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パウロが、善人だとすれば、律法で世界を救おうと悩んだのだとするならば、律法を学ぶことで、現実に起きている際限のない悪の手口、
欺瞞や偽善や言い逃れ言いくるめのテクニック、罪のないものに罪を着せ、善悪を覆して罪のないものを殺せてしまう力や権威を持った時に恐れたことだろう。
パウロは先輩に相談したことだろう。良い先輩なら自分を律せよとか、善人を助けて悪人をこらしめろとか言ったのかもしれない。それでも善人とは何か、悪人とはなにか、強盗は悪なのかと悩み続けたことだろう。
警官や武道の達人も、人を素手で簡単に殺せる。人を簡単に殺せる力を持ったものは多いし、社会手間生きる限りは倫理や自制心が必要だ。
逆に力のないものがどれだけ殺意を込めて殴っても、ブルブル震えて身動きも取れないで泣き崩れたり、ほっぺにかするくらいの打撃しかできない。
それが、悪の悪意で憎悪であり、ひどい逆恨みでも、どんなに怒りや憎悪をぶつけても殺傷力がない。
そういうものは、心の中に倫理や自制心というものを突き詰めることがない場合があるのかもしれない。
しかし、警官や武道の達人は、常に倫理や自制や善悪を意識する。
ささいなものでも、怒りや悪意や憎しみに身を任せれば簡単に殺せてしまう。
殺しのテクニックが際限なく心に思い浮かぶ。鍛え抜かれた技で、気づかれもせずに、即座に息の根を止められる。
だから、心を悪意や怒りに任せれば破滅しかないとわかってる。人間でなく人間が獣になるのだとわかってる。
人間という生き物が、人間の心を失えば即座に、外形は人間のままでも、人殺しの獣になるのだとはっきりと身をもってその身に血肉に染み付いてる。
だから、心を鍛えなければいけないし、律しなければならない。
そして、人が人外の獣になる、即座に獣になれるし、射殺しなければならない獣になるのだとわかってる。
武道の達人は知ってる。力を悪に使えば暴力団や獣で檻に閉じ込められたり、撃ち殺されるほかない。
人間が即座に人間で無くなると知ってる。
どんなに鍛えても殺処分されるだけ。