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開国と攘夷「日本の歴史」(中央公論) 小西四郎
農政学者として有名な佐藤信淵もその一人である。
かれは…当時としてはかなり卓越した見識の持ち主であり、多くの兵学書を著わした。
かれは「インドのムガール国の亡んだのは、実にこれ東洋諸国の大患なり」と述べ、
清国がこれまで血戦に勇猛であった満州兵をひきいて、要害によってイギリス軍を防いだのに、
一戦も勝つことができず、一城も守ることができずに敗れたことは
「天地開闢以来未曾有の珍事で予甚だこれを驚異とす」とし、
これは結局武備を怠ったからであるといっている。
そして現在の日本の諸大名・武士は太平の夢に酔い、外警の事を聞くことをにくみ、
またたとえ外警の事を聞いても、自分の身には禍があるまいと思い、
だだずるけてその日暮らしに日を送っていると批判し、
このさい大いに庶政一新、富国強兵を計らなければならないと述べている。
さらに富国政策としてかれのもっとも得意な経済政策論を述べ、
経済を統制して富の偏在を匡正し、これを国家の手中に集め、
また積極的に南方に進出してフィリッピンなどを手中にし、強兵の費用をつくるべしとしている。
太平洋戦争期のいわゆる「大東亜共栄圏」樹立構想にかなり似ている。
外国の侵略に対抗するには、他国を侵略することはなんら意に介さないし、
清国を助けて、これを日本を防備するうえの「西屏」とすべしなど夢のようなプランでもあるが、
列強の東アジア進出の警鐘を受けとめた識者の一人である。