24/11/05 17:15:41.59 dR0QxuUW0.net
>>235
続き
私の執務室は廊下を隔てて霊安室のすぐ近くにある。看護師が言うとおり、深夜まで一人で仕事をしている時に私はさまざまな音を聞いていた。
バサッというカルテが落ちる音。確認してもカルテや書類は落ちていない。
ガタンッというイスの音。イスが動いた形跡はない。
バタンッというドアが開く音。2カ所ある出入口のうち、夜間、その方向のドアは施錠している。
パタパタという入院患者がサンダルで歩く音が執務室で聞こえることもある。誰かが入室してきたら必ず私の目の前を通ることになるのだが、誰もいない。
毎食後の時間帯には、糖尿病の患者が廊下を歩く。血糖値の急激な上昇を少しでも抑えるためだ。もちろん、夕食後、夕方から夜間にかけて歩く人もいる。霊安室がある廊下付近を歩く人も時折見かける。その先は霊柩車の後ろをつけるだけの行き止まりだ。
看護師長は
「患者さんには、霊安室へ通じる廊下には立ち入り禁止と言ってある」
と言うが居るものは居るのだ。