形状の航空機は、輸送船を上回る速度と小型船舶並みの物資搭載量 で少数ながら大西洋連邦、ユーラシア連邦間の輸送に貢献した。 高速性と迷彩塗装と相まって地面効果翼機の生残性は、通常艦艇よりも高く、整備性の問題を無視すれば、哨戒網を突破するのに有効であった。 第7章 新たなる短剣
217:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
17/01/25 00:29:17.90 YaZbQpVC0.net
その一方、通常船舶で構成される輸送船団は、ボズゴロフ級と水中モビルスーツ部隊によって打撃を受け、引き返す船団や壊滅状態に陥るものも出ていた。
空からの輸送ルートである輸送機部隊は、ボズゴロフ級潜水空母の艦載機であるディンやインフェストゥスの上昇限界高度よりも上の高度を飛行でき、安全に輸送が出来たが、
着陸できる滑走路が限られていた。
滑走路を必要としない垂直離着陸機もあるにはあったが、数が限られていたのである。
同様に長距離滑走路を必要とする爆撃機部隊の存在もあり、軍の基地はパンク寸前であった。
また民間の空港もエープリルフール・クライシス当日の時の航空事故でその多くが未だに使用不能に陥っていた。
太平洋と北海をのたうつ双頭の海蛇は、地球連合軍の血と鉄を呑み込みつつあった。
218:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
17/01/25 00:35:49.14 YaZbQpVC0.net
大西洋連邦領 グリーンランド ヘブンズベース基地
現在、グリーンランドは、4月1日にザフトが引き起こしたNJ災害の影響で、最大の都市 ヌークを初めとする都市の
都市機能やインフラは完全に停止し、民間人の殆どは、餓死、凍死するか
地球連合軍の手によってエネルギー事情と生存環境がマシな北米へ避難していた。
現在、この地にいるのは、野生動物を除けば、地球連合軍の軍人か彼らの活動に関わる職業に従事している軍属の民間人のみであった。
そして前者のかなりの割合が、西ヨーロッパ戦線より敗走してきた地球連合軍が占めていた。
港湾には、ダニロフ級やタラワ級強襲揚陸艦を初めとする軍艦が停泊していた。
浅く白い雪の積もる海岸の高台に一人の軍服姿の男がいた。
彼、旧第22機甲兵中隊指揮官 ハンス・ブラウン少佐は、海岸近くの崖に座っていた。
海岸には、テトラポットに似た奇怪なコンクリートの構造物がいくつも置かれている。それらの、一見すると現代アートの作品の様なコンクリートの塊は、
対戦車障害物、対モビルスーツ障害物という正式名称が与えられていた。
ヘブンズベース基地の防衛部隊は、この基地を攻略する為にザフトが上陸作戦を展開した際、
これらの障害物を海岸に多数配置してザフト側の車両やモビルスーツの上陸を遅滞、�
219:j止し、 海岸で動きを止めた所を後方に展開する砲兵陣地や航空部隊、水上艦隊による支援砲撃で叩く予定であった。 だが、モビルスーツの進撃を阻止するのに有効な障害物の配置、形状は、 未だに研究中で、前線では従来の障害物を設置することしか出来なかった。 その男は、虚ろな目で、それらの奇怪なコンクリートの構造物が林立する寒々しい砂浜を見下ろしていた。 だが、彼は、視線の先にあるもの等、意識の埒外に置いていた。 彼が考えていたのは、ヨーロッパでの撤退戦の記憶、その最終段階で、 彼と彼の部下達を完膚なきまでに打ちのめしたシグーのことである。 あの戦闘から既に1か月以上が経過し、その後も彼と彼の指揮した第22機甲兵中隊は、西ヨーロッパ戦線において激闘を繰り広げてきた。 マース川の戦い…産卵期の鮭さながらに海から川を遡上してきた小型兵員輸送潜水艦に搭載された特殊部隊と護衛機のジン・ワスプから後方の補給所を防衛した。 アントワープ近郊の撤退戦、あの時は、戦車部隊と共に避難民の盾となって戦う羽目になった。 そして、イギリスへの撤退、輸送機部隊を護衛する戦闘機部隊は、数的にも、質的にも不十分で、 輸送機はザフトのディンやインフェストゥスを避けるために低空飛行するか、高高度飛行するかのどちらかしかなかった。 更に目的地に着いた後も安全ではなく、沿岸の飛行場は、 ザフト潜水艦隊のミサイルと艦載機による攻撃の危険性があった。 ………これだけの激闘を経験した後の今でさえ、彼の心には、 あのシグーとの遭遇戦のことが、白い壁に染みついたタールの様に強く残っていた。 いかなる作戦も、共に戦ってきた戦友たちとの連携も、あのシグーのパイロットには通じなかった……あの死神は、今もヨーロッパの戦場で地球連合兵士の命を吸っているのだろう。 奴を倒す術等もはや存在していないのかもしれない… 「少佐殿!少佐殿!」背後からの彼を呼ぶ声が、彼を現実へと引き戻した。
220:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
17/01/25 00:43:27.20 YaZbQpVC0.net
「テイラー三等兵か。どうした?」ハンスは、振り返ると、声の主である若い褐色肌の兵士に言った。
「ロジャース少将殿が、お呼びです。」
サミー・テイラー三等兵は、開戦後に志願した大西洋連邦出身の兵士で、この戦争が始まる前は、ニューヨークでアフリカの民族料理店の皿洗いをしていた。
「…わかった(部隊の再編成に関する事だろうか…)」ハンスは立ち上がると、その場を立ち去った。
10分後、テイラー三等兵に案内されたハンスは、ロジャース少将のいる部屋の扉の前に立っていた。
「少佐殿のみを入れる様に言われています。」
「わかったテイラー三等兵、案内ごくろうだった。
ハンス・ブラウン少佐、到着しました。」
「入っていいぞ」
部屋には、家具の類は殆ど無く、木製の机と椅子が置かれているだけであった。
ハンスの目の前の机には、濃い金髪の頭髪を角刈りにした長身の初老の男が立っていた。
この部屋の主であるクレイトン・ロジャース少将は、大西洋連邦が介入した数々の武力紛争にも参加した歴戦の将校だった。
「よく来てくれた。ハンス・ブラウン少佐。単刀直入に話すことになるが、貴官には、大西洋連邦が開発を進めている
〝新兵器〟の試験部隊の指揮官の任に就いてもらう」
ハンスの目の前に座る白い軍服の将官は、〝新兵器〟という語句を強調して言った。
「新兵器でありますか?それは、どのような?」ハンスは一瞬呆気に取られ、新兵器について尋ねた。
新型のパワードスーツかモビルアーマーだろうか?まあ機甲兵の1指揮官に過ぎない自分が任されるような新兵器等碌なものではないな…
とハンスは、心の中で思った。
機甲兵…パワードスーツは、今でこそザフト軍のモビルスーツの活躍によってその存在が一気にクローズアップされているが、
それ以前はモビルアーマー、装甲車両に機動性、火力、装甲が劣っている上、コスト面では、従来の機械化歩兵に劣るという、
〝歩兵よりもマシ〟な兵科と見做されていた。
「…これから分かる。私が案内する。付いて来い。
決して貴官を失望させることはないと約束できる。」
「はっ」
その後、ロジャース中将とハンスは、部屋を立ち去った。
硝子片の様に透明で白い雪が容赦なく降り積もる中、防寒服を着用した2人の軍人は、目的の場所へと歩んでいった。
基地施設の中心部に近いその地区には、四角形の格納庫が、いくつも林立していた。
だが、それら格納庫の多くの中には、本来存在している筈の大砲や戦闘機や戦車といった兵器の姿は、全くない。
これら空っぽの格納庫には、戦力が実際よりも多いと見せかけ、ザフトにここへの侵攻を躊躇させる目的があった。
集団墓地の墓標の様な格納庫の羅列を超え、2人は、目的地についた。
221:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
17/01/25 00:46:07.12 YaZbQpVC0.net
2人がたどり着いたのは、格納庫の一つであった。車両の通行用と思われる入口には、閉ざされた鉄扉が鈍色に光っていた。
格納庫の扉の左右には、ゴライアス装甲服を着用した機甲兵が20mmチェーンガンを持って立っていた。
「!!(機甲兵!一体何があるっていうんだ?)」それを見たハンスは思わず驚愕し、眼を瞠った。
周囲に機甲兵が配置されるというのは、核弾頭並みの警備の厳重さである。
呆然とする彼を尻目にロジャースは、ポケットから銀色に光る物体を取り出す。それは、カードキーであった。
ロジャースは、右眼をドアのモニターに近付け、網膜認証を解除した。
次に右手の薬指をモニター横の指紋認証装置に押し付け、そしてドアに開いた小さな穴にカードキーを差し込む。
幾重にも張り巡らされたセキュリティが解除され、鋼鉄製のドアが開いた。
ドアの向こう側…格納庫内部の大半は、電力節約の為、闇が支配していた。
ロジャースは、その暗闇の中へと入って行った。セキュリティの厳重さに戸惑いつつもハンスは、その後に続く。
非常灯だけが点灯した格納庫の中は、他の格納庫と同様に空っぽだった。
だが、その奥には、地下へと続く階段があった。
ロジャースとハンスは、その階段を静かに降りていった。
階段の足元には、照明が付けられ、それが唯一の光源だった。
やがて階段が途切れ、2人の前に鋼鉄の扉が姿を現した。
ハンスの前に立つ白い軍服の将官は、右手で扉脇のテンキーにパスワードを入力していった。
パスワードの入力が完了し、警備システムを統括するコンピュータが承認すると同時に鋼鉄の扉が開いた。
「ここに〝新兵器〟がある」
ロジャースが静かにそう言い終えると、照明が、地下格納庫を照らした。
暗闇の中に暫くいたことでそれになれてしまっていたハンスは一瞬照明の眩しさに目が眩んだ。
やがて、視力が回復すると、彼は、驚愕した…目の前に立つ〝新兵器〟の姿に。
222:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
17/01/25 00:50:10.32 YaZbQpVC0.net
「見給え、ハンス少佐」
「…これは!」
そこにあったのは、鋼鉄で出来た巨人、人間が技術の粋を集めて作り上げた機動兵器………
現在、地球圏最強の兵器である人型機動兵器 モビルスーツであった。
そしてそれは、今までハンスとその部下達を苦しめてきたいずれの機種とも違う形状をしていた。
ザフトの主力MS ジンとは異なり、頭部のセンサーは、魔眼のようなモノアイではなく、
北アフリカ方面のユーラシア連邦軍の兵士が着用している防塵バイザーに似た形状をしていた。
さらにそのボディは、ジンより、幾分かスマートで人間に近い外見をしていた。
そしてその手には、アサルトライフルを巨大化させた様な火器�
223:ャられていた。 「…モビルスーツ?!」それは、誘導兵器と物量に支えられた世界のパワーバランスを一変させ、 宇宙戦艦による大艦巨砲主義を粉砕した兵器、人類史上初のコーディネイター国家 プラントの軍事組織 ザフトのみが運用し、 その開発、生産能力を有しているとされている人型機動兵器であった。 そして今の地球連合に所属する兵員が士官学校を首席卒業した歴戦の老将軍から、開戦後に召集された若い新兵に至るまで実用化、戦力化を望んでいる兵器であった。 「驚いたかね…正式名称は、グラディウスという。ローマ軍団が用いた接近戦用の剣の名前だ。現在月基地と、とあるコロニーで開発中の別のタイプと共に戦力化が進められている。 この機体は、量産化も視野に入れている機体だ。」 「……!」 大西洋連邦……いや地球連合は、来たるべき反撃の日に向けて早くも 量産も視野に入れたモビルスーツ開発を推進し、戦力の再編を進めている……あの戦い以来、久しく失われかけていた闘志が蘇り、己の身体が奮い立つのを彼は感じた。
224:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
17/01/25 00:53:31.71 YaZbQpVC0.net
それを見たロジャースは、満足げに笑みを浮かべた。
「武装は、頭部イーゲルシュテルンとビームライフル、ビームサーベル………まず、
イーゲルシュテルン…これは、近接防御兵器として海軍の艦艇や宇宙艦艇に採用されているタイプと同一のものだ。
ジンの装甲を打ち破るのは困難だが、牽制には使える。次のビームライフルは、現在開発途中だが、
完成すれば現状存在する全てのザフトモビルスーツを破壊することが可能だ。」
「ビーム…ですか」
MS用のビーム兵器は、既にザフトのバルルス改特火重粒子砲が存在していたが、
実用性では稼働時間や冷却等の問題があり、更に地上では、重量増加と大気で威力が減衰するという問題から殆ど使用されていなかった。
だが、真空の宇宙空間では、レールガンやミサイルを上回る威力を持つ必殺の威力を誇る兵器として宇宙艦艇や宇宙要塞を初めとする
宇宙兵器での主力兵装の地位を確立していた。
欠点としては、実用的な威力のビームを生み出す電力が必要であること、
ビームの高熱に耐えられる砲身、ビームの熱を即座に冷却する為の冷却装置が必要なため、レールガンやミサイル等の実弾兵器と異なり、複雑化、大型化するという点がある。
ちなみに地球連合軍も、モビルアーマーへの搭載も一部の試験機レベルながら成功していた。
この様にこれまでは、ビーム兵器は、機動兵器に搭載する様な兵器ではないと見做されていたのである。
…そうこれまでは……
225:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
17/01/25 01:03:45.38 YaZbQpVC0.net
「そうだ。威力は戦艦の艦砲には流石に劣るが、現状のザフトのモビルスーツを一撃で撃破可能だ。これのエネルギーは、
機体のジェネレーターから直接供給される。」
「一撃で…」
ハンスは、噛み締める様に言った。
その脳裏をよぎるのは、これまでの苦闘の記憶…機甲歩兵部隊と砲兵、歩兵を用いた攪乱戦法、モビルスーツを撃破する為、重砲弾や対戦車地雷を複数重ねたトラップ…設置中には、危険があり、予想進路上にトラップを設置する等完全に運頼みのものまであった。
だが、目の前のMSの主兵装は、一撃でザフト側のMSを破壊することが可能な威力を有している。
これが、量産され、前線に纏まった数で配備されたら……連合は、この戦争に勝利できる。
あの死神を、仲間を殺したシグーのパイロットを倒すことができる!
期待感に胸を膨らませるハンスをよそに傍らに立つ白い軍服の将官は、説明を続ける。
「最後の兵装は、ビームサーベル 威力の面では最大の武装だ。だが、近接戦闘にしか使えない。
…ハンス少佐には、このグラディウスで編成される試験部隊の指揮官の任についてもらう。
貴官は、優れた部隊指揮官であると同時に機甲歩兵だ。パワードスーツの拡大型であるモビルスーツの操縦にも直ぐに適応できる筈だと、本国の技術士官達も期待している。
現在、モビルスーツを乗りこなせるのは、あの空の化け物共と同じ、遺伝子操作を受けたコーディネイターか、
それに匹敵する身体能力を持つ者達だけという状況なのは知っているな」
226:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
17/01/25 01:08:01.65 YaZbQpVC0.net
「はい、ですが、私に操縦できる能力が備わっているでしょうか?」
そう言ったハンスは、興奮する脳髄に氷塊を押し当てられた様な錯覚を感じた。
モビルスーツは、コーディネイターしか乗りこなせない…それは、このCE70年の常識である。
地球連合軍のモビルスーツ開発と実戦投入の最大の課題だった。
ハンスは、自身が優れた機甲歩兵であると自負していた。
だが、生身の能力がコーディネイター並みであるとは考えていなかった。
「貴官の懸念も解る。全軍の兵士にコーディネイター並みの身体能力を求めるのは、不可能だ。
このグラディウスは、試験段階だが、いずれ正式採用される機体は、ナチュラルでも操縦できる操縦性を有しているという前提だ。
君には、それを開発する為にこのグラディウスに搭乗し、機体の改善の為に戦ってほしい。
グラディウスの操縦性改善の為に技術者達も奮闘している。
貴官も、現状モビルスーツを持たないままでは、敵に勝つことはできないと解っている筈だ。
そして、祖国の為、地球の為、市民の為に戦う覚悟を持っている筈だ。」
「はっ」
ハンスは、敬礼した。
それは、新兵だった頃、教官と背後にはためく祖国の国旗に返した敬礼と同じものであった。
少将も敬礼を返した。
直後、2人は、格納庫を去った。
「(格納庫の機体が、実は、強化プラスチックで作ったレプリカだということを少佐に言うのを忘れてしまったな…)」
ふと、ロジャース少将は、ハンスに言うべきことを忘れていたことを思い出した。
新たなる希望が、静かに胎動を始めていた。
227:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
17/01/25 01:10:18.22 YaZbQpVC0.net
今日は此処までです。
スターウォーズストーリー ローグワン見ました。特殊部隊の活躍やEP4のタイトルに新しい
意味が加わるという素晴らしい話でしたよ
連合兵戦記は、これからIFものに近いストーリー展開となって行きます
皆さん感想、アドバイスお願いします
228:通常の名無しさんの3倍
17/01/25 22:30:52.07 4ifK5Sbi0.net
乙です。
最後の文章を見るに実機は、まだ未完成でパイロット候補スカウトって段階だろうか?
主人公以外の部隊の生き残りの運命が気になります
229:通常の名無しさんの3倍
17/01/26 23:41:23.65 mdiX1AE30.net
やっとこのスレが動いたよ・・・長い停滞であった、乙。
実験兵器っつーとどうしてもIGLOOを思い出してしまうけど
さてはて、このMSはどういう運命をたどるやら、続き期待してます。
230:通常の名無しさんの3倍
17/01/31 15:30:06.74 y01fWEwd0.net
久方ぶりにスレをのぞいてみたら投下がある!
投下乙です、まぁ本来のプロトタイプってとにかく動かせるかどうか試す物だろうから装甲は期待できないよね
231:通常の名無しさんの3倍
17/02/07 22:59:54.70 68+VX1SL0.net
最近はハーメルンとかに投稿されてるのかな
主人公がテム・レイの上司の技術将校で
ジャミトフから予算貰ってきてガンダムとジムを開発する話は面白かった
232:通常の名無しさんの3倍
17/02/11 22:43:19.62 N5m7bUlX0.net
>>206
交流掲示板偶然見てわかったんだけど、ユーラシア兵さん暁に連合兵戦記
投稿してたよ
内容は基本的に同じだけど、ち
233:ょっと文章が増えてたり、誤字とか修正されてる
234:通常の名無しさんの3倍
17/05/13 07:11:25.38 hG8NCr110.net
更新来ない・・・
235:通常の名無しさんの3倍
17/05/21 16:15:20.26 PkG9etI90.net
富信のせいで過疎だな
236:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
17/06/08 00:23:54.08 lE2EhDwC0.net
投下開始します。この話は、本編の補完話に当る話です 箸休めと思って読んでいただけたら幸いです
間章 ドラゴンレディ 地球連合戦略爆撃隊
C.E 70年 11月中旬 グリーンランド ヘブンズベース基地 第22宿舎
ヘブンズベース基地の北地区に位置するこの建物には、
ユーラシア連邦第77戦略爆撃機師団と大西洋連邦第5戦略爆撃軍団を主力とする地球連合軍空軍部隊のパイロット達が居住していた。
彼らの任務は、ヨーロッパ戦線の地球連合軍地上軍の航空支援である。宿舎の部屋の1つ、
最低限の家具が置かれた部屋の片隅には、三角形の物体…目覚まし時計が置かれている。
設定された時間の到来と同時にその装置は、1分1秒の遅れも無くその機能を発揮した。
「う~時間か。」
けたたましい電子音で男は目を覚ました。つい数分前まで深い眠りに就いていたその髭面の男は、
冬眠から目覚めたばかりの熊の様にゆっくりとベッドから立ち上がった。
彼の名は、ホセ・ロドリゲス大尉 ユーラシア連邦軍第778爆撃機中隊の指揮官である。
ロドリゲスは、洗面台で顔を洗い、日課のうがいと歯磨きを手短に終えると、駆け足で爆撃機部隊員の待機室へと向かった。
彼がドアを開けて通路に出ると周囲の部屋から出てきた彼の同僚たちの姿があった。
彼は、その内の一人に声をかけた。
「よう!マックス、お前はよく眠れたか?」
「!ホセか。お前と同じだよ」
ロドリゲスの同僚の一人 第665爆撃機中隊の指揮官 マックス・ベルクマン大尉は、寝ぼけ眼を擦りながら言った。
「こりゃ、お互い出撃前にコーヒーをもらうべきだろうな」
「同感だ」
彼らは軽口を叩きつつ、宿舎に隣接する建物にある会議室へと向かった。
30分のブリーフィングの後、彼ら、爆撃機部隊の隊員達は宿舎から出た。
今日の作戦に参加する爆撃機中隊の指揮官達と、
その指揮下にある爆撃機の乗員達は、宿舎を出ると、滑走路に向かうための交通手段の待つ場所へと向かった。
宿舎と爆撃機乗り達を乗機が並ぶ飛行場へと運ぶ為のバスが待機していた。
「…」
ロドリゲスが宿舎前のバス停に辿り着いた時、バス停は空軍のパイロットスーツを着用した男女で満たされていた。
この空軍パイロットを滑走路まで届けるバスは、いつも必要分、ぎりぎりの数しか用意されていなかった。
「全く、いつもうんざりさせられる。」
ロドリゲスは、この風景をみる度に宿舎を滑走路に隣接した場所に建てればいいのに…という感想を抱いていた。
この様に送迎バスが用意されるのには理由がある。
237:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
17/06/08 00:26:07.39 lE2EhDwC0.net
第778爆撃機中隊を含む第22宿舎を利用している爆撃機部隊の機材が置かれている滑走路は、
元々民間飛行場を接収、改装したもので、滑走路以外の設備は、その規模も小規模だったのである。
この様な理由からこの第22宿舎の爆撃機パイロット達は離れた場所からバスで運ばれることになっていたのである。
「ちっ……ガキの時に乗ったスクールバスよりボロいぜ。」
ロドリゲスの隣にいた、黒髪を短く切り揃えた士官が愚痴を言う。
空軍のパイロット達は、次々とバスに乗り込んでいく。満員になったバスかノなったバスから滑走路に向けて走り出していった。
民間で使われていたバスをそのまま利用したその輸送バスの乗り心地は悪くは無かった。
5分後、バスは目的地である滑走路に到着した。
遠
238:くから見るとそこは、子供の手で、灰色一色で塗りつぶされたキャンパスの様だった。 滑走路用の耐熱コンクリートの灰色に混じって陽光を浴びて白銀に輝くのは、 現代の産業技術の粋を集めて作られた鋼鉄の翼竜だった。
239:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
17/06/08 00:32:49.19 lE2EhDwC0.net
バスが滑走路近くに停車する。
ドアが開放され、爆撃機部隊の隊員達がコンクリートで舗装された地面に降り立つ。
彼らの視界の向こう………コンクリートの平原に点々と並んでいるのは、彼らの乗機であり、棺桶になるかもしれない爆撃機である。
ロドリゲス大尉ら、第788爆撃中隊の隊員達も、バスから降りるとそれぞれの乗機へと乗り込んでいく。
この部隊が使用しているのは、ユーラシア連邦軍が正式採用した戦略爆撃機 UB-99 モルニアである。
モルニア高速爆撃機……最大搭載量30tのこの大型爆撃機は、
ユーラシア連邦空軍で戦略、戦術爆撃のみならず、対艦攻撃や沿岸哨戒にも使用されている。
ロドリゲスは、滑走路に待機している自身の乗機に乗り込む。
2分後、彼の隣の席に副操縦士のセバスティアーノ少尉が腰かけた。
「大西洋の奴らは?」
ロドリゲスは、隣に座る副操縦士に同盟国の部隊のことを尋ねた。
「俺達の5分後に出撃するそうです。あのブーメラン、B-7は整備に手間がかかりますから」
「そうか。流石金満国家の機体は違うな」
ヘブンズベース基地には、2個航空軍団が配備され、その内半数が長距離攻撃の可能な大型爆撃機である。
他にもアイスランドのレイキャビク飛行場にも1個航空軍団が展開している。
これらの爆撃機部隊は、西ヨーロッパの地球連合軍の航空支援と、大西洋の哨戒任務に従事していた。
それらの任務で最も多いのが、西ヨーロッパへの航空支援任務である。
ヘブンズベースを発進した爆撃機部隊は、ヨーロッパ戦線の地球連合軍への支援の為に西ヨーロッパの各地へと向かっていった。
今回の任務は、戦線後方のザフト拠点に対する空爆作戦である。
それは、ロドリゲス以下爆撃機部隊のクルーの半分以上にとっての祖国 ユーラシア連邦の領土を爆撃することを意味していた。
「管制塔より、発進可能とのことです。」
「よし!」
ジェットエンジンが作動すると同時に機内を力強い轟音が満たす。爆撃機パイロットとしての経験が長いロドリゲスは、
この音を聞く度に安心感と警戒心が入り混じったような複雑な感情を抱くようになっていた。
ロドリゲスは、エンジンが作動するのを確認すると、筋肉の発達した両腕で、操縦桿を握りしめ、機体を進ませた。
指揮官機である彼の機体が地上から離れ、天空への上昇を始める。
その後ろには、彼の部下の操縦するモルニア爆撃機の機影があった。
隣の滑走路からも次々と爆撃機が飛び立つ。それから暫くの間、滑走路の上空はジェットエンジンの爆音で満たされた。
ロドリゲスの率いる第778爆撃機中隊の爆撃目標は、イベリア半島 スペイン州 サンタンデール
ユーラシア連邦の港湾都市だったこの都市は、現在、ザフトの占領下に置かれている。
240:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
17/06/08 00:42:01.19 lE2EhDwC0.net
1時間後、彼らは、爆撃目標 サンタンデール上空に到着した。市内の半分は、
戦闘によって大きいものでは瓦礫へと変換され、小さい物でもインフラ機能の停止といった被害を受けていた。
爆撃隊の攻撃目標は、ザフトの艦艇が停泊する港である。
港湾内には、コンテナを山積みにした貨物船と鯨の様なボズゴロフ級潜水空母が1隻停泊していた。
その周囲には、連合から接収した小型のサメ類を思わせる鋭い船首を持つミサイル艇
や漁船と相違ないサイズの沿岸警備用の無人哨戒艇が約10隻浮かんでいる。
「貨物船…北アフリカからの奴だな」
情報部からの報告では、現状のザフトが保有している海軍兵力は、潜水艦だけで、水上艦艇は無いとの話だったので、
親ザフト勢力の人間が操作しているのだろうと彼は推測した。彼の予想通り、
その貨物船は、ザフト軍の所属ではなく、北アフリカ共同体の所属で�
241:った。船員は、その殆どが北アフリカ共同体の人間である。 ザフト側が、廃墟となった市内や郊外の自然公園や広場に配置した対空砲やミサイルをはるか上空の敵機に向けて乱射する。 それらは、見た目には派手だが、実際の効果はそれと反比例する様に低い。 対空砲は、射程が足りず、ミサイルは、4月1日以来地球では、その信頼性を大きく失っていた。 爆撃隊は、1機も欠けることなく、目標の上空に到着した。 「爆弾を投下しろ!」 ロドリゲスは、旗下の爆撃機に対して指示を出す。 「投下!」 「いけー」 爆撃手の声に副操縦士の声が重なる。モルニア爆撃機は、本来なら操縦士と爆弾手が統合されているが、レーダー誘導装置が信頼できない、 または使用できない状況では、爆撃手を同乗させることになっていた。 例えば、ザフトが投下したニュートロンジャマーの影響で、レーダーが使用不能となっているCE71年の地球の様な状況下の様に… 爆撃機部隊が爆弾を投下したのとボズゴロフ級が潜航を開始したのは、ほぼ同時だった。 爆弾槽から解き放たれた航空爆弾は、地球の引力に従って地表へのダイブを開始した。 これらの航空爆弾は、どれもコンピュータ制御の誘導装置や目標へと落下する為の動翼等持たない無誘導爆弾である。 地上より遥かに遠い高空より投下された爆弾は、風により翻弄されながらも地上へと落下していった。 それらの爆弾の多くは、湾内を取り囲む廃墟に着弾した。 それでも少なくない数の爆弾が湾内に落下する。 爆弾が水面に激突し、海中で爆発した爆弾が海を沸騰させ、無数の水柱が生まれる。 貨物船は、船体の中央部に爆弾を2発受けた。 コンテナや船体上部構造物の破片を派手に撒き散らしながら、貨物船は、数秒間湾内を迷走した挙句、搭載していた弾薬が誘爆して爆沈した。 真っ二つになった貨物船の残骸は、炎と黒煙を吹き上げ、海中へと沈没していった。 他にも係留されていた無人哨戒艇が6隻破壊された。元々海上での救助活動やテロリストや犯罪組織の不審船対策用に開発され、 装甲も碌にないそれらの船にとっては、小型爆弾1発でも十分致命傷である。 「鯨は?」 下を一瞥し、ロドリゲスは、通信機で後方を飛ぶ部下の機体に尋ねる。
242:通常の名無しさんの3倍
17/06/08 00:44:55.17 94MtHAui0.net
④
243:通常の名無しさんの3倍
17/06/08 00:48:04.14 lE2EhDwC0.net
「こちら、21番機、潜水艦と思しき残骸、油膜は確認できず」
「こちら22番機!駄目です。海底に逃げちまったみたいです。」
「まあいい、港は叩いたんだ。」
そして、彼らが最も撃沈を狙っていたボズゴロフ級は、葬れなかった。だが、港湾機能を大幅に低下させたのは、作戦成功といえる。
「よし!とっととずらかるぞ!」
ふと彼は港の片隅で瞬くオレンジの閃光を見た…そこでは、港で物資の搬入作業を行っていたのであろう、
ジンが重突撃機銃を空中に向かって乱射しているのが確認できた。
「無駄なことを…」
地上支援の急降下爆撃や機銃掃射の為に低高度に降りてくる戦闘爆撃機ならともかく、ジンの保有火器では
遥か高高度を悠然と飛行する爆撃機部隊を傷つけることは不可能であった。
地上の様子には、目もくれず、爆撃隊は、ヘブンズベースへの帰路に就いた。
「全く、スマート機雷を散布すればよかっただろうに…」
白い雲が散乱する青空を見つめ、ロドリゲスは、任務の度に心身に蓄積される憤懣と共に言葉を吐き捨てた。
今や機雷は、種類によっては、戦闘機や無人航空機からでも投下できる。この爆撃機も種類によっては、
244:機雷を68個搭載可能である。 沿岸都市を無誘導爆弾で絨毯空爆するよりも湾内に航空機で機雷をばら撒いた方が、効率もいいし、市街地や市民への被害も少ない。 上官と同意見らしく、ロドリゲスの隣にいるセバスティアーノも頷く。 ユーラシア軍人である彼らにとって同胞の生活している自国の領土を空爆するのには葛藤があった。 彼らは知らなかったが、この時期の地球連合側は、機雷のストックが少なかった。 地球連合に加盟した国家の中で最も軍事力を有する3か国、大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国では、機雷はあくまで補助的兵器として位置づけられていた。 大西洋連邦は、機雷よりもミサイルや水上艦艇、航空機の装備する兵器を優先し、 大西洋連邦以外の2国は敵国に自国領海に機雷を散布されることは、想定しても敵地に散布することは想定していなかった。 この様な事情もあって地球連合海軍における機雷の保有数は、決して多くは無かった。更に沿岸の基地にあった機雷のストックは、ザフト軍の地上侵攻が始まると、 地域ごと占領下に置かれ、あるいは兵器庫ごとザフト軍の潜水艦やMS、ミサイルによって爆破されてしまっていた。 その為、機雷封鎖に利用できる機雷の余裕は無かった。 現状、地球連合軍が保有する機雷の過半数は、ボズゴロフ級や水中MSから沿岸を防衛する機雷堰を形成する為に利用された。 地球連合軍が、開戦初期の地上戦線でザフトの占領下にある港湾に対する機雷封鎖を行わなかったのは、この様な事情があったのである。
245:通常の名無しさんの3倍
17/06/08 00:53:03.42 lE2EhDwC0.net
2週間後、地球連合軍は、ヨーロッパのザフト軍最大の拠点 ジブラルタル基地への大規模空爆作戦 バックステージ0025を発動させた。
ジブラルタルに打撃を与えることは、ヨーロッパ戦線でモビルスーツの猛威に曝されながらも、
苦闘を続ける地球連合陸軍への支援になるだけでなく、
地上のザフト軍に打撃を与え、地球における戦況を好転させることにも繋がる。
この作戦には、イギリス南部の空軍基地とグリーンランド ヘブンズベース基地を拠点とする爆撃機部隊の半数以上が投入され、
その中には、ロドリゲス大尉を指揮官とする第778爆撃機中隊もいた。
「凄いですね!隊長」
第778爆撃機中隊の隊員の1人 9番機のパイロットを務めるヨゼフ・ランスキー中尉は、滑走路を埋め尽くす爆撃機の列を右手で指差して叫ぶ。
その顔には驚愕と喜びが映し出されていた。
「ああ」
感激する部下の声に応えるその声は、どこか上の空だった。この時、ロドリゲスは、目の前の現実に戸惑っていたのである。
彼の目の前で繰り広げられる光景を見れば、それも無理のない話と言える。ヘブンズベースの主な飛行場には、
ユーラシア連邦空軍のモルニア爆撃機と大西洋連邦空軍のB-7 ストラトバトルシップ戦略爆撃機が所狭しと並んでいた。
その上空には、ザフトの奇襲に備えて防空隊のスピアヘッド戦闘機の編隊が乱舞している。
ザフトとの戦闘だけでなく、NJ災害によって発生した治安の悪化や電力不足、インフラの崩壊とも向き合わなければならない
地球連合に戦力の余裕はないことを考えれば、これはある意味で異常な光景である。
地球連合軍は、今回の作戦に相当の戦力を注入していた。
彼らの攻撃目標であるジブラルタル基地は、ヨーロッパにおけるユーラシア連邦海軍の一大拠点で、開戦後は、地球に侵攻したザフトの潜水艦隊によって制圧され、
現在では、オーストラリアのカーペンタリア基地と並び、地上のザフト軍の一大拠点となっていた。
海軍基地と隣接する宇宙港には、連日宇宙からHLV(垂直打ち上げロケット)や輸送シャトル、降下カプセルにより戦略物資や兵員、兵器が投下され、
大西洋連邦に対抗する為に整備されていた海軍基地は、大西洋~地中海、北海方面を行動するザフト潜水艦隊の泊地にもなっている。
ジブラルタル基地への攻撃は、これまで長距離弾道弾による攻撃が数回行われただけであった。
核弾頭が無用の長物と化し、GPSやレーダーが使用不可能になるか性能を低下させている現状では、射程距離だけ長い無誘導兵器でしかない。
地球連合軍も、それを十分に認識しており、実際の戦果よりも宣伝効果、嫌がらせの為に行った面が大きかった。
だが、その攻撃ですら1週間前に取りやめられている。
弾道弾の1発が、ジブラルタル基地の付近に隣接する難民キャンプを粉々にしたことによって。
地球連合軍は、ジブラルタル基地の周囲に難民キャンプが存在していることを認識してはいなかった。だが、そのことは、事態が発生した後では、何の意味も持たない。
この事件をザフトは、地球連合を攻撃するプロパガンダに利用した。〝地球連合は勝利の為ならば市民すらも犠牲にする。〟
ハッキングされたユーラシア連邦の災害対策通信の周波数に乗ってザフトの放送は伝えられた。
更にザフトは、被害を受けた難民キャンプ、ロケット燃料と高性能爆薬で黒焦げになったバラックの列、手足を失った子供、等の着弾点の写真を連日、
無人偵察機やグゥルを利用して地球連合側の都市や占領下の地域にばら撒いたのである。
この事件を受けた地球連合は、直ちに放送で難民キャンプの生存者に謝罪し、ジブラルタルに対する弾道弾攻撃を取りやめた。
ただでさえ、前線での無差別空爆で占領下の地域に被害を出している地球連合としては、この様な割に合わない攻撃を続ける意味は無かったのである。
246:通常の名無しさんの3倍
17/06/08 01:01:24.09 iyjbXRc/0.net
しえん
247:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
17/06/08 01:02:23.94 lE2EhDwC0.net
「壮観な光景ですね…隊長」
今度は、副操縦士のセバスティアーノが言う。
「そうだな。これならザフトの奴らをぺしゃんこにしてやれる」
笑みを浮かべ、彼は部下を鼓舞する様に言った。各爆撃機部隊には、それぞれ、目標が設定されていた。
例えば、第778部隊の所属機の場合、目標は、ジブラルタル基地の潜水艦ドック………分厚い鉄筋コンクリートで覆われたその人工の海触洞。
開戦前地球における海の王者であった原子力潜水艦の巣となっていたその場所は、現在では、ザフトの主要海上戦力である潜水艦隊の停泊地となっている。
地球連合は、モビルスーツを主力とするザフトの電撃的な侵攻の前に、北アフリカの大半を制圧され、
ユーラシア連邦の産業、文化の中心の1つである西ヨーロッパにおいても苦戦を強いられ、相次ぐ後退を余儀なくされていた。
この状況で、ザフトの2大拠点の1つに打撃を与えるということは、各戦線で戦っている味方兵士の士気を大いに高めるだけでなく、
戦況を大きく好転させることにも繋がるのは確実であった。
この作戦は、地球連合 戦略航空軍始まって以来の大規模作戦であった。
ロドリゲスは、いつもと同じ様に自身の乗機に乗り込んだ。整備と安全確認が完了し、発進準備が整った地球連合軍爆撃機部隊は、
次々と、滑走路から次々と離陸していく。
最後の地球連合の爆撃機が大地を離れた時、ヘブンズベースの上空には、無数の機影が浮かんでいた。
その数は、200機以上いた。200機を超える爆撃機は、鳥の群れの様に梯団を形成した。
基地の管制塔で、大空に飛び立っていく、作戦参加機を眺める者達がいた。
「閣下、壮観ですな。」
「ああ」
地球連合軍第4航空軍団司令官のギャヴィン・オーウェル中将は、ヘブンズベース上空を覆わんばかりの機影を見て、傍らの副官に応える。
再構築戦争後、これほど大規模な爆撃機を運用した作戦は、片手で数える程しかない。
その作戦に参加できることにこの中年の将軍は、心躍るのを感じていた。
今回の作戦に向けて、地球連合空軍は、ヘブンズベース基地に多種多様な航空爆弾を輸送した。地下施設を破壊する為の特殊合金製の弾頭を搭載した地中貫通爆弾、
滑走路に槍の様に突き刺さり、爆発によりクレーターを形成、使用不能に陥らせる滑走路破壊爆弾、
地上部隊の上空で無数の子爆弾を撒き散らすクラスター爆弾、炭素繊維のワイヤーを散布することにより、送電施設を機能不全に陥らせる停電爆弾、
熱と圧力で効果範囲のあらゆるものを粉砕するサーモバリック爆弾……
誘導方式もハイテクのAI、GPS、レー�
248:Uー誘導、レーダー、熱紋式から無誘導のものまで、さながら地球連合の航空爆弾の展覧会の様だった。 発進していく彼らの姿は、既にザフトに察知されていた。高高度偵察機等ではなく、地上から遥かに離れた衛星軌道上に浮かぶ、偵察衛星によってである。 ザフトは、地球連合軍の地上の拠点を偵察する為の偵察衛星を多数撃ち上げていた。 地球連合軍も、小規模な艦隊や軌道防空部隊と呼ばれる衛星攻撃用ミサイルや 軍用シャトルを有する部隊でこれらの偵察衛星を軌道上の塵に変えていたが、それでも限界があった。
249:通常の名無しさんの3倍
17/06/08 01:07:31.03 iyjbXRc/0.net
支援
250:通常の名無しさんの3倍
17/06/08 01:07:43.76 lE2EhDwC0.net
「ジブラルタルに居座ってる宇宙人共を灰にしてやろうぜ!皆!!」
ロドリゲスは、通信機に向かって大声で叫ぶ。
「了解です!」
「やってやりましょう!」
「蒼き清浄なる世界の為に」
部下達もそれぞれ大声を張り上げて己の勇気を奮い立たせる。同様の光景は、別の爆撃機部隊でも繰り広げられていた。
無線封鎖域は、まだ遠いとはいえ、これは軍の規律を乱す行為とも取られかねなかった。だが、指揮官クラスでもそれを咎める者はいなかった。
いつ死ぬかわからない状況では、この様に兵員の士気を高める行為は、必要だった。
己を、仲間を奮い立たせる咆哮を上げながら、鋼鉄の翼竜達は、獲物の待つ空へと向かっていった。
彼らは、その途中で何が待ち受けているのかということを知らない。
だが、兵士である彼らは、命令に従うしかなかった。
――――――ユーラシア連邦領海 ビスケー湾上空―――――
梯団を組んだ地球連合爆撃機部隊は、間もなくジブラルタル基地の存在するイベリア半島にたどり着こうとしていた。
「陸地が見えて来たな…」
ロドリゲスは、前方に広がる陸地―――イベリア半島北部海岸を見つめて言う。
この海域は、地球上で最も鯨やイルカ類が生息している海域であり、遥か昔には、バスク人を初めとする様々な民族が捕鯨活動を行ったことでも知られている。
C.E 70年現在、この海には、別の種類の鯨も存在していた。その鯨は、血肉ではなく、鋼鉄の体を有していた。
「前方の海域に敵艦確認!艦種は、…ザフト野郎の〝クジラ〟です」
ロドリゲスの操縦するモルニアの搭載レーダーは、海上に浮かぶ敵を発見した。これは、NJによる電波障害が覆っている地球では奇跡に近いことだった。
「例の潜水空母か…」
眼下の海には、ザフト潜水艦隊の主力戦力であるボズゴロフ級潜水空母がその巨体を海上に浮かべていた。海上のボズゴロフ級は、1隻だけでなく、2隻存在していた。
また前の方の1隻は通常型と異なり、発射台の様な物体を甲板に載せていた。
対照的に後ろの方は、通常型である。2隻の上空には、ザフトの航空戦力の中核をなす飛行MS ディンが12機V字編隊を組んで飛んでいる。
「その2000m上にげた履きもいます。〝カメラ野郎〟です。」
251:通常の名無しさんの3倍
17/06/08 01:09:02.24 lE2EhDwC0.net
副操縦士のセバスティアーノ少尉が報告した。
その報告の通り、ディン部隊の更に上空には、グゥルに乗ったジン長距離強行偵察複座型が滞空していた。VTOL機であるグゥルは、
大量に燃料を消費する代わりにヘリコブターの様に空中をホバリングすることが可能であった。
そのジン長距離強行偵察複座型は、通常の任務で携行している重突撃機銃やスナイパーライフルではなく、奇妙な箱型の装置を両腕で抱えていた。
その装置は、銃器というよりもビデオカメラに近い形状で、先端には、無数の赤く光る小型センサーが装着されていた。その形状は、昆虫の複眼を想起させる。
そして装置の先端は、遥か碧空を飛ぶ地球連合軍爆撃機部隊に向けられていた。
「物資輸送の途中か何かだろうな…向こうも攻撃できないだろうが、俺達もこの高高度じゃ、爆弾の無駄だな」
「ディンは潜水艦の護衛なんでしょうが、あのげた履きは何のために浮かんでるんでしょうね?」
「俺達の監視の為だろう」
「ECM強度を最大にしておけよ。ミサイル�
252:ナも食らったらシャレにならん」 「了解!」 セバスティアーノは、搭載されている電子妨害装置の出力を最大に引き上げた。他の爆撃機も同様の行動をとった。 次の瞬間、全てを一変させる異変が起こった。それは、空中ではなく、遥か下界…海上にて起きた出来事であった。 前方にいたボズゴロフ級で爆発が発生したのである。オレンジ色の鮮やかな炎が、ボズゴロフ級の艦体を包み込み、一時的にその姿を隠した。 「!?何だ?自爆か!」 突如海上で発生した爆発を目撃したロドリゲスは唖然とした。上空の爆撃機部隊のパイロット達は、それぞれその光景を目撃した。 彼らの思考はそこで中断された…不運な一部は、永遠に… 海上での爆発の直後、新たな爆発が生まれたからだ。 それは、ボズゴロフ級が浮かぶ海上から遥かに離れた高高度………爆撃梯団の右端にいた編隊で起こった。 「第33中隊がやられた!」 「指揮官機被弾!!」 爆撃梯団の中で、悲鳴のような通信が飛び交った。 「何が起こった!?」 ロドリゲスは、突然の悲劇に驚きつつ、後方警戒用のカメラからの映像が表示されたモニターを見た。 そこからは、大西洋連邦軍のB-7爆撃機3機が、燃え盛るブーメランとなって地上に落下していくのが見えた。 間髪入れず、第2の爆発が空気の薄い高高度で炸裂し、今度は、ユーラシア連邦空軍のモルニアが6機、撃墜された。
253:通常の名無しさんの3倍
17/06/08 01:16:14.47 94MtHAui0.net
④
254:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
17/06/08 01:17:28.80 lE2EhDwC0.net
「………対空砲弾による攻撃と思われる!」
通信機から僚機のどれかから拾われた電波が音声化されてコックピットに響いた。
「対空砲弾…」
それらの対空砲弾は、海上のボズゴロフ級潜水空母から発射されたのは明白であった。
「艦載式の電磁対空砲だと!」
敵の兵器の正体に気付いたロドリゲスは、思わず叫んだ。電磁対空砲……旧世紀の高射砲のレールガン版とでもいうべきこの兵器は、
誘導性能こそミサイルに劣るが、コストパフォーマンスでは勝っていた。
また電磁加速された砲弾は、ECM等の妨害や迎撃を受ける可能性のあるミサイルや大気による威力の減衰という欠点があるレーザーやビーム等の光学兵器と比べ、一度発射してしまえば、
運動エネルギーを喪うまでは直進(誤差の範囲ではあるが、地球の重力による影響もある)するという利点があった。
開戦前は主要な軍事基地には電磁対空砲陣地が配置され、開戦後でも3月8日のビクトリア基地攻防戦でも、軌道上から降下してきたザフトの降下部隊に大損害を与えている。
だが、4月1日にザフトが地球に撃ち込んだニュートロンジャマーで原子力発電が無力化され、
軌道上の発電衛星も艦隊戦の結果、宇宙の藻屑と化した現在のエネルギー事情では、
レールガンを対空火器として運用するのは、ミサイルやレーザーと同等か、それ以上に割に合わないと考えられていた。
その兵器を、ザフトは、高高度を飛行する地球連合軍爆撃機部隊の迎撃に転用したのである。
ジブラルタルを目指していた地球連合軍爆撃機部隊の前に立ち塞がったボズゴロフ級は、
通常型ではなく、対空型に改造された改造型ボズゴロフ級であった。
この艦は、ローラシア級の主砲である450mm単装レールガンをベースに開発された対空レールガン AALG-22 ジルニトラを装備していたのである。
このボズゴロフ級潜水空母の戦力の大半の源泉ともいえるリニアカタパルトを潰して設置された
この大蛇の様なレールガンの射程は、ロケット加速式誘導弾頭との併用で高度3万メートルにも及ぶ。
反面貫徹力では、ジンの装甲にすら弾かれるほど威力が大幅に低下していたが、薄紙同然の装甲しかない爆撃機相手にそれは必要なかった。
またエネルギーの問題に関しては、バッテリーの役割を果たす補給潜水艦を随伴させることで解決していた。
「あのカメラ野郎が誘導してる
255:んだな!」 そして、NJ下の戦場で最大の問題となる命中率の問題は、モビルスーツに観測機材を搭載し、観測機とすることによって解決していた。ロドリゲスは、 相手がどの様にこの高高度にいる爆撃機に対して正確に砲弾を浴びせているのかのカラクリも正確に予想していた。 だが、彼の優れた洞察力もこの状況では何の助けにもならなかった。 ジンから送信される観測データを元にボズゴロフ級は、天空に向けて魔弾を送り込み続けた。電磁加速された砲弾が高高度で炸裂する度に青空に爆発の華が咲く。 誘導砲弾の破片をエンジンに受けたモルニアが黒煙を吹き上げながら高速で落下を開始する。 爆弾槽に被弾し、搭載爆弾が誘爆した機体は、大音響と共に空中で大爆発した。 飛び散った無数の破片が、密集体形を組んでいた僚機を襲い、更に被害を拡大させる。炎の塊に呑み込まれた後続機が後を追う様に爆発する。
256:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg
17/06/08 01:25:08.54 lE2EhDwC0.net
「畜生!」
ロドリゲスの目の前で、爆撃機部隊は、次々と火の手を上げ、天空から墜落していく。
一部の爆撃機が、一矢報いんとばかりに海上の改造ボズゴロフ級に向けて爆弾を投下した。
だが、それらは、浴槽に浮かぶ針に遥か上から砂粒を当てる様なものである。
投下された爆弾は、その全てが、吹き荒れる風と大気の温度変化、湿度と言った様々な要素に翻弄され、
ボズゴロフ級から離れた海面に幾つもの水柱を空しく生み出しただけに終わった。
一部の機体は、低空に降りて海上のボズゴロフ級に襲い掛かろうとした。
「頼むぞ…」
ロドリゲスの第778部隊を含む梯団の爆撃機は、旋回してその空域に留まる。周囲を見ると他の爆撃機部隊の多くも、
彼と同じ様に低空に降りた仲間が、海上の脅威を排除して進撃を再開できることを期待した。
ユーラシア連邦空軍の保有する戦略爆撃機 モルニア爆撃機は、戦略爆撃だけでなく低空での対艦攻撃も可能な運動性を有している。
低空からボズゴロフ級に迫るモルニアの編隊にボズゴロフ級の護衛を務める飛行MS ディンの部隊が迎え撃つ。
爆撃機に過ぎないモルニアは、加速性能はともかく、運動性能でディンに大幅に劣っていた。
戦いは、一方的なものとなった。重突撃機銃をエンジンに受けたモルニアが爆散し、コックピットに散弾を食らった機体は、
パイロットの肉片と強化防弾ガラスの破片を撒き散らしながら海に突っ込む。
ザフトの飛行モビルスーツは、その後数分間に渡って低空を飛ぶ鋼鉄の巨鳥を狩ることを楽しんだ。
次々と対空散弾銃や重突撃機銃を受けて三角翼の白い機体が、撃墜されていった。
1機のディンが、モルニアの上から急降下、すれ違い様に右腕に握った重斬刀を突き刺す。
コックピットの真後ろに楔を打ち込まれた白い鉄の鳥は、その巨体をよたつかせ、海面に激突し、四散する。
低空に降りた爆撃機は、1機残らず、ボズゴロフ級を護衛するディンによって撃墜された。
そして、ボズゴロフ級は、2隻とも無傷であった。